向こう側の、ヨーコ*真梨幸子

  • 2018/06/05(火) 16:52:39

向こう側の、ヨーコ
向こう側の、ヨーコ
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真梨幸子
光文社
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独身を謳歌する陽子には幼い頃からよく見る夢があった。それは、もう一人の私、かわいそうなヨーコが出てくる夢。一方、夫と子供の世話に追われる陽子は愚痴ばかりこぼす毎日を送っていた。境遇の異なる二人の陽子の人生が絡み合う、イヤミスの傑作!


あの時、違う選択肢を選んでいたらこうなっていただろう、というパラレルワールドを生きる自分を夢に見るA面の陽子と、B面のパラレルワールドのなかの陽子の物語が、交互に描かれている。初めはその違いははっきりしているのだが、物語が進むにつれて互いに浸食しあい、影響しあってくる印象である。なので、いまどちらの面にいるのか、ふと判らなくなり、めまいに似た気分になることが時々あって混乱させられる。分岐した世界であるはずなのに、人間関係も時としてもつれ合っていて、夢遊病のように、あちらとこちらの世界を行き来しているのではないかと思わされることも、ことに後半ではたびたびある。陽子がどんどん追い詰められていき、深みにはまっていく様は、見ていて痛々しく、どのエピソードも胸がささくれるようなものである。ラストの後味の悪さは格別で、自業自得ともいえるが、やりきれなさすぎる。登場人物の誰にも親近感を抱けない一冊である。

アルテーミスの采配*真梨幸子

  • 2018/05/10(木) 20:32:15

アルテーミスの采配
アルテーミスの采配
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真梨 幸子
幻冬舎
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AV女優連続不審死事件。容疑者の男は行方不明。男が遺した原稿『アルテーミスの采配』が、隠された嘘、或は真実を語り始める。私の人生、狂ったのは誰のせい?毎日は無数の罠で満ちている。最後一ページまで、見事なる真梨幸子の采配。


AV女優のインタビューを集めた本を作るという企画のためにインタビューを受けたAV女優が次々に不審な死を遂げる、連続不審死事件を軸に、物語は進む。彼女たちの生い立ちや、AV女優になろうと思った動機がインタビュー記事として読者の前に明らかにされ、どうして殺されなければならなかったのかに興味を惹かれる。そして、「アルテーミスの采配」に関わった者たちの関係が次々に明らかになり、深く根差した恨みもさらけ出される。芋づる式に暴かれる恨みの連鎖に背筋が寒くなる。アリジゴクのような苦界に絡めとられる成り行きも恐ろしい。見たくないのに見てしまう、怖いもの見たさ欲をそそられる一冊であるとも言えるかもしれない。

5人のジュンコ*真梨幸子

  • 2018/05/09(水) 07:28:20

5人のジュンコ
5人のジュンコ
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真梨 幸子
徳間書店
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なぜ私は、あの子と同じ名前になってしまったのだろう。篠田淳子は、中学時代の同級生、佐竹純子が伊豆連続不審死事件の容疑者となっていることをニュースで知る。同じ「ジュンコ」という名前の彼女は、淳子の人生を、そして淳子の家族を崩壊させた張本人だった。親友だった女、被害者の家族、事件を追うジャーナリストのアシスタント……。佐竹純子容疑者と同じ「ジュンコ」という名前だったがゆえに、事件に巻き込まれていく4人の女たちの運命は。


現実の事件からの着想だということはすぐにわかるが、その事件を掘り下げているわけではなく、そこからさらに深く入り込み、事件の裏側、さらには、そこに至るはるか以前の子ども時代のエピソードから描いている。そこでは、たまたまジュンコという同じ名前だったからこそ生まれた悲劇がすでに始まっており、いかに根深いものだったかがうかがい知れる。その後も、佐竹純子にかかわったジュンコという名を持つ女性たちが、さまざまな形で影響を受け、泥沼にはまり込んでいくのである。たかが同じ音を持つ名前だっただけで、と思うが、その影響の強さには恐ろしささえ感じる。ジュンコさんが読むとしばらく落ち込むかもしれないとも思ってしまう。映像化されていたのは全く知らなかったが、観てみたいと思わせる一冊である。

