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天久鷹央の事件カルテ 久遠の檻*知念実希人

  • 2022/03/30(水) 18:17:14


美しいままの少女。
不老不死の謎に、挑む。

かつてアイドルとして芸能活動をしていた少女、楯石希津奈。十五年以上の時を経て、彼女がまったく同じ容姿で現れたことに驚いた精神科部長の墨田淳子は、統括診断部の天久鷹央に診察を依頼する。だが、検査をしようとした矢先、父親が現れ、希津奈は連れ去られてしまう……。ミイラ化した遺体。自殺からの復活。相次ぐ不可思議な現象の真実は?


タカタカコンビ+鴻ノ池舞(もはやトリオ)の息は、ますますぴったりである。今回は、不老不死の少女を崇める新興宗教さながらの集まりを実効支配する少女の父と、鷹央たちの対決という構図である。最後の最後の謎解きは、相変わらず素人には無理なのだが、それでも、鷹央の推理の過程を聴いているだけで、すとんと腑に落ちる。胎児に歯があるというのは、ちょっと疑問にも思ったが、それ以外は、ラストの鷹央の見事過ぎるライブ中継まで、お見事、と言っていいだろう。飲み過ぎはよくないよ、と言ってあげたいシリーズでもある。

真夜中のマリオネット*知念実希人

  • 2022/03/19(土) 18:41:40


私が救ったのは、天使か、悪魔か――。
殺した後、一晩かけて遺体をバラバラにする殺人鬼――通称「真夜中の解体魔」。
婚約者を殺された救急医の秋穂は、深い悲しみを抱えながらもなんとか職場に復帰をしたところだった。
そこに運ばれてきたのは、交通事故で重傷を負った美少年・涼介。
無事、命を救うことができたが、手術室を出た秋穂に刑事が告げる。
「彼は『真夜中の解体魔』だ」と――。
涼介に復讐しようとする秋穂に、涼介は綺麗な涙を流しながら訴える。
「僕は罠にかけられただけなんです」と――。
無実に思える証拠を見せられた秋穂は、ためらいながらも涼介と真犯人を探すことになるが……。
涼介は真犯人に操られた哀れな人形(マリオネット)なのか、それとも周囲を操る冷酷な人形遣いなのか。
衝撃のクライマックスに、きっとあなたは絶叫する。
知念実希人が贈る、究極のクライムサスペンス。


誰が本当の悪なのか。読み進むほどに、あっちへこっちへと揺れ動き、なかなか的を絞って感情移入できない。さまざまな形で、人に、気持ちに操られる者たち。マリオネットの供宴とでもいった趣である。真実に向かって大逆転、と思うも束の間、最後の最後に、最悪の裏切りを見せられ、(信じ切っていたわけではないにもかかわらず)ダメージから立ち直れない。野放しにしては絶対にダメな人間である。著者には珍しく、後味の悪すぎる一冊だった。

ムゲンのi 下*知念実希人

  • 2022/03/09(水) 07:20:39


愛衣は魂の分身〈ククル〉と夢幻の世界に飛び込み、眠りから醒めない奇病・イレスに罹った患者のマブイグミ〈魂の救済〉に次々と成功する。
やがて、患者の心の傷が、23 年前の通り魔殺人と、頻発する猟奇殺人に繫がっていることがわかる。
感動と驚きのフィナーレが待ち受ける超大作ミステリー、ここに完結。


上巻を読み終えた時点での想像を超える展開が待っていた。そうきたか、という印象とともに、なるほど、と腑に落ちる部分も多くあり、伏線はきちんと張られていたのだと納得させられる。愛衣のあまりにも大きな喪失感と、それを補って余りある満たされ感が、ほっとさせてくれはするが、果たして現実的にあの境地に達することができるかと問われたら、個人的にはうなずくことはできそうにない。それを含めて、強くなり成長した愛衣を応援したくなる一冊だった。

ムゲンのi 上*知念実希人

  • 2022/03/08(火) 16:30:36


若き女医・識名愛衣は不思議な出会いに導かれ、人智を超える事件と難病に挑む。
眠りから覚めない四人の患者、猟奇的連続殺人、魂の救済〈マグイグミ〉――すべては繫がり、世界は一変する。

予測不可能な超大作ミステリー、2020年の本屋大賞ノミネート作が待望の文庫化!


