天使の柩*村山由佳

  • 2013/11/22(金) 07:04:41

天使の柩 (天使の卵)天使の柩 (天使の卵)
(2013/11/05)
村山 由佳

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「世の中がどんなにきみを責めても、きみの味方をするよ」14歳の少女・茉莉(まり)が出会った20歳年上の画家――その人の名は、歩太(あゆた)。望まれない子どもとして育ち、家にも学校にも居場所がないまま、自分を愛せずにいる少女・茉莉。かつて最愛の人・春妃(はるひ)を亡くし、心に癒えない傷を抱え続けてきた歩太。公園で襲われていた猫を助けようとして偶然出会った二人は、少しずつ距離を近づけていく。歩太、そして彼の友人の夏姫(なつき)や慎一との出会いに、初めて心安らぐ居場所を手にした茉莉だったが、二人の幸福な時間はある事件によって大きく歪められ――。『天使の卵』から20年、『天使の梯子(はしご)』から10年。いま贈る、終わりにして始まりの物語。


前々作、前作からそんなに時間が経っていたのだと、改めて感慨深く思う。時の隔たりをまったく感じさせない本作である。どれほど時が経とうと、厭されず哀しみを抱えたままの歩太と、生まれてきたという理由で自分のことを愛せない少女・茉莉が、ふとした偶然で出会ってほんとうによかったと思える物語である。世界中にたった一人でも、無条件に自分を全肯定してくれる人がいたなら、人は笑って生きていけるのではないかと思わせてくれる一冊である。

1Q84 BOOK3<10月-12月>*村上春樹

  • 2011/02/11(金) 11:28:20

1Q84 BOOK 31Q84 BOOK 3
(2010/04/16)
村上 春樹

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そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。


青豆と天吾の章に牛河の章が加わって物語りは進む。前仁作よりは、どこかにあるはずの着地点を目指して進んでいるように見える。ミステリのなぞが解き明かされるときに向かうような高揚感もある。だがいつしかそれさえも錯覚だったのかと思わされるようにもなるのだった。さきがけとはなんだったのか、老婦人の思惑とはなんだったのか、そんなあれこれがことごとく霧消してしまうような結末であると感じたのはわたしだけだろうか。言ってみればこれはただの、長い長い再会までの物語である。わたしにとっては、コースターに乗り込みじりじりと上昇したが頂上の先にはレールがなかったような心地の一冊である。

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1Q84 BOOK2<7月-9月>*村上春樹

  • 2010/09/19(日) 16:36:56

1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
村上 春樹

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Book 2
「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。


引き続き、青豆の章と天吾の章が交互に現れそれぞれに進んでいく。BOOK1のラストでは、青豆の物語はもしかすると天吾が書いている長い物語なのではないか、とチラッと思いもしたが、そうでもないようである。ふたりの物語は遥か遠くに離れているようでいて手を伸ばせば届きそうなところまで近づいたりもする。そして相変わらずに普遍的なことが語られているようでもあり、いたって具体的なことが語られているようにも見える。着地点があるのかどうか、いささか心許なくなってきてもいる。

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1Q84 BOOK1<4月-6月>*村上春樹

  • 2010/09/18(土) 11:11:09

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

Book 1
心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。心から外に出ないものごとは、そこに別の世界を作り上げていく。


図書館に予約して一年以上待ってやっとである。ただ正直、個人的に著者の作品とはあまり相性がよい方ではないので期待はまったくしていなかった。
スレンダーな女性・青豆の章と、がっちりした男性・天吾の章が交互に現れる構成になっている。まずは青豆。冒頭からすでに世界は捻れ歪んでいる。読者には理由は判りようもないがなにか時空の隙間のようなところに入り込んでしまった感覚に陥る。そこからはもう、現実か虚構かはどうでもいい。BOOK1はどこかにたどり着くまでの長い長い導入部のようにも思われ、早くその場所にたどり着きたい心地にさせられるが、もしかすると着地点などはどこにもないのかもしれないとも思わされる。また、具体的なあるものを暗示しているようでもあり、まったくの夢物語のようでもある。Amazonのレビューでは散々な言われようだが、少なくともわたしにとっては、プラスの期待はずれではあった。

