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昭和稲荷町らくご探偵 黄金餅殺人事件*愛川晶 

  • 2019/04/28(日) 16:33:19

黄金餅殺人事件-昭和稲荷町らくご探偵 (中公文庫)
愛川 晶
中央公論新社 (2018-10-23)
売り上げランキング: 328,595

時は昭和五十年代、八代目林家正蔵(のちの彦六)の住む長屋には、密かに難事件の相談が持ち込まれていた…。「やかん」「中村仲蔵」「伽羅の下駄」など、正蔵十八番の名作落語の数々が現実の事件と複雑に絡み合う。『高座のホームズ』に続く、痛快無比の異色落語ミステリー第二弾!


落語が題材だけに、会話のテンポがよく粋である。それだけで小気味好い。さらに、高座にかかる落語にまつわる謎が自然に織り込まれ、安楽椅子探偵ならぬ座布団探偵の稲荷町の師匠の謎解きも冴えている上に、その後の対応まで粋なので、惚れてしまいそうである。もっともっともっともっと読みたいシリーズである。

高座のホームズ 昭和稲荷町らくご探偵*愛川晶

  • 2018/05/07(月) 16:30:41

高座のホームズ - 昭和稲荷町らくご探偵 (中公文庫)
愛川 晶
中央公論新社 (2018-03-23)
売り上げランキング: 54,581

テレビやラジオで落語が親しまれ、大看板と呼ばれた一流の噺家たちが芸を競った昭和五十年代。その一人、八代目林家正蔵(のちの彦六)の住む稲荷町の長屋には、傷害事件から恋愛沙汰まで、さまざまな謎が持ち込まれ―。なつかしいあの頃の落語界を舞台に、探偵・正蔵が快刀乱麻を断つ!洒脱な落語ミステリー。


これまでのシリーズのひと時代前の物語である。本作の高座のホームズは、八代目林家正蔵師匠で、安楽椅子探偵よろしく、持ち込まれる厄介話を聞いただけで、たちどころに絡み合った糸をほぐしてしまう。そんな名探偵が、次の時代にもちゃんと受け継がれているのが、これまでのシリーズなのだから、妙に納得してしまう。しかも今作では名探偵は実在の噺家なので、興味はさらに募るというものである。ただ、現代なら顰蹙を買うこと間違いないエピソードが盛り込まれており、しかも話の核心的な部分でもあるので、時代が違うとはいえ、いささか気になったことも確かではある。時代を語るには仕方ないと言え、拒否反応をする読者もいるかもしれないという気はする。そこを乗り越えれば、至極面白い一冊だった。

はんざい漫才*愛川晶

  • 2018/03/05(月) 13:57:21

はんざい漫才 (文春文庫)
愛川 晶
文藝春秋 (2016-04-08)
売り上げランキング: 531,218

編集者・武上希美子、三十一歳。老舗の寄席・神楽坂倶楽部への出向期間も過ぎ、将来を思い悩んでいるところに、また大事件が発生するが、ショー・マスト・ゴー・オン!シリーズ第三弾の今回は、人気漫才コンビ・ロケット団の三浦昌朗さん作、漫才風解説付。そして、最大のサプライズは「あとがき」のラスト一行にあり!


神楽坂倶楽部シリーズの第三弾は、落語ではなく、漫才と音曲にスポットが当てられている。さらには、協会の会長職をめぐる経緯や、過去の因縁、そして希美子のこれからのことなどが絡み合い、もつれ合って厄介の度合いが増しているのである。だが最後は、義蔵さんの機転もあって、万事うまく事が運んだが、問題がすべて片付いたわけではない。希美子と健太郎のことを始め、数々の疑問は次の作品で解決されるのだろうか。ますます愉しみなシリーズである。

