死仮面*折原一

  • 2016/07/18(月) 18:41:56

死仮面
死仮面
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折原 一
文藝春秋
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「君と一緒にいて幸せだったよ」と言い遺して急死した十津根麻里夫。彼が勤めていたはずの高校に「妻」の雅代が連絡すると、「そのような名前の教師はおりません」と言われる。「夫」は名前も身元も偽っていたのだ。正体は何者なのか?それを解く手がかりは、大学ノートに残された小説のみ。失踪した中学生の少年を救うために、同級生四人組が、マリオネットの仮面の男に立ち向かう物語だった―。


現実と思われる出来事と、小説のなかと思われる出来事が交互に描かれているのだが、読み進める内に、どちらが現実でどちらが虚構なのか――あるいはどちらも現実なのか――わからなくなる。時系列に並べられているわけではなく、別なのだが、同じような出来事が繰り返し語られていて、くらくらと目眩がするようである。謎がひとつずつ明らかになり、現実と虚構の流れが一本につながりかけると、さらに驚愕の事実が曝され、愕然とさせられる。読中も読後も、気が重くなるばかりで、ラストにすべてが明らかになってさえ、救いはない。因果で重苦しい一冊である。

愛読者*折原一

  • 2014/10/28(火) 07:10:32

愛読者―ファンレター (文春文庫)愛読者―ファンレター (文春文庫)
(2007/11)
折原 一

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本にサインして送って下さい。写真送りますから、会って下さい―熱狂的読者の要求はエスカレートし、やがて悲劇が…(「覆面作家」)、作家の了解も得ず講演会を企画する図書館司書(「講演会の秘密」)、下手な小説を送りつけ添削せよと迫る作家志望者(「ファンレター」)他、覆面作家・西村香を巡る怪事件の数々。


上記のほか、「傾いた密室」 「二重誘拐」 「その男、凶暴につき」 「消失」 「授賞式の夜」 「時の記憶」

連作短編だが、ひと連なりの長編としても読める。覆面作家・西村香、と聞いて、まずあの方に似ているな、と思わされるのだが、あの方のネタ晴らし的な物語ではない。手紙やFAXのやり取りが大部分を占めており、しかも毎回西村香のしてやったり的どんでん返しが待ち受けている。なにやらざわざわと不穏でありながら、可笑しみたっぷりな一冊である。

侵入者--自称小説家*折原一

  • 2014/10/17(金) 07:14:25

侵入者 自称小説家侵入者 自称小説家
(2014/09/10)
折原 一

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北区十条で起きた一家四人殺害事件。発生後半年以上経っても解決のめどが立たず、迷宮入りが囁かれる中、“自称小説家”の塚田慎也は遺族から奇妙な依頼を受ける。「この事件を調査してくれないか」―。以前、同じく未解決の資産家夫婦殺人事件のルポを書いたことから白羽の矢が立ったのだ。百舌の早にえ、車椅子の老人、ピエロのマスクをかぶった男…二つの事件に奇妙な共通点を見出した塚田は、あるアイデアを思いつく。遺族をキャストに、事件現場で再現劇を行うことで犯人をあぶり出すのだ―。ミステリー界の特級幻術師が送る「○○者」シリーズ最新刊。


自称小説家の塚田慎也の視点で書かれた章と、彼が書いた侵入者Pierrotの脚本に則って事件現場再現激を演ずる関係者たちの様子が描かれた章とが織り交ぜられている。誰もが犯人に見えてくるし、そこここに思わせぶりなヒントがちりばめられているようにも見えるのだが、一体どれが真実なのかなかなか判らなくてもどかしく、なおのこと興味をそそられる。誰の言葉を信じればいいのか。ピエロのマスクの効果が、ちょっとどうだろうとは思うものの、ピエロであることが凄惨な現場にあってなおのこと気味が悪い。なんだかまだ事件は続くような薄気味悪さが残る一冊でもある。

グランドマンション*折原一

  • 2013/08/14(水) 12:43:59

グランドマンショングランドマンション
(2013/05/18)
折原 一

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著者ならではの奇想と騙りが炸裂する、傑作ミステリー連作集!
騒音問題、住居侵入、ストーカー……アクの強い住人たちが、これでもかとばかり次々に問題を引き起こす「グランドマンション一番館」を舞台に、希代の名手の技巧が冴え渡る!
ファン必読の傑作ミステリー連作集!!


