からくりランドのプリンセス*青井夏海

  • 2013/12/10(火) 21:34:07

からくりランドのプリンセスからくりランドのプリンセス
(2013/11/22)
青井 夏海

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『赤ちゃんをさがせ』の著者が贈る学園青春ミステリ+「暗躍」する父兄会=プリンセスを巡って大騒動!
私の通う中学校に本物のプリンセスが留学してきた。そしてプリンセスの身辺警備を担当するのは、なんと私のお母さん。かつてそういう仕事に就いていたらしい――お母さんいったい何者? てか私の青春の邪魔しないでくれる? そんなドタバタ騒ぎの中、「陰謀」は深く静かに進行していく……。


日本ではほとんど知られていないフラクトゥール王国のプリンセスが、王位継承の条件である一年間の留学先として、汐音が通う海央学院にやってきた。プリンセスを巡る思惑で小競り合いを繰り返す女子たち、芸術文化研究部の文化祭へ向けての活動など、にぎやかな学園生活と、父母会から秘密裏に護衛を頼まれた親たちの温度差やそれぞれの事情、さらに国家をめぐる壮大な思惑に翻弄される物語である。さまざまな立場で見る夢の物語であるとも言えるかもしれない。いま流行のアイドルたちでドラマ化されたりしたら面白そうな一冊である。

赤ちゃんはまだ夢の中*青井夏海

  • 2012/06/21(木) 16:53:18

赤ちゃんはまだ夢の中 (創元推理文庫)赤ちゃんはまだ夢の中 (創元推理文庫)
(2012/04/21)
青井 夏海

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もうすぐ新しい家族が加わるというのに、「新しい恋人のもとへ行きたい」「居候が多すぎる」「借金取りがやって来る」「上の子に厳しすぎる」と、どうしてどこのお宅も問題ばかりなのっ。自宅出産専門の助産師コンビが遭遇した家庭のトラブルに、伝説のカリスマ助産婦・明楽先生の推理がますます冴え渡る。様々な家族の“謎”と“愛”を温かく描いた「助産師探偵シリーズ」最新作。


 第一話 別れてください
 第二話 帰ってください
 第三話 払ってください
 第四話 守ってください

聡子さんと陽奈ちゃんは、今回もちょっとしたトラブルを抱える妊婦さんのもとへ妊婦健診に通っている。健やかなお産とその後の育児のために、解決しなければならない問題がどうしても目につき、それぞれの家庭の事情に首を突っ込むことになるのである。陽奈ちゃんのパワーは前作よりもさらにアップしているようで、頼もしいやら危なっかしいやら、思わず微笑んでしまうが、彼女なしにはこの物語が成り立たないのも事実である。そして明楽せんせいもますますお元気で、目のつけどころが素晴らしく的を射ている。聡子さんのプライベートも少しだけ覗けて、次回作がますます愉しみになる一冊である。

シルバー村の恋*青井夏海

  • 2010/07/19(月) 16:53:52

シルバー村の恋 (光文社文庫)シルバー村の恋 (光文社文庫)
(2009/07/09)
青井 夏海

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妻に先立たれた日高一郎は、お年寄りのための施設「シルバー村」の常連だ。騒々しい女性グループには辟易していたのだが…。そんな時、珍しく初々しい女性と知り合う。どうやら、彼女は怪しげな投資話に乗せられているらしい。一肌脱ごうと決めた一郎は―(第1話)。コミュニティセンターを舞台に、ある家族が巻き込まれる様々な事件を描く、傑作ミステリー。


  第一話 もう一度ときめきたいあなたに 一階・シルバー村
  第二話 自分らしく生きたいあなたに 第二小会議室・英会話講座
  第三話 セカンドライフに備えたいあなたに 五階・トレーニングルーム
  第四話 マイペースで勉強したい君に 中会議室・教えっこクラブ
  第五話 家族の絆を見失ったあなたに 第一小会議室・おやじ学講座


北竹林市総合コミュニティーセンターを舞台に、日高一家をまきこんで起こる日常の事件のあれこれである。日高家の誰かが各章の主人公になっているが、彼らが事件を解決するわけではない。ただ巻き込まれ、家族の崩壊ぶりを次第に露わにしていくのである。それでは誰が謎を解くのかというと、決まった探偵役がいるわけではなく、コミュニティに集う騒々しいおばさんたちであったり日本語を話せないふりをする外国人であったりと、脇役で出てくるご近所さんたちなのである。事件とご近所とコミュニティに振り回されたような日高家の人たちは、そのおかげで(と言ってもかまわないだろう)家族のありようを考え直すことになるのである。ミステリでありながら、家族小説でもありご近所物語でもある、お得で愉しい一冊である。