三題噺示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帖*愛川晶

  • 2018/03/01(木) 20:30:34

三題噺 示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,052,659

怪しい手品師、狙われる老落語家、師匠いわくの山間の宿…。謎に合点し落語で披露、笑いあり涙ありの人気シリーズ第4弾。


前作では、福の助の奇策により、馬春師匠を紅梅亭で独演会を開くという段取りになったので、どんな具合に話が進むのかと愉しみに読んだ。だがそう簡単に馬春師匠の高座の様子が描かれるわけはなく、そこへ行きつくまでには、いくつもの厄介事の謎解きをしなければならないのが本シリーズの常である。もちろんそれも愉しみつつ、気持ちはどんどん高まるのである。しかし、なんということだろう。思ってもいない展開になり、目を瞠るしかない。ここまで来て、「え、そんなぁ……」、という感じである。そして更なるサプライズ。もう振り回されっぱなしである。どこまで愉しませてくれれば気が済むのだ、と言いたくなるシリーズである。

ヘルたん ヘルパー探偵とマドンナの帰還*愛川晶

  • 2018/02/27(火) 18:47:30

ヘルたん - ヘルパー探偵とマドンナの帰還
愛川 晶
中央公論新社
売り上げランキング: 934,802

介護現場のエピソードと本格ミステリのトリックがハイブリッドに融合。本格ミステリの名手が描く介護ミステリ『ヘルたん』の第2弾。 20歳の神原淳は、浅草に住む成瀬老人の自宅で居候しながら、介護ヘルパーの修行をしている。この成瀬老人、じつは伝説と言われたほどの名探偵。その鮮やかなひらめきはいまも健在だが、アルツハイマーが進行し、ときおり記憶がとんでしまう。それでも噂を聞いて集まってくる相談を淳がかわりに引き受け、成瀬の助けを借りながら探偵業に挑戦する。1巻のラストで失踪した、淳のマドンナ・葉月も戻ってくるが、そこで葉月と浅草をつなぐ驚きの事実が明らかに……。ますます目が離せないシリーズ第2弾。


前作のラストで明らかになった両親にまつわることごとを済ませて、再び成瀬の離れに帰ってきた淳である。ヘルパーの仕事も再開させ、少しずつ板についてきて、仕事も順調に増えてきた。だが、葉月先輩の行方は相変わらずわからず、未来さんの知り合いから持ち込まれた謎は、なかなか成瀬に伝える機会を持てないまま、次から次へと厄介ごとに巻き込まれていく。しかもそれが、ことごとくどこかしらで繋がり、さらなる厄介ごとに発展して行ったりもするので、悩ましくもある。成瀬のアルツハイマーの症状も、じりじりと進行しているようだが、いまのところ誰ひとりそのことに気づいてはいない。この先どうなるのか、大いに気になるところである。偶然なのか、周りの思い込みによるところが大きいのか、結果的に謎解きのヒントを与えることになっているのも皮肉ではある。今回も、大きな謎が明らかになったが、さらなる問題も現れたわけで、次が気になって仕方がないシリーズである。

ヘルたん*愛川晶

  • 2018/02/24(土) 18:22:36

ヘルたん
ヘルたん
posted with amazlet at 18.02.24
愛川 晶
中央公論新社
売り上げランキング: 1,098,035

元引きこもりの20歳、神原淳は、浅草で一人暮らしをする成瀬老人の居候となる。
そこで出会ったヘルパーは、淳が高校時代に憧れていた不良先輩・中本葉月。
成瀬は実は伝説の名探偵で、現在でも依頼人がやってくる。淳はへルパー講習の
傍ら、探偵見習いも務めることに……。
「高齢者介護」と「本格推理」の絶妙なるフュージョン。新機軸の青春ミステリー。


珍しい取り合わせの探偵小説である。なんと、元引き篭もりの新米ヘルパー・神原淳が、伝説の名探偵・成瀬の家に居候し、探偵見習を始めようというのである。高校時代の憧れの葉月先輩の影響が大きく、彼女がらみの出来事もなんとか解決してしまったり、成瀬の言葉に明示を受け、偶然も手伝って、厄介事を解き明かす淳には、探偵の素質があるのかもしれない。本作ではまだ本格始動とは言えないので、成瀬との関わり方も含め、次作が愉しみな一冊である。

「茶の湯」の密室*愛川晶

  • 2018/02/22(木) 18:24:48

「茶の湯」の密室: 神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 489,201

知り合いの茶会に招かれた山桜亭馬伝の妻亮子。思っていた以上に本格的な席で、緊張が先立つなか、亮子はほんの一瞬、そこにいるはずのない猫を見てしまう。話を聞いた馬伝はその奥にある「謎」を見抜くのだが…五年ぶりに復活した「紅梅亭」シリーズ新ステージ、新たな人物も登場し、物語も謎も充実の開幕!