「音の正体」 「304号室の女」 「善意の第三者」 「時の穴」 「懐かしい声」 「心の旅路」 「リセット」 そしてエピローグ

グランドマンションを舞台に繰り広げられるトラブルのあれこれの連作集である。揉め事も盛りだくさん、事件も盛りだくさん、ひと癖もふた癖もある住人も盛りだくさん、そして仕掛けも盛りだくさんである。揉め事や事件は、やれやれと思わされるものばかりで、しかも現実にもありそうなことばかりなので、他人事として笑ってばかりもいられないのだが、ミスリードや目くらましのトラップがあちこちに仕掛けられているので、気を抜けなくて愉しいことこの上ない。こんなマンションには住みたくない一冊である。

逃亡者*折原一

  • 2012/09/27(木) 20:04:47

逃亡者逃亡者
(2009/08)
折原 一

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持ちかけられた交換殺人に乗ってしまい、知人の夫を殺した罪で逮捕された友竹智恵子だが、警察の不手際で脱走に成功。顔を変え、身分を偽り、日本全国を逃亡し続ける。智恵子を追いかける警察の執念。時効の壁は15年。逃亡劇は驚愕の結末へ突き進む。


518ページというボリュームを感じさせず一気に読ませる一冊である。友竹智恵子の逃亡生活が物語のほとんどを占めるが、緊張感と咄嗟の判断で紙一重のところで追手(警察と夫)から逃れるのを見続けると、なにやら逃亡を応援したい心持ちになってくるから不思議である。智恵子の人好きのする憎めないキャラクターによるところも大きいのかもしれないが。このまま逃げ切って時効を迎えるのか、それとも最後の最後につかまってしまうのか、と読者を緊迫した気分にしておいて、そこには思ってもいなかったどんでん返しが準備されているのだった。思い返せば、ところどころで「ん?」と思った箇所がなくはなかったのだが、深く突き詰めることなく読み流してしまっていたのだった。それこそがヒントだったというのに。思い込みは怖いと知っているつもりなのに、まんまと騙されてしまって、うれしくもある。読み応えのある一冊だった。

追悼者*折原一

  • 2011/07/12(火) 17:09:40

追悼者追悼者
(2010/11)
折原 一

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浅草の古びたアパートで発見された女の絞殺死体。被害者は大手旅行代理店のOLだが、夜になると街で男を誘っていたという。この事件に興味を抱いたノンフィクション作家が彼女の生い立ちを取材すると、その周辺に奇妙な事件が相次いで起きていたことが分かる。彼女を殺したのは誰か?その動機は?「騙りの魔術師」折原一が贈る究極のミステリー。


昼間は有能なOL、夜は春を売る女、というに面性を持つ女性・奈美が殺された。マスコミはスキャンダラスに報道し、興味本位の視聴者を煽るのだった。そんななか、何人かのノンフィクションライターがこの事件に目をつけ、取材をはじめる。物語はライターたちが彼女の周りの人びとに奈美の生き様を取材した内容が資料のように並べられるという形になっており、ライターのひとり笹尾時彦の目線で描かれているのだが、ときどき思わせぶりに謎の語りが入り興味をそそる。ラストは、そうだったのか、と腑に落ちる思いだが、あんなことでこんな流れができてしまうのか、と背筋が寒くなる心地である。途中何度か真犯人がわかりそうでわからないもやもや感があったが、大筋では間違っていなかった一冊である。

失踪者*折原一

  • 2009/08/16(日) 13:41:03

失踪者失踪者
(1998/11)
折原 一

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ノンフィクション作家・高嶺隆一郎は真犯人に直接インタビューする手法をとっていた。埼玉県の久喜市で起きている連続失踪事件を調査するなかで、15年前の同様の事件との関連性が浮かび上がる。月曜日に女が消えること、現場に「ユダ」「ユダの息子」のメモが残されること。犯人はまた「少年A」なのか。


まるで15年前を模倣したかのようなそっくりな連続失踪事件が起こる。高嶺隆一郎は、重要参考人と目される人やその周辺の人たちに取材して「ユダの息子」を書き上げるが、その後、彼自身も何者かに襲われる。そんなとき、押しかけ助手の神崎弓子は、独自の調査によって核心に近づいて行く。
15年前の事件の容疑者・少年Aと現在の容疑者・少年A。まったく別の人物であるふたりの少年Aの存在が、物語上での過去と現在との時間の行き来に――それが著者の意図なのだろうが――混乱を生じさせ、読者に立ち位置を見失わせる。どちらの事件もごく近い場所で起き、 似たような周辺環境であるのも錯覚を促す一因である。騙されまいとして読み進んでも、ときどき混乱させられる。
いままで読んだ「○○者」シリーズのなかでは、本作がいちばん面白かった。