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はじめての文学:村上春樹*村上春樹

  • 2007/04/19(木) 17:16:04

☆☆☆・・

はじめての文学 村上春樹 はじめての文学 村上春樹
村上 春樹 (2006/12/06)
文藝春秋

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小説の面白さ、楽しさを味わうために、著者自身が用意したスペシャル・アンソロジー。はじめてのひとも、春樹ファンも欠かせない一冊。「シドニーのグリーン・ストリート」「かえるくん、東京を救う」など全17編を収録。


村上春樹に初めて接する若い人たちに向けて著者自身の手によって選ばれた短編・掌編の数々である。
「かえるくんのいる場所」と題されたいわゆるあとがきには、それぞれの作品が生まれた背景のようなものにも触れられていて興味深い。
わたしがいちばん好きだったのは「沈黙」という人間関係の不条理、いじめ、処世術といったキーワードで語られる物語だった。著者の言葉によると、ご自身の作品の中ではいささか特殊だという。ご自身の体験を下敷きにして生まれた物語なのだとか。沈黙の意味が重い。
バラエティに富んだ作品たちなので、まさに「はじめての村上春樹」にはうってつけではないだろうか。

おいしいコーヒーのいれ方 ⅠⅡⅢ*村山由佳

  • 2006/09/26(火) 11:23:43

☆☆☆・・

キスまでの距離―おいしいコーヒーのいれ方〈1〉 キスまでの距離―おいしいコーヒーのいれ方〈1〉
村山 由佳 (1999/06)
集英社

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僕らの夏―おいしいコーヒーのいれ方〈2〉 僕らの夏―おいしいコーヒーのいれ方〈2〉
村山 由佳 (2000/06)
集英社

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彼女の朝―おいしいコーヒーのいれ方〈3〉 彼女の朝―おいしいコーヒーのいれ方〈3〉
村山 由佳 (2001/06)
集英社

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高校3年生になる春、父の転勤のため、いとこ姉弟と同居するはめになった勝利。そんな彼を驚かせたのは、久しぶりに会う5歳年上のかれんの美しい変貌ぶりだった。しかも彼女は、彼の高校の新任美術教師。同じ屋根の下で暮らすうち、勝利はかれんの秘密を知り、その哀しい想いに気づいてしまう。守ってあげたい!いつしかひとりの女性としてかれんを意識しはじめる勝利。ピュアで真摯な恋の行方は。


上記は<Ⅰ>の内容紹介。今現在<Ⅹ>まで出版されている。
イラストは志田正重さん。
三巻目までしか読んでいないが、おそらく十巻目まで勝利とかれんのもどかしいような恋愛模様が描かれているのだろうと思う。ラブコミックスのような さらさらきらきらと光がこぼれるような若い恋愛物語なので、三巻目まで読んで、いささかお腹いっぱい感が__。なのでここまでにしておこう。
若い人はのめり込んで読めるかもしれない。

ヘヴンリーブルー*村山由佳

  • 2006/09/12(火) 17:38:04

☆☆☆・・

ヘヴンリー・ブルー ヘヴンリー・ブルー
村山 由佳 (2006/08/25)
集英社

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19歳の歩太と27歳の春妃のせつなく激しい恋を描いた『天使の卵』から12年。そして『天使の梯子』から2年。29歳の妹・夏姫が回想するエモーショナルな懺悔。哀しくて、エロティックな青春の詩。

『天使の卵』では、どんなに熱い想いを歩太に抱いても報われなかった夏姫の恋。思いがけず姉・春妃に向けた恨みの言葉。狂おしい熱情と悔恨と懺悔。夏姫のモノローグで綴るせつない4つの短編。


『天使の卵』『天使の梯子』の行間を振り返って描いたような物語。
前2作を読んでいないと詳しい事情がつかみきれないところもあるかもしれない。3作でひとつの物語として読んだほうがいいかもしれない。
そういう意味では少しばかり物足りない一冊だったとも言える。

きみのためにできること*村山由佳

  • 2006/06/23(金) 17:50:24

☆☆☆☆・

きみのためにできること きみのためにできること
村山 由佳 (1996/11)
集英社

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恋人がふたり、僕の心に棲み始めた。
深く眠った魂が呼び覚まされる・・・・・。
  ――帯より


帯の惹句だと 二股をかけている浮気男の話のように思えるが、そうではない。
浮気心がまったくなかったかといえば そうでもない。
主人公の俊太郎は、高校三年のとき 関東学生映画コンクールに音に凝った映画を出品し佳作に選ばれた。そしてそのときに評価してくれた音のプロ キジマ・タカフミに憧れて音声技師の仕事に就くために、恋人のピノコを故郷の勝浦に残して上京した。
女優の鏡耀子とは、仕事を一緒にする機会があって知り合い、度重なる偶然もあって惹かれるようになるが、ピノコへの想いも揺るぎないものなので俊太郎は悩むのだった。

耀子に恋したかもしれないと悩み、ピノコに何もしてやれないと悩む俊太郎の 若さと真っ直ぐさが清々しい。そして、俊太郎のためにならないことはするまいと健気に我慢するピノコの想いもいとおしい。
こんなふたりが幸せにならなくて一体誰が幸せになれるというのか!
これからもいろいろと波はあるかもしれないが、俊太郎とピノコならきっと乗り越えていくだろう。

楽園のしっぽ*村山由佳

  • 2006/04/08(土) 17:13:11

☆☆☆・・



季節の約束ごと、肩書きなど無縁の動物たち。
大自然に囲まれた農場暮らしは、人を謙虚に、自由にしてくれる!
楽園の土の上から寄せられる、優しくつよいメッセージ、全50篇。

土と風と太陽、そして愛する動物たち

しっぽのある仲間、ない仲間、
そしてそれをとりまくすべての命にとって、
ここが楽園でありますように――

房総の丘の上、馬と犬と猫、鶏、うさぎに囲まれた自給自足の生活。
「憧れの田舎暮らし」を実現させて十余年、
自然と向き合う日々は・・・・・じつは結構ツライ。
容赦ない気候、終わりなき農作業、作物の病害虫、人の都合などお構いなしの動物たち。でも生きものとして真っ当に日々を過ごせる、ここが私にとっての「楽園」なのだ――。
  ――帯より


「主人」という呼ばれ方を好まないため「相方」と呼ばれているしっぽのない仲間や種類も大きさもさまざまなしっぽのある仲間たちとの関係、そして 抗うことのできない なにか大きなもの としての自然との関係が、辛いこと愉しいこといろいろ含めてしあわせで仕方がないという感じで描かれていて、読み手までも満ち足りた心地にしてくれる。
著者自身の手に成る 巻頭の「楽園アルバム」に登場する動物たちの写真からさえもその信頼関係が滲み出しているようだ。

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東京奇譚集*村上春樹

  • 2005/12/18(日) 17:39:41

☆☆☆・・



5つのちょっと不思議な短編集。
解釈を読者に委ねている――意識的なものなのかどうかはよくわからないが――ので、読み手の数だけ解釈があり いろいろな印象が持たれるのだろうと思われる。偶然というには少しできすぎていて しかし不思議というにはささやかすぎる物語たちである。どの物語もきっちり解決されていないので、想像が広がるといえばそうなのだが、消化不良のようなあと味でもある。

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ふしぎな図書館*村上春樹

  • 2005/08/12(金) 21:00:13

☆☆☆・・



佐々木マキさんの絵とのコラボ作品。共著の作品のカテゴリに入れるべきだったかも。
文庫本ほどのサイズなのにハードカバーで澄ました子供みたいな姿。

ぼくは、オスマントルコの税金の集め方に ふと疑問をもってしまったばっかりに、何の変哲もない市立図書館のふしぎな地下の世界に引き入れられてしまう。
大きな鉄の球を足につけられ、地下牢に閉じ込められて一ヶ月の間にオスマントルコの税金に関する三冊の本を暗記しなければならない。
地下牢の見張り役は本物そっくりの羊の皮をかぶった羊男。
美味しい三度の食事とおやつや夜食まで出してくれる。
羊男が自ら粉を練って作ってくれるドーナツは揚げたてでかりっとしていてなんとも美味しそうなのだ。
作品中でぼくも言っているが、一体どこまでが本当にあったことなのだろう。
そして、何を暗示しているのか あるいは何も暗示などしていないのかよく判らないが、とにかくふしぎだらけの一冊だった。

