三毛猫ホームズの あの日まで・その日から*赤川次郎

  • 2014/04/21(月) 06:54:57

三毛猫ホームズのあの日まで・その日から─日本が揺れた日 (光文社文庫)三毛猫ホームズのあの日まで・その日から─日本が揺れた日 (光文社文庫)
(2013/12/05)
赤川 次郎

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二〇一一年三月一一日、日本に激震が走った。新聞連載時、芸術評が主だったコラムは、「その日」から、社会への発言に重心を移した。震災から二年以上を経たが、復興は進まず、原発事故も収束の見通しが立たない。迷走する現代日本の未来のために。作家・赤川次郎からの提言。


あの日までは、オペラのこと、歌舞伎のこと、落語のことなど、わくわくするような平和な話題が並んでいる。そしてその日からは、もちろん芸術評が書かれているのだが、震災とその影響、そしてその対応と未来のことを絡めずには語れなくなっている。ソフトに書かれてはいるが、著者の憤りが溢れ出てくるようである。あの日のこと、その日から我々が歩んできた道を忘れてはいけないと改めて思わされる。そして、われわれが抱いている憂いや危惧を、国を動かす人たちにぜひしっかりと受け止めてほしいと切に願うのである。明るい未来を、と祈る一冊である。

終電へ三〇歩*赤川次郎

  • 2013/02/06(水) 16:46:26

終電へ三〇歩終電へ三〇歩
(2011/03)
赤川 次郎

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リストラされた係長、夫の暴力に悩む主婦、駆け落ちした高校生カップル、心中の相手を探す女優、愛人を殺して逃走中の男…。すれ違う他人同士の思惑がもつれて絡んで、転がってまた、事件が起きる。


終電に乗り遅れたために始まった物語である。互いに無関係だった人々が、ふとしたきっかけで深く、あるいは刹那的につながり、連鎖するように事件が起こる。リストラされたばかりの柴田が、直属の上司だった絢子と常務の黒木の不倫現場を目撃し、ふらふらと後をつけて行かなければ、その後に起こることがどんな風に変わったのだろうか、と思わされる。起こる事柄はかなり凶悪なものであるにもかかわらず、なぜかさらっと軽いのは、著者の特性だろうか。高校生の駆け落ちカップルの未来が明るそうなのが救いである。いまがあるのは、ほんのちょっとした運命のいたずらなのかもしれない、と思わされる一冊である。

コバルトブルーのパンフレット*赤川次郎

  • 2012/05/09(水) 07:28:09

コバルトブルーのパンフレット―杉原爽香三十七歳の夏 (光文社文庫)コバルトブルーのパンフレット―杉原爽香三十七歳の夏 (光文社文庫)
(2010/09/09)
赤川 次郎

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カルチャースクールの再建を任された爽香は、トーク番組の司会で人気の高須雄太郎に講師を依頼。このとき爽香はビル清掃係の笠木京子と係りを持つ。彼女の息子、達人が交際相手を殺害。そのとき親子が取った行動とは!?高須、笠木、そして爽香の兄―。問題を抱えたそれぞれの家庭の行く末は…。主人公・杉原爽香が読者とともに年齢を重ねる大人気シリーズ。文庫オリジナル/長編青春ミステリー。


久々に読んだ杉原爽香シリーズである。爽香も37歳になっていたとは、ちょっと驚きである。それにしても、なんて波乱の多い人生なのだろう。しかも、プライベートでもそれ以外でもどこでもいつでも何かしらのトラブルに巻き込まれ続けている。爽香に安らぎの日々は来るのか、それが心配になってしまうほどである。今回も、舞い込んで来たり、自分から首を突っ込んだりして、いくつかのトラブルに巻き込まれながらもなんとか切り抜けるが、人徳に負う部分もかなりあるように思われる。走り続けるといつかパタッと倒れるよ、と爽香に言ってあげたい一冊でもある。

いつか他人になる日*赤川次郎

  • 2010/08/11(水) 13:13:18

いつか他人になる日 (カドカワ・エンタテインメント)いつか他人になる日 (カドカワ・エンタテインメント)
(2009/11/10)
赤川 次郎

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「これだけは忘れないようにしてくれ。ここから一歩出たら、もう我々は全く見知らぬ他人だということを」ひょんなことから、三億円を盗み、分け合うことになった男女五人。共犯関係の彼らは、しかし互いの名前さえ知らない―。すべては計画通りに進み、何もかもを手に入れたかに見えた彼らの、降って湧いたような幸運は、それでも長続きしなかった…。復讐のため、家族のため、社会のため、愛する人のため…。それぞれの大義名分を抱えて罪に加担した彼らに、つぐないの道はあるのか。束の間の欲望の裏に巣くう人心の荒廃をサスペンス仕立てで描く、社会派ミステリ。


