静かな炎天*若竹七海

  • 2016/11/03(木) 20:14:04

静かな炎天 (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋 (2016-08-04)
売り上げランキング: 19,608

ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。


表題作のほか、「青い影」 「熱海ブライトン・ロック」 「副島さんは言っている」 「血の凶作」 「聖夜+1」 富山店長のミステリ紹介ふたたび

葉村晶シリーズ最新作である。二十代で出会った葉村晶だが、何と今回は四十肩を患う四十代である。仙川に住み、吉祥寺のミステリ専門書店に勤める傍ら、正式に探偵もやっている。そして相変わらず不運である。タイミングが良いのか悪いのかよくわからないが、厄介ごとに出くわす機会も多い。だがそれが事件解決につながることも多々あるので、探偵的にはグッドタイミングなのかもしれない。それで疲れ切ってしまうのも事実なのであるが。今回も、ふらふらになりながらお使いに、事件の調査にと歩き回り、躰を張って謎を解き明かしている。四十代になったと思うと、少しのんびりさせてあげたいような気もするが、これこそが葉村晶なのだろうなぁ。おばあちゃんになるまで探偵家業を続ける葉村晶を見ていたいシリーズである。

さよならの手口*若竹七海

  • 2015/01/09(金) 21:12:38

さよならの手口 (文春文庫)さよならの手口 (文春文庫)
(2014/11/07)
若竹 七海

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探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していた―。有能だが不運な女探偵・葉村晶が文庫書下ろしで帰ってきた!


久々に会えた葉村晶は、十年ほど歳を取ってはいるが、相変わらずついていない感につきまとわれていて、思わずニンマリしてしまう。とは言え、今回の身体的ダメージはかなりのものである。にもかかわらず、最後まで読むと、なんだか明るい未来が約束されているような気分になってしまうのは不思議である。癌で明日をも知れない往年の名女優の依頼による娘探しが、、過去の未解決事件を掘り起し、政治家のスキャンダルを暴き、大御所俳優の狂気の沙汰をあぶり出し、かつて娘探しをしていて行方知れずになっている同業者の行方を突き止め……、と芋蔓式に事件を手繰り寄せている感もあり、危ない目に遭いながらもすべてに決着をつけているあたり、そうは見えないがやはり有能なのだろう。しかも、今回の物語の主な舞台が、思い切り私の生活圏であり、しかもかなり正確なので、ついうっかりその辺で葉村晶とすれ違ったかもしれないなどという気になったりもして、二度おいしい一冊であった。ぜひまたすぐに会いたいものである。

御子柴君の甘味と捜査*若竹七海

  • 2014/07/10(木) 21:45:45

御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)
(2014/06/21)
若竹 七海

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長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事。甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、日々起こる事件は、ビターなものばかり。上田市の山中で不審死体が発見されると身元を探り(「哀愁のくるみ餅事件」)、軽井沢の教会で逃亡犯を待ち受ける(「不審なプリン事件」)。『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役の、文庫オリジナル短篇集。


「哀愁のくるみ餅事件」 「根こそぎの酒饅頭事件」 「不審なプリン事件」 「忘れじの信州味噌ピッツァ事件」 「謀略のあめせんべい事件」

タイトルには信州名物のスイーツが並ぶが、事件自体はそれらとは無関係で、どれも深刻なものであるのだが、御子柴君の人の好さと随所に出てくるおいしそうなものたちのせいで、つい気を抜いてしまいそうになる。しかも、主人公は御子柴君だが、真の探偵役は、長野にいる上司の小林警部補ではないか。御子柴君の役目はお土産を買ったりチケットを取ったりすることか、と思ってしまうが、たくさんの甘いものとお人好しのキャラで、それも良しとしたくなる。どうしてこういう仕儀になったかは、著者あとがきで明らかにされている。やっぱり御子柴君はそういう役回りだったのね、と思わされる一冊である。

暗い越流*若竹七海

  • 2014/05/16(金) 17:02:25

暗い越流暗い越流
(2014/03/19)
若竹 七海

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5年前、通りかかった犬に吠えられ飼い主と口論になった末に逆上し車で暴走、死者5名、重軽傷者23名という事件を引き起こした最低の死刑囚・磯崎保にファンレターが届いた。その差出人・山本優子の素性を調べるよう依頼された「私」は、彼女が5年前の嵐の晩に失踪し、行方が知れないことをつきとめる。優子の家を訪ねた「私」は、山本家と磯崎家が目と鼻の先であることに気づいた。折しも超大型台風の上陸が迫っていた…(「暗い越流」)。第66回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞作「暗い越流」を収録。短編ミステリーの醍醐味と、著者らしいビターな読み味を堪能できる傑作集!!