象の消滅*村上春樹

  • 2005/06/22(水) 17:29:49

☆☆☆・・


短篇選集 1980~1991

 ニューヨークが選んだ村上春樹の初期短篇17篇。
 英語版と同じ作品構成で贈る
 Collected short stories of Haruki Murakami

 これら17の短篇は、わたしが当初期待していた通りのものとなった。
 作家として多くの引き出しを持つ、驚異的なハルキの才能は、
 国境を越えても揺るぎない。
               ゲイリー・L・フィスケットジョン
               (クノップフ社副社長/編集次長)

                         (カバーより)


原書のような体裁に透明のカバーが掛けられ、そこに日本語版のタイトルその他が載っている。ニューヨークの書店に並んだものを手に取ったような気分に少しだけさせられる。
英訳されたものばかり、という思いがあるせいなのか、どの短篇も翻訳調の語り口がちょっぴり鼻についた。わたしが翻訳物が苦手なせいもあるかもしれないが。

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夜明けまで1マイル*村山由佳

  • 2005/03/13(日) 13:57:29

☆☆☆・・


 教授と学生。
 これはフリンなんかじゃない、恋だ。
 僕らの青春は、ちぎれそうだが、真っ直ぐ走るしかない・・・・・。

 運命の恋なんて、ない。
 ただ恋か、恋じゃないか、そのどっちかなんだよ。

                         (帯より)


涯とうさぎの物語だという風に読みたい。
不倫というものに理屈ではない生理的な嫌悪を覚えるので、マリコさんと涯との関係に感動はない。

お互いがお互いを必要とする時に必要とするだけ心を寄り添わせていてくれる。
涯とうさぎなら、そんな二人に きっとなれると思う。

海辺のカフカ 上下*村上春樹

  • 2005/03/10(木) 13:53:50

☆☆☆☆・



  [データ1]
  15歳
 彼は長身で、寡黙だった。金属を混ぜ込んだような強い筋肉を持ち、
 世界でいちばんタフな15歳の少年になりたいと思っていた。

  [データ2]
  中野区
 東京都中野区にもしある日、空から突然2000匹の生きた魚が
 路上に落ちてきたら、人々は驚かないわけにはいかないだろう。

  [データ3]
  ネコ
 多くのネコたちは名前を持たない。多くのネコたちは言葉を持たない。
 しかしそこには言葉を持たず、名前を持たない悪夢がある。

  [データ4]
  図書館
 古い図書館の書架には秘密が満ちている。
 夜の風がはなみずきの枝を揺らせるとき、
 いくつかの想いは静かにかたちをとり始める。

  [データ5]
  四国
 県を越えて陸路で四国を移動するとき、
 人々は深い森と山を越えることになる。
 いちど道を見失うと、戻るのは困難だ。

 十五歳になった僕は二度と戻らない旅に出た。

                         (帯より)


時間のループと空間のループが複雑に絡み合い交じり合っている。
15歳の少年カフカはどこか遠いところへ行こうとしながら、そのループの内側にいる。
行くべき場所、会うべき人、するべきことが初めから決まっているように。
彼は結局求めていたものを失うと同時に、それを手に入れたのだろう。

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天使の梯子*村山由佳

  • 2005/01/20(木) 09:07:03

☆☆☆☆・



『天使の卵』のいわば続編。

あれから10年たった歩太と夏姫と・・・そして、慎一。
10年の間縛られ縛っていたものから解き放たれることができたのは 想う力のおかげだった。
歩太が春妃を想い、夏姫が歩太を想い、慎一が夏姫を想い、夏姫が慎一を想う力。
そしてお互いがお互いを認め必要とする気持ちの持つ力が 10年の間止めていた時を動かすのに役立ったのだ。きっと。
からだの奥深くで凍りついた涙が そのあたたかな力で一気に溶かされ溢れ出したのだ。
この始まりは 明日へとつづく始まりになるのだ。

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