お奉行様のフカ退治*田中啓文

  • 2016/05/09(月) 17:14:53

お奉行様のフカ退治 (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2015-12-17)
売り上げランキング: 288,754

大坂の川に巨大なフカが現れた!折しも水練稽古の真っ最中だった西町奉行所の面々は大あわて。頼みの綱は人間離れの体格を誇る奉行の大邉久右衛門だが、実はまったくのカナヅチだったことがわかり―(表題作)。奸計もくろむ乾物問屋が仕組んだ料理対決。久右衛門の肝煎りで指名された料理人が、あっと驚く人物で―(「ニシンを磨け」)他、美味なる全3編を収録した食いだおれ時代小説第6弾。


今回も、お奉行様である大邉久右衛門は、よく呑みよく食べる。そして、久右衛門が食べるにふさわしい美味なるものがたくさん出てくるのでよだれが溢れそうになる。ことに、今回は、村越の母の作った鰊の昆布巻きが絶品である(食べていないが)。飲んだり食べたりしているだけのように見える久右衛門だが、結局はきちんと事件を解決してしまうのは今回もお見事である。人格者とは言い難いし、上司としては、部下は苦労が多いかもしれないが、人間的には情が深くて魅力的な久右衛門である。いつまでも続いてほしいシリーズである。

イルカは笑う*田中啓文

  • 2015/10/18(日) 16:38:44

イルカは笑う (河出文庫)
田中 啓文
河出書房新社
売り上げランキング: 3,492

最後の地球人と地球の支配者イルカの邂逅「イルカは笑う」、倒産した日本国が遺した大いなる希望「ガラスの地球を救え!」、ゾンビ対料理人「屍者の定食」、失われた奇跡の歌声が響く「歌姫のくちびる」…感動・恐怖・笑い・脱力、ときに壮大、ときに身近な12の名短編。日本人よ、これが田中啓文だ!


表題作のほか、「ガラスの地球を救え」 「本能寺の大変」 「屍者の定食」 「血の汗流せ」 「みんな俺であれ」 「集団自殺と百二十億頭のイノシシ」 「あの言葉」 「悟りの化け物」 「まごころを君に」 「歌姫のくちびる」 「あるいはマンボウでいっぱいの海」

SF&ホラーテイストといういささか苦手なジャンルではあり、グロテスク極まりない描写には一瞬立ち止まらざるを得なかったが、それでも田中啓文ここにあり、という物語であふれている。近未来のものは特に、捻りが効いていて、背筋がぞっとするほどである。元ネタを知っていても知らなくても愉しめ怖がれる一冊である。

お奉行様の土俵入り--鍋奉行犯科帳*田中啓文

  • 2015/08/02(日) 16:40:02

お奉行様の土俵入り (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2015-05-20)
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町奉行職をほったらかして、稽古後の飲み食い目当てで相撲部屋に入りびたる大邉久右衛門。いつものように力士もあきれるほどの食べっぷりを披露している最中、食うや食わずの弱小部屋の関取が侍に襲われたという報を耳にする。折しも難波新地では花相撲興行を控えており、なにか裏があるようなのだが―(「餅屋問答」)。豪快に食べまくる3編を収録した満腹絶倒の痛快時代小説、シリーズ第5弾!


第一話「餅屋問答」  第二話「なんきん忠臣蔵」  第三話「鯉のゆくえ」  

大邉久右衛門、相変わらずよく食べよく飲み、よく食べたがっている。だが、そのことで無理難題を吹っ掛けるというよりも、それが人助けや町の治安維持に貢献していると言った趣になっている。仕事を怠けて食べてばかりいるように見えて、その実結構いい仕事をしている(こともある)のである。周りの者たちも、なんだかんだ言いながら、役得に預かっているとも言え、苦労も絶えないが楽しそうな職場だなぁ、などと思ってしまう。次回は何を食べどんな粋な計らいをしてくれるのか愉しみなシリーズである。

京に上った鍋奉行*田中啓文

  • 2015/02/06(金) 18:30:34

京へ上った鍋奉行 (集英社文庫)京へ上った鍋奉行 (集英社文庫)
(2014/12/16)
田中 啓文

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大坂の町に、将軍家治のご落胤「天六坊」なる者が現れた。すわ天下を揺るがす一大事!のはずが、こんな時でも大食漢の西町奉行・大邉久右衛門の頭の中は美食の探究一辺倒。貧乏飯屋「業突屋」のトキ婆さんからもらったハゼを天ぷらにしたのだが、どうにも口に合わない。実は大坂と江戸の天ぷらには大きな違いがあって…(「ご落胤波乱盤上」)。他、型破り奉行が大活躍の2編を収録。シリーズ第4弾。


