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きたきた捕物帖*宮部みゆき

  • 2021/05/03(月) 18:47:03


宮部みゆき、久々の新シリーズ始動! 謎解き×怪異×人情が味わえて、著者が「生涯、書き続けたい」という捕物帖であり、宮部ワールドの要となるシリーズだ。
舞台は江戸深川。いまだ下っ端で、岡っ引きの見習いでしかない北一(16歳)は、亡くなった千吉親分の本業だった文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)で生計を立てている。やがて自前の文庫をつくり、売ることができる日を夢見て……。
本書は、ちょっと気弱な主人公・北一が、やがて相棒となる喜多次と出逢い、親分のおかみさんや周りの人たちの協力を得て、事件や不思議な出来事を解き明かしつつ、成長していく物語。
北一が住んでいるのは、『桜ほうさら』の主人公・笙之介が住んでいた富勘長屋。さらに『<完本>初ものがたり』に登場する謎の稲荷寿司屋の正体も明らかになるなど、宮部ファンにとってはたまらない仕掛けが散りばめられているのだ。
今の社会に漂う閉塞感を吹き飛ばしてくれる、痛快で読み応えのある時代ミステリー。


新シリーズの始まりである。人望のある岡っ引き・千吉親分が、シリーズが始まったとたんにあの世の人になってしまい、どうなることかと思っていたら、幼いころに拾われて世話になっていた北一が、千吉親分のおかみさんである盲目の松葉の知恵を借り、その手足となって、尊敬する親分の後を継いでいく物語になりそうで、愉しみである。相棒になりそうな喜多次とも出会って、北一がどんどん頼もしくなっていきそうな予感である。これからますます愉しみなシリーズである。

熱望*水生大海

  • 2021/04/27(火) 16:27:52


清原春菜。31歳、独身、派遣OL。田舎暮らしを嫌い、実家を出て働いていた春菜は、男に金を騙し取られ、派遣先からも仕事を切られてしまいます。実家に援助を頼もうとするも、騙されたとは言い出せず、ついには毎日の食事にさえ困窮するように…。それでいて、彼女はどこか明るく、前向きなのです。―気がつけば、私たちは春菜の一挙手一投足から目が離せなくなっています。


ミステリというより、一人の女性の転落人生物語といった趣である。少しでも良くなるように、下を見ずに上を見て、と暮らしているうちに、実際にはどんどん堕ちていく。努力の方向がいささか間違っているせいで、他人に頼ることしかできない女に見えてしまうが、ほんの少し自分が変われば、とても魅力的な女性なのではないかと思う。結末まで救いがなくて、やりきれない思いでいっぱいの一冊である。

ノゾミくん、こっちにおいで*水生大海

  • 2021/04/05(月) 12:25:16


「ノゾミくん、こっちにおいで」海のそばで合わせ鏡を作り、そう唱えるとノゾミくんがやってきて願いを叶えてくれるのです――。そんな都市伝説が、若者たちの間で流れていた。 高校教師の遠山逸子は、教え子である古滝克己と恋愛関係にある。ある日、克己の妹の美咲とその友人の由夢がノゾミくんに願いを掛けにいく。だが、願いが叶ったかに思われていた由夢が、「のぞみくんにころされる」というメッセージを残し、屋上から落下。さらなる犠牲者も増えていき……。 ノゾミくんの正体は何なのか、連鎖する呪いは解けるのか――。 衝撃のラストが待ち受けるホラーミステリ―。


前半はミステリ風味が強かったのだが、次第に人もたくさん死に、ホラーテイストが増してきて、読むのをちょっぴり躊躇したりもした。都市伝説が生まれる現場に立ち会うことなど滅多にないと思うが、それがどうやって生まれ、巷に広まっていくのかということの一端を垣間見たような気分である。もともと悪意のあるものではなくても、人の口に乗るたびに少しずつ都合のいいように意訳され、大元の願いとは全くかけ離れたものになることもある。「友だちの友だちから聞いたんだけど」というたぐいの話を、無闇に広めることの恐ろしさが胸に迫ってくるようである。合わせ鏡が怖くなる一冊でもある。

ワンさぶ子の怠惰な冒険*宮下奈都

  • 2021/03/27(土) 07:46:52


北海道トムラウシの山村留学から福井に帰ってきた宮下家。当時、子供たちの妄想犬だった白い柴犬ワンさぶ子が家族の一員に。三人の子供たちは、大学生高校生中学生となり、思春期真っ只中。それぞれが自分の道を歩き始めていく。しなやかに自由を楽しむ、宮下家五人と一匹の三年間の記録。


