刑事の約束*薬丸岳

  • 2016/07/02(土) 19:44:16

刑事の約束
刑事の約束
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薬丸 岳
講談社
売り上げランキング: 118,990

昏睡状態の娘を持つ東池袋署の刑事・夏目信人。独自のまなざしで手がかりを見つめ、数々の事件を鮮やかに解いていく。夏目が対するのは5つの謎。抜き差しならない状況に追い込まれた犯人たちの心を見つめる夏目が、最後にした“約束”とは。日本推理作家協会賞短編部門候補作「不惑」収録!いまも近くで起きているかもしれない、しかし誰も書いたことのない事件を取り上げ、圧巻の筆致で畳み掛ける、乱歩賞作家のミステリー!

表題作のほか、「無縁」 「不惑」 「被疑者死亡」 「終の住処」


夏目シリーズ、短編集である。法務技官という前職と、自らの不運な体験によって独特の雰囲気を身にまとうようになった夏目であるが、今作では、なにやらやる気のない窓際族のような印象での登場である。とは言え、物語が動き始めると、目に見える熱血とは違うが、独特な視点で、重要なキーポイントに焦点を当て、被害者のみならず被疑者の胸の裡まで慮った方法で事件素解決に導くのである。いつの間にか知らず知らずのうちに閉ざした心を開いてしまう魅力が夏目にはあるように思われる。一匹狼というわけでもなく、熱血漢というわけでもなく、なんともとらえどころのない夏目のキャラクタは、正直未だに安定して思い描きにくいのだが、魅力的であることは間違いない。最後の物語で見えた希望の灯が健やかなものになりますようにと願わずにいられない一冊である。

刑事のまなざし*薬丸岳

  • 2016/06/22(水) 18:39:08

刑事のまなざし
刑事のまなざし
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薬丸 岳
講談社
売り上げランキング: 705,979

笑顔の娘を奪われた男は、刑事の道を選んだ。その視線の先にあるのは過去か未来か――。

●「オムライス」……内縁の夫が焼け死んだ台所の流しの「オムライスの皿」
●「黒い履歴」……クレーンゲームのぬいぐるみ「ももちゃん」
●「ハートレス」……ホームレスに夏目が振舞った手料理「ひっつみ」
●「傷痕」……自傷行為を重ねる女子高生が遭っていた「痴漢被害」
●「プライド」……ボクシングジムでの「スパーリング」真剣勝負
●「休日」……尾行した中学生がコンビニ前でかけた「公衆電話」
●「刑事のまなざし」……夏目の愛娘を十年前に襲った「通り魔事件」
過去と闘う男だから見抜ける真実がある。薬丸岳だからこそ書けるミステリーがある。


法務技官だった夏目は、通り魔に襲われて植物状態になった娘のために刑事になった。これは、東池袋署で捜査に当たった事件の数々である。いずれの事件にも少年が関わっており、ほかの刑事とは違う夏目のアプローチに、少しずつ心を開く様子が胸に迫る。痛みを知る夏目ならではの距離の取り方のように思える。さらに、洞察力の鋭さも見事である。捜査の早い段階から、真犯人に目星をつけ、状況を細かく見極める目は、とても鋭い。娘の事件の真相がわかって、衝撃を受けたに違いないが、刑事という職に徹している姿にも胸が熱くなる。夏目のアプローチをもっと見続けたい一冊である。

Aではない君と*薬丸岳

  • 2016/01/18(月) 16:58:19

Aではない君と
Aではない君と
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薬丸 岳
講談社
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殺人者は極刑に処すべきだ。親は子の罪の責任を負うべきだ。周囲は変調に気づくべきだ。自分の子供が人を殺してしまってもそう言えるのだろうか。読み進めるのが怖い。だけど読まずにはいられない。この小説が現実になる前に読んでほしい。デビューから10年間、少年事件を描き続けてきた薬丸岳があなたの代わりに悩み、苦しみ、書いた。この小説が、答えだ!

