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ゾウに魅かれた容疑者 警視庁いきもの係*大倉崇裕
- 2021/10/02(土) 13:30:50
連ドラ化もされた大人気「警視庁いきもの係」シリーズ2回目の長編!
警視庁「いきもの係」のオアシス、田丸弘子が行方不明になった。弘子の自宅を捜索した須藤は、動物園のチケットを発見し、それが弘子からのメッセージだと確信する。薄に連れられ動物園に向かうと、弘子は休日にゾウを見に来ていたことがわかった。どうやら動物園で親しくなった女性に間違われて拉致されたらしい。偽造パスポートまで使って連れ去られた先は東南アジアのラオス。薄と須藤は弘子を救うべく、現地へ向かう。
登場人物は、脳内ではすっかりドラマ仕様である。薄圭子はもう橋本環奈さん以外に考えられない。そして、今回も、薄大活躍である。日本語こそ覚束ないが、それ以外ではお見事としか言えない能力を発揮し(しかも気負うことなく)、これぞ本物の猛者、とさえ思わされる。見た目とのギャップがはなはだしい。須藤とのコンビも、回を追うごとにぴったり息が合い、すでに阿吽の呼吸とも言える。些細な引っ掛かりをそのままにしない須藤の刑事の勘もさすがである。おふざけがパワーアップしている感はあるが、今後も愉しみなシリーズである。
死神さん*大倉崇裕
- 2021/07/23(金) 07:24:39
無罪判決が出た事件を再び調べるのが職務の警部補、儀藤堅忍。警察の失態をほじくり返す行為ゆえ、指名された相棒刑事の出世の道を閉ざす「死神」と呼ばれている。だが"逃げ得"は許さないと誓う儀藤の執念と型破りな捜査に相棒は徐々に心動かされ……。冤罪だった強盗殺人やひき逃げ、痴漢事件の真相は? 現代の暗部を抉るバディ・ミステリー。
名前とは裏腹に冴えない小太りの中年男である儀藤は、独自に無罪判決が出た事件の再捜査をする、どこにも所属しない警察官である。捜査の相棒に指名されたら、問答無用で従わなければならない成り行きになる。相棒のことは相当詳しく調べ上げているにもかかわらず、無罪判決が出ると間を置かずに現れるのが不思議でもある。それがまた適切過ぎる人選なので、舌を巻く。捜査手法も、決して強引ではないのに、どういうわけか大切な供述を引き出してしまう魔力(?)のようなものがあり、事件そのものへの興味はもちろん、儀藤本人への興味が尽きないのだが、その辺りが謎に包まれているのも惹き込まれる要因のひとつかもしれない。儀藤の活躍をもっと見たくなる一冊である。
アロワナを愛した容疑者*大倉崇裕
- 2019/07/29(月) 16:45:35
連ドラ化もされた大人気「警視庁いきもの係」シリーズ、待望の第5弾!
「タカを愛した容疑者」「アロワナを愛した容疑者」「ランを愛した容疑者」の3作品を収録。
さらに「アロワナを愛した容疑者」では、大好評「福家警部補」シリーズの主役・福家警部補と警視庁いきもの係の薄、須藤が夢の共演! このコラボは見逃せない!!
