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語り女(め)たち*北村薫

  • 2004/05/26(水) 20:34:24

☆☆☆・・


恵まれた環境に育ちもともと空想壁があった主人公。30歳を過ぎた頃から急激に視力が落ちたことがきっかけとなり 活字を読むよりは市井の人の話を聞くほうが興味深かろうと 新聞や雑誌に広告を出し語り女を募集した。
様々な境遇・年齢の女性が 入れ替わり立ち替わり寝椅子の主人公のもとを訪れて自分の体験したちょっと不思議な出来事を語っていく、ただそれだけなのである。語られる話も 謎のようなものもあれば 気にしなければやり過ごしてしまうようなものもあるのだが なんとも言えない穏やかな時が流れているのである。女はどんな女でもきっと 語りたがりなのだろう という気がする。

秋の花*北村薫

  • 2004/05/22(土) 20:31:02

☆☆☆・・


『空飛ぶ馬』『夜の蝉』に続く 円紫さんと私シリーズ第三弾。
[私]が卒業した女子高で起きた事件(事故?)に関わる物語である。
ミステリィでは当たり前の人が死ぬということがこのシリーズには珍しい。なので シリーズの他の作品に比べて詩的に流れるような感じが薄かったように思う。円紫さんの謎解きも当然のことながらうきうきと微笑ましいものではなく真実を明るみに出すことよりも その後のことを深く思っている様子が見て取れる。
ただ どの作品を読んでも どんなことでも 知ろうと思えばヒントは辺りにころがっているのだということに気づかされる。わからないのは知ろうとしないからなのだ。きっと。

ただ これは単なる個人的なわがままなのだが 北村さんには人を殺して欲しくない。

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夜の蝉*北村薫

  • 2004/03/27(土) 14:13:50

☆☆☆・・


「わたしと円紫さん」シリーズ第2弾。立て続けに読んでしまった。

今回も 朧夜の底・六月の花嫁・夜の蝉 という3編のオムニバス。

表題作 夜の蝉 では 突込みどころのないほど完璧に美しい5歳年上の姉との間に幼い頃からずっと引かれていた一線が崩された。
語り手の「わたし」も大人の女に少しだけ近づきつつある風情が清潔な色っぽさを感じさせたりもする。あくまでも清潔に。
主役であり語り手でありながら作品中に名前すら出てこない「わたし」に 私は大いに愛しさを覚える。若さゆえの硬さ 純粋さ ちょっとしたひねくれ方などが なんとも可愛らしいのだ。

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空飛ぶ馬*北村薫

  • 2004/03/26(金) 14:12:47

☆☆☆・・


その後シリーズとなった「わたしと円紫さん」の出会いの巻き。

織部の霊・砂糖合戦・胡桃の中の鳥・赤頭巾・空飛ぶ馬 という5編のオムニバス。
まがまがしい殺人などとは遠く隔たった日常の不思議をさらりと解き明かす円紫さんは 初出から痛快である。洞察力と発想の柔軟性のなせる技であろう。
やはり全編に流れる空気は「詩」である。女子大生である「わたし」と友人達との飾らない会話でさえ 悠々と流れる大河に身を任すように詩的で心地好い。

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盤上の敵*北村薫

  • 2004/03/14(日) 14:02:06

☆☆☆・・


チェスの勝負の実況中継を思わせる淡々と運ばれていく。
想像するのもおぞましいような事々だというのに。
怒り狂い打ちひしがれて叫びまわってしかるべきことが
息を呑む音さえも響き渡りそうなほど静かに語られている。

途中一瞬 追ってきた筋を裏切られたような 突然迷子になったような感覚に陥る個所があったが それがまた他の北村作品同様 見事な組み立てによるものだった。さすが。
物語が終わってさえなお いくつもいくつも解決されねばならない問題が立ちはだかっている。
言ってみれば 問題の根本は何ひとつとして解決されてはいない というのも痛々しい。

月の砂漠をさばさばと*北村薫

  • 2004/02/03(火) 12:41:38

☆☆☆・・



お話を作る仕事をしているお母さんと さきちゃんのお話。

さきちゃんが眠る前、ご飯を食べる時、学校から帰ってきた時。
いろんな場面で お母さんはお話をしてくれる。
さきちゃんが ふともらしたひと言から お話の世界が広がることもあり
お母さんが見たものから お話が始まることもある。

さきちゃんの感受性と お母さんのそれを大切に思うあたたかいまなざし。
ほんゎか きゅんっ とする 12の小さなものがたり。

おーなり由子さんの ふんゎりやさし気なイラストが 包み込まれるようであたたかい。

一味違った北村薫さん…なのかな。

タイトルはお母さんの歌うこの歌から
 月のー砂漠を
 さーばさばと
 さーばのーみそ煮が
 ゆーきました


今 心にゆとりがなくなりかけているかな?
と 感じている方にお薦め!

