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修羅の家*我孫子武丸

  • 2020/08/17(月) 16:36:21


簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。


後半の視点の転換によって、いろいろ納得できる部分もあったが、それにしても、終始おぞましい。人間の欲と、恐怖による支配、そしてそれによる無感動が引き起こすさらにおぞましい事々。どれをとっても、誰もが加害者であり誰もが被害者でもあるように見える。だが、誰にも同情はできない。ラストは、一種の救いなのかもしれないが、それで済ませてしまっていいのか、という疑問も残る。とにかくおぞましいの一言に尽きる一冊だった。

監禁探偵*我孫子武丸

  • 2019/12/13(金) 16:54:12


下着を盗もうと、憧れの女性の部屋へ忍び込んだ山根亮太。
ところが、そこには女性の死体が…!
しかし亮太は警察に通報できない。
なぜなら彼は、自室に美少女「アカネ」を監禁しているからだ。
翌日、死体を発見した警察は、殺人事件の容疑者として亮太を徐々に追い詰めていくが……
(第一話 山根亮太)

轢き逃げに遭い、重体で搬送された少女。
“神の手"を持つ天才外科医に奇跡的に命を救われるが、目を覚ますと記憶喪失に。
「アカネ」と刺繍されたハンカチだけが身元に繋がる手がかりだった。
やがて、看護師飛び降り事件や幽霊騒ぎが発生。
事件に強い関心を示す少女「アカネ」の勘の鋭さに気づいた研修医・宮本伸一は……
(第二話 宮本伸一)

美しき少女「アカネ」――彼女の正体は天使か、悪魔か デビュー30周年をむかえた新本格のレジェンドが、同名人気コミック原作を自ら小説化。
言葉だからこそ表現可能な新しい物語が誕生!
人間心理の歪みに迫る、驚愕のミステリ! !


コミックの原作があるとは全く知らなかったが、それが物語の興味を削ぐことはない。ひょんなことから連れ帰った少女が、こんなにも物語の核心にいる存在だとは、初めはまったく思わず、その奔放なのか作為的なのか読めないキャラクタに翻弄される。だがしだいに、彼女の賢さが見えてくると、ストーリーの先に新たな展開が望めそうな期待感で興味が募る。はたして、彼女の存在は大きいが、その分なぞも多すぎる。二話目でそれが解消されるかと思いきやそうはいかず、ラスト近くまで真相が見えてこないのがわくわく感をそそる。少女のビジュアルと、抱えるものの重苦しさとのギャップが哀しくもあるが、ほんの少し明日が見えたのではないかと思わされる一冊でもあった。

凛の弦音*我孫子武丸

  • 2018/11/24(土) 18:25:42

凜の弦音
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我孫子武丸
光文社
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篠崎凜―翠星学園高校一年生。中学から弓道を始め、現在弓道弐段。ひたすら弓道に打ち込む少女。そんな凛が師匠、棚橋先生の家で、ありえない矢で男が殺された事件に巻き込まれ、見事に解決した。『弓道名人は名探偵』と校内新聞で取り上げられ、凛の動画はいつの間にかネットで『天才弓道美少女』と評判になるが…。友達に悩み、自分に悩み、弓道に悩む青春真っ只中―。ひとりの少女の成長を活き活きと描く傑作長編。


高校の弓道部が舞台の青春物語。弓の世界を極めたいと、懸命に稽古をし、心を、身体を整えて、より良い「射」を目指す少女・凛が主役である。これだけでも充分に魅力的な世界なのだが、そこにミステリ要素が加わり、その探偵役が主人公の凛なのだから、魅力はさらに増すというものである。ちょっとした違和感から、事の真相を導き出す凛だが、その後のさばき方がまた好ましいのである。無闇に明るみに出すだけではなく、その理由まで慮って、関係者に相対する姿勢には、凛の人柄がにじみ出ている。登場するキャラクタがみな魅力的で、それにも惹かれる。続編をぜひ読みたいと思わされる一冊である。

怪盗不思議紳士*我孫子武丸

  • 2018/07/15(日) 07:15:48

怪盗不思議紳士
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我孫子 武丸
KADOKAWA (2018-03-10)
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少年探偵と、宿敵である怪盗のバトルがいま始まる! 痛快ミステリ活劇。

戦後間もない日本。孤児の瑞樹はひょんなことから探偵・九条響太郎探偵の助手を務めることになる。凶悪な事件を引き起こす謎の強盗集団、怪盗不思議紳士の追跡に協力することになった矢先、衝撃的な事件が起きる!


