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首折り男のための協奏曲*伊坂幸太郎

  • 2014/03/28(金) 07:30:02

首折り男のための協奏曲首折り男のための協奏曲
(2014/01/31)
伊坂 幸太郎

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首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。


連作集とは言え、それぞれが緊密に繋がっているわけでもない。ゆる~い流れに乗っているという感じの連作である。首折り男と黒澤と合コンメンバー。一見何のつながりもなさそうでありながら、そして実際的なつながりはないものの、物語としてはゆるく遠く繋がっているのである。今作のキーワードは時空の捻じれと神の気まぐれ、だろうか。そしてなぜだか、懐かしくて哀しくて切ない想いが胸に満ちてくるような気がする一冊でもある。

死神の浮力*伊坂幸太郎

  • 2013/09/29(日) 21:23:38

死神の浮力死神の浮力
(2013/07/30)
伊坂 幸太郎

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『死神の精度』で活躍した「千葉」が8年ぶりに帰ってきました!
クールでちょっととぼけた死神を、今度は書き下ろし長編でお楽しみください。


久々の死神・千葉の物語である。死神なのになぜか憎めない、音楽好きの千葉のキャラクターが、今作でも炸裂している。人間の姿をしているが、人間界のことには疎く、対象者との会話もずれていて、それがかえって含蓄があるように聞こえたりもして、くすりと笑わされる。冷たいのか熱いのかよく判らない千葉が素敵だ。ストーリーは言葉を失うほど救いがなくて、やり切れなさに満ちている。千葉の対象者である山野辺が追う、娘の敵・本城の、あの度を越した理解不能さはなんなのだろう。何度、さっさとその首根っこを摑まえて、真意を問いただしたい思いに駆られたことだろう。躰の中からちりちりと焼かれるようなもどかしさだった。またいつか千葉の仕事ぶりを見たい――死神なのだが――と思わされるシリーズである。

ガソリン生活*伊坂幸太郎

  • 2013/04/28(日) 13:39:41

ガソリン生活ガソリン生活
(2013/03/07)
伊坂 幸太郎

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実のところ、日々、車同士は排出ガスの届く距離で会話している。本作語り手デミオの持ち主・望月家は、母兄姉弟の四人家族(ただし一番大人なのは弟)。兄・良夫がある女性を愛車デミオに乗せた日から物語は始まる。強面の芸能記者。不倫の噂。脅迫と、いじめの影―?大小の謎に、仲良し望月ファミリーは巻き込まれて、さあ大変。凸凹コンビの望月兄弟が巻き込まれたのは元女優とパパラッチの追走事故でした―。謎がひしめく会心の長編ミステリーにして幸福感の結晶たる、チャーミングな家族小説。


語るのは、緑のデミオ。デミオに乗るのは、望月家の長男で免許取りたての普通の二十歳の良夫、歳の離れた秀でた弟の亨、良夫の妹で亨の姉のまどか、母の郁子さん。緑デミが隣人細見さんのマイカーザッパや、道ですれ違ったり駐車場で隣り合った車と情報交換したり、自分に乗っている人の会話からあれこれ想像したりする設定は、絵本のようだが、結構シリアスでハラハラドキドキさせられる。車同士のネットワークによって、車しか知らない真実があっても、人間に知らせるすべはなく、それがまたもどかしいながらも納得できるのである。事実に見える物事にも、表面に出ない真実があるのかもしれない、と思わせてくれる一冊でもある。最後の最後にじんわり胸が熱くなった。亨、なかなかやるな!

残り全部バケーション*伊坂幸太郎

  • 2013/02/08(金) 17:19:42

残り全部バケーション残り全部バケーション
(2012/12/05)
伊坂 幸太郎

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人生の<小さな奇跡>の物語
夫の浮気が原因で離婚する夫婦と、その一人娘。ひょんなことから、「家族解散前の思い出」として〈岡田〉と名乗る男とドライブすることに──(第一章「残り全部バケーション」)他、五章構成の連作集。


表題作のほか、「タキオン作戦」 「検問」 「小さな兵隊」 「飛べても8分」

毒島の恐ろしさに、命じられた危ない仕事を命じられるままにこなす溝口とその手下の岡田のコンビの掛け合いが絶妙で、小悪党ながらわくわくする。伊坂さん上手い。そして、それぞれの物語が微妙に重なり合い、繋がり合ってくるりと元に戻るところも伊坂さんらしくてうれしくなる。岡田のスイーツブログのハンドル、サキって、あの沙希ちゃん、ですよね。罪を憎んで人を憎まず、ワルたちのキャラクターが愛おしすぎる一冊である。