登場人物像が、すっかりドラマに引きずられている。映像のパワーはものすごい。もうたぶん、著者ご自身も、その設定で書いていらっしゃるのではないかという気もしてしまう。薄巡査は、相変わらず天然の頓珍漢ぶりを発揮し、須藤はずいぶん彼女の扱いに慣れ、ほとんどのことには動じなくなっているのがおかしくて、つい苦笑してしまうが、信頼関係も築けていてなかなかいい凸凹コンビである。薄巡査にそのつもりがあるのかないのかはよくわからないが、結果として事件を解決に導いているので、「いきもの係」の知名度も信頼度も少しずつ増してきているのが読者としてもうれしいところである。次はどんな生き物が登場するか、愉しみでもあるシリーズである。
死神刑事*大倉崇裕
- 2018/11/17(土) 16:59:31
警視庁に死神あらわる!? 強盗殺人、偽装殺人、痴漢冤罪、誘拐……。無罪となった事件を再捜査する男がいた!! その常識破りの捜査からは、誰も逃げられない――。「福家警部補」シリーズで話題の著者が放つ、新感覚警察小説
どこの部署にも属さず、無罪となった事件を当時担当した警察官を相棒に指名し、独自の再捜査をする、儀藤堅忍は、死神と呼ばれている。だが、その風貌は小太りの冴えない中年男。そのギャップにまず驚かされる。では、さぞや厳しい捜査をするのだろうと思えば、一見そうは思えない。とは言え、なんだかんだで最後には真実を暴き出し、真犯人を追い詰めてしまうのだから、なんとも不思議な刑事である。相棒に指名された者は、初めこそ薄気味悪い心地にさせられるが、最後には、なんともあたたかい気持ちになるのである。不思議なキャラクタである。無罪事件がない時には何をしているのか、いささか気になってしまう。死神・儀藤、もっと見たいと思わされる一冊である。
福家警部補の考察*大倉崇裕
- 2018/08/24(金) 18:29:30
地位と愛情を天秤にかける医師の誤算(「是枝哲の敗北」)、夫の企みを察知し機先を制する料理好きな妻(「上品な魔女」)、身を挺して師匠の名誉を守ろうとするバーテンダー(「安息の場所」)、数年越しの計画で恋人の仇を討つ証券マン(「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」)――犯行に至るさまざまな事情と慮外の齟齬。透徹した眼力で犯人の思惑を見抜くシリーズ最新刊。
ドラマを観たときには、福家警部補は檀れいさんじゃないよなぁ、と思っていたのだが、映像の強さなのだろうか、ずっと檀れいさんに引きずられて読んでしまった。実際の(会ったことはないが)福家警部補は、もっと見た目は地味でキャラの立たない人だと思っているので、そんな彼女にぴったりと張り付かれると、心に疚しいところのある人にとっては、なんとも座りの悪い感じなのではないだろうか。今回も、事件発覚直後から、並々ならぬ観察眼と洞察力によって、真犯人に目星をつけ、すっと近寄ってピタッと張り付いている。その後のやり取りも、隙だらけな風でありながら、一分の隙なく論理的に追い詰めていくのが見事である。犯人は、彼女の姿を見た時点で自白したほうがいいと思うが、それでは読者が詰まらないので、これからも最後までじたばたしてほしいものである。次も愉しみなシリーズである。
琴乃木山荘の不思議事件簿*大倉崇裕
- 2018/08/01(水) 18:26:26
山と渓谷社 (2018-06-16)
売り上げランキング: 147,628
棚木絵里は、標高2200mにある山小屋「琴乃木山荘」で働くアルバイト。山荘の目の前には標高2750mの竜頭岳が聳える。生真面目で繊細なオーナーの琴乃木正美。年齢不詳・正体不明なベテランアルバイトの石飛匠。絵里は彼らと、山で起こる「不思議なできごと」の真相に挑む。「この小屋、出るでしょう?幽霊」アルバイトの斎藤まゆみは、テント場の先の林の中で人魂を見かけ、さらに男の登山者の幽霊に取り憑かれていると言う。人魂、そして幽霊は本物なのか。絵里はその正体を見破れるか―。(第一話「彷徨う幽霊と消えた登山者」)ほか、わずかな手がかりから真実を導き出す全七話を収録。気鋭のミステリ作家が挑む「山岳×日常の謎」の新機軸!