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで*真梨幸子

  • 2018/04/25(水) 13:34:22

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで
真梨 幸子
幻冬舎 (2018-01-25)
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嫌なお客のワガママ放題、無理難題。敏腕外商・大塚佐知子がご用命とあらば、殺人以外なんでもします…でも。「お客様は神様?所詮は他人です」。私利私欲の百貨店へいらっしゃいませ。


老舗百貨店の外商のお仕事ぶりの物語。とは言っても、普通に想像する有能な外商さんとはちょっと違うのが、著者らしいところだろう。有能といえばこれ以上有能な外商もいないかもしれないが、お得意様方から持ち込まれる無理難題を、いささかやりすぎと思えなくもない方法で片づけてしまう。客の要求が常識の範囲内であれば、これ以上ない外商さんたちなのだろうが、顧客の要求が並ではないので、勢い、対処法も並ではなくなるのである。勘違いや行き違いも微妙に絡み合い、ブラックすれすれの流れにコミカルなスパイスが効いて、面白さも味わいも深くなっている。物語のその後が知りたいと思わせるものもたくさんあって、愉しめる一冊である。

猫の話をそのうちに*松久淳

  • 2018/02/19(月) 08:46:51

猫の話をそのうちに
猫の話をそのうちに
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松久 淳
小学館
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売れないギターデュオ・ネクストマンデイのひとり、野崎周一郎は、相方がこの業界から去り、覚束ない日々を送っていた。そんなある日、偶然居合わせた居酒屋で、人気ミュージシャン・黒沢と飲むことになる。その場で、説教をされ、号泣した野崎だったが、翌日、何事もなかったように黒沢から飲みの誘いを受ける。以降、野崎は、気が付けば頻繁に黒沢と飲むようになった。だが、元カノとの中途半端な交際を指摘されたことをきっかけに、野崎と黒沢は連絡が途絶えてしまう。それから、長い時間が流れた――。


初めは、ただの酔っぱらいのたわごとであり、破天荒を気取るイヤな奴と何も言えずにいいように扱われる後輩の関係の話しかと思い、良い印象を持たずに読み進めたのだが、黒沢の行動パターンや胸の裡が少しずつ察せられるようになるにつれ、野崎自身の不甲斐なさや中途半端なずるさ、そして音楽に対する諦めの悪さが、黒沢に何らかの衝動――あくまでも内面の動きとして――を起こさせ、このような関係を続かせているのではないかということに思い至ると、二人の関係が違ったものに見えてくる。ひとりの人間を一面だけで判断することはできないということもよく判る。情熱的でもあり、しみじみさせられる一冊でもある。

祝言島*真梨幸子

  • 2017/09/30(土) 16:53:26

祝言島
祝言島
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真梨 幸子
小学館
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2006年12月1日、東京で3人の人物が殺され、未解決となっている「12月1日連続殺人事件」。大学生のメイは、この事件を追うテレビ番組の制作会社でアルバイトをすることになる。無関係にみえる3人の被害者の共通点が“祝言島”だった。東京オリンピック前夜の1964年、小笠原諸島にある「祝言島」の火山が噴火し、生き残った島民は青山のアパートに避難した。しかし後年、祝言島は“なかったこと”にされ、ネット上でも都市伝説に。一方で、祝言島を撮ったドキュメンタリー映画が存在し、ノーカット版には恐ろしい映像が含まれていた。


人間の厭な心が凝縮したような場所になってしまった祝言島。東京オリンピックの影に隠れて、その存在さえも歳伝説にされてしまった哀れな島である。そんな祝言島にゆかりのある人たちが、後々まで噂や出自に囚われて、事件を起こしたり巻き込まれたりして行くのである。無関係だと思っていた人が、思わぬところで関係者だったり、他人だと思っていたらそうではなかったり、騙された感が強い部分もなくはないが、それをも含めて厭な感じである。祝言島と口にするだけで祟られそうな不快な気持ちになるのは、ある意味情報操作のようでもあり、普段でも陥りそうなことであって、気をつけなければと思ったりもする。人の心の闇が凝縮し、じわじわと滲み出してくるような一冊である。