行方不明者*折原一

  • 2009/08/04(火) 06:59:57

行方不明者行方不明者
(2006/08)
折原 一

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埼玉県蓮田市で、ある朝、一家四人が忽然と姿を消した。炊きたてのごはんやみそ汁、おかずを食卓に載せたまま…。両親と娘、その祖母は、いったいどこへ消えたのか?女性ライター・五十嵐みどりは、関係者の取材をつうじて家族の闇を浮き彫りにしてゆく―。一方、戸田市内では謎の連続通り魔事件が発生していた。たまたま事件に遭遇した売れない推理作家の「僕」は、自作のモデルにするため容疑者の尾行を開始するのだが―。


蓮田市の一家消失事件と、戸田市の連続通り魔事件が、まったく別々に描かれるので、はじめは視点の転換に少々戸惑う。さらに、過去の一場面がフラッシュバックのようにはめ込まれるので、自分がどの時間軸に立っているのか、一瞬混乱させられる。戸田市の事件では、事件を追う推理作家自身が、度々夢なのか現実なのか区別がつかない状態に陥るので、読者も共に惑わされるのである。
やがてふたつの事件は一本になっていくのだが、賦に落ちるという感覚よりも、薄ら寒さが先に立つのは、事件のありようのせいだろうか。

沈黙者*折原一

  • 2009/08/01(土) 20:35:21

沈黙者沈黙者
(2001/11)
折原 一

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同夜、二軒の民家で発生した大量殺人と、警察の尋問に名前も明かさぬ謎の男。二つのストーリーをラストで待ち受ける驚愕の真相!


同じ新聞販売店の配達区域の二軒の家で、立て続けに家族が殺される事件が起こった。
物語は、いくつかの視点で描かれる。唯一残された田沼家の娘・ありさと、事件の第一発見者の新聞配達員・立花洋輔の視点。ディスカウントストアで万引きをして捕まるが、徹底して身元や名前を名乗らない沈黙者。そして、「私」が「君」に語りかける形でその沈黙者の行動を追っているらしい者の視点である。
巧みに描き分けることで、読者の目は間違った道へと導かれるのである。
わかってみれば、事件そのものは単純なもので、犯行の動機も、さらに言えば沈黙者が沈黙し続ける動機もいささか弱いように思われるが、思ってもみない真相に、目を覚まさせられたような心地がするのである。

グッドバイ--叔父殺人事件*折原一

  • 2009/07/02(木) 09:55:24

グッドバイ―叔父殺人事件 (ミステリー・リーグ)グッドバイ―叔父殺人事件 (ミステリー・リーグ)
(2005/11)
折原 一

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ぼくの叔父が集団自殺をした。閉め切ったワゴン車で練炭を使ったのだという。ところが叔母は「自殺に見せかけて誰かが殺したんだ」といってきかない。こうしてぼくは叔母に命じられ叔父の死の「真相」を探ることになったのだ。ぼくは遺族として他の自殺者の家族と会ううち、この集団自殺を以前から追いかけていたジャーナリストがいたことを知り、そして、ぼくはなにものかに監視されていることに気づいた。やはりたんなる「集団自殺」ではなかったのか?ぼくは狙われているのか?集団自殺事件をめぐる「真相」と「犯人」。読者の間隙を突く折原マジックの真骨頂。


書体を変え、語り手を変え、時系列を変えて集団自殺とそれに纏わる顛末が語られる。
転換が小刻みなので、慣れるまではなかなか頭が切り替わらなくて疲れたが、慣れてしまえばスリリングであるとも言える。
トラップとミスリードによって、結末はあっと驚くようなものになるのだが、騙されまいとして臨んだからか、割と早い段階でいろいろ気づいてしまい、予想した結末とさほど遠くないところに落ち着いてしまったのが、いささか残念でもあった。

冤罪者*折原一

  • 2007/03/17(土) 14:08:08

☆☆☆☆・

冤罪者 冤罪者
折原 一 (1997/11)
文藝春秋

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ある新証言によって、連続暴行殺人犯・河原輝男は控訴審で一転、無罪を勝ち取った。だが、それは新たな惨劇の幕開けだった…。逆転また逆転のストーリー、冤罪事件の闇を描く推理長編。



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俺が殺したとされるのは、中野区のマンションに住む女だった。あの夜、俺はぐでんぐでんに酔って、酒場で女と意気投合し、ラブホテルに入った。俺がやったとされる事件は、その時間に起こっているのだ。俺にはその間の記憶がない。女とセックスした後は眠ったと思うが、いやな夢を見た。マンションの二階に忍び込んで女を襲う夢だ。いやがる女を無理に押さえつけた時、頬を爪で引っかかれた。翌朝、ラブホテルのベッドで目覚めたとき、俺の頬に長さ二センチほどの引っかき傷があり、ひりひりと痛んだ。だが、俺はやっていない。でも、もし夢遊病だったら・・・・・。(本文より)