相変わらずの久右衛門である。たらふく食べては次の食事時まで寝ていることもよくあることで、周りも困りながらもそんなものだと心得ている風である。だが今回も、その食通ぶりがものを言って、事を解決してしまうのである。それが久右衛門の思慮深さによるものなのか、はたまた偶然の運によるものなのかは神のみぞ知る、である。とはいえ、ただ食べて寝ているだけではない懐の深さと人を見る目を披露した今作である。勇太郎と小糸の恋物語の進展は、今回も足踏み状態。何とももどかしいことである。次はどんなおいしいものが出てくるか愉しみなシリーズである。

ストーミー・ガール--サキソフォンに棲む狐Ⅱ*田中啓文

  • 2014/09/17(水) 16:44:10

ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐II (サキソフォンに棲む狐 2)ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐II (サキソフォンに棲む狐 2)
(2014/08/19)
田中 啓文

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父の死の謎と母娘に迫る黒い影が潜む街・新宿で、音楽と運命の嵐が吹き荒れる。さらに典子の音楽の道に立ちはだかる母との対決…。JAZZって何?人生で一番大事なものは何だろう?高校生・典子が、悩んで、苦しんで、楽しんで、疾走っていく本格ジャズ青春小説。ミステリーの楽しみと音楽の喜びが見事に合体した魅力溢れる長編完結編。


サキソフォンと出会い、ジャズと出会い、質屋で運命的に楽器と出会い、典子は運命のように荒波に漕ぎだしていくのである。トモキとは誰なのだろう。父の死の真相は。ジャズとは、自由とは。典子の頭の中は、はてなマークだらけだったが、ひとたびジャズに触れると、考えるより先に躰が動いてしまうのである。知らない方がしあわせだなどと言う人もいるかもしれないが、知った上で前を向いている典子をますます応援したくなる。ジャズのことはまったく知らないが、その漲るものの中に身を置いてみたくなる一冊である。

道頓堀の大ダコ--鍋奉行犯科帳*田中啓文

  • 2013/10/22(火) 16:38:29

道頓堀の大ダコ (鍋奉行犯科帳) (集英社文庫)道頓堀の大ダコ (鍋奉行犯科帳) (集英社文庫)
(2013/08/21)
田中 啓文

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道頓堀に巨大なタコが現れた。対処に大わらわの大坂西町奉行所の面々をよそに、大食漢の名物奉行・大邉久右衛門が用人・佐々木喜内に命じたのは―(『蛸芝居』)。連日連夜、豆腐ばかりの献立に、久右衛門は爆発寸前。どうやら財政難のせいばかりではないようで―(『地獄で豆腐』)。書き下ろし1編を含む垂涎必至の4編を収録。大坂を舞台に描く、謎あり恋ありグルメありの食いだおれ時代小説第2弾。


江戸物ではない時代小説が珍しいということもあり、やはり面白い。商人の町大坂らしく、武士の形無し感がなんとも味があり、可笑し味がある。久右衛門の食べっぷりも相変わらずで、胸が空くし、今回は南蛮料理がどれもおいしそうである。勇太郎の恋の行方も気にかかるが、いつの時代も女性の方が攻めているのが頼もしくもありもどかしくもある。次も愉しみなシリーズである。

シャーロック・ホームズたちの冒険*田中啓文

  • 2013/06/19(水) 16:44:06

シャーロック・ホームズたちの冒険シャーロック・ホームズたちの冒険
(2013/05/30)
田中 啓文

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シャーロック・ホームズ&アルセーヌ・ルパン、ミステリ界が誇る両巨頭の新たなる冒険譚。赤穂浪士討ちいりのさなか吉良邸で起こった雪の密室殺人。あのアドルフ・ヒトラーがじつは大変なシャーロキアンで…。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が日本に来た本当の理由とは。著名人の名推理に酔いしれる、連作短編集。奇才・田中啓文が贈る、ミステリ五番勝負!


