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かっこうの親もずの子ども*椰月美智子

  • 2012/09/17(月) 13:24:33

かっこうの親 もずの子どもかっこうの親 もずの子ども
(2012/08/18)
椰月 美智子

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すべてのお母さん、お父さんと、大人になった子どもたちへ――
命とは、愛とは、絆とは……子育ての今、子育てのすべてを描く感動の家族小説。

幼児向け雑誌の編集部で働く、シングルマザーの統子。
子どもを保育園に預け、シッターの協力を得ながら、仕事と育児を両立させている。
4歳の息子・智康は、夫・阿川の希望もあり、不妊治療の末に授かった子どもだ。
産後、すべてが順調かにみえたが、ささいな喧嘩をきっかけに、阿川と統子は離婚に至った。
予定通りには進まない仕事、智康の突然の病気、実母との気持ちのすれ違い、
園でのママ友との人間関係など、統子に悩みは尽きないが、日々を全力で過ごしている。
そんなある日、統子は旅雑誌のグラビアページに智康とそっくりの、双子の少年が載っているのを見つけた。
それをきっかけに、統子と智康は、五島列島・中通島へ向かう……。
生殖医療、保育園問題など、出産と育児にまつわるテーマに切り込みながら、子どもへの愛と命の尊さを描ききる。


子育てで煮詰まっているお母さんにまずいちばんに読んでほしい一冊である。だが、そんな時期には落ち着いて本を読むことすらできなかったなぁ、と我が身を振り返ってそう思うので、親になる前の若い人たちにぜひ読んでもらいたい。ちっとも実感は持てないと思うが、やがて親になったときに、「ああこのことか」と膝を打つに違いない。我が子たちはすっかり育ちあがってしまったが、生まれてきてくれたことのありがたさを伝えるのに遅いということはないと思うので、死ぬまで何らかの形で伝え続けたいと改めて思わされた。この子らがいるからこその我が人生である。母とは強くて弱い生き物だといまさらながらに思わされる一冊でもある。

純愛モラトリアム*椰月美智子

  • 2011/08/19(金) 18:13:36

純愛モラトリアム純愛モラトリアム
(2011/03/15)
椰月美智子

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恋人の娘を誘拐する男、ストーカーに恋する女、 いつも禁断の恋を妄想する教師…… ちょっと度が過ぎているけれど、本人たちは大真面目。 “恋”することはできるけれど、“愛”にはまだ早すぎる!? 不器用な人たちの可笑しくも切ないラブストーリー


「西小原さんの誘拐計画」 「やさしい太陽」 「オケタニくんの不覚」 「スーパーマリオ」 「妄想ソラニン」 「1Fヒナドル」 「アマリリス洋子」 「菊ちゃんの涙」

登場人物でつながる連作短篇集である。そしてもうひとつ共通しているのは、どの物語の主人公も恋愛においては不器用だということである。ときにいきすぎや理解不能な行動やひとりよがりがあるのも、ひとえに不器用ながら真剣に恋する故なのである。愛すべき人物たちである(ちょっと怖くもあるが)。満たされたいのに満たされず、思わぬ方向へ進んでしまうもどかしさに悶々とする恋する者たちがとてもリアルに描かれていて感心する一冊である。

恋愛小説*椰月美智子

  • 2010/12/12(日) 08:20:15

恋愛小説恋愛小説
(2010/11/16)
椰月 美智子

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好意、愛情、執着、秘密、嫉妬…恋愛の全て美緒とサスケは、憎いほどに、殺したいほどに、愛し合っている。人を好きになる気持ち、好きでいる気持ち、恋愛の感覚全てが書きとめられた、恋愛小説の真骨頂。


「恋愛小説」と聞いて思い浮かべるものとはずいぶん違うように思う。それはきっと描かれ方のせいだろう。プロローグとエピローグの遠い目をした穏やかさに挟まれた本編の恋愛における大波小波が、甘く切なく切実でありながらも客観的で冷静な目によって一種のレポートのように綴られているので、読者は内容の混沌に呑み込まれずに一歩退いて眺めることができるのである。美緒とサスケにとってはハッピーエンドとは言えないのかもしれないが、大きな目で見たらきっと最良の結果なのだろうと思う。激しく狂おしく身勝手で切ない一冊である。

しずかな日々*椰月美智子

  • 2010/11/24(水) 17:30:34

しずかな日々しずかな日々
(2006/10/03)
椰月 美智子

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講談社児童文学新人賞受賞作家の感動作
人生は劇的ではない。でも、どんな人にもその人生を生きる誇りを得る瞬間がある。少年の姿をていねいにトレースした、やさしい目線あふれる健やかな小説。


枝田光樹はいるのかいないのかわからないような少年だった。五年生になるときのクラス替えで同じクラスになった押野のだれにでも人懐こい性格のおかげでいままで知らなかった喜びを知り、それに加え、ある事情で、長く離れて暮らしていた祖父の家でふたりで暮らすことになったこともプラスに働き、生きていることを実感するようになる素晴らしい一年間の物語である。おじいさんの庭、ということで湯本香樹実さんの『夏の庭』を思い出すが、同じように静かで懐かしく、大きな包容力のようなものを感じる。
大人になった光樹が懐かしく思い出しているという形で書かれているが、この一年が彼にとって一生の宝物になっていることがわかって、じんわりとしあわせな心地になる一冊である。

フリン*椰月美智子

  • 2010/08/29(日) 17:28:32

フリンフリン
(2010/06/01)
椰月 美智子

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火遊び、裏切り、そして道ならぬ恋――。結婚後の恋はいけないことなの?『しずかな日々』『るり姉』の著者が、現代のさまざまな不倫の情景を描く、新境地の反道徳小説!