劇場*又吉直樹

  • 2017/07/31(月) 19:00:03

劇場
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又吉 直樹
新潮社 (2017-05-11)
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一番 会いたい人に会いに行く。
こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろな。

演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。
夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。

『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、
書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。

夢と現実のはざまでもがきながら、
かけがえのない大切な誰かを想う、
切なくも胸にせまる恋愛小説。


脚本を書くことで演劇という手段で自分の世界を作り出そうともがく永田は、自分の中に湧き上がるものと時代の流れとをうまくすり合わせることができずにいる。それでも、諦めたくない何ものかを持っているので、安易にその流れに乗っていくことはできないのである。深く考え、悩むこともあるのだが、声として外に出る言葉は、胸の裡とは裏腹に軽薄でふざけた調子になってしまったりもする。先の先を読み、裏の裏へ思いを致して、結局空回りするような感じとでも言えばいいのか。それは、すべての人に理解してもらえるわけではなく、落ち込み自己嫌悪に陥ることも多々あるのである。水鳥が悠々と泳いでいるように見えて、水面下では大忙しなのと似ているような気がする。永田もまた、傍から見れば、恋人の沙希に寄りかかってぐうたらしているようにしか見えない。沙希も、精いっぱい解ろうとしていたのだが、やはり追いつかなくて疲れてしまったのだろう。面倒なものである、人間というものは。不器用で面倒で、外からはうかがい知ることのできない思いに溢れた一冊である。

カウントダウン*真梨幸子

  • 2017/04/27(木) 07:07:37

カウントダウン
カウントダウン
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真梨 幸子
宝島社
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余命、半年――。海老名亜希子は「お掃除コンシェルジュ」として活躍する人気エッセイスト、五十歳・独身。
歩道橋から落ちて救急車で運ばれ、その時の検査がきっかけで癌が見つかった。余命は半年。
潔く〝死〟を受け入れた亜希子は、“有終の美"を飾るべく、梅屋百貨店の外商・薬王寺涼子とともに〝終活〟に勤しむ。
元夫から譲られた三鷹のマンションの処分。元夫と結婚した妹との決着。そして、過去から突きつけられる数々の課題。
亜希子は“無事に臨終"を迎えることができるのか!?
人気ファッション誌「大人のおしゃれ手帖」大好評連載作品、待望の単行本化。
装画は大人気イラストレーター・マツオヒロミさんによる描き下ろし!


歩道橋から転落して怪我をしたことがきっかけで甲状腺に癌が見つかり、余命半年を告げられた海老名亜希子が主人公。有名百貨店の外商・薬王寺涼子の手を借りて、最期の日までのカウントダウンを始めるのである。だが、身辺整理を始めると、来し方のあれこれに引きずり込まれて、記憶違いや記憶の改ざん、憤りや後悔などなど、さまざまな感情に翻弄され、自分の人生を改めて思い返すことになるのである。登場人物たちもすべて腹に一物抱えた癖のある人たちで、誰にも肩入れできないのが著者らしい。そして、ずっとなんとなく影が薄かった担当編集者の牛島君が終盤になって俄然その存在意義を見せつけてくれ、すべてが繋がるのが小気味よくもある。最期の日へのカウントダウンというと、暗いばかりな印象であるが、絶妙なコメディタッチもにじませて、興味深く読める。終活のこと、人間関係のこと、などなどさまざま考えさせられる一冊でもある。

いちばん悲しい*まさきとしか

  • 2017/02/16(木) 16:55:43

いちばん悲しい
いちばん悲しい
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まさきとしか
光文社
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ある殺人事件が抉り出す、常人の想像の及ばない、劇毒。

ある大雨の夜、冴えない中年男が殺された。不倫相手の妄想女、残された妻子、キャンプでの不幸な出来事――事件の周縁をなぞるような捜査は、決して暴いてはならない秘密をつきとめる――女たちの心の奥底にうずまく毒感情が、人の命を奪うまでを描いたイヤミスの誕生! !


