パノララ*柴崎友香

  • 2015/03/02(月) 06:57:35

パノララパノララ
(2015/01/15)
柴崎 友香

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二八歳の田中真紀子は、友人のイチローから誘われ、彼の家に間借りすることになった。その家は建て増しを重ねた奇妙な家で、コンクリート三階建ての本館、黄色い木造の二階建て、鉄骨ガレージの三棟が無理やり接合されていた。真紀子はガレージの上にある赤い小屋に住むことに。イチロー父は全裸で現れるし、女優の母、無職の姉、モテ系女子の妹も一癖ある人ばかり。そんなある日、イチローは、自分はおなじ一日が二回繰り返されることがあると真紀子に打ち明けるのだった。芥川賞作家が放つ、新感覚パノラマワールド!


初めのうちは、いつものように淡々と特別に起伏があるわけでもない日常が描かれているのだが、ふとしたきっかけで間借りすることになった木村家の、一風変わった家族が住むつぎはぎの奇妙な家での暮らしが始まると、その家族それぞれの事情や存在感に巻き込まれながら真紀子の日々も微妙に変わっていく。しかも木村家の人たちはそれぞれに、いささか普通ではない力を持っていて、そのことに真紀子も初めの内こそ驚きはするけれど、さほど大きな反応をすることもなく、そのまま真紀子自身は淡々と日々を過ごしていく平坦な物語かと思って安心しきっていたら、彼女の身にもどういうわけか同じようなことが起こるのである。でもそれがおそらく真紀子にさまざまなことを気づかせてくれるきっかけにはなったのだろう。平坦ながらもきのうとは違う新しい世界に生まれたような印象もある。パノラマワールドというよりもパラレルワールドのような印象の一冊である。

きょうのできごと、十年後*柴崎友香

  • 2014/10/08(水) 18:37:20

きょうのできごと、十年後きょうのできごと、十年後
(2014/09/29)
柴崎 友香

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十年前、京都の飲み会に居あわせた男女。それぞれの時間を生きた彼らは、30代になり、今夜再会する。せつなく、おかしい、奇跡のような一夜の物語。


九月二十一日 午後二時から、九月二十二日 午前一時までのひと晩の物語。何気ない日常を描かせたら天下一品の著者だが、本作はちょっぴり特別な一夜の物語である。そうは言っても、舞台設定が特別なだけで、集まった人たちのやりとりや心の機微の描かれ方は、さらりとさり気ない。それでいて繊細で深いのである。十年という月日がそれぞれにもたらした変化と、変わらない芯の部分が読んでいてなぜか切なくなる。この時点からの十年後もまたみてみたいと思わされる一冊である。

春の庭*柴崎友香

  • 2014/08/31(日) 16:39:37

春の庭春の庭
(2014/07/28)
柴崎 友香

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第151回芥川賞受賞作。
行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をはじめ、なにげない日常生活の中に、同時代の気分をあざやかに切り取ってきた、実力派・柴崎友香がさらにその手法を深化させた最新作。
離婚したばかりの元美容師・太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた。あるとき、同じアパートに住む女が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入しようとしているのを目撃する。注意しようと呼び止めたところ、太郎は女から意外な動機を聞かされる……
「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」(宮本輝氏)など、選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい感覚をお楽しみください。


読者がいつの間にか物語の世界に入り込んで、登場人物のひとりとして物語の中で生きているような心地になるいつもの柴崎作品とはいささか趣が違う。日常を描いている点は同じだが、その日常は誰にも覚えのあるものというわけではなく、ちょっと不思議な夢をみているような日常なのである。日々の暮らしのわずかな隙間から夢の中をちらりとのぞきこんでいるような、現実離れした感覚もある。同じ場所に立って、その場の歴史が躰をすり抜けていくのを目を閉じてやり過ごすような、タイムトラベルのような感覚もある。それでいて、そのほかはいたって現実的なのも対照的で面白い。ラストで時間も人間関係もぽんと別次元に飛んで行くようなのも不思議である。なぜかどきどきしてしまう一冊である。

星よりひそかに*柴崎友香

  • 2014/05/24(土) 07:26:04

星よりひそかに星よりひそかに
(2014/04/10)
柴崎 友香

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彼の部屋でラブレターを見つけた女、好きな人だけに振り向いてもらえないOL、まだ恋を知らない女子高生、数カ月で離婚したバーテンダー、恋人に会えない人気モデル、元彼の妻のブログを見るのが止められない二児の母……。みんな"恋"に戸惑っている。
『きょうのできごと』から14年。恋とか愛とかよくわからなくなった"私たち"に、柴崎友香が贈る、等身大の恋の物語。