琴乃木山荘の周りで起こる七つの事件の物語である。山に登る人、山小屋を訪れる人、山小屋で働く人、それぞれに理由があり、下界に置いてきた何かがあるのかもしれない。山の日常は、愉しいが、真剣で、些細なことが命にかかわることもあるのを思い知らされる。山の知識や洞察力で目の前の謎を解き明かしてしまう石飛が、格好いい。そんな彼もまた、下界でのことは多くを語らない。アルバイトで入った絵里もまた、下界に屈託を置いてきたのだが、それさえも解き明かされることになる。この先ももっと見ていたい一冊である。ぜひシリーズ化してほしい。
樹海警察*大倉崇裕
- 2018/01/17(水) 18:26:43
初任幹部科教育を終え、警部補になった柿崎努は、山梨県警上吉田署という辺鄙な場所、しかも聞いたこともない部署へ配属となった。署長に挨拶も行かず署員からおもむろに渡されたのは、カーキグリーンの軍用ベストやズボン、そして登山靴―。さらに連れて行かれた場所はなんと樹海…!?栗柄巡査、桃園巡査、そして事務方の明日野巡査長と共に、樹海で見つかった遺体専門の部署・地域課特別室に勤務することに…!腐乱死体から事件の匂いをかぎ取る!!書き下ろし樹海警察小説登場。
左遷された自覚がなく、あくまでも正論を貫く警部補・柿崎が着任したのは、樹海専門の特別室。課員は栗柄、桃園、そして事務方の明日野の三人。すべて訳ありでここにいる面々であり、それぞれにキャラが濃いが、各自のやり方で確実に捜査を進めていく様子は、強引で違法ぎりぎりの場合もあるが、頼もしくすらある。樹海で見つかる遺体を見て、事件の匂いを嗅ぎつける嗅覚はもちろん、真相を暴き出す手腕も見事である。いろいろ明らかになっていない点もあるので、シリーズ化されるのだろうか。このメンバーのはちゃめちゃぶりをもっと見てみたいと思わされる一冊である。
秋霧*大倉崇裕
- 2017/09/16(土) 18:35:35
「天狗岳に登ってきてくれんか」死期の迫った伝説的経営者上尾の依頼を受けた便利屋の倉持。山行の動画を撮る簡単な仕事のはずが、なぜか不審な影が。一方、元自衛隊特殊部隊員深江は、未解決殺人の対処に動く警視庁の儀藤に神出鬼没の殺し屋「霧」の追跡を依頼される。直後から何者かの襲撃を受け、奥多摩山中では凄惨な殺人現場に遭遇。その帰途、敵の車のカーナビに残っていた足跡を辿ると、目的地の病院で一人の男が拉致される現場を目撃する。直感に従い救出した男こそ、上尾にDVDを届けた倉持だった……。
便利屋の倉持と元自衛隊特殊部隊員の深江の物語が並行して語られるが、どちらも物騒な気配が色濃く漂う。どこでどうつながるのか興味津々で読み進めると、次々に荒事が目の前で繰り広げられ、いつしかふたつの物語はひとつになっている。勝か負けるかが、すなわち、生きるか死ぬかというような過酷な状況に、息が詰まる心地である。誰を信じればいいのかも判らない世界で、それでも本能的に信じられるものがあるというのが不思議でもあり、当然のようにも思われる。結局、ほんとうに勝ったのは誰なのか。当事者それぞれが違う感想を抱いているのかもしれない。どんなに過酷な状況にあっても、まずは人間と人間の繋がりなのだと思わされる一冊でもある。
クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係*大倉崇裕
- 2017/08/17(木) 16:39:47
学同院大学で起きた殺人事件の容疑者は、クジャク愛好会の奇人大学生! だが無実を信じる警視庁いきもの係の名(迷)コンビ、窓際警部補・須藤友三と動物オタクの女性巡査・薄圭子はアニマル推理を繰り広げ、事件の裏側に潜むもうひとつの犯罪を探り当てる!? 犯人確定のカギはクジャクの「アレ」!?
警視庁の「いきもの係」というべき、総務部動植物管理係の名コンビ、窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子(うすき・けいこ)のアニマル推理が楽しめます!
ドラマ化もされ、ますます親しみを覚えるシリーズである。(石松の配役は全く別物だが。)今回は、ピラニア、クジャク、ハリネズミである。薄圭子は(すっかり橋本環奈で頭の中に登場するが)、相変わらず、人間社会のことにはまったくといっていいほど興味がなさそうで、とんちんかんな受け答えに苦笑するばかりだが、それを軽くいなす須藤も、なにやらすっかり慣れた様子で微笑ましい。今作では、いきもの係に捜査一課から芦部という新人が配属され、どんなに頼りになるかと思えば、生き物アレルギーだったりして、当てにしていいのかどうか悩ましい。薄の天然の行動によって、捜査中の事件の謎がひとつずつ明らかにされていくのは、見ていて愉しくなる。手柄を手柄と思っていないところも可愛い薄巡査である。最後の最後のそのまた最後に載せられている、「取材協力」にも思わず笑わされてしまった。次は何の生き物か愉しみなシリーズである。
スーツアクター探偵の事件簿*大倉崇裕
- 2016/08/22(月) 13:16:03
怪獣に入って演技する「スーツアクター」の凸凹コンビ、椛島と太田。映画撮影所でおこる事件の謎を、このふたりが解決する!