全編に渡ってできすぎの感はあるが、それこそが著者の持ち味とも言えるかもしれない。特に年齢に関わらず女性の気丈さと有能さには勇気づけられる。基本的にはミステリだが、恋愛あり人間ドラマありで読者を飽きさせない。しかもラスト前にはちゃんとひと捻りされていてすべてが腑に落ちるのである。

おやすみ、夢なき子*赤川次郎

  • 2007/04/21(土) 16:32:03

☆☆☆・・

おやすみ、夢なき子 おやすみ、夢なき子
赤川 次郎 (1999/10)
講談社

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少女は夢を見たことがなかった。
朋余(ともよ)から夢を奪った恐ろしいものは何?28年ぶりに発見された幼なじみの死体……。それは連続殺人事件の幕開けだった。

子供のころ夢を見た記憶がない主婦・田所朋余は28年ぶりに死体で発見された友人の秘密を調べ始める。次々と起こる殺人事件は失った“夢”の代償なのか……!?


なんと凄惨で痛ましい事件――そして事件にさえもされていない事――の数々なのだろう。そして、思わず目を覆いたくなるような、胸の深いところからため息をつきたくなるようなやるせなさなのだろう。それに立ち向かっていく女性たちのなんと強く前向きなことだろう。
赤川作品で扱われる題材は、けっして爽やかで明るいものばかりではなく、凄惨で酷すぎるものも多いのだが、なぜか読後感は重くない。登場する女性たちの多くが逆境にあって芯の強さを見せ 前向きに立ち向かう姿に読者の方が希望を与えられるからかもしれない。それに比べて男性人はいつもいささかだらしなく情けない。この物語でも「名士」と呼ばれるいい年の男たちのなんと身勝手で情けないことか。女性たちの姿がなおさら潔く見える。

君を送る*赤川次郎

  • 2006/06/16(金) 17:02:47

☆☆☆・・

君を送る 君を送る
赤川 次郎 (1997/05)
新潮社

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石塚深雪、23歳。OL生活も四年目を迎えた彼女の心の支えは、営業部長の矢沢晃二。新人の頃、ミスをした深雪を救ってくれたことがあったのだ。その矢沢がワンマン社長と対立して、突然辞職に追い込まれた。裏には何か事情があるようなのだが・・・・・。自分の立場を気にして動こうとしない男たちに愛想をつかした深雪は、一人で送別会を企画するが、事態は意外な方向へ進展して・・・・・。  ――文庫裏表紙より


ちえこあさんのお薦めを読んで、ほとんど「読んだ」ということしか覚えていなかったので 久々に再読。
赤川作品は、いつ読んでも印象がそれほど変わらない気がする。どんな物語でも。それだけ作品が――筋がということではなく――完結しているということなのかもしれない。
そして、赤川作品のもうひとつの特徴は、どろどろした人間の裏側とかだらしのなさとか汚らしい部分も結構かかれているにもかかわらず、あと味に厭味がないということだろう。悪意を持った登場人物もいないわけではないのだが、読後、やっぱり人間って好いな、と思わせてくれるのである。

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角に建った家*赤川次郎

  • 2005/08/03(水) 13:02:10

☆☆☆・・



赤川次郎:文、司 修:画  絵本、といっていいのだろうか。

ある日、本の中そのままの家が近所に建った。まさに忽然と、という感じで。
その本を何度も熱心に読んでいた幹夫は、呼ばれるようにしてその家の前まで行き、招かれるようにして家の中に入ってしまう。
そこにいたのは、本の中でひとり暮らしていた少女だった。
そこで過ごす時間は、家の外に流れる時間とは流れ方が違っていて、ほんのしばらくいただけのつもりなのに、一日以上が経っていて家や学校で大騒ぎになっていたりするのだ。
幼なじみの由紀子は、その家と少女に夢中になる幹夫を心配しながら様子を見守るが、ある日その家の不思議さに気づき、命をかけて幹夫を守ろうとする。

本の世界と現実の世界が縺れるように重なる、というのは感覚的にはわかる気がするし、実際に本を読んでいるときには本の世界に入り込んでいることも多いのだが、本の世界の方がこちらにやってきたとしたらどんな心地だろうか。

幽霊の径*赤川次郎

  • 2004/12/14(火) 08:08:43

☆☆☆・・


 あなたは、「私たちの世界」の人だから――。
 黄昏の小径ですれ違った女性は、もしかして「幽霊」?
 その不思議な女性との出会いをきっかけに、
 令子は死者たちの姿を見ることができるようになるのだが・・・。
 生と死の境界を超えて綴られる、哀しくも美しい現代の怪談。

                         (帯より)

間もなく死んでゆく人、想いを残したまま既に死んでいる人の姿を見ることができるようになってしまったとしたら・・・?
しかも 死者たちが自分を呼び寄せたがっているのを知ってしまったとしたら・・・?