勤務中の吉永のもとに警察がやってきた。元妻が引き取った息子の翼が死体遺棄容疑で逮捕されたという。しかし翼は弁護士に何も話さない。吉永は少年法十条に保護者自らが弁護士に代わって話を聞ける『付添人制度』があることを知る。生活が混乱を極めるなか真相を探る吉永に、刻一刻と少年審判の日が迫る。


人を殺してはいけない。これは大前提である。だが、そこに至る過程に何があったのか。そこをないがしろにしては、ことは何も解決しないし、被害者家族も加害者もその家族も前へは進めないのである。別れた妻の元にいる我が子が同級生を殺して逮捕される、という寝耳に水の事態に接した吉永の動揺、驚愕、そしてまさかという思い、さらには我が子に対する恐怖。さまざまな反応が生々しくて胸を塞がれる。親として、いままで我が子との一瞬一瞬を大切にしてきただろうかと、振り返ると、自信はない。子どもとの関係だけでなく、さまざまなことを考えさせられる一冊である。

誓約*薬丸岳

  • 2015/09/29(火) 16:46:52

誓約
誓約
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薬丸 岳
幻冬舎
売り上げランキング: 56,461

一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。
捨てたはずの過去から届いた一通の手紙が、
封印した私の記憶を甦らせるーー。十五年前、アルバイト先の客だった落合に誘われ、レストランバーの共同経営者となった向井。信用できる相棒と築き上げた自分の城。愛する妻と娘との、つつましくも穏やかな生活。だが、一通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた。「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、それだけが書かれていた。


捨てたはずの過去をネタに、人生をやり直すきっかけになった人物との約束を果たせと脅され、妻と娘を実質的な人質に取られたような形で翻弄される主人公・向井(高藤)の姿には、つい同情してしまいそうになるが、実際のところ、過去に自分で犯した罪の数々に対する償いは充分とは言えず、自分と大切な家族を守るために逃げているだけのような印象も受けてしまうのがいささか残念ではある。しっかり過去の罪を償ったうえでの不可抗力で逃げることになったのならば、思い入れもまた違ったものになったかもしれない。それを於けば、真の脅迫者の存在はとても巧妙に隠され、種明かしされるまでわからなかったし、周到に準備された復讐劇の原因にも同情すべき点があって、切なくなる。全体としては、はらはらどきどきが止まらない一冊だった。

神の子 下*薬丸岳

  • 2015/09/17(木) 16:38:38

神の子 下
神の子 下
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薬丸 岳
光文社
売り上げランキング: 82,161

身元引受人となった前原悦子の製作所を手伝いながら、大学に通いはじめた町田は、同じ大学の学生たちの会社「STN」設立を手伝うことになる。周囲は賑やかになり、町田の感情も穏やかになりはじめているように見えた。しかし、すべての始まりだった殺人事件と、その関係者たちは、町田を放っておいてはくれなかった…。


町田は教授を介して同じ大学の学生から企業に誘われ、表には出ずに力を貸すことになる。ほんの少しずつではあるが、人間らしさを取り戻しているかに見えたが、そんな折、ムロイの組織の追手の陰を感じるようになる。それとは別に、法務教官の内藤は、町田が唯一心を通わせたように思える小沢稔を探している。二つの流れがどこでどういう形で合流するのかに興味を掻き立てられる。だが、いざ合流してみると、これしか落としどころはなかったのだろうか、という気もしてくる。ムロイ(木崎)が死ぬ意外に町田が救われる方法はなかったのだろうか。とは言え、今後に向けての光は確実にあり、町田も間違いなく変わっているので、少しでも平穏に生きて行ってほしいものである。上下巻で900ページ以上というボリュームを感じさせない一冊だった。

神の子 上*薬丸岳

  • 2015/09/15(火) 16:53:04

神の子 上
神の子 上
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薬丸 岳
光文社
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殺人事件の容疑者として逮捕された少年には、戸籍がなかった。十八歳くらいだと推定され、「町田博史」と名付けられた少年は、少年院入所時の知能検査でIQ161以上を記録する。法務教官の内藤は、町田が何を考えているか読めず、彼が入所したことによって院内に起こった不協和音に頭を悩ませていた。やがて、何人かの少年を巻きこんだ脱走事件の発生によって、事態は意外な展開を見せる…。


