Dの殺人事件、まことに恐ろしきは*歌野晶午

  • 2016/12/16(金) 16:59:14

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは
歌野 晶午
KADOKAWA (2016-11-02)
売り上げランキング: 121,659

トリックと幻想は紙一重。ミステリの鬼才×乱歩、驚愕のミステリ短編集!

歌野晶午×江戸川乱歩――貴方を「非日常の興奮」に導く、超ミステリが誕生!
『葉桜の季節に君を想うということ』の異才が、刺激的なサプライズと最新テクノロジーで現代に蘇らせる乱歩ミステリ集!


カメラマンの「私」が渋谷の道玄坂で出会い、交流するようになったのは、賢いが生意気な少年・聖也。
その日も私は道玄坂のダイニングバーで聖也と話していたが、向いの薬局の様子がおかしい。駆けつけた私たちが発見したのは、カーペットの上に倒れた、上半身裸の女性だった。
その後、私と聖也は事件を探り始める。しかし、私はあることに気がついてしまい、元の世界には戻れなくなっていた――(表題作)。

「人間椅子」「押絵と旅する男」「D坂の殺人事件」「お勢登場」「赤い部屋」「陰獣」「人でなしの恋」「二銭銅貨」……サプライズ・ミステリの名手が、新たな魅力を吹き込む!


江戸川乱歩の、ただでさえおどろおどろしい作品に、著者らしい仕掛けが織り込まれて、現代によみがえった感じである。ある時を境にして、その前と後ではがらっと様相が変わり、読み手の印象も一瞬にして裏返るのである。その醍醐味は、何度でも味わいたくなる。わくわくぞくぞくする一冊だった。

ずっとあなたが好きでした*歌野晶午

  • 2014/12/10(水) 18:26:06

ずっとあなたが好きでしたずっとあなたが好きでした
(2014/10/14)
歌野 晶午

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甘く切なく、ちょっと痛い恋の話いろいろ

国内外の様々な場所で、いろいろな男女が繰りひろげる、それぞれの恋模様。サプライズ・ミステリーの名手が贈る恋愛小説集……だが?


歌野晶午氏が恋愛小説?と?マークいっぱいでずいぶん長いこと読み進んだ。さまざまな年代、日本だけにとどまらない各地が舞台、状況も設定も実にさまざま。だがどれも恋愛小説なのである。それがあるところで「え!?」となる。もしやこれは……。さすが歌野氏である。そうだったのか、と腑に落ちる一冊である。

舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵*歌野晶午

  • 2013/01/30(水) 16:52:36

舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵 (カッパ・ノベルス)舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵 (カッパ・ノベルス)
(2010/10/20)
歌野 晶午

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ゲームとダンスが大好きで、勉強と父親は嫌い。生意気盛りの中学二年生・舞田ひとみが、小学校時代の同級生・高梨愛美璃と再会したのは、愛美璃が友人たちと、募金詐欺を繰り返す胡散臭い女を尾行していた時だった。数日後、女は死体で発見されて―。驚きのひらめきと無限の想像力で、ひとみは難事件に挑む!14歳の少女たちの日常と、彼女たちの周りで起こる不思議な事件をいきいきと描いた異色の本格ミステリ、シリーズ第二弾。


舞田ひとみシリーズ第二弾。
語るのはひとみの小学生時代の同級生で、いまは私立の森海学園中学に通う高梨愛美璃だが、もちろん主役である探偵役は舞田ひとみである。「私」という一人称を使うのがひとみではなく愛美璃なので、ときどき軽く混乱するが、次第に慣れてくる。中学生にしてこの観察力と洞察力はお見事というしかないが、なんとなく恵まれない境遇っぽいのに、あっけらかんとして見えるキャラクタのおかげか、切れ者という雰囲気が全くないのが同年代に反感を抱かれない秘訣――本人は意図していないと思うが――だろうか。なんだかんだと面倒見のいいところがあるのが苦労人っぽくもある。がんばれひとみ、と応援したくなる一冊である。