「いいなぁ、宮下家」と随所で思わされる、ほのぼのと心温まるエッセイである。個人的に作家さんのエッセイはちょっと苦手なのだが、川上弘美さんと宮下奈都さんは別である。エッセイを読むとさらに小説作品が好きになる。ちょっとしたエピソードが素敵すぎて、折々に胸が熱くなり、目の前がぼやけるので、ちょっと困るほどである。読み終えるのがもったいなく、今後も折に触れ手続きをお願いしたいと切に願う一冊である。

ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と空白の時~*三上延

  • 2021/02/17(水) 18:36:06


ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本―横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める―。


栞子と大輔の娘・扉子が祖母の智恵子に呼び出され、馴染みのカフェで頼まれて持ってきた本を読んでいるという設定。物語はほとんどその本の内容である、栞子と大輔が、消えた横溝正史作品を探し出すという依頼を解く物語、という入れ子構造の趣向である。サブタイトルに扉子が出ているのは、智恵子によって本好きの闇の世界に引きずり込まれそうな予感が色濃く漂っているからだろう。栞子と大輔の心配の種は尽きないのである。肝心の事件は、横溝の世界さながらに、親族の骨肉の争いやら、双子の入れ替わりやら、怪しげな気配に満ち満ちているのだが、九年越しで解いた謎の先に(というか大元に)いたのは智恵子だったという、歯噛みしたくなるような結末ではある。栞子・智恵子母子の確執極まれり、という感じである。今後は扉子も否応なく巻き込まれていくのだろう。次も愉しみなシリーズである。

宝の山*水生大海

  • 2020/07/21(火) 16:28:24


かつては温泉客で賑わっていた岐阜県宝幢村。十六年前の地震で温泉が涸れ、村は衰退する一方だ。この村で生まれ育った希子は、地震で家族を亡くし、伯父夫婦と暮らしている。年金で生活を支えながら伯父の介護に明け暮れる日々だが、村役場の課長・竜哉との結婚が決まり、伯母は誇らしそうに嫁入り道具を披露している。希子が暮らす家と空き家を挟んだ隣家に住むのは、七年前にIターンしてきた長谷川一家。家にはいつも頑丈に鍵が掛けられ、高校生の長男・耀は奇声を上げて自転車で走り回るなど、村人から不審がられていた。ある日、村おこしのために雇われたブロガー・茗が突如消えてしまう。希子は、村長の妻であり、農園や工場を手広く商う来宝ファームの社長・麗美に、茗の代役を強引に依頼されるが…


過疎の町で起こる土地の名士一族に関わる禍々しい物語、というイメージで読み始めたが、もう少し現代的なストーリーではあった。だが、あながち外れというわけでもなく、二大名家の諍いの果てにもたらされた凶事の様相もある。そして、介護という苦労をしてはいるが、外の世界を知らない、いわゆる箱入り娘だった希子の成長物語でもあり、唯一希望があるとしたら、そこかもしれない。耀一家がもっと大きなカギになるのかと思ったが、その辺りはいささか肩透かしを食わされた感もある。桜がきれいに咲き誇るほど、禍々しさが増すような気がする一冊でもある。

天国旅行*三浦しをん

  • 2020/07/01(水) 16:32:54


現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意―。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。


タイトルの軽快さとは裏腹に、「心中」が題材の物語である。ひと口に心中と言っても、そこに辿り着くまでの道筋は、千差万別。心中の数だけわけがあり、心中の数だけ憂いがあり、心中の数だけ葛藤がある。そんな一筋縄ではいかない心中に至る心の闇と、決意してからのあれこれが淡々と描かれている。ただどの物語も、人生に見放されました、ここで終わりにします。などという簡単なものではなく、心中その後があるのがミソなのかもしれない。生きていくとは何かを考えてみたくなる一冊である。

僕はいつも巻きこまれる*水生大海

  • 2020/03/08(日) 13:10:06


大手損保会社に入社した僕―椎名逸斗は立ち寄ったコンビニで暴走車の激突事故に遭遇!一人が死亡、一人が心不全の大惨事。救命処置を行なった僕は、命を救った英雄…のはずが、死亡した被害者が強盗犯だという事実に事態は一変!なぜか共犯者だと疑われネットは炎上、会社は冷遇。窮地の僕は、6年ぶりに再会した元カノの清夏と、無実を証明するため事件の謎に迫る!