怪人二十面相と明智小五郎を思わせる、怪盗と名探偵の対決物語である。だが、肝心の名探偵は、物語が始まって間もなく怪盗不思議紳士の手によって暗殺されてしまう。名探偵・九条響太郎の遺志を継いだ助手の瑞樹が、響太郎に思いを寄せる蝶子の手も借り、響太郎の影武者だった大作を響太郎に仕立てて、怪盗不思議紳士と対決することになるのだが、目の前には次々に苦難が立ちはだかる。困難な状況を共にしているうちに、大作が本物の響太郎に見えてきたりすることもあって、次第に信頼関係が深まっていくように見える。真相は明かされないまま事件は解決されるのだが、果たして解決編はあるのだろうか。気になるところである。怪盗不思議紳士と九条響太郎の正々堂々の対決も見てみたいと思わされる一冊である。

裁く眼*我孫子武丸

  • 2016/11/01(火) 20:52:01

裁く眼
裁く眼
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我孫子 武丸
文藝春秋
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漫画家になり損ね、浅草の路上で似顔絵を描いて生計を立てている袴田鉄雄。あるとき、彼の腕前を見込んだテレビ局の人間から、「法廷画」を描いてほしいという依頼が舞い込む。注文通り描いた絵が、テレビで放送された直後―鉄雄は頭を殴られて昏倒する。彼は一体、何を描いてしまったのか?


浅草でときどき似顔絵を描いている袴田鉄雄が主人公。ある日カップルの女性の似顔絵を書いたところ、男性からひどく怒られて、早々に引き上げるという出来事があった。その後、法廷画家たちが集団食中毒になり、ピンチヒッターとして法廷画を描くことになった鉄雄だったが、帰宅したところをコンクリートブロックで殴られ、ちょうど帰ってきた姪の蘭花に助けられることになった。それでも、この裁判が終わるまでは、と法廷に通う鉄雄だったが、翌日、同じく代役の法廷画家の女性が殺される。法廷画家を狙った連続殺人なのか、それともまったく別の事件なのか……。鉄雄の書いた法廷画が、裁判にどうかかわってくるのか、知りたくてページを繰る手が止まらなくなる。そしてその謎が明らかにされたとき、そこに目をつけたか、という驚きもある。鉄雄には、知らず知らずのうちに人間の本質を見通してしまうような力があるのだろうか。だとすると、まさに法廷画家はうってつけの職業かもしれない。何かほかにも役立てられそうな能力である。鉄雄と蘭花のコンビをもっと見たいと思わされる一冊でもある。

特捜班危機一髪*我孫子武丸

  • 2014/10/24(金) 21:13:42

特捜班危機一髪 警視庁特捜班ドットジェイピー特捜班危機一髪 警視庁特捜班ドットジェイピー
(2014/09/18)
我孫子 武丸

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警視庁の人寄せパンダと思われたドットジェイピーだが、ひょんなことから誘拐事件を解決し、一躍世間の脚光を浴びる。だが、その人気を快く思わない人物がひとり―ドットジェイピーに公衆の面前で恥ずかしい姿をさらされた篠原都知事だ。都知事はドットジェイピーの人気を失墜させ、解散に追い込もうと作戦を練る。そして新メンバーと称した刺客に、優秀な兄妹警官を送り込むが…。


警視庁特捜班ドットジェイピーシリーズ二作目である。後方はんとは名ばかりで、現実は落ちこぼれの寄せ集めチームであるドットジェイピーだが、ひょんな巡り合せで人気が出てしまい、それを快く思わない都知事によって罠を仕掛けられる。香蓮が職場ではひた隠しにしている極個人的な趣味も絡まって、人間関係のややこしさも露呈してくる。このまま策略にはまって解散させられてしまうのか、という興味と、現実と妄想の人物相関図の入り乱れ具合とで飽きさせない一冊である。