ミステリと医療とファンタジーとイタコの不思議な力が混然一体となった物語である。個人的にはファンタジーには苦手意識があるので、夢幻の世界に飛び込んだ時には、先が思いやられる気分ではあったのだが、同時多発的に発症したと思われる、原因不明の昏睡を続ける難病・イレス患者の治療と、彼らのつながり、引いては主治医である愛衣自身に関わる問題にまでつながりそうな展開で、興味をそそられる。下巻を読むのが愉しみな一冊である。

レゾンデートル*知念実希人

  • 2021/12/12(日) 16:15:35


幻のデビュー作!
サスペンス×ミステリー

私がジャックです――
殺人者の〈存在理由〉とは?
末期癌を宣告された医師・岬雄貴は、酒浸りの日々を送っていた。
ある日、不良から暴行を受けた岬は、復讐を果たすが、現場には一枚のトランプが――。
そのカードは、連続殺人鬼「切り裂きジャック」のものと同じだった。
その後、ジャックと岬の奇妙な関係が始まり……。
最注目作家、幻のデビュー作!
2年連続本屋大賞ノミネート、知念実希人の魅力が凝縮!
(『誰がための刃 レゾンデートル』改題・改稿)


末期がんを宣告された医師・岬雄貴は、絶望し、無為無気力な日々を送っていたが、ふとした偶然から切り裂きジャックの共犯者になる。ジャックと名乗る連続殺人犯の存在理由と、その後の展開で守るべきものを得た雄貴の存在理由とが、交錯する。残されたわずかな時間をどう使うか。守りたいものは守り切れるのか。病魔と殺人鬼と、執念との戦いである。テンポよく進んでページをめくる手が止まらなくなるのだが、想像すると凄惨で悲惨な場面が多いので、なるべくリアルに想像しないように読んだ一冊でもあった。

レフトハンド・ブラザーフッド*知念実希人

  • 2021/12/07(火) 10:40:30


左手に宿る“兄”と俺。奇妙な2人の逃避行が始まる―ある事故以来、左手から死んだ兄・海斗の声が聞こえるようになった岳士。家出した2人は殺人事件に巻き込まれ、容疑者として追われるはめに。濡れ衣を晴らそうと奔走する岳士と海斗だが、怪しいドラッグ「サファイヤ」、そして美しい彩夏との出会いで“兄弟”の思惑はすれ違いだす…予想不可能のラスト、切ない衝撃に涙があふれる。


あまりに過酷な兄弟の物語である。身体本体は弟の岳士、事故で亡くなった双子の兄の海斗は左手に宿り、互いに会話ができるという設定。海斗の存在を消す治療から逃げるために家出し、たまたま起きた殺人事件の犯人として追われることになり、真犯人を探し出すために合成麻薬サファイヤの密売組織を探るうちに、自らもサファイヤの奴隷になり、やっとのことで呪縛から逃れたと思ったら、密売組織からも追われることになる。こんな過酷な目に合う高校生がいるだろうか。とは言え、身体はひとりだが、いつも頼りになる海斗が一緒だから乗り越えられたことばかりである。そしてラスト近く、海斗の本心が明らかになったと思いきや、というところからの大展開。終始、ドキドキハラハラし通しの一冊だった。

硝子の塔の殺人*知念実希人

  • 2021/10/08(金) 16:19:45


作家デビュー10年 実業之日本社創業125年 記念作品

雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、
ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!