連続放火事件や 連続婦女暴行事件が起こるさなか、婦女暴行や窃盗の前科を持ち、事件当夜の記憶も定かでない川原は、殺人犯として捕まり 取調べを受け、拷問に耐え切れずに自白してしまう。しかし、人権を守る会や被害者の遺族らといったさまざまな思惑が川原の周りで渦巻き、川原自身もその渦に翻弄されることになる。
結局は無罪を勝ち取り、元の世界に戻った川原だったが、世間の目は彼を放っておいてはくれなかった。
川原自身、取材記者であり恋人を失った被害者でもある五十嵐、娘を失ったほかの遺族たち、そして事件当夜 放火現場を逃げる途中の犯人に目撃された12歳の少年、五十嵐とパソコン通信でやり取りしている小谷ミカという見知らぬ女性など、かかわりのあるさまざまな人々を追いかけつつ物語はとんでもない方向へと進んでいくのである。
いたるところに怪しい要素が転がっており、しかし そのどれもがほんの少しだけずれているように思える。後半、いぶかしみながらも最後の最後でずれのない要素を見せつけられたときには、異様さに背筋をゾクリと寒さが這い上がってくるようだった。

耳すます部屋*折原一

  • 2006/04/12(水) 17:58:14

☆☆☆・・



わたしのあの子に何をしたの?
執拗な電話が女を追いつめる。
叙述ミステリの名手、10年の軌跡、10の短篇。
  ――帯より


表題作のほか、五重像・のぞいた顔・真夏の誘拐者・肝だめし・眠れない夜のために・Mの犯罪・誤解・鬼・目撃者。

どれも読者の思い込みと錯覚を利用した映像化に不向きな物語である。
どの物語もたいていどこかで「あれ?」とほんの微かに引っ掛かりを覚えるのだが、そこで読み流してしまうともうあとは著者の策略に引きずられてしまう。結末がわかったときに、「あぁ、やっぱりあのときのあれは...」と納得させられる。
どの物語も、背筋をぞくりとさせられ、早く真実を知りたくなる。

異人たちの館*折原一

  • 2006/01/25(水) 17:47:51

☆☆☆・・



失踪した息子の伝記を作り、自費出版したい――ゴーストライター・島崎のもとにその話が舞い込んでから、彼は広大な館で残された資料の山と格闘することになった――。年譜、インタビュー、小説中小説、モノローグを組み合わせながら進行する、これは読者への挑戦状!  ――見返しより


小松原淳は幼い頃から際立った知能の高さを示し、学校時代には勉強しなくても常にトップの成績を取っていた。小学生の頃児童文学の賞を取り、将来は小説家になるという夢を確固としたものにしたのだった。
殻に閉じこもりがちでエキセントリックな性格でもあり、いじめられたりさまざまなトラブルを起こしたりするのだが、母の再婚相手の連れ子であるユキとの関係を母に見つかったことがきっかけとなり富士の樹海に入り行方不明になっていた。
小松原淳の伝記を書いてくれと母の妙子に依頼された島崎潤一は淳の部屋に篭って資料を読み執筆を始めたのだが...。

眩暈がするような物語だった。
錯覚や思い込み、時間の入れ替え、執筆者の交替。いくつものトリックが仕掛けられ、小説中小説もどんどん上書きされていくような 落ち着かない心持ちにさせられる。読み始めたときには思ってもみなかった結末に茫然とする。
二つの母と息子の物語とも言えるかもしれない。

沈黙の教室*折原一

  • 2004/02/18(水) 12:56:15

☆☆☆・・


連合赤軍事件の記憶も新しい1973年、その現場から程近いある中学の3年のクラスで【粛清】の名のもと 悪質な虐めが横行していた。
さらにその内容を詳しく記した【恐怖新聞】なるものの 無言の圧力は編集者の思いの外生徒達の心を抑圧していた。

加害者は容易に忘れるが 被害者は絶対に忘れない

という言葉の典型とも言えそうである。20年経っても尚 恨みは消えることはないのだ。
真の加害者は一体誰なのか 読み終えてみればなるほどと頷かされることもある。
しかし それほど深く反省しているようにはどうしても見えない。
これでいいのだろうか。この人物はこのままで。
あまりに多くの人生が狂わされたと言うのに。

軽い気持ちでしたこと――もしかすると加害者意識さえもなく――がやられた側には深い傷になることを 人はみな もっと自分に言い聞かせるべきだ。