丘の上の赤い屋根*青井夏海

  • 2010/07/08(木) 13:41:12

丘の上の赤い屋根丘の上の赤い屋根
(2010/06/17)
青井 夏海

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波多野真希の心には「赤い屋根」の映像が残っていた。
幼い時の記憶かどうか定かではないが、時折ふっと、それが浮かんでくるのだ。
亡くなった父の遺産をもらい受け、30代を前にして、東京近郊の都市へと移った真希。
父は、屋敷と呼べるほどの大きな家と、広い敷地、そして敷地内に立つアパートを真希に残してくれた。
屋敷がある市には、コミュニティーFMがあった。
このラジオ局、社長は、やる気があるのか、ないのかわからないし、他のパーソナリティーも所詮素人の寄せ集めとしか思えない。
プロは子役として脚光を浴び、学業優先のため一時、休業していた俳優業を再開した鏑木航のみ。
引越しの荷解きも終わらぬ最中(さなか)、真希のもとに「この土地は、市に寄贈されるはずの土地だ!」と市議会議員が訪れ、「そんなはずは……」と困惑してしまう。
さらに「あなたの弟です」と話す男まで現れた! 小さなFM局で巻き起こる、ひと夏のハートフル・ストーリー。


東京近郊と言っても、めぼしいものはなにもない中途半端な町・大沼辺市が舞台である。そこにあるコミュニティFMのラジオ局は、東京で芽が出ないとはいえ俳優をやっている鏑木航には、あってもなくてもいいような中途半端なものに見えた。秋までという契約で、朝の7時から10時までの帯番組を任された彼は、決められたこと以外には首を突っ込む気も手を出すつもりもなく、早くこの夏をやり過ごして東京へ帰ることしか頭になかった。そんなときボランティアとしてFM局にやってきた真希と出会う。真希の亡父は元大沼辺の実力者で、その遺産として屋敷を受け継いで彼女はここにやってきたのだった。
FM局に届くお便りや、FM局のボランティアスタッフ、真希の持ち物であるオンボロアパートの住人のお年寄りたち、突然現れた弟、そして真希から屋敷を奪い取ろうとする企みなどに振り回されながら、ひと夏の物語は展開するのである。
何気なく暮らしているように見える人たちも、それぞれになんらかの屈託を抱えており、それを互いに思いやることは、思い切って近づき踏み込まなければできないのだと思わされる。見ないふり聞かないふりでは、そこに存在することにはならないのだ。読み終えて、思わず地元のFMラジオ局を検索してしまった。

スタジアム虹の事件簿*青井夏海

  • 2010/07/04(日) 21:26:45

スタジアム 虹の事件簿 (創元推理文庫)スタジアム 虹の事件簿 (創元推理文庫)
(2001/04)
青井 夏海

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いつも優雅なドレスに身を包み、綺麗な靴を履いて観客席に現れるおっとりした女性・虹森多佳子。超弩級の野球音痴でありながら、なぜかプロ野球球団・東海レインボーズのオーナーを務める彼女は、奇妙な謎を次々と解決に導く才能も持ち合わせていた!安楽椅子探偵の冴え渡る推理と、優勝の夢に向かって疾走する万年最下位球団の奮闘を描いた、値千金の愛すべき本格ミステリ。


  第一話 幻の虹
     ――東海レインボーズ対京葉チャレンジャーズ 一回戦

  第二話  見えない虹
     ――東海レインボーズ対札幌ポラベアーズ 四回戦

  第三話  破れた虹
     ――東海レインボーズ対北九州スキップジャック 十三回戦

  第四話  騒々しい虹
     ――東海レインボーズ対中央フリークス 十八回戦

  第五話  ダイヤモンドにかかる虹
     ――東海レインボーズ対灘波マシンガンズ 二十六回戦


万年下位の東海レインボーズのオーナーだった亡き夫のあとを引き継ぎオーナーになった野球音痴の妻・多佳子が、球場に足を運び自球団のゲームを観戦しながら小耳に挟んだ話を元に推理し、事件の謎を解き明かし真実に迫る物語である。多佳子の視点のやさしさと、推理の見事さはもちろん、東海レインボーズの死力を尽くしたゲームの様子も愉しめて、二度おいしい一冊である。レインボーズのメンバーの名前に必ず色名がつき、迷わず味方だと判るのも親切である。多佳子さん、素敵である。