設定も舞台も現実離れしているが、それこそが新本格、といったところだろうか。まさにそのために用意された舞台設定ということなのだろう。けれど、これに賭けたにしては、館の主の力不足が目につきすぎ、だからこそのこの事件、とも言える。二重になっていなければ面白さが半減しただろうことを考えると、主の才能のなさもまた重要なファクターだったということだろう。余談だが、名指しこそされていないが、かの鷹央先生もご招待を受けていたようなのだが、事件で忙しいとかで参加していない。このメンバーに加わっていたとしたら、どんな展開になったのかにも興味が湧く。事件を知って、参加しなかったことを歯噛みして悔しがったことだろう。本筋に戻るが、割と早い段階から、引っかかる個所がいくつもあり、真犯人の見当はついていたのだが、その動機を理解できる者は滅多にいないだろうと思われる。病んでいるとしか言いようがない。いちばん犯人にしたくない人物ではある。関係者たちの心の傷になるに違いないと、物語の登場人物であるが同情する。ボリュームの割にはサクサク読めたが、読後感がいいとは決して言えない一冊ではある。

神話の密室 天久鷹央の事件カルテ*知念実希人

  • 2021/08/29(日) 11:24:04


まるで神の御業のような不可思議な「密室」の謎。アルコールが一滴もないはずの閉鎖病棟で泥酔を繰り返す人気小説家。キックボクシングのタイトルマッチ、勝利の瞬間にリングで死亡した王者。かたや厳重な警備の病院で、こなた千人以上の観客が見守る中で。まるで神様が魔法を使ったかのような奇妙な「密室」事件、その陰に隠れた思いもよらぬ「病」とは? 天才女医・天久鷹央が不可能犯罪に挑む。現役医師による本格医療ミステリ!


今回は、鷹央先生の大活躍というよりは、小鳥先生(と鴻ノ池舞)の活躍が目立つ事件だった。なんとなく、このところ鷹央先生が精彩を欠いているように見えてしまうのは気のせいだろうか。とはいえ、鷹央先生の推理力と診断力は相変わらず切れがよく、それが小鳥先生の活躍につながっていることも確かである。身勝手な思いだが、鷹央先生が、ほんの少しずつではあるが、一般社会に順応できるようになっているのが物足りなさの一因かもしれない、とふと思った。(鷹央先生にはいい迷惑である)次も愉しみなシリーズであることには変わりがない。

神のダイスを見上げて*知念実希人

  • 2021/08/24(火) 19:28:39


地球に向けて、巨大小惑星ダイスが接近中。人類は、あと5日で終わりを迎える。人々はその瞬間、『裁きの刻』をどう迎えるのか―。高校生の漆原亮の姉、圭子が殺された。コスモスの咲き乱れる花壇で、全裸で胸にナイフを突き刺された姿で発見された姉は、亮にとって唯一の家族、“世界そのもの”だった。恋人のこともそっちのけで、亮はとにかく犯人を見つけ出し、自分の手で復讐したいと暴走。そして“あるもの”を手に入れるため、クラスの“禁忌”と呼ばれる異端児・四元美咲に接触する。優しく、美しかった圭子を殺したのは、圭子の恋人だったのでは?しかしそれが誰なのかわからない。犯人を追い求めて、亮は圭子が入っていた天文学同好会、そしてダイスを崇拝するオカルト集団「賽の目」に踏み込んでいく…。人類滅亡まであと幾日もない中で、なぜ圭子は殺されなければならなかったのか―。絶望×青春ノンストップタイムリミット・ミステリー!!