葵さんの恋  シニガミ  最後の恋  年下の男の子  魔法がとけた夜  二人三脚


リバーサイドマンションの住人であるということをキーにした連作フリン物語であり、全編を通してひとつの物語でもあるように思えわれる。
たった二十一戸・七十三人のなかに普通はこれほど濃くは起こらないだろうと思われる気持ちの行き違いが起こり、道ならぬ恋模様が描かれる。陥り方も育ち方も、そして終わり方もさまざまだが、胸を張ってしあわせを宣言できる恋はひとつもない。陰で泣く人がいるかぎり、それはあってはいけないことなのだとも思う。だが、登場人物たちはみな一様に他人のことを思いやれるやさしさをも持っていて、物語全体の雰囲気はやさしいものになっている。フリンに開き直っていないからかな、と思ったりもする。

枝付き干し葡萄とワイングラス*椰月美智子

  • 2010/07/20(火) 10:41:47

超短編を含む短編集 枝付き干し葡萄とワイングラス超短編を含む短編集 枝付き干し葡萄とワイングラス
(2008/10/21)
椰月 美智子

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結婚「してから」の男と女のある場面 「そもそも二人は、なんでもなかったのだ。」結婚後の男女の、すえた空気を巧みに描きだす、今もっとも注目の作家・椰月美智子の短編集。


表題作のほか「城址公園にて」 「風邪」 「夜のドライブ」 「たんぽぽ産科婦人科クリニック」 「プールサイド小景(仮)」 「七夕の夜」 「甘えび」 「おしぼり」「どじょう」

『みきわめ検定』が結婚前、本作は結婚後の男女のあれこれである。『みきわめ検定』が駆け引きだとするならば、こちらは憤りと諦めとでもいうところだろうか。不気味な不穏さこそ結婚前よりは薄れているものの、既婚者ならば我が身に思い当ることが必ずあるだろう胸の底のどす黒い澱を文字にされたようでいたたまれなくなる。だが、そこにしたたかさのようなものも見え隠れしていて、前向きなパワーさえ感じられるのが不思議である。
「甘えび」が夫の好物だと気づきながら鰯を買って帰ったところが著者らしくて好きだ。

みきわめ検定*椰月美智子

  • 2010/07/08(木) 16:57:04

超短編を含む短編集 みきわめ検定超短編を含む短編集 みきわめ検定
(2008/10/21)
椰月 美智子

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結婚「まで」の男と女のある場面 「そろそろ今日あたり、キスのその先をすることになるに違いない。」結婚前の男女の、危うい気配を鋭く切りとる、今もっとも注目の作家・椰月美智子の短編集。


表題作のほか「死」 「沢渡のお兄さん」 「六番ホーム」 「夏」 「と、言った。」 「川」 「彼女をとりまく風景」 「きのこ」 「クーリーズで」 「西瓜」

読みながら、このざわざわする心地はなんなのだろう、と何度も考えた。ちょっとした、けれど永遠に寄り添うことのないズレだろうか。噛み合うはずの歯車のほんのわずかな軋みだろうか。どの物語も、胸の中を不穏にざわめかせるのである。善悪とか、常識とかに当てはめられるようなものではないなにかがどの物語にもたゆたっているのである。そしてその気分が解決したのはあとがきだった。なんとそれは、「やっちまった感」だったのである。

るり姉*椰月美智子

  • 2010/06/14(月) 10:39:50

るり姉るり姉
(2009/04)
椰月 美智子

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今この瞬間が、こうして過ごす毎日が、奇跡なのかもしれない。幸せのそばには、いつも「るり姉」がいた―。傑作『しずかな日々』(野間児童文芸賞&坪田譲治文学賞受賞)の感動が新たな魅力でふたたび!注目の著者が贈る、家族小説最新刊。


  第一章  さつき――夏
  第二章  けい子――その春
  第三章  みやこ――去年の冬
  第四章  開人――去年の秋
  第五章  みのり――四年後春


さつき、みやこ、みのり三姉妹は、母・けい子の妹である るり姉のことをそれぞれの思いでとても慕っている。そんなるり姉に病気が見つかり、日に日に輪郭を曖昧にしてゆく。日常ならざるそんな事態の前後を描くことで、何気ない日常のありがた味やしあわせが浮き彫りにされる一冊である。登場人物の誰もが現実感あふれる描かれ方で、物語の中で生きている。

ガミガミ女とスーダラ男*椰月美智子

  • 2010/06/10(木) 18:59:25

ガミガミ女とスーダラ男ガミガミ女とスーダラ男
(2009/09)
椰月 美智子

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おちゃらけ者でシモネタ好きの夫。妻のイライラはつのるばかり。日常的に激しいバトルを繰り返すが、なぜか赤ん坊も生まれて…。夫婦という不可思議な関係をユーモラスに綴った、風変わりな「愛」の物語。


内容紹介にもあるが、まったくもって風変わりな愛情表現である。物語、とあるが、これはエッセイですよね?それとも限りなくエッセイに近いフィクションなのだろうか。もうほんとうに毎日がバトルの夫婦である。しかも、妻の側のストレスが大きすぎるように見える。傍からそう見えるだけで、実際はきっとより愛を育んでいるのだろうと思うが、DV一歩手前という苛烈な愛情表現である。あまりな毎日にこっそり覗きに行ってみたくなる。