訳あって前作を飛ばしてしまったので、一気に時が経ち、福の助は真打になって馬伝を名乗っているし、馬春師匠もぼつぼつではあるが高座に復帰している。八ちゃんと亮子夫妻には雄太という息子までできていて、驚かされたものの、ほっと胸をなでおろしもする。だが、高座で落語に絡めて謎解き披露をするという趣向は変わらず、相変わらずはらはらしながら愉しめる。今回は、いささか物騒な謎が多いが、それがなおさらハラハラドキドキ感を増している。早く前作も読まなくちゃ、と思わされる一冊である。

うまや怪談*愛川晶

  • 2018/02/21(水) 13:22:08

うまや怪談 (神田紅梅亭寄席物帳) (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,110,991

高座で「罠」を打ち返し、怪談噺で謎を解き、ついには「あの人」を引っ張り出して…動き出す木彫りのねずみ、落語競演会で仕掛けられた「陰謀」学校での「妙ちきりんな事件」と義兄の結婚問題、そして師匠と十五センチの謎と駐車場で見たもの、これがあんなでそんなことに…。大好評「本格落語」シリーズ第三弾。


今回はなんと福の助が馬春師匠の知恵を借りずに謎を解き明かしてしまう。しかもそれが後々厄介事を引き起こすことになり、さらに思いがけない吉報をもたらすことにもなるのだから、なにが起こるか目が離せない。福の助の察しの良さはもちろん、妻の亮子も段々と落語に絡めて推し量ることができるようになっているのが、噺家のおかみさんとしても頼もしさを感じる。ただ、個人的には馬春師匠の浮気話はどうしても好きになれない。せっかく格好良かったのにがっかりである。それが謎解きの要素のひとつにもなったのだから仕方がないのかもしれないが……。それ以外は、スカッと小気味よく愉しめる一冊だった。

芝浜謎噺 神田紅梅亭寄席物帳*愛川晶

  • 2018/02/17(土) 18:14:03

芝浜謎噺―神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 824,706

あの「芝浜」を、故郷で病気の母に聞かせてやりたい……。
なんとかしてやりたいと弟弟子のために悩む八ちゃんこと寿笑亭福の助。そこへ起こった「紅梅亭ダイヤ消失事件」。ところがこぼれたカルピスが引き金になって、「芝浜」も「ダイヤ」もすべてに合点!
笑いあり、ほろりと泣ける、本格落語ミステリー第二弾!


落語の知識がなくても、落語の薀蓄に耳を傾けたくなり、俄か落語通になった心持ちになれる。しかも、人情話としても泣かせどころが満載。さらに、日常の謎を落語にかけて、しかも高座の上で解き明かし、客席の当事者をぐうの音も出ない状態にさせてしまう技の見事さにやられてしまう。探偵役を務める福の助はもちろん格好いいが、彼にヒントを与える師匠の馬春がさらに格好いい。今回はことにお見事としか言いようがない。何度も泣かされる一冊である。

道具屋殺人事件――神田紅梅亭寄席物帳*愛川晶

  • 2018/02/04(日) 13:24:20

道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳  [ミステリー・リーグ]
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,007,204

高座の最中に血染めのナイフがあらわれる、後輩は殺人の疑いをかけられる、妻の知り合いは詐欺容疑……。次から次へと起こる騒動に、二つ目、寿笑亭福の助が巻き込まれながらも大活躍! 落語を演じて謎を解く、一挙両得の本格落語ミステリー!