登場人物がみんな自己中心的で、誰にも感情移入できない。誰もが、自分こそがいちばん悲しい被害者だと、まるで悲しさ比べでもしているような物語である。存在感のない中年男・戸沼暁男が何者かに殺された。一体犯人は誰なのか。警察が探る中、次々に関係者と思われる人々の内情が明らかにされ、やり切れなさがどんどん増していく。そして真犯人がわかってみれば、これもまたなんとも哀しい事情を抱えているのだった。いちばん悲しいのは、こんなに悲しい人たちをたくさん見せられた読者かもしれないと思わされる一冊である。

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実*真梨幸子

  • 2017/02/11(土) 18:32:51

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
真梨幸子
徳間書店 (2012-11-02)
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一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。
男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。
茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン !


ひとつ前の読書のほのぼのした気分が一遍に吹き飛ぶような殺伐とした始まりで、一瞬本を閉じようかと思ったほどである。フジコの事件の再現も含まれてはいるが、一体何人殺されるのだろう。フジコと彼女を形成した環境、そして、彼女が生み出してしまった悪意の数々が、あとからあとから押し寄せてきていたたまれなくなる。下田茂子にインタビューはできるのだろうか、これからどんな厭な展開が待ち受けているのか、半分怯えながら読み進んだが、最後の最後でやっとこの件を仕組んだ張本人が姿を現す。この厭な連鎖はまだ続くのだろうか。ほんとうに厭な読後感の一冊である。

殺人鬼フジコの衝動*真梨幸子

  • 2017/01/14(土) 16:30:49

殺人鬼フジコの衝動
殺人鬼フジコの衝動
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真梨 幸子
徳間書店
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一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する!


「殺人鬼」とタイトルにある時点で、人が死ぬことはわかってはいるが、それでもあまりにもたくさんの人が、あまりにも簡単に殺され過ぎて、震えがくる。しかもその動機がすべてなんとも利己的な理由なのだから、胸がふさがれる思いである。だが、殺人鬼に成り果ててしまったフジコは、どこで何を間違ったのだろうと考えると、因果とか業とか、自分では如何ともしがたい何者かに突き動かされているようにも見えて、哀しみすら感じられるのである。さらに本書自体が著者の見事な企みであり、最後の最後にそのことに一層驚かされる。頭の中がぐるんぐるん回るような心地の一冊である。

私が失敗した理由は*真梨幸子

  • 2017/01/09(月) 16:53:13

私が失敗した理由は
私が失敗した理由は
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真梨 幸子
講談社
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落合美緒は、順風満帆な人生から一転、鬱々とした生活を送っていた。ある日、パート先の同僚のイチハラが、大量殺人事件を起こしたと聞く。彼女とコンビニで会った夜に事件を起こしたらしい。イチハラが言っていた言葉「…成功したかったら、失敗するなってこと。…」を思い出し、かつてないほどの興奮を感じた美緒はあることを思いつき、昔の恋人で編集者である土谷謙也に連絡を取るが―。失敗の種類は人それぞれ、結婚、家族、会社―様々な人間の失敗談から導き出される真理。美緒は一体何を思いついたのか、そして事件の真相は?


冒頭部分だけ読むと、エッセイのような印象だが、すでにそこから物語は始まっているのだった。田喜沢市にあるセイダイスーパー田喜沢南店から物語は始まるのだが、スーパーのパート主婦たちの確執の物語かと思いきや、あとからあとから殺人事件や自殺や失踪といった恐ろしい事件が起こる。真犯人探しを軸にしながら、登場人物たちが裡に秘めた屈託を暴き出し、人間の欲や悪意が波紋のように広がる様があちこちで描かれていて、いや~な気分にさせられる。語り手がコロコロ変わり、「あれ?いま語っているわたしは一体誰?」ということが再々あるが、それも著者の企みのひとつなのだろう。どんどんずんずん深みに引きこまれていく心地である。ある種怖いもの見たさといったところだろうか。相変わらずに読後感も散々だが、目が離せない一冊であることは間違いない。