表題作のほか、「蠅男」 「幸せの家」 「狂酔」 「道楽者の金庫」

どの物語も、初めから屈折していて一筋縄ではいかない。どれも気を抜けない面白さである。だが、事件も解決、スッキリした、と安心しそうになる最後の最後に、黒い企みがちらっと顔をのぞかせるのである。その後の展開が――あるとすれば――恐ろしい。それとは別に、お馴染みの葉崎市や葉村晶が登場するものもあって、思わず懐かしい知人と再会したような心持ちにもなる。最後の最後まで気を抜いてはいけない一冊である。

おとぎ菓子*和田はつ子

  • 2013/03/05(火) 07:36:14

おとぎ菓子―料理人季蔵捕物控 (時代小説文庫)おとぎ菓子―料理人季蔵捕物控 (時代小説文庫)
(2010/06)
和田 はつ子

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日本橋は木原店にある一膳飯屋・塩梅屋。主の季蔵が、先代が書き遺した春の献立「春卵」を試行錯誤しているさ中、香の店酔香堂から、梅見の出張料理の依頼が来た。常連客の噂によると、粋香堂では、若旦那の放蕩に、ほとほと手を焼いているという…(「春卵」より)。四篇を収録。季蔵が市井の人々のささやかな幸せを守るため、活躍する大人気シリーズ、待望の第七弾。


表題作のほか、「春卵」 「鰯の子」 「あけぼの薬膳」

初読みなのだが、シリーズ七作目のようである。長寿シリーズなのだなぁ。だが、一話完結なので、細かい事情はわからないながら、想像力で補えないほどではないので、途中からでも充分愉しめる。江戸と食べものとミステリは相性がいいのだろうか。同じような組み合わせの作品はかなりいろいろあるように思う。そしてたいていどれも面白い。江戸の暮らしの季節感を愉しむ風情と、工夫しながら創り出し作り上げる料理と、謎を解き明かして悪を懲らしめる爽快感が、それぞれを高め合うのかもしれない。そこに人情や恋事情が絡めば、もう惹かれないわけがない。やさしくあたたかく、スリルのある一冊である。

ポリス猫DCの事件簿*若竹七海

  • 2011/06/01(水) 17:08:46

ポリス猫DCの事件簿ポリス猫DCの事件簿
(2011/01/20)
若竹 七海

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島に一人の駐在は、今日もてんてこまい。神奈川県の盲腸と呼ばれる葉崎半島の先、30人ほどの人間と100匹を超える猫が暮らす猫の楽園、通称、猫島。厄介ごとは次々起こるものの、対処するのは島にある派出所に勤務する七瀬晃巡査ただ一人。そして目つきの悪い巨大なドラ猫こそ、七瀬唯一の同僚、ポリス猫DC。DCの推理は今回も冴えるのか? コージーミステリの名手、若竹七海の葉崎シリーズ待望作!!


葉崎シリーズである。猫島である。猫島臨時派出所勤務のおまわりさん・七瀬晃と星章入りの首輪をつけたポリス猫DCのドタバタ大活躍である。今回も愉しい。しかしまあこの猫島、よくもこれだけ日々なにかしらトラブルが起きているものである。しかもたいていは外から持ち込まれた物や入ってきた人によってもたらされるものである。島に一人しかいないおまわりさんとしての七瀬の忙しさは並大抵ではない。お風呂には入れなかったり昼食を食べ逃したりすることは日常茶飯事なのである。そんななか、ポリス猫DCが要所要所で事件の鍵を嗅ぎ当て、ヒントを示唆してくれるのが見所である。なかなか鋭い猫なのである。そしてそのヒントを推理から謎解きにつなげる七瀬もまた目立たないながら敏腕なのである。実はすばらしいコンビなのだ。文句なく愉しめる一冊である。
ところでポリス猫DCの「DC」ってなんの略?どこかに出てきていただろうか。ドラキャット……かな?気になる。

