ツバキ文具店*小川糸

  • 2016/09/12(月) 16:34:49

ツバキ文具店
ツバキ文具店
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小川 糸
幻冬舎 (2016-04-21)
売り上げランキング: 2,551

言いたかった ありがとう。言えなかった ごめんなさい。
伝えられなかった大切な人ヘの想い。あなたに代わって、お届けします。

家族、親友、恋人⋯⋯。
大切に想ってっているからこそ、伝わらない、伝えられなかった想いがある。
鎌倉の山のふもとにある、
小さな古い文房具屋さん「ツバキ文具店」。
店先では、主人の鳩子が、手紙の代書を請け負います。
和食屋のお品書きから、祝儀袋の名前書き、
離婚の報告、絶縁状、借金のお断りの手紙まで。
文字に関すること、なんでも承り〼。


事情があって母親を知らず、ツバキ文具店の先代でもある厳しい祖母に育てられた鳩子(ポッポちゃん)は、ある時、鬱積していた思いをぶつけるように祖母に反抗し、家を飛び出して海外を放浪するようになる。そして祖母の最期も看取らないままだったのだが、ひょんなことから鎌倉に帰り、ツバキ文具店を再開することになる。文房具屋はもちろん、代筆行を請け負っていくうちに、反発していた先代の教えが自分の隅々まで沁みこんでいることにいまさらながら気づき、後悔を深くする鳩子でもある。ご近所さんや、お客さんなど、知り合った人たちとのご縁が、鳩子の暮らしを少しずつ豊かにしていく様は、見ていてほっとさせられる。先代であるおばあちゃんも、きっとどこかで見守っていてくれることと思う。鳩子が代筆した手紙が、そのまま手書き文字で載っているのも、その折々に込められた思いが伝わるようで、しみじみとさせられる。失くしてしまったものは二度と取り戻せないけれど、新しく手に入れられるものもたくさんあるのだと、望みを抱かせてくれる一冊でもある。

サーカスの夜に*小川糸

  • 2015/02/25(水) 16:51:58

サーカスの夜にサーカスの夜に
(2015/01/30)
小川 糸

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離ればなれになった両親とかつて一緒に見たサーカス。忘れられないその不思議な世界の一員になることを目指して入団した少年の前に現れる、自由で個性の強い人々。クラウン、ピエロ、ブランコ乗り、ジャグラー、そして美味しいお菓子やスープを作ってくれるコック。少年は少しずつ綱渡りを学んでゆく。心躍る物語。


大病を患い、治ってからも成長が止まったままの少年は、ある日偶然見たチラシでサーカスのことを知り、かつて両親と一緒に見に行った輝かしい舞台に魅せられるように、育ててくれたグランマの元を出てサーカス団を目指す。サーカスのメンバーたちの過酷な生き様や、厳しい日々のなかで、少しずつ少年が逞しくなっていくのを応援したくなる。夢の裏側の物語とも言える一冊である。

リボン*小川糸

  • 2013/07/26(金) 21:35:33

リボン (一般書)リボン (一般書)
(2013/04/11)
小川糸

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宝物は、一緒に過ごした時間のすべて。

ある日、なかよしのおばあさんと少女が小さな鳥の卵を見つけ、ふたりで大切にあたためはじめる。
少女のてのひらの上で生まれたのは、一羽のオカメインコ。
黄色い小鳥は、羽ばたきとともに人々をやさしく結びつけていくのだった。
懸命に生きる人々の再生を描く物語。

この作品から生まれた小さな物語『つばさのおくりもの』も同時刊行。


リボンはバナナになり、スエヒロになり、スー坊になり、そしてまたリボンになる。人の手で慈しまれて生まれ出た一羽の黄色いオカメインコは、呼び名は違っても、そのときどきにそれぞれの場所で出会った人々をほんのりしあわせにして、また旅立つのである。人が胸の中に大切にしまってある宝物が形を持って現れたような心温まる一冊である。

私の夢は*小川糸

  • 2012/06/28(木) 14:22:09

私の夢は (幻冬舎文庫)私の夢は (幻冬舎文庫)
(2012/04/12)
小川 糸

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カナダのカフェで食べたふわふわのワッフル。モンゴルの青空の下、遊牧民と調理した羊のドラム缶蒸し。旅の最終日にバーテンダーが作ってくれたコーヒー味のオリジナルカクテル。石垣島での真夜中の潮干狩りや、ベスト・オブ・クラムチャウダーを決めるべく決行した飲み歩き。旅先で出会った忘れられない味と人々。美味しい旅の記録満載のエッセイ。


ほんとうにおいしそうな旅の数々である。おいしいだけでなく、困難に立ち向かったり、産みの苦しみ(物語のであるが)も記されているのだが、それらを凌いでやはりおいしそうなのである。たぶん著者の直観と嗅覚がおいしいものに吸い寄せられるのだろうとわたしには思えてならない。掌編とも言えない指編くらいのたくさんのエッセイである。愉しい読書タイムになること請け合いの一猿。

あつあつを召し上がれ*小川糸

  • 2012/05/30(水) 18:26:09

あつあつを召し上がれあつあつを召し上がれ
(2011/10)
小川 糸

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一緒にご飯を食べる、その時間さえあれば、悲しいことも乗り越えられる――
幸福な食卓、運命の料理とのふいの出会いを描き、深い感動を誘う、7つの物語