警視庁特捜班 ドットジェイピー*我孫子武丸

  • 2014/06/30(月) 17:12:33

警視庁特捜班ドットジェイピー警視庁特捜班ドットジェイピー
(2008/06/20)
我孫子 武丸

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警察のイメージアップを図るため、日本のお偉方たちは、安易にも戦隊ヒーローブームにあやかり「警視庁戦隊」を作り、広報活動をさせることにした。部隊名は「警視庁特捜班ドットジェイピー」。ジェイピーはジャパニーズポリスの略。ドットが付くのは、なんか今風だから。集められたのは、性格に大きな難があるものの、格闘、射撃、コンピュータなどの達人にして美男美女の五人の警官。しかし、彼らを逆恨みする犯罪者が現れて…。戦え!世間の眼に負けるな!ドットジェイピー!浅はかで投げやりな平成ニッポンを照射し笑いのめす怪作、誕生。


ソルジャーブルー、デジタルブラック、キューティーイエロー、ビューティーパープル、バージンホワイトというコードネームまである「警視庁特捜班ドットジェイピー」が主人公である。戦隊ヒーローにあやかって、警察のイメージアップのために作られた特捜班である。しかも、警視総監の愛人の何気ないひと言がヒントになって生まれたのである。さらに、集められたメンバーは、それまで配属されていた部署で何らかの問題があり、ある意味厄介者扱いされていた者たちなのである。トラブルが起こらないはずがない。そしてそれが面白い。ふざけているようで、意外に真面目に職務に当たっているのも、はみ出し者と言えども警察官であり、いざというときの連携も――偶然もあるとはいえ――見応えがある。次の活躍も観たい一冊である。

さよならのためだけに*我孫子武丸

  • 2011/05/18(水) 20:13:24

さよならのためだけにさよならのためだけに
(2010/03/18)
我孫子 武丸

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ハネムーンから戻るなり、水元と月は“さよなら”を決めた。二人はまったくそりが合わなかったから。けれど…少子晩婚化に悩む先進諸国はグローバル国策会社、結婚仲介業のPM社を創りだしていた。その独創的相性判定で男女は結ばれ、結婚を維持しなければならない。しかもこの二人、判定は特Aで夫ときたらPM社員。強大な敵が繰りだす妨害に対し、ついに“別れるための共闘”が始まった。


水元と月(ルナ)それぞれの視点で語られる離婚に向けた闘いの物語。なのだが、実にさまざまな要素を含んでいて興味深い。たとえば少子晩婚化、たとえば個人情報、またたとえば遺伝子ビジネス、などなど…。男女の出会いとは、恋愛とは、結婚とは、といういつの時代にもただひとつの正解などない問題を、近未来という舞台設定で取り上げて答えを出そうとするが(PM社)やはり答えなど出るはずもない、人間にとっての永遠の命題なのだと思わされるのである。水元と月のお互いに対する印象や感情の推移も期待どおりでうれしくなるし、最後の決断も潔いもので好感が持てる。これからの二人がどうなっていくかは未知数だが、PM社の得A判定はまったく間違っていなかったと思えるラストである。それなら本作丸ごと何の意味もなかったようだが、タイトルのとおりさよならのためだけに共闘した二人だからこそ得たものが大きいのだろう。はらはらどきどき面白い一冊だった。

探偵映画*我孫子武丸

  • 2010/02/05(金) 17:02:45

探偵映画 (文春文庫)探偵映画 (文春文庫)
(2009/12/04)
我孫子 武丸

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新作の撮影中に謎の失踪を遂げた鬼才の映画監督・大柳登志蔵。すでにラッシュは完成、予告編も流れているが、実はこの時点で作品の結末を知るのは監督のみ。残されたスタッフは、撮影済みのシーンからスクリーン上の「犯人」を推理しようとするが…。『探偵映画』というタイトルの映画をめぐる本格推理小説。