春から夏、やがて冬*歌野晶午

  • 2011/11/17(木) 07:38:57

春から夏、やがて冬春から夏、やがて冬
(2011/10)
歌野 晶午

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スーパーの保安責任者の男と、万引き犯の女。偶然の出会いは神の思い召しか、悪魔の罠か?これは“絶望”と“救済”のミステリーだ。


「ラスト5ページで世界が反転する!」という帯文はない方がより愉しめたのではないか、と思う。確かに惹きつけられるフレーズではある。だがそれ故に半分読者の愉しみを奪っていると言えなくもない。心に傷を負ったスーパーの保安責任者の男・平田と、居場所を見つけられずに自分から傷ついている若い女・末永ますみの、ひとときの心の通い合いを描きながら、それぞれが傷ついたわけを探るような物語である。やさしさなのか、哀れみなのか、自己満足なのか。おそらくそれらすべてが入り交じったひとときだったのだろう。誰も救われず、なにも解決せず、空しさとやるせなさばかりが残る一冊だった。

密室殺人ゲーム・マニアックス*歌野晶午

  • 2011/11/06(日) 14:22:35

密室殺人ゲーム・マニアックス (講談社ノベルス)密室殺人ゲーム・マニアックス (講談社ノベルス)
(2011/09/07)
歌野 晶午

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“頭狂人”“044APD”“aXe”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なハンドルネームを持つ5人がネット上で日夜行う推理バトル。出題者は自ら殺人を犯しそのトリックを解いてみろ、とチャット上で挑発を繰り返す!ゲームに勝つため、凄惨な手段で人を殺しまくる奴らの命運はいつ尽きる!?


シリーズ第三弾。
今回はゲーム自体が密室を抜け出してインターネット上に曝け出され、さらに厭な感じになっている。いままでどおりの殺人ゲームはもとより、それを見ながら推理を愉しむ観客的な第三者が描かれ、しかも、思ってもみない終わり方で、著者の上手さとは別に、ますます眉を顰めたくなる一冊でもある。

ROMMY 越境者の夢*歌野晶午

  • 2011/10/22(土) 18:44:22

新装版 ROMMY 越境者の夢 (講談社文庫)新装版 ROMMY 越境者の夢 (講談社文庫)
(2011/01/14)
歌野 晶午

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人気絶頂の歌手ROMMYが、絞殺死体となって発見された。ROMMYの音楽に惚れ込み、支え続けた中村がとる奇妙な行動。一瞬目を離した隙に、ROMMYの死体は何者かに切り刻まれ、奇妙な装飾を施されていた―。一体誰が何のために?天才歌手に隠された驚愕の真相とは。新本格の雄、歌野晶午の真髄がここに。


ROMMYが殺された当日と、過去とを行ったり来たりしながら物語りは進み、読者はROMMYに対する理解を少しずつ深めていくことになる。それと共に、事件当日スタジオに集まっていた人びとのROMMYに対するスタンスも明らかになっていく。過去語りの部分では、ROMMYになる前の杉下裕美が描かれ、裕美と共にROMMYを生み出した中村茂が語られる。不遇な時代を乗り越えて絶頂に達したところでの事件だったことがよくわかる。歌野氏なので、どこかに仕掛けがないわけがないと目を凝らして読み進んだが、やはり意表を突かれることになった。ROMMYのパフォーマンスのわけは、そして中村のあの行動のほんとうの理由はそういうことだったのか、と頷かされるのだった。哀しく切ないが、深い深い愛の物語でもあると思わされる一冊である。

放浪探偵と七つの殺人 増補版*歌野晶午

  • 2011/09/14(水) 11:10:20

増補版 放浪探偵と七つの殺人 (講談社文庫)増補版 放浪探偵と七つの殺人 (講談社文庫)
(2011/05/13)
歌野 晶午

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なぜ死体は動いたのか?殺人者が犯した、たった一つの過ちとは?「家シリーズ」の名探偵
信濃譲二が奇想天外な難事件の謎を見事な推理で解決する七つの短編に、幻の未収録作品「マルムシ」を加えた試みと驚きに満ちた傑作ミステリー八編。


