長女たち*篠田節子

  • 2014/05/09(金) 13:43:47

長女たち長女たち
(2014/02/21)
篠田 節子

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親が老いたとき。頼りされるのはもはや嫁でも長男でもない。無責任な次女、他人事の兄弟…追いつめられた長女の行く末は?痴呆が始まった母のせいで恋人と別れ、仕事も辞めた直美。父を孤独死させた悔恨から抜け出せない頼子。糖尿病の母に腎臓を差し出すべきか悩む慧子…当てにするための長女と、慈しむための他の兄妹。それでも長女は、親の呪縛から逃れられない。親の変容と介護に振り回される女たちの苦悩と、失われない希望を描く連作小説。


「家守娘」 「ミッション」 「ファーストレディー」

主人公は長女。長女と家、あるいは親との関係は、長女以外の家族とはひと味違っているようだなどと、いままで考えたこともなかったが、本作を読むと、確かにほかの家族とはいささか違った立ち位置にいるのかもしれない、と思えてくる。それが、親から教え込まれたものなのか、長女として生まれる宿命を負ったときから刷り込まれているものなのかはわからないが、親との距離感はほかの兄弟姉妹とはいささか違うかもしれない、と気づかされる。自分で望んで長女として生まれてきたわけではない彼女たちは、何を選択し、どう生きればよかったのだろう。逃れられない宿命であるならば、よりよい関係でいたいと心底思わされる一冊である。

天窓のある家*篠田節子

  • 2008/07/19(土) 13:58:23

天窓のある家天窓のある家
(2003/09)
篠田 節子

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幸せに見捨てられた女。偽りの幸せにすがる女…。緩慢な日常の流れの中に身をまかせる女たちが、決意する一瞬。誰も、気づかぬうちに、女は心に変調をきたす。偽りの幸せなんて、許さない。あの人の不幸を、心から願う―。直木賞作家の円熟味あふれる9つの物語。


表題作のほか、「友と豆腐とベーゼンドルファー」 「パラサイト」 「手帳」 「世紀頭の病」 「誕生」 「果実」 「野犬狩り」 「密会」

上の紹介文にある「誰も、気づかぬうちに、女は心に変調をきたす」というのがとてもリアルに描かれている。どこといって変わったところのない普通の暮らしをしている女たちが、少しずつ壊れていく様が、淡々と描かれているだけに背筋がぞくりとする怖さがある。誰もが陥るわけではないが、誰もが陥る可能性がありそうな状況がリアルさを持って我が身に迫ってくるようでもある。
主人公の女たちがみな、それなりにがんばっているのが伝わってくるからこそ哀しくもあり切なくもある。

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三日やったらやめられない*篠田節子

  • 2008/07/11(金) 13:47:26

三日やったらやめられない三日やったらやめられない
(1998/11)
篠田 節子

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「嘘を書くのが仕事」の小説家稼業、もう、どうにも止まらない!家事を夫に預け、休む間もなく、取材、執筆、旅行、趣味のチェロ…とミステリ作家の楽しくもカゲキな聖戦は続く。待望の初エッセイ。


小説講座受講中のことも含めて、小説家として大忙しの著者の心の叫びが伝わってくるような一冊である。
決して小説のことばかりが書かれているわけではないのだが、小説のことを第一義に暮らしていることが熱意と行動力ともに伝わってきて興味が増す。

ロズウェルなんか知らない*篠田節子

  • 2008/06/27(金) 20:45:08

ロズウェルなんか知らないロズウェルなんか知らない
(2005/07/06)
篠田 節子

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ときに愚かしくも愛しい“人間”を描く、胸に迫る長編
地方の未来を真面目にわらう!!
過疎の町を再生しようと悪戦苦闘する元若者たちが仕掛けた策とは……?
UFOで町おこし!?

「俺のところの民宿は、つぶれる。うちに田畑はない。あるのは今更だれも見向きもしないテニスコートだけだ。客は来る。公共工事の作業員だ。下請けの下請け、そのまた下請けの建設会社が、宿泊費を叩きに叩く。お袋は去年からこの先の工業団地にパートに出てる。それで過労から腎炎を起こして倒れた。倒れるほど働いたところで、食ってはいけない。俺はまたここを出ていって、東京で職を探すだろう。しかし学部卒の技術屋に職はない。ビル清掃か、キャバレーの呼び込みか、仕事があれば御の字だ。残ったおふくろは、民宿村と心中する……」(中略)「売るか、日本の四次元地帯で」孝一が手の中のショットグラスをカウンターに静かに置いた。「格好つけちