あまからカルテット*柚木麻子

  • 2016/08/23(火) 16:48:02

あまからカルテット
あまからカルテット
posted with amazlet at 16.08.23
柚木 麻子
文藝春秋
売り上げランキング: 558,641

女子校時代からの仲良し四人組、ピアノ講師の咲子、編集者の薫子、美容部員の満里子、料理上手な由香子も、いよいよ三十歳目前。恋に仕事に押し寄せる悩みを、美味しい料理をヒントに無事解決へ導けるか!?


まったくタイプの違う女子四人組が、時に反発し合い、文句を言いながらも、お互いを無条件に信頼し、その信頼に応えようとする様は、見ていて微笑ましい。それぞれに持ちあがる日常の謎的出来事を、解決に導く道筋も、それぞれらしくて好感が持てる。ラストの場面での「四人で一人だと思っていたけれど、一人でもやれるから四人でもやれるんだ」という咲子のつぶやきが、すべてを物語っているようである。この世人をもっともっと見たいと思わされる一冊である。

幹事のアッコちゃん*柚木麻子

  • 2016/06/01(水) 09:55:51

幹事のアッコちゃん
幹事のアッコちゃん
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柚木 麻子
双葉社
売り上げランキング: 20,505

背中をバシッと叩いて導いてくれる、アッコさん節、次々とサク裂!妙に冷めている男性新入社員に、忘年会プロデュースの極意を…(「幹事のアッコちゃん」)。敵意をもってやって来た取材記者に、前向きに仕事に取り組む姿を見せ…(「アンチ・アッコちゃん」)。時間の使い方が下手な“永遠の部下”澤田三智子を、平日の習い事に強制参加させて…(「ケイコのアッコちゃん」)。スパイス絶妙のアドバイスで3人は変わるのか?そして「祭りとアッコちゃん」ではアッコ女史にも一大転機が!?突破の大人気シリーズ第3弾。


今度は幹事である。水戸黄門的お約束な流れも含めて、アッコさん流のおもてなし術を愉しんだ。アッコさんと美智子の掛け合いをまた眺められたのも嬉しかった。まだまだアッコさんに教わる部分が多い美智子も、すっかり中堅社員になり、自分でしっかり考えて仕事ができるようになっていて頼もしさも感じたが、アッコさんと二人の関係は、もうずっと続くのだろうと、その関わりの濃密さが羨ましくなるほどである。ラストではちょっぴりほろりとさせられるアッコさんのひと言もあって、美智子のやる気もますます盛り上がることだろう。次はアッコさん、どこに出没するのか、何を始めるのか、ずっとずっと続いてほしいシリーズである。

私にふさわしいホテル*柚木麻子

  • 2016/04/20(水) 07:43:48

私にふさわしいホテル (扶桑社BOOKS)
扶桑社 (2012-12-31)
売り上げランキング: 6,006

「元アイドルと同時受賞」という、史上最悪のデビューを飾った新人作家・中島加代子。さらに「単行本出版を阻止される」「有名作家と大喧嘩する」「編集者に裏切られる」etc.絶体絶命のトラブルに次々と襲われる羽目に。しかし、あふれんばかりの野心と、奇想天外なアイデアで加代子は自分の道を切り拓いていく―。何があってもあきらめない不屈の主人公・加代子。これぞ、今こそ読みたい新世代の女子下剋上物語。


長いスパンの物語である。小説家として成り上がろうともがく主人公・中島加代子(筆名=相田大樹、あるいは有森樹李)の浮いたり沈んだり突進したり突っかかったりの人生模様の顛末なのである。大学の先輩で担当編集者でもある遠藤や、勝手に宿敵と決めた大御所作家・東十条宗典が、反発し合い罵り合いながらも、なんだかんだでいつもそばにいて、互いにお尻を叩き、あるいはもたれ合いながらも、いつの間にか前に進んでいるのも皮肉っぽくて面白い。コミカルな中に、ほろ苦さやほのかな甘み、温か味も感じられる一冊である。