人類が滅亡するまでの5日間に、何を成し、その時をどう迎えるか、という物語である。二人だけの家族だった姉を無残に殺された高校生の亮は、姉を殺した犯人を何としても自らの手で殺してやる、と決意し、当てにならない警察を横目に見ながら捜査し、目星を付けるが、ことごとく覆される。真実と向き合うとき、その切なさと成す術のなさに打ちのめされるが、新たに得たものもあり、僅かな光が見える。ダイスが地球に直撃する「裁きの刻」の直前で物語は終わっており、読者にゆだねられるが、どちらの結果になっても、それなりに納得できる気がする。医療ミステリの方が断然好みだが、これはこれで愉しめた一冊だった。

魔弾の射手 天久鷹央の事件カルテ*知念実希人

  • 2021/08/20(金) 07:19:48


西東京市に聳える時計山病院。十一年前の医療ミスで廃院に追い込まれたこの場所で、一人の看護師が転落死する。死亡状況や解剖結果から自殺が有力視される中、娘の由梨だけはそれを頑なに否定した。天医会総合病院の副院長・天久鷹央は彼女の想いに応え、「呪いの病院」の謎を解くことを決意する。死体にまったく痕跡が残らない“魔弾”の正体とは?現役医師が描く医療ミステリー!


今回は、素人が自分で謎を見破るのはほぼ無理と言えるだろう。だが、そこはもうどうでもいいくらい、注目すべき要素がたくさんあって、目が離せない。前回に引き続き、小鳥と舞のコンビの活躍も見事だったし、鷹央が珍しくインフルエンザで倒れるし、見どころ満載だった。毎回の謎解きはもちろん、最終的にはどこに着地するのか、これからも愉しみなシリーズである。

火焔の凶器 天久鷹央の事件カルテ*知念実希人

  • 2021/08/17(火) 18:57:34


殺人か。呪いか。人体発火現象の真相は? 安倍晴明と同時代に生きた平安時代の陰陽師・蘆屋炎蔵の墓を調査した大学准教授が、不審な死を遂げる。死因は焼死。火の気がないところで、いきなり身体が発火しての死亡だった。殺人。事故。呪い。さまざまな憶測が飛び交う中、天医会総合病院の女医・天久鷹央は真実を求め、調査を開始する。だが、それは事件の始まりに過ぎなかった……。現役の医師が描く本格医療ミステリー!


今回もいろいろと過激だった。そして、鷹央の苦悩が見ていて痛ましく、何とか謎を解明する糸口はないものかと、もどかしい思いで読んだ。小鳥先生は、相変わらず酷使されているが、今回はまさに命がけの場面もあり、絆の強さだけでは納得しきれない部分もなくはない。そして、鴻ノ池舞の新たな一面も見られ、小鳥遊・鴻ノ池コンビも、別の意味でなかなかなのではないかと思わされたりもする。小鳥先生、今回は愛車もお釈迦になってしまい、踏んだり蹴ったりだが、穏やかに過ごせる日は来るのだろうか。次も愉しみなシリーズである。

甦る殺人者 天久鷹央の事件カルテ*知念実希人

  • 2021/07/31(土) 07:32:25


殺人鬼は、何者なのか。戦慄の医療ミステリー! 都内近郊で若い女性が次々と首を絞められ、惨殺された。警察は現場に残された血痕のDNA鑑定を行い、容疑者を割り出すが、それは四年前に死んだ男だった……。止まない殺人劇。メディアに送りつけられる犯行声明文。これは死者の復活か。あるいは、真犯人のトリックか。天医会総合病院の天才女医・天久鷹央は事件の裏に潜む“病”を解き明かし、シリアルキラーに“診断”を下す。


今回は、いままさに続いている連続殺人事件の謎解きで、しかも、鷹央が死亡診断をした男のDNAが現場に残されていたことで、自分の診断ミスが生んだ事件なのでは、という責任感もあり、鷹央ののめり込み方も普段に増して激しかった印象である。さらに言えば、普通に考えを巡らせていては永遠に真実にはたどり着けない設定でもあるので、焦燥感はさらに増す。ただ、途中からは、理由はともかく、何となくの印象で怪しい人物が浮かび上がってくるので、そこからは、理由を知りたい欲求がむくむくと頭をもたげてくる。そう頻繁にはない事案だとは思うが、最後はさすがお見事、という展開である。小鳥先生とのコンビもさらに絶妙になり、次が愉しみなシリーズである。