怪獣役のスーツアクターに憧れて、(食べてはいけないものの)何とか細々と仕事をもらえるようになってきた椛島だったが、着ぐるみを着たままプールに落ち、たまたま現場にいた巨漢だがぼんやりしている太田に助けられた。その時の恐怖からそれ以後着ぐるみに入れなくなった椛島の代役として急遽スーツアクターをさせられることになった太田は、自らの意志に反して、なかなか筋がいいようで、現場で重宝されるようになる。だが、元々やる気のなかった太田は、椛島がいないとやっていけず、椛島は自然に太田のマネージャーのようになる。そして、そんな撮影現場に持ちあがる不審な出来事を、豆田監督の指示によって、探偵よろしく調査し、解決する役目まで背負うようになるのである。撮影スタッフ間のいざこざや、過去の撮影時の出来事など、さまざまな要素が絡み合うが、怪獣映画の撮影現場という特殊な場所の舞台裏も垣間見られて興味深い。なんだかんだ言っても、人間っていいなと思わされる一冊でもある。
天使の棲む部屋 問題物件*大倉崇裕
- 2016/04/26(火) 18:33:30
大島不動産販売・販売特別室の若宮恵美子は、桁外れの「問題物件」のクレーム処理に悪戦苦闘、危機一髪のところを何度も犬頭光太郎という奇天烈な男に助けられている。文字通り人間離れした力を持つ犬頭は、前社長の遺児・大島雅弘が大事にしているぬいぐるみ・犬太の化身なのか…?そんな恵美子に新たに押しつけられたのは、アメリカのアリゾナ州の外れに建つ洋館だった。「天使の棲む部屋」と呼ばれる一室では、犯罪者ばかりが何人も拳銃自殺を遂げており、死者は50人とも100人とも言われているというのだが―。規格外の名探偵(!?)犬頭光太郎ふたたび!!喧嘩上等、ルール無用。ワケアリ物件など恐るるに足らず。なんでもありの破壊的ミステリー!
犬頭光太郎(&若宮恵美子コンビ)ふたたび、である。寝たきりの雅弘の病状も相変わらずであり、前作にも増して、ひど過ぎる物件対応ばかり押しつけられる恵美子である。なんとかなるとは到底思えない問題に立ち向かおうとするとき、どこからともなく現れて、少々手荒なやり方で解決へと導く犬頭光太郎も相変わらず無茶苦茶である。だが、結局は解決できてしまうのだし、雅弘を想う気持ちは人一倍強いので、絶対的に憎めないのである。ここはもうどんなに無茶苦茶でもいいのである。読み終わったばかりで、もう次の問題物件を速く見たいと思わされるシリーズである。
GEEKSTER 秋葉原署捜査一係 九重祐子*大倉崇裕
- 2016/02/28(日) 09:12:06
KADOKAWA/角川書店 (2016-01-28)
売り上げランキング: 183,142
2000年7月、秋葉原。九重祐子が捜査一係に着任したとき、事件はすでに始まっていた。食玩フィギュアを巡るトラブルが発生し、相談に来ていた男が、翌日遺体となって発見された。祐子は彼の相談を真剣に聞かなかったことに罪悪感を覚え、独自に捜査を始める。フィギュア店に潜入した祐子は犯人を見つけ出すことに成功するものの逆襲に遭う。ピンチに陥った祐子を救ったのは、謎の男・ギークスターだった。悪党に制裁を下す闇のヒーローとして街で噂になっているギーク(オタク)スター。正体を知った祐子は、反発を覚えながらも次第に惹かれ始める。秋葉原で続発する凶悪事件で、警察の組織捜査に限界を感じた祐子はギークスターの力を借りようとするが、断られてしまう。秋原葉の闇に潜む、悪を見つめるギークスターの目的は―!?
