解*堂場瞬一

  • 2016/05/10(火) 17:04:01

解
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堂場 瞬一
集英社
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「俺たちは同志だ。俺たちは、日本を変えていく」平成元年、夢を誓った二人は社会に飛び出す。大蔵官僚、IT会社社長を経て政治家に転身した大江。新聞記者から紆余曲折を経て、人気作家になった鷹西。だが、二人の間には、ある忌まわしい殺人事件が横たわっていた―。1994年、封印された殺人の記憶。2011年、宿命の対決が幕を開ける。バブル崩壊、阪神・淡路大震災、IT革命、そして3.11。「平成」を徹底照射する、衝撃の“問題作”。


1994年から2011年の間の日本という国の時代の流れと空気感がとてもよく伝わってくる物語だった。大江と鷹西という大学の同期生がそれぞれ社会の別の分野で活躍するようになる様子にも興味を掻き立てられ、その友情と信頼が、いつまでも続くようにと願うのである。だが、混迷を深める国を立て直すためとかなんとか、もっともらしい理屈をつけたとしても、その一点をうやむやにしてしまうことが、どうしても腑に落ちず、消化不良な後味の悪さが残ってしまう。むしろここから先を読みたいと思ってしまう一冊でもある。

Killers 下*堂場瞬一

  • 2016/01/13(水) 21:06:53

Killers(下)
Killers(下)
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堂場 瞬一
講談社
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渋谷が生まれ変わる時、「Killers」も新たな「使者」を送る。正義を描いてきた著者が、書かずにはいられなかった集大成長篇!


下巻で描かれるのは主に現在である。捜査陣は代替わりし、当時の担当で犯人に殺された生沢の孫娘・薫が刑事になって、未解決のまま、なお続いていると思われる十字殺人の犯人を追っている。長野保が犯人だろうということは判っていながら、どうしても本人にたどり着けず、いたずらに被害者が増えていくのは、警察としてはどれほど歯がゆいことだろう。しかも、過去の捜査の穴がいまごろになって見つかっ足りもするのでなおさらである。だが、どれだけ読んでも、長野保の心理状態がさっぱり理解できない。しかも事件はまったく終わらないのである。面白かったが、後味の悪い一冊である。

Killers 上*堂場瞬一

  • 2016/01/09(土) 18:20:56

Killers(上)
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堂場 瞬一
講談社
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殺人者は、いつの時代にも存在する。

2020年東京五輪に向けて再開発が進む渋谷区のアパートで、老人の他殺体が発見され、かつての名家の人間だったことが判明する。いったい、この男は何者なのか――。
五十年、三世代にわたる「Killers」=殺人者の系譜と、追う者たち、そして重なり合う渋谷という街の歴史。

警察小説の旗手・堂場瞬一のデビューから100冊目を飾る、記念碑的文芸巨編1500枚!


東京オリンピックとは言っても、前回のオリンピックの時代が上巻の大方を占めている。老人ばかりが被害に遭った連続殺人事件が起こり、被害者の額には決まって十字のしるしがつけられていた。犯人は政治家の次男で、彼の目線で語られる部分と、警察の側から語られる部分とで物語は進む。舞台は渋谷だが、時間経過はものすごく長く、ときおり時代が一気に進み、過去を振り返る描写が差し挟まれているのが、もどかしさと空恐ろしさを増幅させる。使命感さえ帯びて殺人を続け、あるいは唆す様子は見るだけで虫唾が走るが、事態は少しずつ変化している印象でもある。上巻では、今後の展開が読めないが、どのように決着がつけられるのか、早く下巻も読みたくなる一冊である。

十字の記憶*堂場瞬一

  • 2015/10/06(火) 16:57:59

十字の記憶
十字の記憶
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堂場 瞬一
KADOKAWA/角川書店 (2015-08-29)
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新聞社の支局長として20年ぶりに地元に戻ってきた記者の福良孝嗣は、着任早々、殺人事件を取材することになる。被害者は前市長の息子・野本で、後頭部を2発、銃で撃たれるという残酷な手口で殺されていた。一方、高校の陸上部で福良とリレーのメンバーを組んでいた県警捜査一課の芹沢拓も同じ事件を追っていた。捜査が難航するなか、今度は市職員OBの諸岡が同じ手口で殺される。やがて福良と芹沢の同級生だった小関早紀の父親が、20年前に市長の特命で地元大学の移転引き止め役を務め、その後自殺していたことがわかる。早紀は地元を逃げるように去り、行方不明になっていた…。


新聞記者と刑事が、かつて見過ごしてしまった同級生の心を救おうと、互いの立場を超えて奔走する物語であり、大元に横たわる市長一族の利権と市の私物化を暴く物語でもある。しかしながら、なんとなくそれぞれの要素に対する動機づけが弱いと感じてしまうのはわたしだけだろうか。いまひとつのめり込めなかった印象である。なんとなくもやもやが残る一冊だった。