みんなのふこう*若竹七海

  • 2010/12/31(金) 21:21:15

みんなのふこう (文芸)みんなのふこう (文芸)
(2010/11/11)
若竹七海

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田舎町のラジオ局・葉崎FMで、毎週土曜夜に放送される読者参加型番組「みんなの不幸」は、リスナーの赤裸々な不幸自慢が評判の人気コーナー。そこに届いた一通の投書。「聞いてください。わたしの友だち、こんなにも不幸なんです…」。海辺の町・葉崎を舞台に、疫病神がついていると噂されながら、いつでも前向きな17歳のココロちゃんと、彼女を見守る同い年の女子高生ペンペン草ちゃんがくりひろげる、楽しくて、ほろ苦い、泣き笑い必至な青春物語。


葉崎が舞台の一冊である。葉崎FMのコーナー「みんなの不幸」に寄せられた不幸自慢のなかに飛びぬけて不幸な投書があった。それがココロちゃんのペンペン草さんからのココロちゃんの不幸についての手紙なのだった。自分のオッチョコチョイさも一因だが、それだけではなく利用されたり巻き込まれたりと不幸を呼び込んでいるのかと思えるほどの不幸ぶりなのだった。それなのに当のココロちゃんはいたってのんきでしあわせそうにマイペースなので周りの方があたふたしてしまうのである。怪しげなカルト集団の身勝手な思惑に翻弄されながらも健気に生きるココロちゃんは疫病神なのかただの間の悪いオッチョコチョイ娘なのか…。それにしてもココロちゃんが巻き込まれるたびに、なにかしら悪事が発覚したり謎の事件が解決してしまったりするのは小気味よくさえある。いろんな意味で目が離せないココロちゃんである。葉崎FMのリスナーがこぞって気にかけるココロちゃん顛末記とでもいうような一冊である。

プラスマイナスゼロ*若竹七海

  • 2010/07/15(木) 20:28:40

プラスマイナスゼロプラスマイナスゼロ
(2008/12/03)
若竹 七海

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はじまりは、落ちてきた一匹の蛇だった―。なんか最近、アタシら死体に縁がねーか?凸凹女子高生トリオが、海辺の町・葉崎を駆け抜ける!ドタバタ×学園× 青春ミステリー。


  そして、彼女は言った~葉崎山高校の初夏~
  青ひげのクリームソーダ~葉崎山高校の夏休み~
  悪い予感はよくあたる~葉崎山高校の秋~
  クリスマスの幽霊~葉崎山高校の冬~
  たぶん、天使は負けない~葉崎山高校の春~
  なれそめは道の上~葉崎山高校、1年前の春~


葉崎町シリーズ。正真正銘のお嬢さまテンコ、番を張っているのが似合いそうなユーリ、そしてなにから何まで平均的なミサキの女子高生三人組のドタバタ騒動記である。それぞれの季節に謎の事件が起こり、三人組が解決することになる。最後の章の一年前の経緯を読むと、じんとして泣けてくる。この三人が出会えてよかったと思える。愉しくてじんとする一冊である。

左手に告げるなかれ*渡辺容子

  • 2010/01/16(土) 16:48:41

左手に告げるなかれ左手に告げるなかれ
(1996/09)
渡辺 容子

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スーパーの万引捕捉に賭ける女性保安士が巻き込まれた殺人事件!不倫相手の妻が殺され、容疑者リストに「私」の名が…。右腕の傷にかけられた疑惑は、みずからの手で払いのけなければならない。第42回江戸川乱歩賞受賞作。


  