いつも違う職業、違う身分で事件関係者の近くにいる、まさに神出鬼没の信濃譲二である。黄色いタンクトップにビーチサンダルという格好でどこにでもいつの季節にも現れるのも彼らしい(のか?)。本質というか実体がなかなかつかめない信濃譲二であるが、その観察眼と着目、そして想像力と推理力は折り紙付である。それぞれまったく異なる趣の殺人事件だが、信濃譲二の手にかかればなにほどのこともない、ように見える。あとがきに書かれているようにある理由によりいままで発表されなかった「マルムシ」もあれこれ動機を想いながら読んだ。中身の詰まった一冊である。

密室殺人ゲーム2.0*歌野晶午

  • 2010/06/03(木) 17:23:19

密室殺人ゲーム2.0 (講談社ノベルス ウC-)密室殺人ゲーム2.0 (講談社ノベルス ウC-)
(2009/08/07)
歌野 晶午

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<頭狂人><044APD><ザンギャ君><伴道全教授>。
奇妙すぎるニックネームの5人が、日夜チャット上で「とびきりのトリック」を出題しあう推理合戦!
ただし、このゲームが特殊なのは各々の参加者が トリックを披露するため、殺人を実行するということ。
究極の推理ゲームが行き着く衝撃の結末とは!?


『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の続編である。
前作のハンドルのままの登場人物たちであるが、さて、中身はどうなのだろうか、というところは作中で明らかにされている。前作に増して、想像したくない展開になっていて、いささかげんなりする。実際にこんなことが日常的に行われる世の中にはなって欲しくないものである。その一点を除けば、四人のやりとりもそれなりの役割分担があって興味深いし、トリックはその手があったか、という新しいものであり、それが解かれていく過程もたのしめる。ついつい肩入れしたくなる人物が出てきたりもするのである。だからこそ余計に、小説の中だけのことにしておいてもらいたいものである。

絶望ノート*歌野晶午

  • 2009/09/16(水) 16:50:11

絶望ノート絶望ノート
(2009/05)
歌野 晶午

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いじめに遭っている中学2年の太刀川照音は、その苦しみ、両親への不満を「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねていた。そんな彼はある日、校庭で人間の頭部大の石を見つけて持ち帰り、それを自分にとっての“神”だと信じた。神の名はオイネプギプト。エスカレートするいじめに耐えきれず、彼は自らの血をもって祈りを捧げ、いじめグループ中心人物の殺人を神に依頼した。「オイネプギプト様、是永雄一郎を殺してください」―はたして是永はあっけなく死んだ。しかし、いじめはなお収まらない。照音は次々に名前を日記帳に書きつけ神に祈り、そして級友は死んでいった。不審に思った警察は両親と照音本人を取り調べるが、さらに殺人は続く―。


主人公は中学二年男子・太刀川照音(ショーン)。ジョン・レノンかぶれの父につけられた名前のせいで、幼い頃から「タチション」とからかわれていた。
中二になってエスカレートしてきたいじめに耐え切れず、「絶望ノート」と題したノートに、いじめの内容や胸のうちをぶちまけるように綴るようになった。ある日天啓のように出会った石ころを、神さまと信じ、オイネプギプトと名づけ、いじめる奴らを懲らしめてくれと願うと、ほんとうにそのなかのひとりが怪我をし、殺してくれと願うと実際にひとりが死んだ。オイネプギプトさまの霊験なのか・・・・・。
いじめの執拗さと、親や学校の無力さにもどかしい思いで読み進んだところに待っていたものは!!
歌野晶午だったのだ、これは。なにをどう言ってもネタバレになりそうなので言えないが、著者は『葉桜の季節に君を想うということ』の歌野晶午なのである。まさに最後の一ページまで気を抜けない一冊である。

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵*歌野晶午

  • 2008/05/03(土) 13:43:19

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (カッパ・ノベルス)舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵 (カッパ・ノベルス)
(2007/11/20)
歌野 晶午