偶然が偶然を呼び、さまざまな不運が重なり、椎名はとんでもない事態に巻き込まれることになる。だがそれはほんとうに偶然なのだろうか、あるいは単なる不運なのだろうか。次々に椎名の周りに現れるアクの強すぎる人物たちにも翻弄され、会社の信用問題まで取りざたされるようになり、一体椎名は巻きこまれた厄介事から抜け出すことができるのだろうか、というハラハラドキドキの物語である。何を言っても信じてもらえない焦燥感と、誰を信じていいのか判らなくなる猜疑心にも駆られ、果てには命まで狙われる事態になるとは、物語の冒頭では想像もできなかった。翼が回復しなかったらどうなったのだろうという疑問もなくはないが、まあ納得できる結果にはなったのではないだろうか。椎名の日常をもっと見たいと思わされる一冊ではある。

ランチ探偵 容疑者のレシピ*水生大海

  • 2020/02/19(水) 16:26:55


社宅の闖入者、密室の盗難……オフィス街の事件の犯人は?
大仏ホームのOL・麗子は「トラブルが起こっている」の一言で、ランチの外食を渋る同僚・ゆいかを誘い出すことに成功。
訪れた洋食店には、呪われた社宅に住んでいると悩む男性が……。(「その部屋ではなにも起こらない」)。
閉ざされた美容室での盗難、命を狙われるペットなど、合コ社宅の闖入者、密室の盗難……オフィス街の事件の犯人は?
大仏ホームのOL・麗子は「トラブルがン相手が持ち込む謎にOLコンビが挑む全5話。好評シリーズ第2弾。


ドラマとリンクしている部分があることもあり、ストーリーがわかっているものもあるが、ゆいかと麗子のキャラクタ設定など、ドラマに流されずに楽しめる部分もあって、さらに興味深かった。ゆいかがその場にいないという新展開もあり、それが嬉しいラストにもつながっていくので、ほっとした。次もあってほしいシリーズである。

カエルの小指*道尾秀介

  • 2019/12/31(火) 20:09:38


詐欺師から足を洗い、口の上手さを武器に実演販売士として真っ当に生きる道を選んだ武沢竹夫。しかし謎めいた中学生・キョウが「とんでもない依頼」とともに現れたことで彼の生活は一変する。シビアな現実に生きるキョウを目の当たりにした武沢は、ふたたびペテンの世界に戻ることを決意。そしてかつての仲間―まひろ、やひろ、貫太郎らと再集結し、キョウを救うために「超人気テレビ番組」を巻き込んだド派手な大仕掛けを計画するが…。


『カラスの親指』のタケと仲間たちが再集結して、またひと仕事やらかしてくれる。今回も、タケ(武沢竹夫)が助けた人物が物語が始まるきっかけになる。ある日、助けた女性の娘だという少女・キョウが武沢のもとに現れ、責任を取ってくれと迫る。事情を聴いた武沢は、昔の仲間を集めて仕掛けることにするのである。途中、何度も騙されてはまたひっくり返され、誰が誰をだましているのか、誰が味方でだれが敵なのか、どこまでが本当でどこからが嘘なのか、わけが分からなくなってくるが、騙されるたびに喜んでしまうのはなぜだろう。だが、騙しだまされているときにも、隙間に覗く本心に熱いものが感じられるので、ついつい応援したくなってしまうのである。騙されても騙されてもまだその先があるのが、喜びが尽きないようで期待してしまう。物語としては、いちばん納得できるところに落ち着いたのではないだろうか。嘘をつかずに生きていけるのが、誰にとってもいちばんだろう。文句なく愉しめる一冊だった。

きみの正義は 社労士のヒナコ*水生大海

  • 2019/12/19(木) 11:51:20


私はいったい、誰の味方なの?
社労士を主人公にした、究極のお仕事小説!

派遣社員から一念発起し、社労士の資格をとった朝倉雛子(まもなく28歳)。
小さな社労士事務所の一員となるが、舞い込んでくる案件は難しいものばかり。

・雇用の新ルールで有期雇用から無期雇用へ! それでも辞めさせたい経営者。
・年齢を偽って働いていた未成年の従業員が、就業中に怪我をしてしまった!
・人件費を減らすため、残業代を申請しないチェーン書店の店長。そんなのアリ?
・出張中に上司からセクハラを受けたという社員。しかし証言は食い違い……
・介護問題で時短を望むも、経営者からはアルバイトに戻ることを勧められた!

読んでいるうちにいつにまにか労働問題にも詳しくなれる!
ミステリー風味が効いたお仕事小説の傑作です。


ひよっこ社労士の朝倉雛子は、事務所では相変わらずヒヨコちゃんと呼ばれているが、仕事内容は日々難度が増している。今回も、一筋縄ではいかない案件ばかりである。無自覚な経営者や、我が道を行く経営者、労働者側にも問題が多々あり――と、八方塞がりに見える案件が目白押しだが、ひとつずつ根気よく整理整頓していけば、なんとかなるものである。ただ、そこまで行くまでに、経営者側に立つだけではなく、働く現場の人たちの現状に寄り添い、各人の背景にまで思いを致すヒナコの仕事は、一見無駄が多そうでもあるが、出来得る限り最善の解決策に着地させてしまうところが見事でもある。もう立派にひとり立ちと言っていい。次作にも大いに期待したいシリーズである。