せせらぎの迷宮*青井夏海

  • 2010/05/09(日) 11:39:14

せせらぎの迷宮 (ハルキ文庫)せせらぎの迷宮 (ハルキ文庫)
(2008/09)
青井 夏海

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大学図書館に勤める斎藤史は、小学校の同級生の大村生夫に呼び出され、二十年ぶりに再会することになった。担任だった杉本先生が定年を迎えるにあたり、かつてクラスで作成した文集を揃えて贈ろうというのだ。だが、肝心の文集が見当たらない。途方にくれ、かつてのクラスメイトたちに連絡を取り始めるのだが、文集の存在は彼女たちの記憶からも消えていた―。当時の思い出と記憶をたどり、史は消えてしまった文集の謎を追うが…。爽やかな感動を呼ぶ、書き下ろし長篇ミステリー。


『陽だまりの迷宮』の続編。前作では主役だった生夫が、今回の主役・斉藤史に文集探しを頼むことによって、小学五年生の時のことを思い出させるきっかけとなる同級生のひとりとして登場する。
小学校五年生という難しい年頃の女の子たちの屈託や残酷さ、潔癖さなどの繊細な心理と行動が、実態のあるもののように丁寧に描かれている。おそらく小五の女子ってこんな感じだ、と通り過ぎてきた人ならば誰でもがいささかの苦さと切なさと共に思うのではないだろうか。文集をさがす現在の史と、二十年前の史と同級生の女の子たち、そして、一行文集の言葉とが交互に配されているのも巧みである。
最後に出てきた保育園はもしかするとあの・・・?違う?

5/9、17:00追記
ラストの園は、息子さんが通われていた保育園のイメージだそうです。アイリスキッズホームではなかったようです。

雲の上の青い空*青井夏海

  • 2010/04/20(火) 18:21:55

雲の上の青い空雲の上の青い空
(2007/07/24)
青井 夏海

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登校班から一人遅れて歩く女の子、忽然と姿を消した銀幕のスター、ひきこもりの青年…。ささいな気持ちのすれ違いに悩み、互いに傷つく人たち。心が曇る日があっても大丈夫。真実を見つめる素直な瞳があれば、いつだって青空は広がっている。日常の謎を描く名手が贈るハートウォーミング・ミステリ。


  第一話  みどりのおじさん
  第二話  銀幕の恋人
  第三話  三色すみれによろしく
  第四話  透明な面影
  最終話  ウサギたちの明日


元探偵で、いまはシロヤギ宅配便のドライバーの寺坂脩二が探偵役の連作物語である。
殺伐とした事件とはほど遠い、ありふれた日常に紛れ込んだような謎を、脩二がもつれた毛糸玉をほぐすように解き明かす。ほんのわずか視点を変えると、見えていることも様相を変え、謎を解く鍵に手が届くようになる。さすが元探偵、というところだろうか、ポイントははずさない。読後に明るい青空が頭の中に広がるような一冊である。

星降る楽園でおやすみ*青井夏海

  • 2010/02/24(水) 14:00:27

星降る楽園でおやすみ星降る楽園でおやすみ
(2006/08)
青井 夏海

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無認可保育室に二人組の男が籠城、五人の子どもが人質に。身代金はひとり五百万円という微妙な額だった。身内に犯人を手引きした人物がいる?疑心暗鬼の園長。そして人質家族の人間模様。


無認可保育園・アイリスキッズホーム。経済に余裕がある人が高い保育量を払って利用するのだろう。普段なら、園児の親同士でさえ深い交流などなく、互いのことをそう思っている。園児と職員を人質に取った籠城事件が起こって初めて、それぞれの家庭の事情が明らかにされていくに連れ、それぞれが抱えている問題が表に出てくるのが興味深い。そして、園長の早紀は、身内に内通者がいるのでは、と疑う。彼女の思考を追うのもスリリングであり、いちいち納得させられてしまう。事件は、思わぬ決着を見るが、決して解決されたとは言えないのである。人質に取られた園児たちそれぞれの家庭では、建前が崩れて本音が露わになり、悲喜こもごもといった様相である。救いは、誰も死ななかったこと。そして、園長の早紀と、姪の淑子の間の壁が取り払われたことだろう。

赤ちゃんがいっぱい*青井夏海

  • 2010/02/22(月) 16:58:24

赤ちゃんがいっぱい (創元推理文庫)赤ちゃんがいっぱい (創元推理文庫)
(2003/04)
青井 夏海

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アルバイト先の助産院をリストラされた陽奈は、急場をしのぐために〈ハローベイビー研究所〉に就職するが、そこでは価値のないものばかり消え失せる目的不明の盗難が続発し、さらには十八年前を再現したかのような赤ちゃん置き去り騒ぎが起きた。いったい研究所内で何が進行しているのか? 安楽椅子探偵の推理が冴えるシリーズ初長編!