秋葉原を舞台にした物語だが、オタクが集う表の顔ではなく、その裏に潜む執着と復讐の渦に巻き込まれたような印象である。警察の無力さや、正義の味方ではない利己的なヒーローもどきが暗躍し、それが治安を守ることにもなっているのも皮肉である。種類は違えど、歌舞伎町の中国マフィアと警察のイタチごっこと似たものも感じる。暴行シーンは読んでいて気持ちのいいものではないが、警察官として揺れる胸の内は解らなくもない気がする。どちらにしても、どうにもならない街の事情にやるせなささえ感じてしまう。誰にも寄り添えない一冊でもある。
ペンギンを愛した容疑者*大倉崇裕
- 2016/01/30(土) 17:09:00
講談社
売り上げランキング: 250,020
「人間の視点では、この謎は解けません」
ペンギン屋敷の溺死体! 秘められた”殺意の証拠”をアニマル推理で解き明かせ! 警視庁「いきものがかり」の名(迷)コンビが大活躍!!
強面の窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子(うすき・けいこ)の名コンビが、動物にまつわるさまざまな難事件を解決する、大人気「コミカル・アニマル・ミステリー」シリーズです。
登場する動物はペンギン、ヤギ、サル、そして最も賢い鳥と言われるヨウム(オウムではないことに注目!)です。
警視庁の「いきものがかり」というべき、総務部動植物管理係のコンビの活躍を楽しめる4つの短編を収録した傑作集です。
表題作のほか、「ヤギを愛した容疑者」 「サルを愛した容疑者」 「最も賢い鳥」
何作目になっても、薄圭子巡査のおとぼけ(本人はそう思っていないだろうが)ぶりは相変わらずである。そして、ひとたび動物が関わってくると、繊細な観察力と見事な推理で、その場で起こった犯罪を暴いてしまうのも、相変わらずスカッとする。いやいやこの仕事に就いた須藤警部補も、次第にやりがいを感じてきているようだし、薄巡査にも親心のような愛情を持ってきているのも微笑ましく感じられる。どんどん息の合ったコンビになってきている気がする。いつまで動物ネタが続けられるか判らないが、もっとずっと見ていたいシリーズである。
BLOOD ARM*大倉崇裕
- 2015/07/18(土) 07:34:43
KADOKAWA/角川書店 (2015-05-30)
売り上げランキング: 562,375
ある山々に囲まれた地方の街で不可解な地震が頻発していた。ガソリンスタンドでアルバイトをしている沓沢の周りでは、奇妙な出来事が次々と起きていた。そして山へ向かった沓沢は、恐るべき現象に遭遇する。
なんというか、怪獣である。しかも壮大なスケール(?)の物語である。表面だけをみると特撮怪獣物語なのだが、その奥で行われている、世界的な規模での地球を守るという名目での隠ぺい工作に背筋が凍る思いである。怪獣はともかくとしても、現代にもありそうで疑心暗鬼に駆られる一冊である。
福家警部補の追及*大倉崇裕
- 2015/06/11(木) 18:40:02
狩秋人は未踏峰チャムガランガへの挑戦を控え、準備に余念がない。勇名を馳せた登山家の父・義之がついに制覇できなかった山である。義之は息子に夢を託して引退、この期に及んで登山隊の後援をやめると言った会社重役を殺害する(「未完の頂上」)。動物をこよなく愛する佐々千尋はペットショップの経営者。血の繋がらない弟は悪徳ブリーダーで、千尋の店が建っている敷地を売ろうとする。そもそも動物虐待の悪行に怒り心頭だった千尋は、弟を亡き者に……(「幸福の代償」)。『福家警部補の挨拶』に始まる、倒叙形式の本格ミステリ第四集。
刑事コロンボを思い出させる福家警部補である。とても刑事には見えない小柄で若い女性というキャラクタを生かし――と福家警部補地震は思っていないだろうが――これと目をつけたホシに近づき、しぶとく食らいついてじわじわと追いつめる。キャラクタとのギャップが相変わらずなんとも小気味よい。ここはドラマの配役に引きずられずに愉しみたい(とは言えときどきちらついてしまうのが鬱陶しい)。強面の男性刑事が現れると身構えている犯人も、きっと調子が狂うのだろうなぁ。最後の最後には自白に追い込む手腕は見事である。福家警部補の次の活躍も早く見たいシリーズである。
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