落日*湊かなえ

  • 2019/11/23(土) 12:47:45

落日
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湊 かなえ
角川春樹事務所 (2019-09-02)
売り上げランキング: 6,290

新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語。


笹塚町一家殺人事件を題材にした映画を企画している映画監督・長谷部香と、脚本を打診された甲斐千尋が主人公である。
笹塚町に縁のある二人、それぞれの視点で、事件にスポットが当てられ、それぞれの家庭の事情とも絡めて、当時の仔細が少しずつ明らかにされていく。割と早い段階からおそらく多くの読者が真相に近いところまで予想できるとは思うが、それをさらに超えるラストだったのではないだろうか。中盤、進みがゆっくりで、急かしたい気分にならなくもなかったが、そのもどかしさも含めて物語の雰囲気を盛り上げていたように思われる。近くにいても気づかないこと、近くだからこそ知ることができないこともあるのだと、思い知らされる気がする一冊でもあった。

さよならの儀式*宮部みゆき

  • 2019/11/15(金) 19:07:56

さよならの儀式
さよならの儀式
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宮部みゆき
河出書房新社
売り上げランキング: 3,963

「母の法律」
虐待を受ける子供とその親を救済する奇蹟の法律「マザー法」。でも、救いきれないものはある。
「戦闘員」
孤独な老人の日常に迫る侵略者の影。覚醒の時が来た。
「わたしとワタシ」
45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。「やっぱり、タイムスリップしちゃってる! 」
「さよならの儀式」
長年一緒に暮らしてきたロボットと若い娘の、最後の挨拶。
「星に願いを」
妹が体調を崩したのも、駅の無差別殺傷事件も、みんな「おともだち」のせい?
「聖痕」
調査事務所を訪れた依頼人の話によれば----ネット上で元〈少年A〉は、人間を超えた存在になっていた。
「海神の裔」
明治日本の小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきた。
「保安官の明日」
パトロール中、保安官の無線が鳴った。「誘拐事件発生です」なぜいつも道を間違ってしまうのか……


いつものようにボリュームのある一冊ではあるが、短編集なので、気軽に読み始められるのは確かである。物語のテイストは、完全にとは言わないが、かなりSFに傾いている。しかも、後半になるほどその度合いが増していくので、SFがあまり得意でないわたしは、個人的には前半の方が面白く読めた。ただ、設定が現実世界と違ってはいるものの、考えさせられる要素が盛り込まれているので、惹きこまれる部分もあるし、一歩間違えば身近にあってもおかしくない話でもあり、複雑な思いにもさせられる。読みやすい一冊ではある。

ひよっこ社労士のヒナコ*水生大海

  • 2019/10/26(土) 12:32:57

ひよっこ社労士のヒナコ
水生 大海
文藝春秋
売り上げランキング: 117,510

パワハラ、産休育休、残業代、裁量労働制、労災、解雇、ブラックバイト…。新米社労士の朝倉雛子(26歳、恋人なし)が、6つの事件を解決。


ひよっこ社労士の朝倉雛子が、さまざまなクライアントのもとへ駆けつけ、各社の問題点を提起し、改善策をアドバイスしながら、人間関係を観察したり、しがらみに絡めとられそうになったりしながらも奮闘し、成長していく物語である。ヒナコの葛藤を、読者も無理なく共有できるので、同じ目線で共感したり憤ったりする愉しみもある。今後の成長も愉しみな一冊である。

いけない*道尾秀介

  • 2019/10/21(月) 07:34:03

いけない
いけない
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道尾 秀介
文藝春秋
売り上げランキング: 2,206

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。
『向日葵の咲かない夏』の原点に回帰しつつ、驚愕度・完成度を大幅更新する衝撃のミステリー!

第1章「弓投げの崖を見てはいけない」
自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故が、殺人の連鎖を招く。
第2章その話を聞かせてはいけない」
友達のいない少年が目撃した殺人現場は本物か? 偽物か?
第3章「絵の謎に気づいてはいけない」
宗教団体の幹部女性が死体で発見された。先輩刑事は後輩を導き捜査を進めるが。

どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……!
ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。
さらに終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。感戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。


連作短編として読んでも、それぞれに想像を裏切られる展開が盛り込まれているが、長編として読むと、さらに驚きの結末が待っている。ラストを踏まえて思い返せば、あちこちに穴があることに気づくことができるが、初読では全く想像もしていなかった。だが、すんなりすべての仕掛けに気づけたかと言えば、いまだに気づけていないひっかけが潜んでいるのかもしれないという危惧も抱く。どこまで深読みすればいいのか悩ましくもある一冊である。