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難事件捜査の合間を縫って、姪のひとみの遊び相手をする刑事・舞田歳三。彼女のふとした言動が、事件解決のヒントになったりもして…。刑事×難事件×おしゃまな11歳=歌野晶午流「ゆるミス」。軽やかに登場。


「黒こげおばあさん、殺したのはだあれ?」 「金、銀、ダイヤモンド、ザックザク」 「いいおじさん、わるいおじさん」 「いいおじさん?わるいおじさん?」 「トカゲは見ていた知っていた」 「そのひとみに映るもの」という六つの連作物語。

「ゆるミス」とはまた絶妙なネーミングである。ガチガチのミステリ仕立てではなく、日常のなかにさりげなくミステリを織り込んでいるという風な物語である。しかし、事件そのものは日常の謎レベルのものではなく、警察が乗り出す類のものであり、現に舞田ひとみの叔父でこの物語の語り手でもある舞田歳三(としみ)が捜査している。
ひとみは決して自分から探偵を名乗っているわけではなく、歳三との会話の中で、無意識に解決のきっかけになるようなひとことを与えるのである。何気ないひとことから事件を解く鍵を探り当てる歳三もさすがなのである。
ラストでは、ミステリとは関係ないすっきり感も得られ、「ゆるミス」もなかなか味があるなと思わされた一冊だった。

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ハッピーエンドにさよならを*歌野晶午

  • 2007/11/23(金) 18:55:59


ハッピーエンドにさよならをハッピーエンドにさよならを
(2007/09)
歌野 晶午

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望みどおりの結末になることなんて、現実ではめったにないと思いませんか?

小説の企みに満ちた、アンチ・ハッピーエンド・ストーリー。
前人未到のミステリ四冠を達成した偉才が仕掛ける未曾有の殺意。


「おねえちゃん」「サクラチル」「天国の兄に一筆啓上」「消された15番」「死面」「防疫」「玉川上死」「殺人休暇」「永遠の契り」「In the lap of the mother」「尊厳、死」

装丁からしてなにやら悪意に満ちていて、読み始める前から先が思いやられるようである。読み始めてからはもちろん、黒い感情に取り巻かれ身動きできなくなる。それが一見明るく見えてしまったりもするから、これがまた厄介なのである。著者らしいどんでん返しや裏切り、ミスリードも盛りだくさんで、心して臨まないと何度もだまされることになるだろう。
読後、爽快感のかけらもない一冊であるが、それは決して退屈だからではない。

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密室殺人ゲーム王手飛車取り*歌野晶午

  • 2007/11/14(水) 18:13:46


密室殺人ゲーム王手飛車取り密室殺人ゲーム王手飛車取り
(2007/01/12)
歌野 晶午

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「殺したい人間がいるから殺したのではなく、使いたいトリックがあるから殺してみた」(本文300ページより)

最初のアイデアは1988年ごろ芽生えました。あまりにふざけた話で、現実に発生しえないのはもちろん、小説にもできないと捨てていました。
ところが前世紀末あたりから、案外こういう事件が現実に起きたりして、起きそう、きっと起きるぞ、としだいに強く思うようになり、そして本作が生まれました。
さいわい、現実に追い越されずにすみましたが、未来永劫こういう事件が起きないことを切に願います。
                    ――歌野晶午


頭狂人、044APD、aXe、ザンギャ君、伴道全教授。いったい何のことだと思うだろうが、これが本作の登場人物たちの名である。インターネット上に集い、推理ゲームを愉しむものたちのハンドルネームなのである。だがちょっと違うのは、彼らが愉しんでいるのが単なる机上の推理ゲームではなく、実際に出題者が犯した殺人に関する問題を解き合っているということなのだった。
ひとことで言うと、とても歌野氏らしい一冊だった。
著者自身が述べておられるように、着想時には想像しにくかっただろうが、インターネットを介した犯罪が増加している昨今、まさにどこかで起きそうな事件であり、本作を読んだ不埒者が真似したりしなければいいとわたしも切に願うのである。
ラストの四竦みともいえる状況には、著者のそんな願いももしかするとこめられているのだろうか。