  第一章  氷のバラ
  第二章  不審者
  第三章  生贄
  第四章  誘い水
  第五章  審判


警備会社の万引きジーメンである八木薔子は、かつての不倫相手の妻が殺害された事件で刑事の訪問を受けた。容疑を晴らすためには、自分で真犯人を見つけるほかないと思った薔子は、休憩時間に自分なりの捜査を始めたのだが、本来の仕事に集中できず、検挙率がガクッと落ちた。薔子のボスである坂東指令長は、そんな薔子を事件現場に近い店に配置転換させ、捜査に便宜を計ってくれるのだった。この坂東指令長が、仕事の上でも人間的にもカッコイイ女性なのである。このまま万引きジーメン物語を読み続けたいと思わせるほどである。本筋の事件は、別物と思われていた事件との思わぬ関連も明らかになり、大事になりそうな予感を孕んでくるが、最終章ではあっけなく様相を変える。
薔子の捜査にはできすぎ感が否めないし、どんでん返しというほどの醍醐味には欠けるように思うが、物事の見え方が、先入観によって変わるものだということはよくわかった。

エスケープ!*渡部健

  • 2009/08/16(日) 16:53:23

エスケープ!エスケープ!
(2009/07)
渡部 健

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シュウは会社の内定も決まり、かわいい彼女もいる大学四年生。春からは忙しく働き、数年後には彼女と結婚して子どもをもうける予定―。「でもなあ、そんな人生って…正直、楽しそうじゃないな」将来は約束されている。でも、その将来には何も刺激がない。ぜいたくな不満だと頭では理解している。けれど…。そんなある日、シュウは人生を変えるかも知れない雑誌記事を見つけてしまった。「プロが語る!空き巣手口のすべて!」その日からシュウの日常は一変。かつてない情熱で入念に計画を立て、人生で初の興奮を覚えながらの綿密な下見。すべては完璧で、安全だと思われた空き巣計画。が、しかし…忍び込んだ家の中にはなんと―。


アンジャッシュのコントそのままの一冊である。
見事なまでの勘違いと思い込みで、同じ場所にいながら、まったく別の物語を歩きつづける人物たちは、それぞれ真剣なのだが、仕掛けをすべて承知している読者は、くすくす笑いを禁じ得ない。
そして、ラストにダメ押しのようなひと捻りが配されていて、さらに愉しめた。
愉しい読書タイムだった。

夢を与える*綿矢りさ

  • 2007/09/17(月) 06:50:48


夢を与える夢を与える
(2007/02/08)
綿矢 りさ

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チャイルドモデルから芸能界へ。幼い頃からテレビの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…。成長する少女の心とからだに流れる18年の時間を描く待望の長篇小説。


この平坦さは著者の意図するところなのだろうか。小説というよりも、ドキュメンタリーを読んでいるような、ただ起こったことが淡々と並べられているような印象である。誰の心の中にも深く入り込まずに、上っ面だけをさらっと撫でて通り過ぎたようで、著者が何に(誰に)焦点を当てたかったのかがよく判らなかった。

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すっぴん素顔のこのまんま*渡辺一枝

  • 2007/06/05(火) 17:00:50

☆☆☆・・

すっぴん素顔のこのまんま―私の気持ちいい毎日 すっぴん素顔のこのまんま―私の気持ちいい毎日
渡辺 一枝 (1996/04)
ベストセラーズ

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彩りの食卓のこと、大好きな着物や歌舞伎鑑賞のこと、子どもや夫との大切な生活のこと、そしてこれからの夢等、さりげない日常をたおやかに綴る。年齢を重ねるのが楽しくなる魔法の本。


あとがきには「一九九六年 節分に」と書かれているから、十一年前の一冊である。著者五十歳。

ちょうどそのときの著者といまの自分が同じ年頃ということもあるかもしれないが、あちらこちらに見られる共通点を喜び、違いを興味深く思いながら読んだ。
ご自身を、間口が広くはないとおっしゃるが、日々を慈しみ大切に暮らしていらっしゃる様子が目に見えるようであこがれでもある。

火天風神*若竹七海

  • 2006/12/20(水) 17:24:33

☆☆☆・・

火天風神 火天風神
若竹 七海 (2006/08/10)
光文社

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最大瞬間風速70メートル超。観測史上最大級の大型台風が三浦半島を直撃した。電話も電気も不通、陸路も遮断され、孤立したリゾートマンション。猛る風と迸る雨は、十数人の滞在客たちを恐怖と絶望のどん底に突き落としてゆく。そして、空室からは死体が見つかって…。殺人なのか?そして犯人はこの中に!?謎とサスペンスに満ちた傑作パニック小説。