「バーバのかき氷」 「親父のぶたばら飯」 「さよなら松茸」 「こーちゃんのおみそ汁」 「いとしのハートコロリット」 「ポルクの晩餐」 「季節はずれのきりたんぽ」

思い出の食卓、別れの食卓、決心の食卓、さまざまな状況で食べる、さまざまな料理。けれどそのひとつひとつが、当人にとっては何物にも代えがたいいものなのだろう。丁寧に作られた料理を、心を込めていただくことのかけがえのなさを改めて教えられるような一冊である。そして、大切にいただくことができれば、あしたもまた生きていけるときっと思えるだろう。

つるかめ助産院*小川糸

  • 2011/01/28(金) 17:05:17

つるかめ助産院つるかめ助産院
(2010/12/03)
小川 糸

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辛い出生の秘密を抱えるまりあは、ある日突然失踪した夫を探して、南の島をおとずれる。島の助産院の先生から予期せぬ妊娠を告げられて―。すべての命に贈る、誕生と再生の物語。「今ここにいる」ことの奇跡を力強く描き出す感動長編。


自分が幸福だと一度も思ったことのない主人公まりあは、突然いなくなった夫を探して――とは言っても自分でも見つかるとは思っていないようなのだが――南の島へやってきた。そこで助産院を開いているつるかめ先生(鶴田亀子)に声をかけられ、成り行きで助産院にお邪魔することになるところからはじまる物語である。
なんとまりあは夫・小野寺君との子どもを宿しており、妊婦として島で暮らすことで、寄りかかっているばかりの自分から誰かのためになにかをする自分へと少しずつ変わっていくのだった。
小野寺君のこととか、島の人たちの抱える事情とか、細かいあれこれで表面的な描写でさらっと流した感じがなくもないが、全体的にみれば生きること、育むことの戦いとも言える壮絶さと、人のなかにいることの安心がよく伝わってくる一冊である。
「都会の人はがんばってリラックスする」という言葉が印象的だった。

喋々喃々*小川糸

  • 2010/03/28(日) 08:38:30

喋々喃々喋々喃々
(2009/02/03)
小川 糸

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東京・谷中でアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む栞(しおり)。きものを求めるお客ばかりでなく、ご近所さんもふらりと訪れては腰を落ち着ける、小さなこの店に、ある日、父とそっくりの声をした男性客がやってくる。その人は、栞の心のなかで次第に存在感を増していき――人を大切に思う気持ち、日々の細やかな暮らしが、東京・下町の季節の移ろいとともに描き出される、きらめくような物語。
谷中・根津・千駄木近辺に実在するお店や場所も多数登場し、街歩き気分も楽しめる作品。『食堂かたつむり』で鮮烈なデビューを果たした小川糸の第二作。

【喋々喃々(ちょうちょうなんなん)】男女がうちとけて小声で楽しげに語りあう様子。


谷中辺りの歳時記をも思わせる物語である。静かに穏やかに、寺町特有であろう季節の風物と、日々のお菜やときどき食べる贅沢な食べ物、そして、その場所で暮らす人々のあたたかな心持ちが、趣ゆたかに丁寧に描かれていて、読者も豊かな心地になれる。
だが、描かれている恋はいかんせん道ならぬ恋である。その一点が誠に残念である。未来が明るい恋だとしたら、乞ういうしっとりとした風情はだせなかったのかもしれないが、それにしても残念である。栞と春一郎さんが、こんな風に豊かな時を過ごしているときも、妻と10歳の小春ちゃんは家で夫の、父の帰りを待っているのである。知っているのだとしても、知らないのだとしても、その残酷さがどうしても透けて見えてしまうので、二人の過ごす時の波には胸が騒いでしまうのだった。

食堂かたつむり*小川糸

  • 2008/06/18(水) 13:27:12

食堂かたつむり食堂かたつむり
(2008/01)
小川 糸

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失ったもの:恋、家財道具一式、声
残ったもの:ぬか床

ふるさとに戻り、メニューのない食堂をはじめた倫子。
お客は一日一組だけ。
そこでの出会いが、徐々にすべてを変えていく。


きっかけはインド人の恋人に、家財道具一式を持ち逃げされて捨てられたこと。でもそれは、前々からずっとやりたかったことだった。料理を作ること、その料理を食べた人のしあわせな顔を見ること。倫子は、ふるさとの村で「食堂かたつむり」という名の小さいけれど、自分の夢のなにもかもが詰まった食堂をひらいたのだった。
痛みを抱えて不本意ながらふるさとに戻り、気の合わない母に厄介になりながら、夢だった料理を作る仕事をはじめるという、切実ながらメルヘンチックな物語である。倫子が作る料理はどれも食材を無駄にせず真心こめて大切に扱われ、食べる人のことも丁寧に考えて作られるので、食べた人をしあわせにする。読んでいて安らげる設定・・・・・のはずなのだが、なぜかこの世界にどっぷりと浸ることができずに読み終えてしまった。
すでにあるあの人やこの人のあれやこれを集めて混ぜ合わせたような感じがしてしまったからかもしれない。今回は、ちょっと素直ではない読者なのだった。

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