夏の雷音*堂場瞬一

  • 2015/08/30(日) 16:35:58

夏の雷音
夏の雷音
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堂場 瞬一
小学館
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神保町の楽器店から消えた1億2000万円のヴィンテージギター。それはアメリカの伝説のミュージシャンが所有していたものだった。オークションで落札した楽器店主は謎の死を遂げるが…。生まれも育ちも神保町の大学准教授・吾妻幹は事件を追い始めるが、愛する街で起きた殺人事件は思いも寄らぬ展開を見せ始めていく。実在する食の名店も多数登場。一気読み必至の神保町ミステリー。


ギターのことはまったく判らないが、オークションで1億2000万円で競り落としたのが、後輩の楽器店店主・安田で、しかもそれが盗まれたと知って、明央大学准教授の吾妻幹(あずま かん)は、ギター探しに協力することになる。そんな矢先に安田が殺され、吾妻はヴィンテージギターにまつわる裏の動きを調べる羽目になるのである。神保町とギターに馴染みのある人にとっては、はらはらどきどきにわくわくも加わって何倍も愉しめそうだが、どちらにも親しんでいないわたしとしては、個人的にはさほどのめり込めはしなかったというのが正直なところである。吾妻先生と父親との今後の関係には興味があるので、吾妻先生のこれからは少し見てみたいと思わされる一冊だった。

埋もれた牙*堂場瞬一

  • 2015/02/09(月) 19:40:35

埋れた牙埋れた牙
(2014/10/15)
堂場 瞬一

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ベテラン刑事の瀧靖春は、自ら願い出て、警視庁捜査一課から生まれ育った吉祥寺を管轄する武蔵野中央署に移った。ある日、署の交通課の前でうろうろする大学時代の旧友、長崎を見かける。事情を聞くと、群馬から出てきている姪で女子大生の恵の行方がわからなくなっているという。新人女性刑事の野田あかねの“教育”もかねて、まず二人だけの「捜査」を始めると、恵の失踪は、過去の未解決事件へとつながっていった――。

「ここも、特別な街じゃないんだ。どんな街にも、一定の割合で悪い奴はいるんだよ」

都市でもなく、地方でもない――この街には二つの水流がある。「住みたい街」として外部を惹きつける、上品な水流。だがその下には、この地で長年暮らしてきた人たちが作った土着的な水流がある。

「私は、この街の守護者でありたいと思っている」

愛する街とそこに住む人々を守るために――「地元」に潜む牙に、独自の捜査手法で刑事が挑む、異色の警察小説が誕生!


吉祥寺という人気の街を舞台にしながら、物語は古くからの住人の「地方ならではの」と言ってもいいようなしがらみや地元意識に根差しているのがミスマッチでもあって興味深い。吉祥寺という街をひと皮剥いた感じでもある。そしてそこで起こっている事件は、警察が見逃していた古い案件から繋がるものだった。ベテラン刑事の瀧と、新人の野田あかねとの噛み合わない心情も興味深い。事件の真相自体は、ある程度想像がつくものであるが、野田あかねの今後を見てみたい気がする一冊である。

警察(サツ)回りの夏*堂城瞬一

  • 2014/11/09(日) 18:42:27

警察回りの夏警察回りの夏
(2014/09/26)
堂場 瞬一

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甲府市内で幼い姉妹二人の殺害事件が発生。盗みの形跡はなく、母親は消息不明。
マスコミは「虐待の末の殺人では」と報道を過熱させていく。日本新報甲府支局のサツ回り担当の南は、
この事件を本社栄転のチャンスにしようと取材を続けていた。
だが、殺害された姉妹の祖父が度重なるマスコミの取材攻勢によって追いつめられていく。
世間のムードは母親叩きからマスコミ叩きへと一変。粘り強く取材を続けていた南は、警察内部からの
リークで犯人につながる重要な情報を掴む。だがそこには、大きな罠が待ち受けていた――。
やがて日本新報本社では、甲府2女児殺害事件の報道に関する調査委員会が立ち上げられる。
元新聞記者でメディア論研究者の高石が調査委員会委員長に抜擢。事件報道の背景を徹底調査しはじめるが……。
果たして真相はどこにあるのか? 報道の使命とは何か? 現代社会に大きな問いを投げかける、渾身の書き下ろし事件小説。


世間の興味を煽る要素のある殺人事件を、警察ではなく新聞社にスポットを当てて描かれた物語である。読み進むと、事件そのものが本筋ではなく、とんでもないはかりごとが背後に隠れているのが見えてくる。読めば読むほど新たな興味が掻き立てられ、真相を知りたい欲求がいやでも高まる。それを高石をはじめとする調査委員会の面々が代わりにやってくれるという感じである。事件の真犯人が判っても、裏で進んでいたはかりごとがすっきりしたわけではないが、一応カタルシスは得られる。警察と報道の関係、ネットの風評など、いろいろ考えさせられる一冊でもある。