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夜の国のクーパー*伊坂幸太郎

  • 2012/07/31(火) 18:29:12

夜の国のクーパー夜の国のクーパー
(2012/05/30)
伊坂 幸太郎

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この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない――。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。どこか不思議になつかしいような/誰も一度も読んだことのない、破格の小説をお届けします。ジャンル分け不要不可、渾身の傑作。伊坂幸太郎が放つ、10作目の書き下ろし長編。


伊坂さんだなぁ、と思う。初期の伊坂作品が大好きな人には受け入れられないのかもしれないが、伊坂さんが胸に抱いていることは終始一貫しているのだと思う。この路線でこれからもいくのだろう、きっと。主に猫の視点で語られ、ときどき、その猫に拘束され、彼の話を聞かされている――猫は話せるのである――人間の考えが挟み込まれる。初めて彼らが会話する場面に出くわしたとき、これはもしかすると…、と思った(書けないが)のだが、案の定そうであった。それはそれとして、人間社会でも猫や鼠のそれでも、支配者の摂理は変わらないのか、と思うとやるせなくもなる。が、どんな場合でも、立ち上がるものは現れるのだという希望も残してくれたようで、ほっと息が吐ける気もする。大きくて小さな世界の一冊である。

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仙台ぐらし*伊坂幸太郎

  • 2012/05/09(水) 17:08:00

仙台ぐらし仙台ぐらし
(2012/02/18)
伊坂 幸太郎

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タクシーが多すぎる、見知らぬ知人が多すぎる、ずうずうしい猫が多すぎる…。仙台在住の作家・伊坂幸太郎が日々の暮らしを綴る。『仙台学』掲載を中心に書籍化。書き下ろし短編「ブックモビール」も収録。


伊坂さんの普段の様子が垣間見られるようで、うれしい一冊である。震災の前に書いていたもの、それ以後のもの、その時に何を感じたか、どうしたか。飾らない思いがつづられているように思われる。伊坂さんはエッセイもいい。

PK*伊坂幸太郎

  • 2012/04/16(月) 17:00:00

PKPK
(2012/03/08)
伊坂 幸太郎

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その決断が未来を変える。連鎖して、三つの世界を変動させる。こだわりとたくらみに満ちた三中篇を貫く、伊坂幸太郎が見ている未来とは―。未来三部作。


表題作のほか、「超人」 「密使」

中篇三作なのだが、大きく見ると長篇一作としても読めるような仕掛けが著者らしい。デビュー以来、神様のレシピ的な大いなるなにかを書きつづけられているが、今回もその思いは根底に流れている。運命と言ってしまうには、もう少し流動的で、自らの働きかけで微妙に流れが変わっていくのが、前向きな未来を感じさせられて好ましい。表紙のドミノ倒しが象徴的である。SFのようでもあり、人生訓のようでもあり、哲学的にも感じられる一冊である。

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3652 伊坂幸太郎エッセイ集*伊坂幸太郎

  • 2011/01/20(木) 17:12:28

3652―伊坂幸太郎エッセイ集3652―伊坂幸太郎エッセイ集
(2010/12)
伊坂 幸太郎

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「喫茶店」で巻き起こる数々の奇跡、退職を決意したあの日のこと、「青春」の部屋の直筆間取り図、デビュー前のふたりの恩人、偏愛する本や映画に音楽、「干支」に怯える日々、恐るべき料理、封印された「小説」のアイディア―20世紀「最後」の「新人作家」が歩んできた10年。


3652とは、【365×10+2】のことである。すなわち、著者がデビューしてからの十年の日数である。そんな「十年」に関するあれこれが扉を開くと辞書を開いたように並んでいるのも著者らしくて、ふふふ、である。
さまざまな場所に発表してきたエッセイも、こんなふうにまとまると伊坂幸太郎という人をよく知ることのできる一冊になるのだ、と思わされる。そして脚注の解説、さらには本音や告白がたまらない。小説家の書くエッセイは苦手なことが多いのだが、本書は逆である。著者の作品のすばらしさはもちろん、ひとりの人としての伊坂幸太郎が、ますます好きになる一冊でもある。

バイバイ、ブラックバード*伊坂幸太郎

  • 2010/12/18(土) 14:00:53

バイバイ、ブラックバードバイバイ、ブラックバード
(2010/06/30)
伊坂 幸太郎

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「理不尽なお別れはやり切れません。でも、それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」(伊坂幸太郎)。

太宰治の未完にして絶筆となった「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語!