「五月の夜」 「さっきまで、そこに」 「ほんの、ちいさな場所で」 「この夏も終わる」 「雨が止むまで」 Too Late,Baby」 「九月の近況をお知らせします」

ゆるく繋がった連作集である。並んだタイトルだけ見ても著者らしく、何気ない日常を切り取っているのだろうな、という印象を持つ。自分の想いに戸惑い、もてあましながらも、日々の暮らしは、自分や自分を取り巻く人たちを漏れなくあしたへと運んでいく。流れには逆らわないが、たまにはどこかに引っかかったりしながら、少しずつ前に進んでいる。相変わらず、ちょっとした会話や反応が生きている。なんてことないのに惹きこまれる一冊である。

週末カミング*柴崎友香

  • 2012/12/24(月) 17:13:54

週末カミング週末カミング
(2012/11/28)
柴崎 友香

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いつもより、少しだけ特別な日。週末に出逢った人たち。思いがけずたどりついた場所。あなたの世界が愛おしく輝く、8つの物語。第143回芥川賞候補作「ハルツームにわたしはいない」収録。


「蛙王子とハリウッド」 「ハッピーでニュー」 「つばめの日」 「なみゅぎまの日」 「海沿いの道」 「地上のパーティー」 「ここからは遠い場所」 「ハルツームにわたしはいない」

いつもながらに何気ない日常のなんてことない会話を描くのが上手な著者である。だが今作では、ほんの少しだけいつもと違う場所――空間的だったり時間的だったり心情的だったりはするが――に主人公たちはいるのである。少しだけいつもと違う景色を見、いつもと違うことを想い、ほんの少しだけいつもと違う自分を見つける。平日からみるとちょっぴり特別な感じのする週末の空気がそこここに流れている。あしたからまたいつもの平日が続いても、乗り切れるかもしれない、となんとなく思わせてくれる一冊である。

虹色と幸運*柴崎友香

  • 2011/09/19(月) 16:41:42

虹色と幸運虹色と幸運
(2011/07/09)
柴崎 友香

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どうするかなー、今後の人生。そろそろなにか決めなきゃいけないかも。そんな年頃の同級生3人。明日に向かって一歩ずつ。三人三様の一年間。


大学の学務課に勤める本田かおり、大学の同級生でイラストを描いている水島珠子、かおりの高校の同級生で雑貨屋を始め、三児の母でもある春日井夏美。家庭環境も育った境遇も、現在の立場も暮らしもまったくと言っていいほど違っている三人の三月から翌年の二月までの物語である。待ち合わせて会ったときのそれぞれの印象や服装の描写、何気ない場面で交わされる何気ない会話、誰かが言ったことに対する感じ方などなど。とりとめなく並べられているようで、そのひとつひとつが重なり合い積み重なってそのときどきの輪郭が浮き上がってくる。着ている服の手触りやそのときの空気の匂いまで感じられるようなこまやかさである。著者の得意とするところだろう。三人三様の生き様とその距離感が好ましい一冊である。

よそ見津々*柴崎友香

  • 2011/03/06(日) 08:20:35

よそ見津々よそ見津々
(2010/09/23)
柴崎 友香

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ここ5年の間に発表された90篇余りで編んだ初の本格エッセイ集。
東京の木、空の色、おいしいもの、洋服……透き通ったのびやかなまなざしが、ふだんの日々のくらしをいとおしいものに変えてくれます。そして注目は本の話。読めば必ず小説が好きになります。


1 東京の木/ 2 希望の場所/ 3 料理は、てきとうに塩梅に/ 4 ファッションの、なんとなく/ 5 本と映画と/ 6 小説を書くこと

六つの大枠のなかに、こまごまとしたあれこれが詰まっている。西の大都市大阪から東の大都市東京にやってきて、ふと感じたいろいろな場面での違いや、ひとり暮らしの日々のあれこれ、書評や映画評などなど。著者の小説の登場人物がそのまま街を歩いている目線を感じることができる心地になれる一冊である。愉しい。

寝ても覚めても*柴崎友香

  • 2010/11/09(火) 19:29:11

寝ても覚めても寝ても覚めても
(2010/09/17)
柴崎 友香

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人は、人のどこに恋をするんだろう?消えた恋人・麦を忘れられない朝子。ある日、麦に顔がそっくりな人が現れて、彼女は恋に落ちるが…朝子22歳から31歳までの“10年の恋”を描く各紙誌絶賛の話題作。