グレイ*堂城瞬一

  • 2014/06/26(木) 18:41:09

グレイグレイ
(2014/04/25)
堂場 瞬一

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著名な経済評論家・北川啓が主宰する「北川社会情報研究所」。日々の暮らしに汲々としていた大学二年生の波田は、街頭調査のバイトで見込まれ、破格の待遇で契約社員になる。それが運命を大きく狂わせる一歩だとは知らずに…希望に満ちた青年を待ち受ける恐ろしい罠。潰すか、潰されるか。孤独な戦いが始まる。警察小説の旗手が挑むピカレスク・ロマン。


食べたいものも食べられないくらいお金に困っている大学生の波田が、割のいいアルバイトに飛びついたのが発端で、悪の手先として利用され、揚句にとかげの尻尾切りのごとく切り捨てられ、報復しようとする物語である。取り立ててどうということもない学生だった波田が、優秀なバイトと見込まれ、北川社会情報研究所に取り込まれていく過程が、あまりにも抵抗感なくあっけないようにも思えるが、新興宗教さながらの手を使えば、世間知らずの学生などあっけないものなのかもしれない、とも思わされる。波田はおそらく、社会に物申したい下地があったのだろうが、それにしても、切り捨てられたと判ってからの行動も、以前の波田からは考えられなくて、俄かには信じがたい気はする。ただ、こんな風に取り込まれてしまうなら、誰でも波田になる可能性はあるだろうと、背筋が寒くなる一冊である。

虚報*堂場瞬一

  • 2010/05/18(火) 16:57:44

虚報虚報
(2010/01)
堂場 瞬一

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東日新聞長野支局から東京本社社会部へ異動してきた長妻厚樹は、「ビニール袋集団自殺」を取材していた。何人か集まり、睡眠薬を飲んだ上にビニール袋をかぶって窒息するという手口の自殺が全国で頻発していたのだ。この自殺に有名大学教授のサイトが影響していると週刊誌がスクープ。さらに、この大学教授が記者会見を開いたことで報道は過熱する。社会部キャップの市川博史の指示で取材に駆け回る長妻。しかし、東日新聞は他紙がスクープ記事を出す中、常に遅れをとっていた。追い込まれる市川と長妻。そんなとき、一本の電話が―。守りのミスと攻めのミス、若き記者に降りかかる迷いの一瞬。警察小説の旗手の新境地。


  第一章  発端
  第二章  持論
  第三章  対決
  第四章  冷雨
  第五章  逆襲
  第六章  虚報


新聞記者が毎日どれほど神経をすり減らして取材し、それを記事にしているのかということが現場の空気と共に伝わってくる。そして、そこにも否応なく人間関係のしがらみやら出世欲やらがまとわりついてくるということも。大学教授が殺人教唆(幇助)、に問われるかもしれないという一件は、インターネットの煽りもあってセンセーショナルな展開になり、新聞各社や週刊誌がスクープ合戦を繰り広げるのは当然である。東日新聞は、ことごとく週刊誌に出し抜かれ焦っていたこともあり、若手記者・長妻の功徳欲もあって、裏づけが充分でない記事を載せてしまう。これがタイトルの虚報であるのだが、なにが虚報なのだろうと興味をそそられるのだが、そこにたどり着くまでが長く、その後が尻切れとんぼのようであり、辻褄合わせ的でもあっていささか消化不良といった感じでもある。

秘匿*堂場俊一

  • 2008/08/01(金) 14:35:53

被匿―刑事・鳴沢了 (中公文庫 と 25-9)被匿―刑事・鳴沢了 (中公文庫 と 25-9)
(2007/06)
堂場 瞬一

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西八王子暑管内で代議士が不審死。ろくな捜査もないまま事故と断じられる。苛立つ鳴沢に地検から、死んだ議員が近々大規模収賄で事情聴取される予定だったとの裏情報が入る。捜査を始めた鳴沢は議員が当夜女と一緒にいたことを突き止めるが・・・・・自殺か?それとも他殺か?事件は思いがけず旧知の人物へとつながっていき――。


刑事・鳴沢了シリーズ八作目。とんでもないく中途半端なところから手をつけてしまったらしい。
刑事が主人公なのだが、いわゆる警察小説というよりも、鳴沢了物語といった趣が強いように思われる。
事件の核心に迫っていく緊張感や高揚感もあるのだが、それにも増して、鳴沢の反応や思考に目が向いてしまうのである。途中から読み始めて、これまでの経緯を知らないからよけいそうなのかもしれないが。
だらけきった西八王子暑の面々のなかで、捜査一課から来た相棒・藤田が魅力的である。

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