ナイルパーチの女子会*柚木麻子

  • 2015/06/02(火) 07:21:39

ナイルパーチの女子会
柚木 麻子
文藝春秋
売り上げランキング: 5,634

丸の内の大手商社に勤めるやり手のキャリアウーマン・志村栄利子(30歳)。実家から早朝出勤をし、日々ハードな仕事に勤しむ
彼女の密やかな楽しみは、同い年の人気主婦ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むこと。決して焦らない「おひょう」独特の価
値観と切り口で記される文章に、栄利子は癒されるのだ。その「おひょう」こと丸尾翔子は、スーパーの店長の夫と二人で気ままに
暮らしているが、実は家族を捨て出て行った母親と、実家で傲慢なほど「自分からは何もしない」でいる父親について深い屈託を
抱えていた。
偶然にも近所に住んでいた栄利子と翔子はある日カフェで出会う。同性の友達がいないという共通のコンプレックスもあって、二
人は急速に親しくなってゆく。ブロガーと愛読者……そこから理想の友人関係が始まるように互いに思えたが、翔子が数日間ブロ
グの更新をしなかったことが原因で、二人の関係は思わぬ方向へ進んでゆく……。
女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。


他人、ことに同性との関係の築き方、距離の取り方が判らない栄利子は、社内でも浮いた存在になっている。ランチにも誘われず、当然女子会にも声がかからない。そのことに達観できてしまえば楽なのだろうが、そうもいかず、女友達を求めるあまり、偶然出会ったお気に入りブログの書き手の翔子に自分の理想を投影しすぎてしまう。女ってなんて難しいのだろうという思いとともに、自分を正当化する理屈に絡め取られがんじがらめにされていく過程は、とてもよく判る部分もあって、一歩間違えば自分も、と背筋が寒くなる心地にもなる。何事においても「自分」「自分」で「相手」が不在なのだろうなぁ。哀しくやりきれなくもあるが、最後には遠くにちいさな光が見えるようでもあるので、少しほっとする。他人あっての自分なのだということを改めて胸に刻もうと思った一冊である。

3時のアッコちゃん*柚木麻子

  • 2014/11/05(水) 16:58:50

3時のアッコちゃん3時のアッコちゃん
(2014/10/15)
柚木 麻子

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アッコ女史ふたたび! 大人気の「ランチのアッコちゃん」に、待望の続編が登場!!
澤田三智子は高潮物産の契約社員として、
シャンパンのキャンペーン企画チームに入っているが、会議は停滞してうまくいかない。
そこに現れたのが黒川敦子女史、懐かしのアッコさんであった。
イギリスでティーについて学んできたというアッコさんが、お茶とお菓子で会議の進行を激変させていく。
またもやアッコさんの底知れぬ力をまざまざと見せつけられる三智子であった――
表題作ほか、「メトロのアッコちゃん」「シュシュと猪」「梅田駅アンダーワールド」を含む全4編。


「アッコちゃん」とたいとるにもつく二作は、アッコさんの知恵と愛が光る、正統派アッコちゃんシリーズといった趣である。ほかの二作は、番外編といおうか、神戸と梅田という東京を離れた場所が舞台になっていて、アッコさんの活躍物語という感じではないので、個人的にはちょっぴり物足りなさもある。だが、順調なことばかりではなく、凹んでいるときにこそ、アッコさんの想いが温かいスープのように身に沁みるのである。アッコさんアッコさんした次作をたのしみに待ちたいシリーズである。

