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寝ても覚めても*柴崎友香

  • 2010/11/09(火) 19:29:11

寝ても覚めても寝ても覚めても
(2010/09/17)
柴崎 友香

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人は、人のどこに恋をするんだろう?消えた恋人・麦を忘れられない朝子。ある日、麦に顔がそっくりな人が現れて、彼女は恋に落ちるが…朝子22歳から31歳までの“10年の恋”を描く各紙誌絶賛の話題作。


泉谷朝子は鳥居麦に恋をした。22歳だった。麦はとらえどころがなく、ちょっと出たまま長いこと帰ってこなかったりする男だった。ある日ふらりといなくなり、朝子は待ち続けたが麦に顔が似ている亮平と出会ってしまい恋に落ちる。そんなとき、十年も経って麦は俳優として画面に戻ってきたのだった。
いつもながら著者の描き出す女の子たちの日常は、手を伸ばせば触れられそうに現実感を持ち、気だるさまで伴って読者を同じ場所へ連れだすようである。大人からみればメリハリのない行き当たりばったりの暮らしにも見え、だが本人たちにしてみれば日々を精一杯生きている、というような。
朝子の恋は結局はなんだったのだろう。友人からも恋人からも遠ざけられることになり、それでもそのときの自分の気持ちに正直だったことで自分自身を納得させることができるのだろうか。わたしにはよくわからない朝子なのだった。

ドリーマーズ*柴崎友香

  • 2010/10/20(水) 10:58:20

ドリーマーズドリーマーズ
(2009/08/21)
柴崎 友香

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目の前にある世界が、夢のように思える瞬間がある。いくつもの風景からあふれ出す、大切な誰かへのたしかな想い。現実と夢のあわいを流れる時間を絶妙に描く表題作ほか、ゆるやかな日常からふと外れた瞬間をヴィヴィッドに映し出す、読むたびに味わい深まる連作短篇集。


表題作のほか、「ハイポジション」 「クラップ・ユア・ハンズ!」 「夢見がち」 「束の間」 「寝ても覚めても」

関西から東京に出てきて働いている女の子の何気ない暮らしぶりが描かれていてとてもリアルに感じられる。舞台は大阪・京都だったり新宿だったりする。強い主張があるわけでもなく、かといって雰囲気だけに流されているわけでもない、著者の作品に流れる時間のゆるやかな動きが、関西弁の可愛らしさも手伝ってとても心地好い。読者の方が夢の世界にたゆたっていきそうな一冊である。

主題歌*柴崎友香

  • 2008/04/07(月) 17:26:20

主題歌主題歌
(2008/03/04)
柴崎 友香

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この歌がここで歌われたことは消えてしまわない
聞こえてくる人の声、街の音 そして、誰かの心に響く歌がある
「女子好き」な女性たちのみずみずしい日常の物語
第137回芥川賞候補作(「主題歌」)
「愛ちゃんて、かわいいな。こないだの子とはえらい違いやわ」
「誰でもかわいいやなあ、小田ちゃんは」
「誰でもやないよ。いろんなかわいいがあるやん」
ただ、かわいい女の子やきれいな女優を見ていると、それだけで幸せな気持ちになるし、そのことについて話すのが楽しい。
同時収録:「六十の半分」「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」


相変わらず大阪の女の子を描いて絶妙な著者である。
気負いも背伸びもしない、等身大の女の子――もうすぐ三十歳に手が届きそうであろうとも――の日常を目の前で見ているようである。
ほんのちょっとしたことにしあわせを感じ、何気ないひとことに落ち込み、たのしいことを探して周りを見回す女の子。大勢の中にまぎれてしまいそうな彼女たちひとりひとりが、実にそのままに描かれていて、まるで自分も「女の子カフェ」に仲間入りしたような心持ちになってしまいそうである。

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また会う日まで*柴崎友香

  • 2007/06/21(木) 19:18:40

☆☆☆☆・

また会う日まで また会う日まで
柴崎 友香 (2007/01)
河出書房新社

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好きなのに今は会えない人がいる……有麻は25歳OL。高校時代、修学旅行2日目の夜。同級生とのある記憶を確かめるため、約束もなしに上京。6日間の東京滞在で、有麻は会いたい人に会えるのか? とびきりの恋愛小説!


この内容紹介はちょっと違う気がするが、ゆるゆるだらだら(いい意味で)の柴崎節健在という感じで面白かった。
大阪の女の子の日常そのまんま、という柴崎作品だが、今回は少しばかり趣を変えて舞台は東京。
でも趣が違うのは実は登場する地名だけで、登場人物はほとんど大阪人であり、語られる言葉もほぼ大阪弁である。東京人としては、山手線からの眺めの描写とか、様々な箇所で東京の見え方を再認識させられもして、それがまた面白かった。
ただ単純に恋愛小説と括ってしまえないゆるゆるもやもやとしたなにか――進むべき道とか――を手探りする物語のようにも思える。
いつも携えているカメラを、撮りたいと思って向けるのだが そのときには何を撮りたかったのか見失ってしまう、という有麻の満たされない感じがすべてを表しているような気がする。

