コンビニ人間*村田沙耶香

  • 2017/02/18(土) 20:37:35

コンビニ人間
コンビニ人間
posted with amazlet at 17.02.18
村田 沙耶香
文藝春秋
売り上げランキング: 122

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。


幼いころから「普通」という括りに入らず、周りから疎まれていた古倉恵子は、なるべく外界と関わらないように生きてきたが、大学生の時偶然出会ったコンビニでアルバイトを始める。そこでは、指示通りに行動していれば、「コンビニ店員」として生きていけると悟った彼女は、日々指示通りに真面目に働くのである。コンビニには、自分を必要としてくれる人がいて、社会の歯車として誰かの役に立つことができるのである。常識とか普通といわれる価値観が備わっていない人間の生きづらさと、周囲の無理解が浮き彫りにされている。自分の価値観で他人を量っている限り、無意識に誰かを傷つけていることもあるのかもしれないと思わされもする。理解できるとは言えないが、閉ざしてはいけないと思う一冊である。

しろいろの街の、その骨の体温の*村田沙耶香

  • 2016/03/30(水) 07:26:19

しろいろの街の、その骨の体温の
朝日新聞出版 (2013-03-11)
売り上げランキング: 29,325

クラスでは目立たない存在である小4の結佳。女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、習字教室が一緒の伊吹陽太と仲良くなるが、次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、ある日、結佳は伊吹にキスをする。恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら彼らは中学生へと進級するが――野間文芸新人賞受賞、少女の「性」や「欲望」を描くことで評価の高い作家が描く、女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。


小学4年生という、ことに女子にとっては自分の躰のなかで起こる激動に心がついていかずにあたふたする年頃である。男子との精神年齢のギャップもいちばん目立つ頃ではないだろうか。そんな年頃の自意識過剰の結佳と、まだまだまったくのお子ちゃまの伊吹との歪んだ関わり、表皮だけでつきあう級友たち、クラス内カーストを必要以上に意識し、蔑まれながらもあらゆる人たちを見下すという複雑な精神構造。描かれることすべてに思い当たることがある人も少なくないことと思う。もちろん程度の差はあるが。それにしても伊吹がひとり――空気を読めないのか、一瞬にして全体の空気を読めすぎるのか――超越していてかっこよすぎる。舞台設定も見事だと思う一冊である。

ギンイロノウタ*村田沙耶香

  • 2016/03/29(火) 13:26:18

ギンイロノウタ
ギンイロノウタ
posted with amazlet at 16.03.29
村田 沙耶香
新潮社
売り上げランキング: 466,045

私となんの関係もないあなたを、私は殺したい。ブログで、書評で、注目度No.1の新鋭、最新作品集。


表題作のほか、「ひかりのあしおと」

初読みの作家さんである。好みが分かれるという評判は聞いていたけれど、さもありなんという感じ。思春期の、自分で自分を制御しきれず、自分の躰の中で何かが暴れ出して、皮膚を突き破って出てきそうな焦燥感とか歯がゆさとか、いらだちなどが、とても適切に描かれていて、この年齢で読むから訳が分かるけれど、思春期ど真ん中の人たちが読んだらどんな感想を抱くのか、気になるところでもある。大人との関係や、自分の存在そのものに対する懐疑。程度の差こそあれ誰しも通ってくる道である。大多数は、なんでもないことのような外側をしてやり過ごすのだろうが、それができない不器用さで真正面から立ち向かう姿は痛ましくも逞しい。人の成長っていろいろ大変なのだと改めて思わされる一冊でもある。

お任せ数学屋さん*向井湘吾

  • 2015/05/19(火) 17:01:59

お任せ!  数学屋さん (一般書)
向井 湘吾
ポプラ社
売り上げランキング: 186,279

数学が苦手な中学二年生の遥の前に、不思議な転校生・宙がやってきた。「数学で世界を救うこと」が将来の夢だと語る彼は、ある日突然、どんな悩みでも、数学の力で必ず解決してくれるという、「数学屋」なる謎の店を教室内で開店する。はじめは遠巻きに見ていた遥も、店を手伝いはじめることに…。どんな相談事も華麗に解決していく二人だが、投書箱に届けられたある一通の悩み相談の手紙から、数学では解けそうにない「人の感情」という、超難問にぶつかることに。彼らは果たしてどんな答えを導くのか!?数学嫌いも夢中にさせる、感動の青春数学小説。