学校に行かせるお金もないし面倒だからという理由で出生届を出されず、戸籍のないまま母親に捨てられた少年は、自分しか頼るものがない世界で命をつなぎ、案の定悪の手先にされて、推定18歳で殺人罪で少年院に入れられた。IQだけはとびぬけて高いが、基本的な知識や常識はまったく持ち合わせておらず、他人とのかかわり方も知らない少年は、町田博史と名づけられた。少年院でも周囲の少年たちとの軋轢は免れず、教官にとっても興味深い存在であった。外に出てからは、教官の知人の工場に住み込みで世話になるが、やはり欠落したものは埋まらない。後半では、かつて利用されていた組織との絡みもあり、通い始めた大学の同級生たちとの関係が築かれようとする気配もあり、町田の周辺に変化が現れ始めるが、この段階ではまだそれがいいことなのか悪いことなのかは判断がつかない。下巻を早く読みたい一冊である。

アノニマス・コール*薬丸岳

  • 2015/08/22(土) 17:03:54

アノニマス・コール
アノニマス・コール
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薬丸 岳
KADOKAWA/角川書店 (2015-06-27)
売り上げランキング: 14,064

3年前のある事件が原因で警察を辞めた真志は、妻の奈緒美と離婚、娘の梓と別居し、自暴自棄な生活を送っていた。ある日、真志の携帯に無言電話がかかってくる。胸騒ぎがして真志が奈緒美に連絡すると、梓は行方不明になっていた。やがて、娘の誘拐を告げる匿名電話があり、誘拐事件は真志がすべてを失った過去の事件へつながっていく。一方、真志を信じられない奈緒美は、娘を救うため独自に真相を探り始め―。予想を裏切る展開の連続と、胸を熱くする感涙の結末。社会派ミステリの旗手による超弩級エンタテインメント!!作家生活10周年記念作品。


始まりは、奈緒美の別れた夫で元警察官の・真志(しんじ)の携帯にかかってきた一本の電話だった。酔っていたので定かではないが、女の子の声で「お父さん」と聞こえたような気がして、奈緒美に確認があったのだった。娘の梓は、友だちとその母親とディズニーランドに行っているはずだったが、確認すると、熱が出ていけなくなったとメールがあって一緒ではないという。その後、身代金を要求する電話がかかり、誘拐事件になるのである。別れた夫を信じきれない奈緒美と、彼女に明かしていない、真志が警察を辞めたいきさつにより、すべてを言えないジレンマが相まって、もどかしいやり取りが続き、その間にも事件は容赦なく進んでいく。警察を信じるなという真志の言葉をどう受け取ればいいのか。誰を信じ、何を頼って行動すればいいのか。真犯人は一体誰なのか。ハラハラドキドキは止まらないが、最後に明らかになった真犯人を憎み切れないのがさらにやり切れないところである。一連の事件はきっちり解決するのだろうか。もどかしさと憤りを覚える一冊である。

その鏡は嘘をつく*薬丸岳

  • 2014/01/05(日) 21:26:45

その鏡は嘘をつくその鏡は嘘をつく
(2013/12/11)
薬丸 岳

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エリート医師が、鏡に囲まれた部屋で自殺した。その後、医学部受験を控えた一人の青年が失踪した。正義感に溢れる検事・志藤清正は、現場の状況から他殺の可能性を見破り、独自に捜査を進める。その頃、東池袋所の刑事・夏目信人は池袋の町を歩き、小さな手がかりを見つめていた。二転三転する証言のなかで、検事と刑事の推理が交錯する。乱歩賞作家・薬丸岳が描く、極上の感動長編!


検事と所轄の刑事が別の角度からひとつの事件を追うという状況が珍しく興味深い。それぞれが、各人の信じるところと推理によって捜査を進めていくうちに、真実にたどり着くのだが、アプローチの仕方が全く違っていて、それをお互いが感じていて、上手い具合に影響し合い、絶妙な距離感が生まれている。殺人はどんな理由があるにしろ、決して許されることではないが、真実を知ってしまうと、被害者に同情は全く覚えない。重苦しい物語だが、可能性ということを考えさせてくれる一冊でもある。