短編を一話書き終えるたびに、抽選で選ばれた五十名に送って読んでもらう、という「ゆうびん小説」の企画で書かれた一冊。そんな募集があったことさえ知らなかったが、当たった人はなんてしあわせな方々なのだろう。
物語は、膨らんだ借金のために「あのバス」に乗せられることになっている星野が、お目付け役の巨漢の繭美を同道し(というか見張られ)、五股でつきあっていた女たちのところへ別れの挨拶に行くという連作である。なんとも不甲斐ない星野であるが、そのキャラは憎めず、かえって好感を持ってしまうほどうそのつけない真直ぐさであり、「あのバス」に乗せる役目の繭美は、この世の常識には何ひとつ当てはまらないような恐ろしさなのだが、言うことは結構的を射ているのでこれまた憎みきれないのである。星野が五股をかけていた女たちもそれぞれに味があっていい。「あのバス」ってなんだろう、どこへ連れて行かれるのだろう、と恐ろしい想像を膨らませながら読み進めるスリルも愉しめる。ラストのその先がとても気になる。ガンバレ!繭美。

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マリアビートル*伊坂幸太郎

  • 2010/11/04(木) 19:09:30

マリアビートルマリアビートル
(2010/09/23)
伊坂 幸太郎

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元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。3年ぶりの書き下ろし長編。


『グラスホッパー』の続編なので、人が人を殺める場面がこれでもかと出てくる。しかも、登場人物のほとんどがプロの殺し屋なので、ほとんど音もたてず躊躇もせずにあっけないほど淡々と命が奪われていく。それには慣れることがなく、気は塞がれるが、別の仕事を請け負っている(と思っている)業者同士の駆け引きには興味を覚える。そして無邪気な中学生を装う王子の存在の(木村の言葉を借りれば)臭さには胸が悪くなる。新幹線が盛岡についたときに姿を消した木村夫妻と王子。その行方は想像するしかないが、王子にとってはおそらく屈辱的な日々の始まりになるのだろう。それにしても、こんな新幹線には絶対に乗り合わせたくないものである。

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オー!ファーザー*伊坂幸太郎

  • 2010/05/15(土) 17:07:47

オー!ファーザーオー!ファーザー
(2010/03)
伊坂 幸太郎

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みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて―。


2006年に新聞連載していたものだそうである。そして伊坂幸太郎作品の「第一期最後」という位置づけの一冊だそうである。
母ひとり子ひとりに父親が四人、という奇抜な設定ながら、どの父親も自分こそが高校生の由紀夫の本当の父親だと信じており、一般的な父親とは比べものにならないくらいの愛情を注いでいる。変則的すぎる家族だが、理想の親子と言ってしまっても間違いではないだろう。疎ましいほどの愛情表現は羨ましいほどである。そして、性格のまったく違う四人の父親が語る言葉がどれもいい。とてもいい。常識的ではなかったり、ひとりよがりだったりもするのだが、その言葉が口に上るまでの心情を思うと、胸にぐっとくるのである。そんな父親たちと暮らしている由紀夫はきっと、ひとりで四人前のいい男になるだろう。物語は、がちがちのミステリではないが、ミステリ要素も折り込まれており、ポツリポツリとちりばめられたパーツがどんどんつながっていくのが小気味よい。伊坂流のテンポである。
「ミステリ」を期待して読むと、物足りなさもあるかもしれないが、愉しめる一冊だった。

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SOSの猿*伊坂幸太郎

  • 2010/04/23(金) 18:30:57

SOSの猿SOSの猿
(2009/11/26)
伊坂 幸太郎

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ひきこもりの青年の「悪魔祓い」を依頼された男と、一瞬にして300億円を損失した株誤発注事故の原因を調査する男。そして、斉天大聖・孫悟空ーー。物語は、彼らがつくる。伊坂幸太郎最新長編小説。


交互に出てくる「私の話」と「猿の話」で物語は作られている。電気販売店の店員で、かつてイタリアでエクソシスト(悪魔祓い)をやっていたことがあり、帰国してからも何件か手がけている遠藤二郎。証券会社で品質管理の仕事をしている五十嵐真。引きこもりの青年・辺見眞人。そして、西遊記のあの有名な猿。彼らと彼らを取り巻く人々や事々が、初めはばらばらに見えていながら、だんだんとひとつにまとまってきて、真実の物語を作り上げていく。
ただ、物語の構成も思想も、なかなかに難しく、引っかからずにするすると読めるものではない。夢のなかの出来事であるような、心の裡の葛藤であるような、心理学的で哲学的なものであるような、不思議な読後感の一冊でもある。

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あるキング*伊坂幸太郎

  • 2009/09/30(水) 17:11:03

あるキングあるキング
(2009/08/26)
伊坂 幸太郎

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天才が同時代、同空間に存在する時、周りの人間に何をもたらすのか?野球選手になるべく運命づけられたある天才の物語。
山田王求はプロ野球仙醍キングスの熱烈ファンの両親のもとで、生まれた時から野球選手になるべく育てられ、とてつもない才能と力が備わった凄い選手になった。王求の生まれる瞬間から、幼児期、少年期、青年期のそれぞれのストーリーが、王求の周囲の者によって語られる。わくわくしつつ、ちょっぴり痛い、とっておきの物語。『本とも』好評連載に大幅加筆を加えた、今最も注目される作家の最新作!!