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その街の今は*柴崎友香

  • 2006/12/12(火) 17:34:37

☆☆☆・・

その街の今は その街の今は
柴崎 友香 (2006/09/28)
新潮社

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わたし、昔の大阪の写真見るのが好きやねん。その、どきどきの中毒みたいな感じやねん-。過ぎ去った時間の上に再生し続ける街の姿に、ざわめく28歳の気持ちを重ねて描く、新境地の長篇。


28歳の歌子は、OLをしていた会社が潰れ、いまはシュガーキューブというカフェでアルバイトをしている。決まった恋人もなく、ときどき合コンに出かけてはよくわからない時を過ごしているのだった。仕事は、探さなくてはならないと思いながらも、このままが気楽でいいんだけど、とも思ったりする。そして歌子は、自分の知らない昔の大阪の写真を見るのが好きなのだった。頭の中に現在のその場所の様子をはっきりと思い浮かべることのできる場所なのに、そこは自分の知らない、そして自分のいない世界であることの不思議さと、それに出合ったときのどきどき感がたまらない。
いつもながらに大阪弁の柴崎作品である。地元の方が読めば、たちどころに手に取るように風景が浮かんでくることだろう。修学旅行くらいでしか訪れたことのないわたしが読んでも、その場の空気感に身を置いているような心地である。おそらくニュアンスは掴み切れはしないのだろうと思うが、ひととき大阪の女の子になった気分に浸れる一冊である。

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フルタイムライフ*柴崎友香

  • 2005/12/10(土) 20:49:35

☆☆☆・・



 喜多川春子 22歳。
 美術系の大学を卒業し、
 思いがけず包装機器会社の事務職についた――。
 
 『きょうのできごと』の著者が四季を通して、
 細やかに綴った新入社員の10ヶ月。

 おもしろいで。会社。ほんまにコピーしたりお茶入れしたりするねん。
 なんか、まだ、そういう役をやってみてるっていう感じ。
 <はたらく生活>をはじめて体験する女の子の
 ゆるやかな毎日、恋を描いた長編小説。
          (帯より)


五月から二月の十ヶ月が月ごとに章になっている。
卒業式の二週間前にひょんなことから決まった就職先で慣れない仕事に戸惑いながらなんとか先輩についていっている五月から、これからもいろんなことが起こりそうな状況に置かれながらも 自分の机が自分らしくなっていることに気づく、そろそろ一年が経とうとする二月までの、喜多川春子の日々がただ綴られているのである。
でも、これを読んだだけで わたしはすっかり喜多川春子の同僚になったような錯覚に陥ってしまうのだ。大阪の女の子の実態なんて何にも知らないのに。
それほど何の気負いもなく書かれているのだ。ゆるゆると書かれているのに、ただそれだけではない何かがあるのだろう。

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ショートカット*柴崎友香

  • 2005/01/15(土) 08:57:39

☆☆☆・・


表題作の他、やさしさ・パーティー・ポラロイドという4つの物語。

今まで読んだ柴崎さんの作品の底に流れる危うさは何なのだろう、と考えてみた。
この本を読んで、それが少しわかったような気がする。
いまここで楽しくやっている自分がいて、それはそれで自分なのだけれど、ふっと意識が遠くへ飛ぶ瞬間、本物の自分はその飛んだ先にもっと確かな存在として生きているような心地がして、ここにいる自分の実態があやふやに思えてしまうような感じ。
違う次元に生きている本物の自分と、今ここにいる自分の間を自分の中身だけがふらふら危うい感じで行き来しているような。
不思議だけれど懐かしい空気感に包まれる。

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?*柴崎友香

  • 2004/10/07(木) 20:04:45

☆☆☆・・



表題作と「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」の二編。

登場するのは大阪の若者たち。従って話し言葉は大阪弁である。
この二つの物語では これが必須なのだろうと思わされる。東京言葉では表わせないであろう 時計の針がゆっくり回るような空気感である。

次の町に着いてしまえば、人は何かやることがあるのだ。何かをするためにその町へと出かけてゆくのである。しかし、次の町へ行くまでの移動の道のりはときに遥かに遠く、町に居る時間よりもずっと長いかもしれない。
次の町までどんな歌をうたうかが、人がどう生きるか ということなのかもしれない。
私は 次の町まで、どんな歌をうたおうか。

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きょうのできごと*柴崎友香

  • 2004/09/04(土) 18:02:17

☆☆☆・・


三月二十四日と三月二十五日のいろんな時間を行ったり来たりしながら その中のある時一ヶ所に集まっていたあの人やこの人を一人称にして語られる出来事。
きょうという日の出来事が 違う時間違う人の目を通すといろんな風に見えるのがちょっと不思議な感じがする。起こったことはひとつだけなのに。その場では目立たず脇役だった人も ひとりになると主役になるし、別の人の目で語られると 判らなかったことに解答が与えられたりもする。
なんてことのない足掛け二日の奥行きが ぐんぐん深くなってゆくようだ。