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異人たちの館*折原一

  • 2006/01/25(水) 17:47:51

☆☆☆・・



失踪した息子の伝記を作り、自費出版したい――ゴーストライター・島崎のもとにその話が舞い込んでから、彼は広大な館で残された資料の山と格闘することになった――。年譜、インタビュー、小説中小説、モノローグを組み合わせながら進行する、これは読者への挑戦状!  ――見返しより


小松原淳は幼い頃から際立った知能の高さを示し、学校時代には勉強しなくても常にトップの成績を取っていた。小学生の頃児童文学の賞を取り、将来は小説家になるという夢を確固としたものにしたのだった。
殻に閉じこもりがちでエキセントリックな性格でもあり、いじめられたりさまざまなトラブルを起こしたりするのだが、母の再婚相手の連れ子であるユキとの関係を母に見つかったことがきっかけとなり富士の樹海に入り行方不明になっていた。
小松原淳の伝記を書いてくれと母の妙子に依頼された島崎潤一は淳の部屋に篭って資料を読み執筆を始めたのだが...。

眩暈がするような物語だった。
錯覚や思い込み、時間の入れ替え、執筆者の交替。いくつものトリックが仕掛けられ、小説中小説もどんどん上書きされていくような 落ち着かない心持ちにさせられる。読み始めたときには思ってもみなかった結末に茫然とする。
二つの母と息子の物語とも言えるかもしれない。

沈黙の教室*折原一

  • 2004/02/18(水) 12:56:15

☆☆☆・・


連合赤軍事件の記憶も新しい1973年、その現場から程近いある中学の3年のクラスで【粛清】の名のもと 悪質な虐めが横行していた。
さらにその内容を詳しく記した【恐怖新聞】なるものの 無言の圧力は編集者の思いの外生徒達の心を抑圧していた。

加害者は容易に忘れるが 被害者は絶対に忘れない

という言葉の典型とも言えそうである。20年経っても尚 恨みは消えることはないのだ。
真の加害者は一体誰なのか 読み終えてみればなるほどと頷かされることもある。
しかし それほど深く反省しているようにはどうしても見えない。
これでいいのだろうか。この人物はこのままで。
あまりに多くの人生が狂わされたと言うのに。

軽い気持ちでしたこと――もしかすると加害者意識さえもなく――がやられた側には深い傷になることを 人はみな もっと自分に言い聞かせるべきだ。