天久鷹央の事件カルテ スフィアの死天使*知念実希人

  • 2021/07/16(金) 18:52:35


外科医を辞め、内科医としての修業を積むべく、天医会総合病院の門を叩いた小鳥遊優は、そこで運命的な出会いを果たす。天久鷹央。空気を読めず、人とのコミュニケーションに難がある彼女は、しかし日本最高峰の頭脳を持つ天才女医だった―。宇宙人による洗脳を訴える患者。謎の宗教団体。そして、院内での殺人。鷹央と小鳥、二人の出会いを描いた長編メディカル・ミステリー。


鷹央&小鳥コンビ結成の経緯を解き明かす物語である。ほぼわかっていたとはいえ、いろいろ腑に落ちるところも多く、さらに二人の結びつきの強さが理解できた気がする。今回のストーリーの鍵は「宇宙人」怪しげな新興宗教の欺瞞を暴くことで決着するかと思いきや……。それだけで終わらないのがミソである。実は怪しげな新興宗教のトリップなど序の口の、身の毛もよだつ恐ろしさを見せつけられることになる。小鳥遊は一生鷹央先生から離れられないだろうな、と実感させられる一冊でもあった。

傷痕のメッセージ*知念実希人

  • 2021/07/04(日) 16:20:16


息をのむ展開と瞠目のラスト! 医療×警察ミステリの新地平!!

「死んだらすぐに遺体を解剖して欲しい――」医師の千早が父の遺言に従い遺体を解剖すると胃の内壁に暗号が見つかった。28年前、連続殺人事件の犯人を追うため父が警察をやめたことを知った千早は、病理医の友人・紫織と協力して、胃に刻まれた暗号を読み解こうとする。時を同じくして28年前の事件と酷似した殺人事件が発生。現在と過去で絡み合う謎を、千早と紫織の医師コンビが解き明かす!


胃壁に暗号とは、凡人には思いつくことのできない設定である。遺族が断固として解剖を拒んだら、物語はまったく成立しなくなってしまうが、そこは小説なので、病理解剖医の熱意と、遺族としての真実を知りたい欲求で乗り切ったわけである。医大時代の同級生で現在の指導医である紫織への屈折した思いがあった千早だったが、亡き父の心の声を必死に聞き出そうとする紫織の姿を見、また、28年前の事件と絡めて、自分たちに寄り添って捜査をしている桜井刑事との連携もあり、最後にはベストバディといった感じになっている。あまりにも重い題材だったが、千早と紫織のキャラと、桜井刑事の独特の捜査のせいか、重たくなり過ぎることなく、前向きな気分になれる一冊でもあった気がする。

天久鷹央の推理カルテ Ⅴ 神秘のセラピスト*知念実希人

  • 2021/06/12(土) 18:35:15


白血病が再発し、骨髄移植でしか助かる見込みがない少女・羽村里奈。だが、複数回に及ぶ化学療法を経ても病気が完治しなかったことで医療不信に陥った彼女の母親は、移植を拒否し、左手に聖痕を持つ預言者の言葉に縋るようになってしまう…。少女を救えるのは、医療か、奇蹟か。神秘的な現象を引き起こす“病気”の正体とは。天医会総合病院の天才女医・天久鷹央が奇蹟の解明に挑む。


鷹央先生のダメっぷりも、成長ぶりも堪能できた今作である。小鳥先生の立ち回りもまたまたお見事。ボディガードっぽい立ち位置が定着しつつある?だが、今回は、命を狙われる事態にまで発展し、この先どうなるかとひやひやさせられもした。とはいえ、怪しい信仰は、真実がわかれば醒めるのも早い。さらには、ひょんなことから知り合った女詐欺師が、助けになったりもして、これからも役に立ってくれるのか、という期待もちょっぴり抱く。また次を愉しみにしたいシリーズである。