ホームズやルパンはただでさえ謎に包まていて、あれこれと想像したりもしたし、名前を聞いただけでわくわくするが、それをこんな風に展開して見せるとは、著者もきっと想像たくましくあれこれと思い描いたのだろう。そして、それがここに結実したのだろう。当然のことながら、わたしなどの想像よりも何倍もぶっ飛んだ内容である。そうだったのか、と危うく信じそうにもなる(こともある)。想像力をかきたてられる一冊である。

鍋奉行犯科帳*田中啓文

  • 2013/01/14(月) 15:27:54

鍋奉行犯科帳 (集英社文庫)鍋奉行犯科帳 (集英社文庫)
(2012/12/14)
田中 啓文

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大坂西町奉行所に型破りな奉行が赴任してきた。名は大邉久右衛門。大食漢で美食家で、酒は一斗を軽く干す。ついたあだ名が「大鍋食う衛門」。三度の御膳が最優先で、やる気なしの奉行に、与力や同心たちはてんてこ舞い。ところが事件が起こるや、意外なヒラメキを見せたりする。ズボラなのか有能なのか、果たしてその裁きは!?食欲をかきたてる、食いだおれ時代小説。


大阪が舞台の時代小説(?)である。時代小説なので、西町奉行とか与力などという役職名がたくさん出てくるし、奉行の名には背けないという縛りもあるが、それ以外はいつの世にも通ずるコメディである(言い切ってしまっていいのだろうかあ)。だが、ただのドタバタで終わっているわけではなく、そこは著者であるので、ちゃんとミステリにもなっていて、胸のすくラストも用意されている。事件を解決すべく走り回っているのは西町奉行所の同心・村越勇太郎のたちようなきがしなくもないが、肝心要のところでの奉行・大邊久右衛門の裁きが実に見事なものなので、日ごろの食い意地に関わる我儘も許せてしまうのかもしれない。掛け値なく面白い一冊である。

獅子真鍮の虫*田中啓文

  • 2012/10/17(水) 16:45:11

獅子真鍮の虫 (永見緋太郎の事件簿) (創元クライム・クラブ)獅子真鍮の虫 (永見緋太郎の事件簿) (創元クライム・クラブ)
(2011/03/24)
田中 啓文

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クインテットでの活動を休止にして海外に旅立つ唐島に、同行すると言いだした永見。ニューヨーク、シカゴ、ニューオリンズでふたりが出合った、ジャズと不思議な出来事。“日常の謎”的ジャズミステリーシリーズ、第三弾。あこがれのミュージシャンが遺した楽器を手に入れた唐島を襲った災難、ニューヨークで管楽器の盗難事件に巻きこまれた永見が見いだした真相、シカゴで仲良くなった老人が行方不明になっていた伝説のジャズマンだったことに端を発した騒動の顛末…、など全七編を収録。田中啓文おすすめのジャズレコード、CD情報付。


表題作のほか、「塞翁が馬」 「犬猿の仲」 「虎は死して皮を残す」 「サギをカラスと」 「ザリガニで鯛を釣る」 「狐につままれる」

アメリカのジャズシーンめぐりのような趣である。そして、どこにいてもふらっといなくなったり、さらっと謎を解いたりする永見緋太郎である。マイペースなのはいつものことながら、音楽に関しては強い衝撃を受け、本場の洗礼をも受け、大きな影響を受けて成長もしたようである。相変わらず彼の中心は音楽なのである。ジャズにはまるで疎いが、お腹に響くような圧倒的な音に包まれた心地にもなった。永見緋太郎シリーズはこれをもって一旦おしまい、というのが残念な一冊である。

ウィンディ・ガール--サキソフォンに棲む狐 Ⅰ*田中啓文

  • 2012/10/11(木) 17:01:30

ウィンディ・ガール サキソフォンに棲む狐I (サキソフォンに棲む狐 1)ウィンディ・ガール サキソフォンに棲む狐I (サキソフォンに棲む狐 1)
(2012/09/15)
田中 啓文