舞台は、三浦半島の先端・剣崎に建つ高級リゾートマンション。とはいえ、建設途中でバブルが弾け、一棟が建つのみである。しかも、持ち主は知らないが、拝金主義の悪徳建設業者が手抜きで建てた建物である。
さまざまな事情を抱えた持ち主やその関係者があちこちからやってきたとき、折悪しくも 経験したこともないほど猛烈な台風が剣崎を直撃したのである。
ひとりひとりの身勝手さが次々と連鎖し、事を大きくしていく様が、時間を追い 場所を変えて迫ってくるので、歯がゆくもあり恐ろしくもある。全体を見渡して事の重大さを判っているのは読者だけであり、当事者たちはそれぞれがそれぞれの思惑で動いたり人任せにしたりしているのである。そのうちにどんどん深みにはまっていく。
死体が現れたり、管理人が血迷ったり、火が出たり。よくもこのマンションだけにあとからあとから災難が押し寄せるものだと思うが、事件の起こり方にも不自然さがないところも著者の巧いところだろう。
一年後が描かれたエピローグが救いでもある。

猫島ハウスの騒動*若竹七海

  • 2006/08/21(月) 17:31:16

☆☆☆・・

猫島ハウスの騒動 猫島ハウスの騒動
若竹 七海 (2006/07/21)
光文社

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奇妙な事件に奇矯な人々、そして猫・猫・猫・・・・・
ユーモアとシニカルを絶妙にブレンド。
コージー・ミステリの名手、若竹七海の真骨頂!!

葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹を超える猫が暮らす通称・猫島。 民宿・猫島ハウスの娘・杉浦響子は夏休みを迎え、家業の手伝いに精を出す日々を送っている。 そんなある日、ナンパにいそしむ響子の同級生・菅野虎鉄が見つけてしまったのはナイフの突き立った猫の死体、いや、はく製だった!? 奇妙な「猫とナイフ」事件の三日後、マリンバイクで海の上を暴走中の男に人間が降ってきて衝突した、という不可解な通報が! 降ってきた男は「猫とナイフ」事件にかかわりがあるようだが・・・・・。 のどかな「猫の楽園」でいったい何が!? 真夏の猫島を暴風雨と大騒動が直撃する!


葉崎シリーズ最新刊。 事件を捜査するのはお馴染み駒持警部。
舞台は、人間よりも猫のほうが幅を利かせているような猫の楽園・猫島。
虎鉄が浜で怪しい猫のぬいぐるみを見つけたのがすべての事件のはじまりだった。 覚せい剤アレルギーの駒持警部はやたらと派手にくしゃみをしているし、響子の大叔父がかかわったという 十八年前の三億円事件までなにやら関係がありそうなのである。
新米警官の七瀬晃が、自覚しているかどうかはさておき、結果的には大活躍しているのが、なにやら微笑ましく好感が持てる。
猫も含めると登場人物(猫)のなんと多い物語であることか。
それにしても、響子と虎鉄の間に、修学旅行でいったい何があったのかが気になる。

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八月の降霊会*若竹七海

  • 2006/05/24(水) 18:47:34

☆☆☆・・



震える夜、すべての魂が・・・歪められる。
足を踏み入れたときから、いや、招待状を見たときからか。
この妙な感じは何処から来るのだろう。この家から、それともこのなかの誰かからだろうか・・・。真夏の山荘を舞台に真実と嘘がからみ合う、異色の書き下ろし長編ミステリー。
  ――帯より


富士山の近くの山荘で降霊会をするという水屋征児からの招待状を受け取ったのは、一見するとほとんど あるいは何の接点もないかに見える人々だった。だが受け取ったそれぞれが、何がしかの違和感を抱いて 結局は招きに応じて山荘に集まることになる。
そこで起きるのは、自らの過去の罪の告白であり、殺人であり、昔この山荘で起こったことの謎解きであり、いまとの関連の謎解きでもあるのだった。

舞台装置や設定は、なにやら綾辻行人テイストである。思わせぶりな台詞やあちこちに散らばるヒントなど。物語自体は綾辻作品よりもかえって不条理感が強いかもしれない。なのに雰囲気がおどろおどろしくならないのは作者の違いによるものだろう。
ミステリというよりも、ホラーやファンタジーの気配たっぷりの一冊だった。

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