あまりにもショッキングな出来事が続く中、当事者である16歳の高校生令子の柔軟な強さが赤川作品らしくてほっとする。
が、こんな滅茶苦茶な家庭が現実だったら逃げ出したくなるだろうな。

虹色のヴァイオリン*赤川次郎

  • 2004/10/28(木) 20:30:18

☆☆☆・・


 新しい高齢者用住宅の準備計画(R・P(レインボー・プロジェクト))
 の中心人物として活気ある毎日を送る爽香。
 しかし、兄、充夫の借金癖には悩まされ続けていた。
 一方、河村の愛人・志乃の隣室に引っ越してきた
 “佐藤”という男は、一見善良そうだが!?
 また、爽香の秘書・麻生が車で怪我させてしまった少女が
 突然映画デビューして!?
 事件に仕事に息つく間もない爽香が大活躍の
 大好評シリーズ第17弾!

                       (文庫裏表紙より)


杉原爽香が15歳の時に始まり、毎年一話、ひとつずつ歳を重ねた爽香を主人公に物語が進み、17回目=17年目を迎え、杉原爽香31歳の物語である。
相変わらず あちこちに気を配り、自分はあとまわしの爽香がここにいる。性格というのは 歳を重ねても容易に直るものではないということを目の当たりにさせてくれる。そこが爽香の長所でもあるのだが。
登場人物もそれぞれに歴史を重ね立場も気持ちも少しずつ変わっている。が、あたたかく流れるものはいつも変わらずに物語りの底流を流れていて 安心させてくれるのだ。
ただ、河村刑事には 布子先生だけをいつまでも大切にしていて欲しかったな。ちょっとがっかり。

十字路*赤川次郎

  • 2004/06/18(金) 08:24:27

☆☆☆・・


東京に出てきてバリバリ仕事をこなす坂巻里加。
彼女の過去に起因するさまざまな事件。
何故8年も経った今頃に・・・?
火がついたのは 十字路で だった。

赤川作品に登場する女性はいつもなんともカッコイイのである。
これぞ理想だと思う女性によく出会う。
著者の願望だろうか。

以前にも書いたが 赤川作品は決してただほのぼのとしているわけではない。かなり悲惨な状況だったり凄惨な場面が出てきたりもする。それにもかかわらず 読後感はさわやかなのである。登場人物のキャラクターによるところが おそらく大きいのではないかと思われるが 赤川マジックのひとつかもしれない。

鏡よ鏡*赤川次郎

  • 2004/02/09(月) 12:48:53

☆☆☆・・


スタイリストを目指して専門学校に通う18歳の少女が主人公。

昔の友人に久しぶりに出会ったことがきっかけで 様々なことに巻き込まれ
人生が思わぬほうに変わっていく。

普通の人生にはあり得ないようなことを目の前にしながらも
決して自分に嘘をつかず 正面を向いて生きている主人公に励まされる。

赤川作品は やはり安心して読める。

サンタクロースの嘆き*赤川次郎

  • 2003/12/15(月) 08:20:45

☆☆☆・・   サンタクロースの嘆き

赤川作品の登場人物は それが犯罪者だとしても 【いい人】である場合が多いのだが
この作品には それに当てはまらない人物が 二人出てくる。

一章おきに 二つの違う話が進行してゆき 最後にひとつの物語になるのだが
それを繋げる役割をしているのが この【いい人】に当てはまらない二人なのだ。

舞台設定はあまり現実味があるとは言えない アニメっぽいとも言えるものだが
他の作品と同様 赤川さんの描く少女は なんとも魅力的だ。

明日に手紙を*赤川次郎

  • 2003/09/25(木) 17:21:31

☆☆☆・・

久々の赤川作品。
これでもかと言うほど 次から次へと事件が起き、巻き込まれ、翻弄される。
胸を塞ぐようなシリアスな事件がこれだけ一度に起きているにもかかわらず
重くならないのは 赤川さんの描く人物が 本質的に【善】な性質だからかもしれない。
悪役は悪役なりに だらしない奴はだらしない奴なりに みんな憎めないキャラクター達。
現実離れしている設定も多々あるが 「もしかしたら 有り得るかもねぇ」と
思わせてくれちゃうのが赤川流か。

どんな事態に巻き込まれても ひねくれることのない登場人物たちが好き。

  明日に手紙を