ねじまき片想い*柚木麻子

  • 2014/10/03(金) 17:05:13

ねじまき片想い (~おもちゃプランナー・宝子の冒険~)ねじまき片想い (~おもちゃプランナー・宝子の冒険~)
(2014/08/11)
柚木 麻子

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毎朝スカイツリーを見上げながら、水上バスで通勤する富田宝子、28歳。浅草にあるおもちゃ会社の敏腕プランナーとして働く彼女は、次から次へと災難に見舞われる片想い中の西島のため、SP気分で密かに彼のトラブルを解決していく…!やがて、自分の気持ちに向き合ったとき、宝子は―。


「スカイツリーを君と」 「三社祭でまちあわせ」 「花やしきでもう一度」 「花火大会で恋泥棒」 「あなたもカーニバル」

乙女チックなふんわりしたファッションに身を包み、自分をしっかり持っておもちゃプランナーとして仕事をしている宝子だが、長年の片想い相手の西島に対すると、途端に気弱になってしまう。誰にも気づかれていないと思っている宝子だったが、実は職場のみんなが知っていて、もっといい人がいるのにと言い合いながらも密かに応援しているのである。報われない想いをぶつけるように、宝子は西島のために探偵まがいのことをして彼の心を曇らせる物事を解決していく。そんな中で、ほんとうに大切なことに徐々に気づかされていく宝子なのである。片思い物語、お仕事物語でもあり、ミステリでもあって贅沢に愉しめる一冊である。

本屋さんのダイアナ*柚木麻子

  • 2014/06/18(水) 13:39:04

本屋さんのダイアナ本屋さんのダイアナ
(2014/04/22)
柚木 麻子

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私の呪いを解けるのは、私だけ――。すべての女子を肯定する、現代の『赤毛のアン』。「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められたバサバサの髪。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人だけど、私たちは一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に――。自分を受け入れた時、初めて自分を好きになれる! 試練を越えて大人になる二人の少女。最強のダブルヒロイン小説。


姉のような歳でキャバ嬢の母と二人暮らしの大穴(ダイアナ)と誰もが羨む家庭環境にある彩子の二人が主人公の物語である。大筋は、彩子が挫折し、ダイアナが思い通りの道を掴み取るという、大方の想像通りではあるが、付随する出来事が、それぞれにとってなかなか過酷に描かれている。だが、それぞれが自分を信じ、自分自身でそれを乗り越えた先で再会し、再び心を通わせる場面は、心底ほっとさせられる。そして、小学校三年生からずっとダイアナを見守り続ける肉屋の武田君がとてもいい。ダイアナの母ティアラも、これほど極端に走らず、もう少し何とかならなかったものかと思いもするが、それでこその物語なのでまあ良しとするか。自分に呪いをかけるのもそれを解くのも、自分だけなのだと改めて思わされる一冊でもある。

その手をにぎりたい*柚木麻子

  • 2014/05/11(日) 16:41:44

その手をにぎりたいその手をにぎりたい
(2014/01/24)
柚木 麻子

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80年代。都内のOL・青子は、偶然入った鮨店で衝撃を受けた。そのお店「すし静」では、職人が握った鮨を掌から貰い受けて食べる。
青子は、その味に次第にのめり込み、決して安くはないお店に自分が稼いだお金で通い続けたい、と一念発起する。
お店の職人・一ノ瀬への秘めた思いも抱きながら、転職先を不動産会社に決めた青子だったが、到来したバブルの時代の波に翻弄されていく。一ノ瀬との恋は成就するのか?


バブル真っ盛りの地方から出てきたOL青子(せいこ)が主人公の物語である。バブルの恩恵を当然のこととして享受し、その時代を駆け抜けたひとりの女としての青子、そしてまた、どの時代にもいるひとりの女としての青子。ある日上司に連れていかれた銀座の高級すし店「すし静」の職人・一ノ瀬のにぎる寿司に、青子は衝撃を受ける。そして恋に落ちるのである。一ノ瀬になのか、彼のにぎる寿司になのか。儚い泡沫の時代を背景に、青子の生き様が逞しくもあり切なく哀しくもある。熱に浮かされたような時代の恋物語とも言える一冊である。