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冬のオペラ*北村薫

  • 2004/01/26(月) 08:13:09

☆☆☆・・
冬のオペラ

冬になれば白に包まれる北の国から上京し 叔父の不動産会社で働く姫宮あゆみ。
その会社の二階に越してきた 名探偵 巫(かんなぎ)弓彦。

この二人が 名探偵と その記録係 という ホームズとワトスンばりの珍コンビとして 名探偵が解決するに値する事件を手がけていく物語。

と言うと 格好よさそうに聞こえるが 実は事件の依頼などほとんどなく
たまに関わり解決した事件も きちんと報酬を貰えたためしがない。

しかし 彼の名探偵振りは 本物で 事のあらましを聞いただけで 真実が見えてしまうのだ。

巫の掴み所のない けれどツボはしっかり抑えるという だらしないのか格好いいのかよく判らないキャラクターと 好奇心旺盛で なぜか巫を尊敬しているあゆみの一生懸命さのギャップも 魅力のひとつになっているのではないだろうか。

北村さんの作品に共通する品のよさは この作品の底にももちろん流れていて
表題作では 京都が舞台ということもあり 格調の高ささえ感じさせてくれる。

街の灯*北村薫

  • 2004/01/04(日) 21:14:49

☆☆☆・・


北村薫さんのミステリィは【日常の謎】というジャンルに属すると言われる。
まさにその通り。まがまがしい殺人事件などが起こるわけではなく――今回一話の中では起こるが――日常 見過ごしがちないろいろに 主人公が疑問を抱き その謎を解く というパターンなのだ。

オムニバス形式のこの物語たち、時代は昭和初期、登場するのは よい暮らしをなさる上流の方々である。
下々のものである私にとっては 馴染みのない物言いやら暮らし振りやらで
なにやら少々退屈かしらん、と思いつつ読み進むと 別宮(べっく)みつ子という女性が その頃としてはたいそう珍しく 運転手兼お目付け役として登場する辺りから 俄然面白くなり 惹き込まれてしまった。

別宮(ベッキー) 一代記を読んでみたいほど 素晴らしい女性。憧れである。

六の宮の姫君*北村薫

  • 2003/11/17(月) 07:45:46

☆☆☆・・   六の宮の姫君

大学4年生の《私》は、出版社でアルバイトをしながら卒論に取り組む。
テーマは「芥川龍之介」。
大作家から芥川の謎めいた言を聞かされ、調べを進めていくのだが・・・・・・
 (帯より)

出版社のアルバイターとして訪れた大作家からもたらされたひと言。
芥川が自らの作品『六の宮の姫君』について語ったという言葉。
あれは玉突きだね。……いや、というよりはキャッチボールだ》
の謎を解き明かすべく 主人公が文献に当たり 想像を巡らす物語。
落語家で大学の先輩でもある 春桜亭円紫さんからのヒントも絶妙で どきどきしてしまう。

謎解きを円紫さんに任せず 主人公の《私》にさせたことで 読者も一緒に謎を解き明かしているようなスリルを味わえるのではないだろうか。

芥川龍之介・菊池寛他 その時代の作家達に興味のある人には 別の興味も盛りだくさんである。

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朝霧*北村薫

  • 2003/10/29(水) 07:29:54

☆☆☆・・   朝霧

こんなミステリィもあるんだなぁ という感じ。
血生臭い事件とか 荒々しい出来事などは一切なく
卒論も提出し、出版社の編集者として社会に出ようとするひとりの女性の
身のまわりに浮かんでくる謎を解き明かす物語なのだ。
落語家の春桜亭円紫師匠が さしずめホームズの右腕ワトソン君のように
いつも飄々と鮮やかに謎解きを披露してくれる。

読んでいる間中 ミステリィを読んでいるというよりも
なぜか 穏やかな詩の世界にいるように感じられて 心地好かった。

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