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蟻の菜園-アントガーデン-*柚木裕子

  • 2015/09/23(水) 07:14:08

蟻の菜園 ―アントガーデン― (『このミス』大賞シリーズ)
柚月 裕子
宝島社
売り上げランキング: 48,500

婚活サイトを利用した連続不審死事件に関与したとして、殺人容疑がかかる円藤冬香。しかし冬香には完璧なアリバイがあり、共犯者の影も見当たらなかった。並外れた美貌をもつ冬香の人生と犯行動機に興味を抱いた週刊誌ライターの由美は、大手メディアを向こうに回して事件を追いはじめる。数奇な運命を辿る美女の過去を追って、由美は千葉・房総から福井・東尋坊へ。大藪賞作家が満を持して放つ、驚愕と慟哭の傑作サスペンス!


マスコミによる報道のされ方や世間の受け止め方とは別の視点で、連続不審死事件に至る真実に迫ろうとするフリーライターの由美が主人公ではあるのだが、実質的には、東尋坊で父親に虐待され続けて育った姉妹の物語である。連続殺人の容疑者である美貌の円藤冬香には完璧なアリバイがあり、殺人を証明するのは難しいのだが、つながらなかったたった一本の電話から、由美が、知り合いに紹介された事件記者・片芝の協力を仰ぎつつ、取材と想像力によって導き出した答えに驚愕する。だが、それは事件の残忍さにというよりも、姉妹の逃れられない苦悩にと言った方がいいかもしれない。ただ、幼いころのことがあるとはいえ、妹の転落ぶりがいささか安易な気がしなくもないのが多少残念でもある。彼女たちにとっては最後まで救いのない物語であり、気持ちのやり場に困る一冊でもある。

パレードの誤算*柚月裕子

  • 2015/06/24(水) 06:56:59

パレートの誤算
パレートの誤算
posted with amazlet at 15.06.23
柚月 裕子
祥伝社
売り上げランキング: 116,991

念願の市役所に就職がかなった牧野聡美は、生活保護受給者のケアを担当する事になった。 敬遠されがちなケースワーカーのという職務に不安を抱く聡美。先輩の山川は「やりがいのある仕事だ」と励ましてくれた。その山川が受給者たちが住むアパートで撲殺された。受給者からの信頼も篤く、仕事熱心な先輩を誰が、なぜ? 聡美は山川の後を引き継いだが、次々に疑惑が浮上する。山川の知られざる一面が見えてきたとき、新たな惨劇が……。


生活保護受給者とケースワーカーに焦点を当てた物語である。生活保護受給者のさまざまな事情と、それを悪用する貧困ビジネス。そして、受給者に親身に向き合い、あるいは自らの在りように葛藤し、職務の意味に疑問を抱きつつ、あまりにも多い案件を抱えながらも日々奮闘するケースワーカーたち。どうにもならないやりきれなさと、憤り、行き止まりまで追い詰められた時に一条の光となってくれる存在のことなど、さまざまなことを考えさせられる一冊だった。

スマドロ*悠木シュン

  • 2014/07/06(日) 21:05:13

スマドロスマドロ
(2014/05/21)
悠木 シュン

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ひとりの女性のモノローグから物語は始まる。登場人物が繋がっていく複雑な人間関係。
一章ごとに増えていく相関図! 一度読んだらもう一度読みたくなる、パズルのような群像劇!!
第35回小説推理新人賞受賞。選考委員をうならせたデビュー作!


 第一章 スマートクロニクル
 第二章 ジーニアスJr.
 第三章 Dog Eat Dog
 第四章 HERO
 第五章 Mr.レジェンド

各章の最後に記されている人物相関図を見て判るように、章ごとにどんどん人間関係が絡まり合い繋がり合っていく。なんと狭い世界なのだろう。タイトルのスマドロは、世間を騒がすスマートな泥棒であり、その知名度にあやかったアイドルグループ・スイートドロップでもあるのだが、これがタイトルになっている意味がいささか弱いような気がする。相関図がどんどんつながっていく中で、ひとつの出来事が別の角度から描かれることで立体的に浮かび上がってくる面白さはあり、それがもっと幾層にもなっていたらもっと面白かったのではないかと思う。中途半端さが勿体無かった一冊である。

バージンパンケーキ国分寺*雪舟えま

  • 2013/07/28(日) 17:03:12

バージンパンケーキ国分寺バージンパンケーキ国分寺
(2013/05/10)
雪舟 えま

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女子高生のみほは、おさななじみの男子・明日太郎が、親友の久美と付き合い始めたことに、経験したことのない想いを抱く。そんなとき、町で不思議なパンケーキ屋さんに出逢う。店主のまぶさんが魔法のように作り出すパンケーキを食べ、みほはある決意をかため…。女子高生、白髪あたまの雲の写真家、旅行中の外国人女性ふたり組、訪れたすべての人が幸せに。ここは三百種類ものパンケーキと、温かな笑顔が集う場所。「バージンパンケーキ国分寺」へようこそ。


パンケーキと聞くだけでしあわせな気分になるのはなぜだろう。それだけでもう否応なく吸い寄せられてしまう。そしてそのまま物語の世界に浸りこんでしまうのだった。それぞれに由来のある独特のパンケーキは、店主のまぶさんによって、来店した人に寄り添うように作りだされていく。みほと久美と明日太郎のあれこれや、常連客の来し方のこと、そして店主のまぶさんの歩んできた道。なんでもないようにバージンパンケーキ国分寺に集まっている人たちにも、それぞれが主役になる物語があるのだと改めて気づかされる。夢のような希望のようなちょっぴり切なくしあわせな一冊である。