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永見典子は須賀瀬高校一年生。吹奏楽部でアルトサックスを吹いている。父・光太郎は二年前に新宿で不審な死を遂げ、母の瑤子と二人暮らしだ。彼女の行動に異常に口出しする母に、反発する典子。そんな典子の秘密の親友は、彼女のサックスに棲みつくクダギツネのチコだ。譜面が絶対で、部員に命令を強制する顧問の高垣、いやな先輩・柿沢、厳しい練習、理不尽な説教、でも典子は仲間たちとレギュラー・オーディションやコンテストの準備に部活を頑張っていた。ところが、そんな吹奏楽部に、不思議で不吉なトラブルが次々に起こる。典子はチコの力を借りながら、トラブルを解決していく。一方、典子は父の最期の様子を知ろうと新宿に行き、ふと入ったライヴハウスでミュージシャン・坂木新のステージを観る。力強くさまざまなものを自由に表現するその演奏に強い衝撃を受け、典子は未知の音楽の魅力に導かれていく…。事件に、人に、音楽に、出会い、ぶつかり、悩みながら進む少女を描く連作小説。


うわぁ、ここで終わるの!?と思わず叫びたくなるラストである。一体自作ではどんな展開になるのやら。
永見典子は質屋でどこのメーカーのものとも知れぬ手作りらしいサックスと巡り合い、なんとか手に入れるが、そこには地狐(チコ)が棲みついていた。典子の父は永見光太郎。そしてサックス、と言えば、永見緋太郎と無関係とは思えないが、本作では関係性は明らかにされていない。そのうち明らかにされるのだろうか。一作目は、典子がジャズと出会うための導入篇のようだが、典子がどうジャズサックスとかかわっていくのかとか、父の死の真相とか、緋太郎との関係とか、二作目以降への期待がいやが上にも高まる一冊である。

天岩屋戸の研究*田中啓文

  • 2012/09/05(水) 20:38:15

天岩屋戸の研究 (講談社ノベルス)天岩屋戸の研究 (講談社ノベルス)
(2005/02)
田中 啓文

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<最後の審判>がいま、始まる!国史の嘘は暴かれるのか!?
“常世の森”に天岩屋戸が存在している……!?
<最後の審判>後の世界について書かれているという幻の預言書『伊邪耶(いざや)による黙示録』によると、伝奇学園の敷地内に広がる“常世(とこよ)の森”のある洞窟を開けば、世界はよきものへと一変するという。森に近づく者は容赦なく殺されていた。日本神話の根幹を揺るがす秘密に保志野(ほしの)・比夏留(ひかる)ら民俗学研究会が迫る伝奇ノベルス!


シリーズを締め括る一冊だからか、単にこのシリーズに慣れたからなのか、前二作に比べるときちんと納まるところに納まっている印象である。バラバラに見えた民俗学研究会の面々にもまとまりが見られ、顧問の薮田の正体も判明し、その目論見も明らかになる。規模としては実に壮大な物語なのだが、それが却ってばかばかしい可笑しさを盛り上げている。だがもしかしてもしかすると、これが真実の世の成り立ちだったりしてね、などと思わされるような思わされないような、ちょっとだけ思ってみてもいいかな、というような一冊である。ふふ。

邪馬台洞の研究*田中啓文

  • 2012/09/02(日) 21:51:03

邪馬台洞の研究―私立伝奇学園高等学校民俗学研究会〈その2〉 (講談社ノベルス)邪馬台洞の研究―私立伝奇学園高等学校民俗学研究会〈その2〉 (講談社ノベルス)
(2003/11)
田中 啓文

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私立伝奇学園の敷地内に拡がる立入禁止の“常世(とこよ)の森”には、卑弥呼の財宝が眠り、巨大な昆虫が生息しているという。仮面の男の出現、洞窟の地面から突き出した死体の手。近づく者は命を落とす!? 民俗学研究会のお荷物、諸星比夏留(ひかる)と、天才高校生保志野春信(ほしのはるのぶ)が事件を究明し、日本神話の根底を覆す異説に迫る!