更年期少女*真梨幸子

  • 2017/01/02(月) 06:24:38

更年期少女
更年期少女
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真梨 幸子
幻冬舎
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池袋のフレンチレストランに集まったのは、往年の人気少女漫画「青い瞳のジャンヌ」をこよなく愛する「青い六人会」。無様に飾り立てた中年女性たちが、互いを怪しい名前で呼び合い少女漫画話と噂話をするだけの定例会だったはずが…。いつのまにやらメンバーの度重なる失踪、事故死、腐乱死体発見!ヒロインになりたい女たちの、暴走ミステリ。


タイトルと装丁でなんとなく内容は想像がつくが、そう思って読み進んだのは初めの方だけで、物語はその後どんどん泥沼にはまり込んでいく。往年の人気漫画「青い瞳のジャンヌ」のコアなファンクラブの会員たち、ことに「青い六人会」と呼ばれる幹部たちは、自分たちの世界に入り込み、場の空気を読まずに会合を開く姿は、傍目からは滑稽以外の何物でもないのだが、本人たちはいたって真剣なのがなおさら痛々しい。そんな彼女たち、それぞれが日常生活では、自らにも家族にも様々な問題を抱えており、もがき苦しんでいるのである。そのギャップがホラーのようでもあり、さらに痛々しく、目を逸らしたくなる。いつものミスリードもあり、やはりまんまと騙されてしまう。そう思って読めば、腑に落ちることがたくさんあるのに。またまた厭な後味の一冊である。

四〇一二号室*真梨幸子

  • 2016/12/31(土) 16:25:56

四〇一二号室
四〇一二号室
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真梨 幸子
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タワーマンションの最上階、四〇一二号室に暮らす人気作家、三芳珠美は、人生の絶頂にいながら満たされずにいた。ある日、古本屋の老婆に「あなたに」と古い写真を見せられるが、そこには見知らぬ赤ん坊の姿が写っていて…。一方、根岸桜子は同時期にデビューした珠美の成功を安マンションで妬ましく思う日々。そして、1999年11月22日、大停電の日。珠美がマンションから転落。その日から女たちの運命が逆転した―のは悲劇の始まりに過ぎなかった。“人間は、あっという間に地獄の底に転落するのよ”四〇一二号室からはじまる“不幸”の連鎖。著者が仕掛けた夥しい数の罠。『殺人鬼フジコの衝動』の著者、最恐イヤミス。


心理的瑕疵物件である、所沢のタワーマンションの最上階・4012号室を鍵とした厭な厭な物語である。女たちの妬み合いも、それを裏で利用する男の狡さ汚さも「厭」の要素のひとつである。そして、頻々と移り変わる語り手や、夢と現実の境目が曖昧すぎる展開が、物語の筋をますます混沌の中へと引き込んでいくので、幾度となく自分が立っている地平が揺らぐような、めまいにも似た心地にさせられるのである。夢と現の間だけでなく、時の流れをも行きつ戻りつしながらたどり着いた真実は、切ないというかやり切れないというか、人間の浅ましさを見せつけられたようない厭な後味を残すものである。まんまと騙された一冊である。

6月31日の同窓会*真梨幸子

  • 2016/12/25(日) 16:58:56

6月31日の同窓会
6月31日の同窓会
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神奈川の伝統ある女子校・蘭聖学園の89期OGが連続して不審な死を遂げる。同校出身の弁護士・松川凛子は、同窓生の証言から真相を突き止めようとするが―学園の闇と女たちの愛憎に、ラスト1行まで目が離せない!女子校育ちの著者が、かさぶたを剥がしながらダーク過ぎる“女の園”を描く、ノンストップ・イヤミス!


神奈川県にある初等科から短大まである女子校・蘭聖学園の卒業生たちが主人公の物語である。6月31日に催される同窓会の案内を受け取った者が、相次いで亡くなっていく。伝統ある女子校の同窓生というつながりの強さと怖さはもちろんひしひしと伝わってくるし、そもそも学生時代の女子校に特有の雰囲気が濃密すぎて息苦しくなるほどである。一体誰が犯人なのか。想像を巡らせながら読み進むが、最後の最後まで正解にたどり着けはしなかった。伝統を守るということ、同窓生同士の強いきずな、それが執念深さにも見えてしまうような厭な後味も感じられる。面白かったが、犯人が判ってもまったくすっきりしない一冊ではある。