ベストセラー作家・伊坂幸太郎さんの最新刊は、いままでの伊坂作品とはひと味もふた味も違う! 『ゴールデンスランバー』や『週末のフール』のようなテイストとは違いますが、ひとりの天才が生みだされていく過程、主人公を取り巻く周囲の人々の困惑と畏れ――読み進めていくうちにどんどん引き込まれていきます。「他の人にこういう小説を書かれたら悔しい」「こういう作品を読みたかった」と伊坂さんご自身がおっしゃるくらい、思いをこめた作品です。新しい伊坂ワールドをお楽しみください!(by編集担当)


作中でキュリー夫人の伝記が引き合いに出されているが、この物語もある意味伝記であるので、主人公の天才野球少年・山田王求(おうく)を客観的に眺める視点で語られている。ただこの物語からは、伝記的な客観性というだけではない語り手のなんらかの思いが感じ取られ、読者は語り手の正体が判らない故に幾分か不安にさせられる。
王求の物語自体は、著者お得意の神様のシナリオ的な天才野球少年がプロ野球選手になる物語という感じで、さほど面白みのあるものとも思えないのだが、そのときどきの王求の、王になると運命づけられている者の達観とも言えるような精神行動は興味深い。
ラストで明かされる思惑あり気な語り手の正体とラストシーンには、輪廻のようなものを感じつつも、王求の人生とはなんだったのだろうというやるせなさも感じたのだった。

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実験4号*伊坂幸太郎・山下敦弘

  • 2009/06/13(土) 16:59:55

実験4号実験4号
(2008/04)
伊坂 幸太郎山下 敦弘

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新作小説と新作映画がコラボ!
熱狂的人気を誇る2人が場所やキャラクターをリンクさせた奇跡のコラボレーション作品集
Theピーズの名曲『実験4号』に捧げる、青春と友情と感動の物語!
祝 2008年本屋大賞受賞

舞台は今から100年後、温暖化のため火星移住計画の進んだ地球――。
火星へ消えたギタリストの帰りを待つバンドメンバーの絆の物語(伊坂幸太郎『後藤を待ちながら』)と、火星へ旅立つ親友を見送る小学生たちの最後の2日間(山下敦弘『It's a small world』)が、いま爽やかに交錯する!


80年代のバンドブームの中で結成されたロックバンド・The ピーズの「実験4号」をモチーフにして、作家・伊坂幸太郎と、映画監督・山下敦弘が作り上げたコラボ作品である。
小説と映像、切り取られる場面こそ違え、同じ景色がそこに広がっていることがどちらからもわかって、胸が震える。
舞台はいまから100年後、という設定だが、80年代に弾けたロックバンドをモチーフにしているからか、なにか懐かしささえも覚えるのが不思議でもある。
過去と現在が絶妙にリンクして、伊坂流の心憎さも盛り込まれている。

『泣きっつうか、何ちゅうかね、末期的な夕やけ空みたいな。さあ頑張るぞみたいな感じじゃなくて、悲しい歌なのに明るいような』


という、本文中にも引用されている、The ピーズのインタビュー時のひとことが、作品中に満ちているような気がする。

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モダンタイムス 特別版*伊坂幸太郎

  • 2009/01/22(木) 10:12:50

モダンタイムス 特別版 (Morning NOVELS)モダンタイムス 特別版 (Morning NOVELS)
(2008/10/15)
伊坂 幸太郎

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検索から、監視が始まる。 漫画週刊誌「モーニング」発の初めての小説! 花沢健吾氏による連載時の全イラストも楽しめる特別版。


『魔王』その後の物語である。
花沢健吾氏のイラストが挿入されているためもあり、616ページという大作である。読書自体は、はらはらどきどきわくわく愉しめるのだが、本を支えるのに疲れる一冊ではある。

バイオレンス物のような場面があちこちに出てきて、その辺りでは何度も顔を顰めてしまったが、それはもちろん物語の主軸ではなく、著者が言いたいのは、迂遠なシステムによって、悪行を働く者等が歯車のひとつとなり、良心を咎めずに仕事として悪の一端を担わされてしまうことの恐ろしさではないだろうか。そして更には、インターネット上でのあまりの無防備に対する警鐘でもあるのかもしれない。
物語の舞台は近未来。二十一世紀半ばとのことだが、いまの時代でも荒唐無稽と言い切ってしまえない恐ろしさも潜んでいるような気がして背筋が寒くなる。

また、主人公の渡辺拓海の友人として井坂好太郎という作家が出てくる――あとがきに、名前を考えるのが億劫だったので自分の名前を変形させた、とある――が、イラストの井坂好太郎氏が著者そっくりなので、もう伊坂氏ご本人としか思えなくて笑ってしまう。この名前にしたからこそ書けるキャラクターでもあっただろう。

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