友罪*薬丸岳

  • 2013/08/02(金) 16:55:20

友罪友罪
(2013/05/02)
薬丸 岳

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―過去に重大犯罪を犯した人間が、会社の同僚だとわかったら?―
ミステリ界の若手旗手である薬丸岳が、児童連続殺傷事件に着想を得て、凶悪少年犯罪の「その後」を描いた傑作長編!
ジャーナリストを志して夢破れ、製作所に住み込みで働くことになった益田純一。同僚の鈴木秀人は無口で陰気、どことなく影があって職場で好かれていない。しかし、益田は鈴木と同期入社のよしみもあって、少しずつ打ち解け合っていく。事務員の藤沢美代子は、職場で起きたある事件についてかばってもらったことをきっかけに、鈴木に好意を抱いている。益田はある日、元恋人のアナウンサー・清美から「13年前におきた黒蛇神事件について、話を聞かせてほしい」と連絡を受ける。13年前の残虐な少年犯罪について調べを進めるうち、その事件の犯人である「青柳」が、実は同僚の鈴木なのではないか?と疑念を抱きはじめる・・・・・・


実際に起きた衝撃的な事件がモチーフになっているので、面白いと言ったら語弊があるかもしれないが、同僚が猟奇的殺人事件の犯人だと知ってしまった益田の心の動きや周囲の人たちの反応が真に迫っていて、読み応えがある。自分が彼の立場だったら――、とどうしても考えてしまうが、答えを出すのは難しい。現実にモチーフとなった事件の犯人は、何らかの形で社会復帰しているのだろうから、彼が読んだら身の置き所がなくなるのではないかとも思ってしまう。いろいろと考えさせられる一冊である。

悪党*薬丸岳

  • 2010/03/14(日) 08:38:47

悪党悪党
(2009/07/31)
薬丸 岳

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自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。『天使のナイフ』で江戸川乱歩賞を受賞した著者が、犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を正面から切り込んで描いた、衝撃と感動の傑作社会派ミステリ。


 

  プロローグ
  第一章 悪党
  第二章 復習
  第三章 形見
  第四章 盲目
  第五章 慟哭
  第六章 帰郷
  第七章 今際
  エピローグ 


ある事件を起こして警察を追われ、前科者になった佐伯修一は、探偵事務所所長の木暮に声をかけられて探偵になった。かつての犯罪被害者の遺族の依頼を受けて、加害者のその後を調査する、という仕事をしながら、自らも犯罪被害者の遺族である修一は、無残に姉を殺した犯人のその後を追いかけはじめる。依頼された仕事に関わる心情と、自分が抱える憎しみや復習心との狭間で苦悩しながらもがき続ける修一の姿に胸を締めつけられる。遺族の心の安寧にとって、知ることが善なのか悪なのか・・・。どうすることが正しいのか・・・。画一的に答えを出せるものではないのが歯がゆくもあり、悔しくもある。

虚夢*薬丸岳

  • 2009/06/28(日) 17:09:37

虚夢虚夢
(2008/05/23)
薬丸 岳

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愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は「心神喪失」で罪に問われなかった。運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった。


愛娘を無残にも殺され、自らも背中を刺され、一時は意識不明になる重症を負わされた佐和子は、激しく落ち込み、精神的に不安定にもなりながら、悲しみに立ち向かっていた。そんな矢先、忘れようもない加害者の男・藤崎と、偶然町ですれ違ったのだった。
事件がきっかけで別れた元夫・三上孝一は、離婚以来初めて元妻に呼び出され、藤崎の居所をつかもうとする。
ところどころに挟み込まれるキャバクラ嬢・ゆきの物語が、どう関係してくるのかと思っていると、途中から藤崎とつながり、物語の流れは一本になっていく。
中盤以降からどんどん明らかになってくるそれぞれの事情に、ページを繰る手を止められなくなり、最後の最後に明かされる佐和子の真意には、胸を突かれる思いがした。
「殺人を犯す段階で、すべての人間は異常な精神状態にあるのではないか」という三上の思いに深くうなずかされるとともに、被害者――加害者家族を含めて――のやりきれない気持ちは、どこへ持っていけばいいのだろう、という思いを強くした。