神田の紅梅亭がらみの厄介事を、二つ目の福の助が妻の亮子の助けや、病を得て館山に引っ込んでいる元師匠の馬春の絶妙なアシストによって解き明かし、落語に寄せて講座で披露するという趣向である。謎解きに至る過程も興味深く、いよいよ事実を明らかにする落語の場面も胸がすく。登場人物たちもみな味のあるキャラで、読み進めるにつれて馴染みになっていく心持ちになる。落語好き、ミステリ好き、どちらもが満足する一冊である。

手がかりは「平林」*愛川晶

  • 2018/01/15(月) 18:49:24


落語を聞いていた児童たちのたわいない言葉遊びがお伝さん襲撃事件に意外なかたちでむすびつく(「手がかりは『平林』」)、お伝さんのテレビ出演から血縁問題がもちあがり大金が絡んで遺産騒動に!そこで犯人あぶり出しになんと「立体落語」を持ち出す(「カイロウドウケツ」)。落語好きからミステリマニアまで楽しめるシリーズ最新刊!


シリーズとは知らずに最新刊から読んでしまったが、物語自体は、問題なく愉しめる。別のシリーズの神楽坂倶楽部の関係者もちらっと登場し、行き来のあるシリーズになっているようなのが、愉しくもある。謎解き自体も、それぞれ違った趣向で、お伝の生い立ちに絡む複雑な事情と相まって、嫌でも興味をそそられる構成である。これから先も愉しみだが、遡って読んでみたいシリーズである。

高座の上の密室*愛川晶

  • 2016/07/06(水) 19:34:57

高座の上の密室 (文春文庫)
愛川 晶
文藝春秋 (2015-06-10)
売り上げランキング: 145,243

出版社から寄席・神楽坂倶楽部に出向中の希美子は新米の席亭(プロデューサー)代理として奮闘中。寄席に欠かせない色物芸の世界を覗き見ると…。手妻「葛篭抜け」で人気を博す美貌の母娘。超難度の芸に精進する太神楽師。彼らの芸が謎と事件を次々と引き寄せる。超絶技巧の本格ミステリ、鍵は「人情」だ!


神楽坂倶楽部シリーズの二作目。希美子も寄席のことが少しずつ分かってきて、なんとか席代の役目を果たしている。いやいや出向してきたはずが、次第に寄席のあれこれに興味を持ち始め、思案を巡らすようにもなってきた。自らの生い立ちをはじめとして、聞かされていないこともまだまだあるが、少しずつ明らかになってきていることもあって、ますます愉しみである。今回スポットが当たっているのは、落語家ではなく、色物と呼ばれる手妻と太神楽であり、落語とはひと味違った興味が湧く。謎解きも、人間関係を軸にしたものであり、やはりつまるところ人間なのだと思わされる。まだまだ解けていない謎があるので、次が愉しみなシリーズである。

神楽坂謎ばなし*愛川晶

  • 2016/06/14(火) 19:45:43

神楽坂謎ばなし (文春文庫)
愛川 晶
文藝春秋 (2015-01-05)
売り上げランキング: 183,157

武上希美子は中堅老舗出版社の編集者、三十一歳。元気な祖母と二人暮し。手堅く教科書を出版している社が三代目の独断で人気落語家の本を出すことに。妊娠や病気で同僚が戦線離脱していくなか、この本を担当した希美子は制作の最終段階で大失敗。彼氏の浮気も判明し、どん底の彼女に思いがけぬ転機が…。


妊娠や病気入院で人手不足のため、てんてこ舞いの編集部で、希美子はなれない落語関係の本の校正でとんだ失敗をしてしまい、そのせいで寄席の席亭の代理を務めることになってしまう。幼いころのおぼろげな記憶、両親の離婚の理由、僅かばかりの記憶で想像する父親の姿。いくつかの偶然が重なって、祖母に訊けなかったあれこれが解き明かされてくる。希美子の生い立ちだのことだけでなく、寄席、神楽坂倶楽部で希美子が初めて体験する落語界のしきたりや、落語の演目の内容のこと、そして人間同士の関わり合いのことなど、ちょっとした謎が、自称下足番の義蔵さんによって丁寧に解きほぐされ、希美子を納得させるのである。二十年近くも探していた猫のマコちゃんに会えたのも、偶然なのだろうか。まったく興味のなかった落語に、少しずつ親しみを持ってきた希美子のこれからが愉しみな一冊である。続編もぜひ読みたい。