スタッフにもキャストにも結末を教えずに行方をくらました大柳登志蔵監督。自信たっぷりの様子から、確信犯的な匂いはしていたが、こんな結末が用意されていたとは!
大半は映画の撮影風景と、その裏側が描かれていて、小説と映画撮影と両方一度に愉しめるのも不思議な気分である。この映画を観てみたい、と思わされる一冊だった。

狩人は都を駆ける*我孫子武丸

  • 2009/08/28(金) 16:38:31

狩人は都を駆ける狩人は都を駆ける
(2007/12)
我孫子 武丸

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京都を舞台に、ペット探偵(?)は今日も大活躍!タフでなければ生きていけない。動物に優しくなければ生きていく資格が、ない?動物嫌いの私立探偵のもとには、なぜかペット絡みの依頼ばかり舞い込んで…ドーベルマン誘拐、野良猫連続殺し、ドッグショーの警備等々、手に汗握る傑作ミステリー。


表題作のほか、「野良猫嫌い」 「狙われたヴィスコンティ」 「失踪」 「黒い毛皮の女」

私立探偵なのだが、なぜか向かいの動物病院からの紹介の犬猫がらみの依頼ばかりが舞い込むのだった。しかも動物嫌いなのに。私立探偵というのは、キャラクターが似通ってしまうものなのだろうか。これまで読んできた、さまざまな作家のさまざまな探偵たちと、どこかダブって見えてしまう。
ハードボイルドを気取りきれず、仕事の依頼はほとんどなくてお財布の中身はいつも寂しく、やる気があるようには見えないが、やることはきちんとやり、価格設定も良心的である。彼もまさにそんな探偵である。ときに、――自己満足とも言えるかもしれないが――依頼された以上の働きをすることもある。目のつけどころは確かで、この先も見たいと思わせてもくれる。

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弥勒の掌*我孫子武丸

  • 2009/03/24(火) 20:56:21

弥勒の掌 (本格ミステリ・マスターズ)弥勒の掌 (本格ミステリ・マスターズ)
(2005/04)
我孫子 武丸

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妻を殺され汚職の疑いまでかけられた刑事。失踪した妻を捜して宗教団体に接触する高校教師。錯綜する事件、やがて驚愕の真相が…。書き下ろし。我孫子武丸スペシャル・インタヴューも収録する。


まったく別の事件として語られ始めた、刑事・蝦原の妻が殺された事件と、高校教師・辻の妻の失踪事件。偶然なのか運命なのか、蝦原と辻が出会い、怪しい宗教団体に探りを入れはじめるのだが・・・・・。
たまたま教団の受付で出会っただけで、それぞれが、まったく別の事件の被害者だと思わされていた。教団の闇に迫る過程は、ハラハラしながらも胸のすく思いがしたのだが、こんな結末になろうとは・・・。理想どおりにはいかない現実を見せられているようでもあった。

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殺戮にいたる病*我孫子武丸

  • 2008/01/08(火) 20:59:53

殺戮にいたる病 (講談社ノベルス)殺戮にいたる病 (講談社ノベルス)
(1994/08)
我孫子 武丸

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惨殺、そして凌辱――。何ものかに憑き動かされるように次々と猟奇殺人を重ねていった男の名前は蒲生稔! 冒頭の“エピローグ”で示される事実が、最終章であっと驚く意外な変容を遂げる。異常犯罪者の心の軌跡をたどりながら、想像力の欠如した現代人の病巣を抉る、衝撃のサイコ・ホラー。


まず目を瞠るのは、エピローグが冒頭に配されていることである。一連の猟奇殺人の犯人・蒲生稔が逮捕される場面である。
そう、犯人は冒頭で明らかにされているのである。その後に、逮捕に至るおぞましすぎる経緯がつづくのである。あまりにも凄絶な描写は途中で読むのをやめようかと思ったほどである。
しかし最後の最後、一瞬にして事件は違う様相を見せるのである。それまで見せられてきたおぞましさをさらに超えた目を覆いたくなるような結末である。