闇の底*薬丸岳

  • 2006/12/16(土) 17:55:05

☆☆☆☆・

闇の底 闇の底
薬丸 岳 (2006/09/08)
講談社

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少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって発見される。身勝手な欲望が産む犯行を殺人で抑止しようとする予告殺人。狂気の劇場型犯罪が日本中を巻き込んだ―。

絶対に捕まらない―。
運命が導いた、哀しすぎる「完全犯罪」。
『天使のナイフ』の薬丸岳が描く、欲望の闇の果て。江戸川乱歩賞受賞第一作。


日高署で女児殺害事件の捜査をする長瀬、坂戸署で性犯罪経験者の殺人事件の捜査をする村上、そして、過去に幼女を陵辱して殺した者たちを次々に殺害するもうひとりの「男」の視点が入れ替わりながら語られる。
語られ始めた事々はどこでどう繋がるのか。「男」はいったい誰なのか。
読者の疑問を引きずったまま日高署と坂戸署の事件は思いがけないひとつの方向へと向かってゆく。そして、長瀬は坂戸署の事件に借り出され、村上と行動を共にすることになる。
長瀬は24年前妹を殺され、その原因の一端が自分にあったかもしれない重みをいまも胸に抱えながら 自分が警察官でいる意味を自身に問いながら捜査に参加している。
「男」はサンソンと名乗り、幼女が陵辱され殺される事件が起きるたびに 過去に同じ罪を犯したものを殺す、という声明文を警察やマスコミに送りつける。そしてなぜか、長瀬とコミュニケーションをとろうとする。「男」は誰なのか、目的は何なのか・・・・・。

わたしも村上と同じ思考過程をたどってサンソンの目星をつけたのだが、見事にやられてしまった。真犯人は衝撃的だったし、「完全犯罪」の意味がこんな形でわかったこともショックだったが、ほんとうに彼ひとりが真犯人なのか・・・という思いもまたどこかで胸をよぎるのである。協力者?ミスリードされたあの人が?だが何故? 思い過ごしだろうか。

長瀬は結局警察を辞めることになるのだが、彼のこれからも大いに気にかかる。おかしなことを考えなければよいのだが。

ひとつの事件に関わる人々の立場による感情の矛盾についても考えさせられた一冊だった。

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天使のナイフ*薬丸岳

  • 2006/07/12(水) 18:14:28

☆☆☆・・

天使のナイフ 天使のナイフ
薬丸 岳 (2005/08)
講談社

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少年の真の更生とは?大反響の感動ミステリー

いやあ、よく出来ている。
展開は二転三転し、終盤はどんでん返しの連続。まさにミステリー的興奮がみなぎっている。 池上冬樹氏

最後に浮かびあがってくる驚くべき事実にであったとき、読者はこれが問題提起の社会派ミステリーの顔だけでなく、周到に伏線の張られた正統的推理小説の顔も持ちあわせているのを知ることになる。 深町眞理子氏

緻密なプロット、巧みな伏線、そして何よりも、重いテーマと真摯にむきあった作者の誠実な姿勢が心に残る。 相原真理子氏
  ――帯より


チェーン展開するコーヒーショップのオーナー店長の桧山は、仕事中に 自宅で何者かに妻を殺された。しかも5ヶ月の娘の目の前で。そして犯人として上がっていたのは、13歳の中学生三人組だった。そのときから桧山の無念は少年法によってやり場のないものとなったのだった。
妻を失って4年経ったいま、犯人の少年のひとりが殺された。現場が桧山の職場の近くだったこともあり、警察が事情を訊きにやってきた。
そのことをきっかけに、桧山は少年たちが事件のあと、どのように過ごし 更生したのかそうでないのかを知るべく 残りのふたりの少年たちを探し始めるのだが...。

途中で何度も思ってもみなかった展開になり、開けたと思った景色にまた別の影が差す。犯罪に――罪を犯したのが少年であればなおさら――終わりなどないのだということを見せつけられているようでもある。真の意味での更生とは何なのだろう。それさえ被害者側と加害者側、そしてそれ以外の人々にとってまったく別の意味を持つのかもしれない。
ただでさえ驚くべき事件が立て続けに起きているというのに、最後にそれをはるかに超える驚愕が待っていようとは。恐ろしく、哀しく、やるせなく、思いの持って行きどころを失う心地である。

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