シリーズ二作目も、パワー全開である。歴史の真相が思いもかけない駄洒落だったり、こじつけの謎解きだったり、まさにドタバタ劇である。が、ときにほろりとさせられるエピソードが織り込まれていたり、ロマンスの予感が挟み込まれていたりするので、飽きさせない。民俗学研究会の顧問・藪爺の真実は三作目で判るのだろうか。あまりの可笑しさにときどきガクッと気が抜けるような一冊である。

蓬莱堂の研究*田中啓文

  • 2012/08/31(金) 17:15:36

蓬莱堂の研究――私立伝奇学園高等学校民俗学研究会 その1

“常世の森”で続出する失跡事件、学園の秘密行事“蛭女山祭”中に現れる巨大な怪物、合宿中のいわくありげな旅館で発生する連続殺人!私立伝奇学園民俗学研究会を次々に襲う理不尽な事件に古武道の達人女子高生諸星比夏留と民俗学の天才高校生保志野春信が挑む。“かまいたちの夜2”の原作者が贈る学園伝奇ミステリの傑作。


基本的にはホラーであり、主人公たちは、おぞましく恐ろしい目にも当然遭うのだが、日常――と言っても一般的に思い浮かべる高校生の日常とはかなり異なりはするが――生活のそこここあちこちに駄洒落がちりばめられ、主人公が入部することになってしまった民俗学研究会の面々の個性的すぎるキャラクターと確固たる自説の突拍子もなさにおどろおどろしさを忘れることも度々である。馬鹿らしいと思ってしまうのは簡単ながら、ついついページを繰ってしまう一冊でもある。

こなもん屋馬子*田中啓文

  • 2011/11/14(月) 18:53:25

こなもん屋馬子こなもん屋馬子
(2011/10/20)
田中 啓文

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大阪の「こなもん」料理でお悩み解決!

悩みを抱えた人々が、吸い寄せられるように入った店には、「コナモン全般」と書かれた
看板と、でぶっと太った、どの方向から見ても文句無しの「大阪のおばはん」が……。
お好み焼き、たこ焼き、うどん、ピザ、焼きそば、豚まん、ラーメン…
蘇我家馬子(そがのやうまこ)がつくるどういうわけか絶品のひと皿と、店で展開される
ドタバタ大騒動が、来る客みんなをなぜか幸せな気分にしてしまいます。
読んだら無性に食べたくなる、やみつき必至の爆笑B級グルメ・ミステリー!


「豚玉のジョー」 「たこ焼きのジュン」 「おうどんのリュウ」 『焼きそばのケン」 「マルゲリータのジンペイ」 「豚まんのコーザブロー」 「ラーメンの喝瑛」

建物と建物の隙間から滲み出てきたようなちっぽけで汚い店構えのこなもん屋「馬子屋」が舞台である。とはいっても、この店、決まった場所にあるわけではない。それぞれのタイトルにもなっている迷える男が、酔った挙句に迷い込むようにして見つけ、その味にほれ込んでしばらく通う内に、ほかの客の持ち込んだ厄介ごとを解き明かし、それに連れて男の抱えている問題まですっきり解決してしまうと、いつのまにか跡形もなくなっているのである。店主の蘇我家馬子もただひとりの店員・イルカも果たして実在するのだろうか、と関係者全員が疑うのだが、あるときまたどこかで、酔って迷い込む男がいるのである。見るからに大阪のおばちゃん然としているが、料理の腕前といい、腕っ節といい、鋭すぎる洞察力や推理力といい、ただ者ではない。きょうも大阪のどこかでおいしそうな湯気を立てながら他人の厄介ごとを解決しているのだろうな、と思わされる一冊である。

ハナシがうごく!*田中啓文

  • 2011/11/01(火) 16:58:25

ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺 4 (笑酔亭梅寿謎解噺)ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺 4 (笑酔亭梅寿謎解噺)
(2010/02/26)
田中 啓文

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笑いと涙の青春落語ミステリー第4弾!
ツッパリ落語家・竜二にCDリリースのオファーが!? 師匠の梅寿はついに人間国宝に!? 芸人としての大きな迷いに直面し、それでも落語という芸の奥深さに魅了されていく竜二の、感動の成長譚。


梅寿はじめ笑酔亭一門の面々は相変わらずである。竜二も少しは成長したかと思えば相変わらず芸に迷っているようである。そして、これもいつものことだが、とんでもない事態に陥り、大博打を打つように臨むのであるが、なぜかいつも最後には――ずいぶんひどい目にあるのではあるが――運命が味方してくれる、ようでもある。梅寿のちゃらんぽらんさから垣間見える弟子思いで芸に打ち込む姿は、楽さが大きく滅多に見せないだけに胸打たれるが、いつもそうあってくれたらどんなにか、と思わなくもない。そうなったらちっとも面白くはないが。竜二も行きつ戻りつしながらじりじりと成長しているようだし、次も愉しみなシリーズである。