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メビウスの殺人*我孫子武丸

  • 2007/11/02(金) 17:09:17


メビウスの殺人メビウスの殺人
(1993/05)
我孫子 武丸

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大東京を恐怖のどん底につき落とす連続殺人が発生。犯行は金槌によるメッタうちと絞殺が交互する。犯人は一人か、あるいは別人か。現場には常に謎の数字を記したメモが…。被害者たちを結ぶ“失われた環”を探せ。ご存知速水三兄妹がつきとめた驚愕の真相とは?奇想天外な推理の新旗手の長編第三作。


速水三兄妹シリーズ第三弾。
冒頭の登場人物紹介で連続殺人事件の犯人のひとりはすでに明かされている。そしてどうやらこの事件、ネット上で知り合ったふたりの人物がゲームとして始めたことらしい、ということも読者には早い段階で判るのである。いつ、どんな風に警察側が犯人の目星をつけるか、慎二といちおはどんな風に推理するのか、というのが興味深い。
2007年の現在でこそネットを介した犯罪は認知度も高く、捜査上も想像に難くないだろうと思うが、本作が書かれたのが1993年であることを考えれば、かなり突飛な着想だったのではないだろうか。
結末は、いささか辻褄あわせで拍子抜けしなくもなかったが、三兄妹や鬼島刑事、怪我で休職中にもかかわらず呼び出されて使われた木下刑事らとのやりとりは相変わらず面白かった。
鬼島と恭三には共に過ごす未来はあるのだろうか。

8の殺人*我孫子武丸

  • 2007/11/01(木) 17:12:35


8の殺人8の殺人
(1989/03)
我孫子 武丸

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文字通り8の形をした“8の字屋敷”。この奇妙な建物が殺意を育ててしまった。男は誰も入れるはずのない部屋から放たれたボウガンで殺され、女さ閉ざされたドアの内側に磔にされた!犯罪芸術をめざす犯人と速水三兄妹の華麗な頭脳合戦の果てに二重三重の逆転劇が待ちうける。新本格推理に若き旗手いま誕生。


著者デビュー作であり、速水三兄妹シリーズ第一弾である。
警視庁の警部補である長男・恭三が喫茶店を経営する次男・慎二と妹の一郎(いちお)の知恵を借りて事件を解決へと導く物語である。――と書くと、なにやらまっとうっぽいが、三兄妹のキャラクターがそれぞれなかなか味わい深いこともあり、登場する警察関係者のユニークさもあって、シリアスな事件場が妙にコミカルに仕立て上がっている。実に軽妙である。一作目から三兄妹の役どころがしっかり定まっているので、(二作目は先に読んでしまったが)次がたのしみなシリーズである。

0の殺人*我孫子武丸

  • 2007/10/17(水) 13:09:08


0の殺人 (講談社文庫)0の殺人 (講談社文庫)
(1992/09)
我孫子 武丸

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容疑者リストつき異色の新本格推理。
冒頭で明かされた容疑者たちのなかからあなたは真犯人を突きとめられますか?

物語の冒頭に置かれた<作者からの注意>に、驚くべきことに、奇妙極まりない殺人劇の容疑者たち4人のリストが公開されている!この大胆かつ破天荒な作者の挑戦に、果してあなたは犯人を突きとめられるか?ご存知、速水警部補と推理マニアの弟と妹が活躍する、異色の傑作長編推理。


最後まで読んでタイトルの意味に納得。そういうことだったのか、と妙に嬉しくなる。
速水三兄弟シリーズの二作目に当るということを知らず、一作目『8の殺人』は未読なのでそちらも読んでみたい。
警視庁捜査一課の警部補である長男の恭三が、喫茶店のマスターの次男・慎二と妹のいちおに相談を持ちかけ、手足となって捜査した結果を持ち帰って謎解きをしてもらう、といういわば安楽椅子探偵物語+αといった物語である。なにやら立場が逆転しているのに、恭三自信もなんとも思っていないのが、さすが兄弟といっていいのか悪いのか・・・。
事件自体は殺伐としているのだが、三兄弟のおかげでユーモラスに仕上がっている。