助産師シリーズ第二弾。今回は長編である。
天才児を産むための胎児教育の大切さを謳って設立された、なにやら胡散臭い研究所に再就職することになってしまった陽奈である。そして、研究所の広告塔とも言うべき初代天才児・奥園時夫と出会い、胡散臭さの中に飛び込むことになってしまうのだった。
先輩助産師・聡子さんとご主人の宝田さんの喧嘩のような夫婦の会話には、愛が感じられ、息子・優樹くんの聡明さは、天才児でなくとも生きていく上で大切なものに思われる。そして、明楽先生の安楽探偵ぶりにも磨きがかかる。ハローベイビー研究所の胡散臭さはもちろん、天才児を産み育てながら離散してしまった奥園家の問題までも解決してしまうのだから、さすがである。まだまだ続くシリーズがたのしみである。

そして今はだれも*青井夏海

  • 2005/11/02(水) 17:45:35

☆☆☆・・



舞台は「自由・叡智・前進」を学是とする名門高校・明友学園。
長い女子高としての伝統をもつが、昨今の少子化対策として男子も受け入れるようにはなったが 共学とは名ばかりで授業も校舎もほとんど別で接点もまったくと言っていいほどないのが実情だった。女子が強制されなくても自分から勉強し、優秀な成績を修めるのに対し、男子には一様に生彩がなく 成績も押して知るべしである。
そんな学園に退職する恩師の紹介で英語教師として奉職することになった坪井笑子だったが、新任早々男子クラスの担任にされてしまったのだった。
そんな折、英語を教えている女子クラスの生徒たちから「ゲームプログラミング同好会」の顧問になって欲しいと依頼がある。生徒のひとりが勉強部屋として使っているマンションで行われる非公式の集まりに顔を出してみると、そこには男子クラスからも何人か集まっているのだった。
彼等は「ゲームプログラミング同好会」を隠れ蓑として学園の隠された真実を暴こうとしているのだった。彼等が探し出そうとしているのは“X”。家庭教師として教えていた女生徒の弱みを握って追いつめ、引きこもりや退学に追い込んだ許せない奴だったのだ。

“X”が女生徒をひとりまたひとりと追いつめる様子がまず描かれ、これがどう繋がっていくのだろうと 知りたい欲求が高まったところで、場面が明友学園に移るので、どきどきしながら読み進むことになる。
関係者が上手いこと出会いすぎる気がしないでもないが、笑子や生徒たちと一緒に“X”を探す気分を味わえる。
楓と恭二の再会の場面はちょっと予想外だったが、現実はそんなものなのかもしれない。おとぎ話のようにハッピーエンドとはならないのだろう。
でもこの学園、まだまだ違う事件が起こりそうな雰囲気である。シリーズ化されてもいいんじゃないだろうか。

陽だまりの迷宮*青井夏海

  • 2004/10/26(火) 20:28:53

☆☆☆・・


 生夫(いくお)は小学校三年生、姉九人・兄一人の
 十一人きょうだいの末っ子だ。
 病気で学校を休みがちの彼のまわりに起きる日常の謎・謎・謎――
 消えてしまった鉄道模型に、繰り返される無言電話、
 玄関に置いていかれた象の絵本・・・・・。
 でも大丈夫、いつも最後には下宿人のヨモギさんが現われて
 見事解決してくれるのだから。
 子どもの頃の懐かしさと切なさを、ほのぼのとした筆致で描く
 連作ミステリー、書き下ろしで登場!

                       (文庫裏表紙より)


十一人きょうだいの内、4人は父の連れ子、4人は母の連れ子、あとの3人は両親の子、という複雑な環境にいる生夫の目で語られる。
病弱な生夫の日常にポツリポツリと現われる事件は 事件とも言えないものかもしれないが それでも謎を抱えた生夫は 家族のことを想い 彼なりにあれこれと考えをめぐらすのである。しかし 所詮小学三年生の生夫のこと、考えつくことはたかが知れている。そんなところに現われて造作もなく謎を解いてくれるヨモギさんは 生夫にとってヒーローにも近いものだったのだろう。長じても懐かしく思い出すほどなのだから。
けれど、ヨモギさんは本当に下宿人のヨモギさんなのだろうか。それすらもミステリになっているのだ。じわりと瞼が熱い。