泉谷朝子は鳥居麦に恋をした。22歳だった。麦はとらえどころがなく、ちょっと出たまま長いこと帰ってこなかったりする男だった。ある日ふらりといなくなり、朝子は待ち続けたが麦に顔が似ている亮平と出会ってしまい恋に落ちる。そんなとき、十年も経って麦は俳優として画面に戻ってきたのだった。
いつもながら著者の描き出す女の子たちの日常は、手を伸ばせば触れられそうに現実感を持ち、気だるさまで伴って読者を同じ場所へ連れだすようである。大人からみればメリハリのない行き当たりばったりの暮らしにも見え、だが本人たちにしてみれば日々を精一杯生きている、というような。
朝子の恋は結局はなんだったのだろう。友人からも恋人からも遠ざけられることになり、それでもそのときの自分の気持ちに正直だったことで自分自身を納得させることができるのだろうか。わたしにはよくわからない朝子なのだった。

ドリーマーズ*柴崎友香

  • 2010/10/20(水) 10:58:20

ドリーマーズドリーマーズ
(2009/08/21)
柴崎 友香

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目の前にある世界が、夢のように思える瞬間がある。いくつもの風景からあふれ出す、大切な誰かへのたしかな想い。現実と夢のあわいを流れる時間を絶妙に描く表題作ほか、ゆるやかな日常からふと外れた瞬間をヴィヴィッドに映し出す、読むたびに味わい深まる連作短篇集。


表題作のほか、「ハイポジション」 「クラップ・ユア・ハンズ!」 「夢見がち」 「束の間」 「寝ても覚めても」

関西から東京に出てきて働いている女の子の何気ない暮らしぶりが描かれていてとてもリアルに感じられる。舞台は大阪・京都だったり新宿だったりする。強い主張があるわけでもなく、かといって雰囲気だけに流されているわけでもない、著者の作品に流れる時間のゆるやかな動きが、関西弁の可愛らしさも手伝ってとても心地好い。読者の方が夢の世界にたゆたっていきそうな一冊である。

主題歌*柴崎友香

  • 2008/04/07(月) 17:26:20

主題歌主題歌
(2008/03/04)
柴崎 友香

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この歌がここで歌われたことは消えてしまわない
聞こえてくる人の声、街の音 そして、誰かの心に響く歌がある
「女子好き」な女性たちのみずみずしい日常の物語
第137回芥川賞候補作(「主題歌」)
「愛ちゃんて、かわいいな。こないだの子とはえらい違いやわ」
「誰でもかわいいやなあ、小田ちゃんは」
「誰でもやないよ。いろんなかわいいがあるやん」
ただ、かわいい女の子やきれいな女優を見ていると、それだけで幸せな気持ちになるし、そのことについて話すのが楽しい。
同時収録:「六十の半分」「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」


相変わらず大阪の女の子を描いて絶妙な著者である。
気負いも背伸びもしない、等身大の女の子――もうすぐ三十歳に手が届きそうであろうとも――の日常を目の前で見ているようである。
ほんのちょっとしたことにしあわせを感じ、何気ないひとことに落ち込み、たのしいことを探して周りを見回す女の子。大勢の中にまぎれてしまいそうな彼女たちひとりひとりが、実にそのままに描かれていて、まるで自分も「女の子カフェ」に仲間入りしたような心持ちになってしまいそうである。

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また会う日まで*柴崎友香

  • 2007/06/21(木) 19:18:40

☆☆☆☆・

また会う日まで また会う日まで
柴崎 友香 (2007/01)
河出書房新社

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好きなのに今は会えない人がいる……有麻は25歳OL。高校時代、修学旅行2日目の夜。同級生とのある記憶を確かめるため、約束もなしに上京。6日間の東京滞在で、有麻は会いたい人に会えるのか? とびきりの恋愛小説!