転校生、神之内 宙(じんのうち そら)は、どうやらかなり変わった人物のようである。いつも本を読んでいて、友人を作ろうともせず、暑いのに学ランのホックをすべて留め、どうやら本気で数学で世界を救おうとしているらしい。数学で悩みを解決する数学屋を始めた宙に、隣の席になった天野遥は、少しずつ彼に興味を抱き始め、それをきっかけに、遥の友だちとの接点もできるようになり、数学屋にも客が来るようになっていく。中学生活と人間関係に絡めて数学の面白さを描いているのだが、きゅんとさせられる場面も折り込まれ、愉しんで読める。宙くんが駆け抜けるようにいなくなってしまって寂しい一冊である。

お任せ!数学屋さん 2*向井湘吾

  • 2015/05/15(金) 18:47:14


「数学屋」にピンチ到来!?天才数学少年・宙と体育会系女子・遥の凸凹コンビが営んでいた、摩訶不思議なお店「数学屋」。日常の困り事から恋愛相談まで、中学の同級生から寄せられるどんな問題でも「数学」を使って華麗に解決してきた人気のお悩み相談所だったが、宙のアメリカへの転校によって最大の危機を迎える。宙の不在により、たった一人で「数学屋」を引き継ぐことになった遥の前に、一筋縄ではいかない難問が持ち込まれたのだった…


1から読んだつもりだったのに、うっかり2を先に読んでしまったので、初めから数学屋・宙(そら)くんはボストンに行ってしまっているし、これまでの経緯は判らないが、物語自体は一話完結的な作りになっているので、充分愉しめる。数学は基本的に苦手だが、数学の美しさと有用性がとてもよく伝わってきて、きゅんとさせる青春小説でありながら、ちゃんと出来事に決着もつけ、さらに数学の素晴らしさも啓蒙してしまうという盛りだくさんさが成り立っているのが見事である。魅力的な中学生たちの一冊である。

小福歳時記*群ようこ

  • 2014/02/13(木) 17:03:44

小福歳時記 (集英社文庫)小福歳時記 (集英社文庫)
(2013/07/19)
群 ようこ

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身だしなみの手を抜くと、おばさんではなく、なぜかおじさんに近づいてしまう50代。節分の豆を年の数だけ食べるのがきつくなり、体型崩壊により似合う服を探すのに四苦八苦、老後のための貯金はままならず…。思う通りにはならない人生、でもできないことはしょうがない。がんばらない、しがみつかない、無理しない。まずは身辺の小さなことからひとつずつ。さりげない日常を綴る極上エッセイ。


背伸びせず、ありのままのこのごろのことが綴られているようなエッセイである。思い当たること、身につまされることも多々あり、思わず「そうそう」と膝を打つことも度々である。物を減らす努力をしなくては、甘いものを食べすぎないようにしなければ、と自分に言い聞かせた一冊である。

財布のつぶやき*群ようこ

  • 2013/02/02(土) 20:49:28

財布のつぶやき      (角川文庫)財布のつぶやき     (角川文庫)
(2011/02/25)
群 ようこ

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50歳をすぎてようやく考えるようになったこと、それは老後の経済―。蓄えは実家の住宅ローンで消える運命にある。毎年の税金も悩みの種。老後に必要なお金を計置して愕然とし、家計簿をつけてはみたけれど、挫折の繰り返し。スーパーで小さな節約をしたのに、その直後に大散財。どんぶり勘定から脱却し、堅実な生活を送れるのはいつの日か?誰もが直面する「お金」の問題を、率直かつユーモラスに綴ったエッセイ集。


ある程度以上の年齢になると、財布のつぶやきも切実になる。それがよくわかるので、共感できる部分がたくさんあって、友人とお茶飲み話をしているような心地であった。ずぼら料理も楽チンながらおいしそうで、試してみたくなる。切実ながら愉しい一冊。