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ブードゥー・チャイルド*歌野晶午

  • 2007/03/01(木) 20:22:17

☆☆☆☆・

ブードゥー・チャイルド ブードゥー・チャイルド
歌野 晶午 (2001/08)
角川書店

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今ぼくは第二の人生を送っています。つまりぼくには前世があるのです。ある雨の日の晩にバロン・サムデイがやってきて、おなかをえぐられて、そうしてぼくは死にました。前世、ぼくは黒人でした。チャーリー―それがぼくの名前でした。
―現世に蘇る、前世でいちばん残酷な日。
不可解な謎を孕む戦慄の殺人劇に、天才少年探偵が挑む!長編本格ミステリ。


タイトルから想像していたのとはまったく違う物語だった。
前世はチャーリーという黒人だったと言う晃士の「自分探し」と母親を殺し 父親を殺しかけた犯人探しが、絡まりあって思ってもいなかった方向に向かわせ、予想もしていなかった答えに辿り着くのである。
前世とか悪魔祓いとかという言葉で過去に向かう回路を頭の中に築かせながら、物語はまさに今現在、そしてここから先の未来の問題を孕んで進むのである。著者の巧みさにまたしてもやられた。

ジェシカが駆け抜けた七年間について*歌野晶午

  • 2007/02/20(火) 17:21:12

☆☆☆・・

ジェシカが駆け抜けた七年間について ジェシカが駆け抜けた七年間について
歌野 晶午 (2004/02/06)
原書房

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カントクに選手生命を台無しにされたと、失意のうちに自殺したアユミ。ジェシカは自分のことのように胸を痛め、カントクを憎んだ。―それから七年、ジェシカは導かれるように、そこへやって来た。目の前には背中を向けてカントクが立っている。ジェシカは側にあった砲丸に手を添える。目を閉じるとアユミの面影が浮かび上がる―。死んだ彼女のためにしてやれることといえば、もうこれしかないのだ。


著者お得意の手法、と言っていいだろう。『葉桜の季節に君を想うということ』と着想は似ていなくもない。
なので、『葉桜――』を読んでいる読者には、エチオピア暦を日常の暦として使っているジェシカが主人公になっている時点で、ある程度先が読めてしまうのが残念と言えば残念かもしれない。
だが、歌野さんのこの一筋縄ではいかなさは やはりいい。

安達ヶ原の鬼密室*歌野晶午

  • 2007/02/10(土) 17:05:56

☆☆☆・・

安達ヶ原の鬼密室 安達ヶ原の鬼密室
歌野 晶午 (2003/03)
講談社

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太平洋戦争中、疎開先で家出した梶原兵吾少年は疲れ果て倒れたところをある屋敷に運び込まれる。その夜、少年は窓から忍び入る“鬼”に遭遇してしまう。翌日から、虎の像の口にくわえられた死体をはじめ、屋敷内には七人もの死体が残された。五十年の時を経て、「直観」探偵・八神一彦が真相を解明する。


『こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん』
『The Ripper with Edouard――メキシコ湾岸の切り裂き魔』
という何の関係もないような話に前後を囲まれて、『安達ヶ原の鬼密室』はある。
前半部分を読んだだけでは、何のためにここにこの二話が置かれているのかさっぱり判らず、単に短編集なのかと思わされる。だが、最後まで読むとそうではなかったことが判るのである。
主幹部分の『安達ヶ原の鬼密室』は終戦直前に起きた奇怪な大量死事件の謎を、五十年後にひょんなことから解き明かすことになるのだが、探偵・八神一彦の事件に臨む姿勢が一風変わっている。推理が嫌いで、まず想像によってストーリーを作り上げ、あとから理由をつけようというのである。だが、半世紀も前の 記録も関係者の記憶もおぼろげな事件の謎に鮮やかなストーリーを与えた手腕はまったくもって見事としか言いようがない。