この内容紹介はちょっと違う気がするが、ゆるゆるだらだら(いい意味で)の柴崎節健在という感じで面白かった。
大阪の女の子の日常そのまんま、という柴崎作品だが、今回は少しばかり趣を変えて舞台は東京。
でも趣が違うのは実は登場する地名だけで、登場人物はほとんど大阪人であり、語られる言葉もほぼ大阪弁である。東京人としては、山手線からの眺めの描写とか、様々な箇所で東京の見え方を再認識させられもして、それがまた面白かった。
ただ単純に恋愛小説と括ってしまえないゆるゆるもやもやとしたなにか――進むべき道とか――を手探りする物語のようにも思える。
いつも携えているカメラを、撮りたいと思って向けるのだが そのときには何を撮りたかったのか見失ってしまう、という有麻の満たされない感じがすべてを表しているような気がする。

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その街の今は*柴崎友香

  • 2006/12/12(火) 17:34:37

☆☆☆・・

その街の今は その街の今は
柴崎 友香 (2006/09/28)
新潮社

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わたし、昔の大阪の写真見るのが好きやねん。その、どきどきの中毒みたいな感じやねん-。過ぎ去った時間の上に再生し続ける街の姿に、ざわめく28歳の気持ちを重ねて描く、新境地の長篇。


28歳の歌子は、OLをしていた会社が潰れ、いまはシュガーキューブというカフェでアルバイトをしている。決まった恋人もなく、ときどき合コンに出かけてはよくわからない時を過ごしているのだった。仕事は、探さなくてはならないと思いながらも、このままが気楽でいいんだけど、とも思ったりする。そして歌子は、自分の知らない昔の大阪の写真を見るのが好きなのだった。頭の中に現在のその場所の様子をはっきりと思い浮かべることのできる場所なのに、そこは自分の知らない、そして自分のいない世界であることの不思議さと、それに出合ったときのどきどき感がたまらない。
いつもながらに大阪弁の柴崎作品である。地元の方が読めば、たちどころに手に取るように風景が浮かんでくることだろう。修学旅行くらいでしか訪れたことのないわたしが読んでも、その場の空気感に身を置いているような心地である。おそらくニュアンスは掴み切れはしないのだろうと思うが、ひととき大阪の女の子になった気分に浸れる一冊である。

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フルタイムライフ*柴崎友香

  • 2005/12/10(土) 20:49:35

☆☆☆・・



 喜多川春子 22歳。
 美術系の大学を卒業し、
 思いがけず包装機器会社の事務職についた――。
 
 『きょうのできごと』の著者が四季を通して、
 細やかに綴った新入社員の10ヶ月。

 おもしろいで。会社。ほんまにコピーしたりお茶入れしたりするねん。
 なんか、まだ、そういう役をやってみてるっていう感じ。
 <はたらく生活>をはじめて体験する女の子の
 ゆるやかな毎日、恋を描いた長編小説。
          (帯より)


五月から二月の十ヶ月が月ごとに章になっている。
卒業式の二週間前にひょんなことから決まった就職先で慣れない仕事に戸惑いながらなんとか先輩についていっている五月から、これからもいろんなことが起こりそうな状況に置かれながらも 自分の机が自分らしくなっていることに気づく、そろそろ一年が経とうとする二月までの、喜多川春子の日々がただ綴られているのである。
でも、これを読んだだけで わたしはすっかり喜多川春子の同僚になったような錯覚に陥ってしまうのだ。大阪の女の子の実態なんて何にも知らないのに。
それほど何の気負いもなく書かれているのだ。ゆるゆると書かれているのに、ただそれだけではない何かがあるのだろう。

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ショートカット*柴崎友香

  • 2005/01/15(土) 08:57:39

☆☆☆・・


表題作の他、やさしさ・パーティー・ポラロイドという4つの物語。

今まで読んだ柴崎さんの作品の底に流れる危うさは何なのだろう、と考えてみた。
この本を読んで、それが少しわかったような気がする。
いまここで楽しくやっている自分がいて、それはそれで自分なのだけれど、ふっと意識が遠くへ飛ぶ瞬間、本物の自分はその飛んだ先にもっと確かな存在として生きているような心地がして、ここにいる自分の実態があやふやに思えてしまうような感じ。
違う次元に生きている本物の自分と、今ここにいる自分の間を自分の中身だけがふらふら危うい感じで行き来しているような。
不思議だけれど懐かしい空気感に包まれる。

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?*柴崎友香

  • 2004/10/07(木) 20:04:45

☆☆☆・・



表題作と「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」の二編。

登場するのは大阪の若者たち。従って話し言葉は大阪弁である。
この二つの物語では これが必須なのだろうと思わされる。東京言葉では表わせないであろう 時計の針がゆっくり回るような空気感である。

次の町に着いてしまえば、人は何かやることがあるのだ。何かをするためにその町へと出かけてゆくのである。しかし、次の町へ行くまでの移動の道のりはときに遥かに遠く、町に居る時間よりもずっと長いかもしれない。
次の町までどんな歌をうたうかが、人がどう生きるか ということなのかもしれない。
私は 次の町まで、どんな歌をうたおうか。

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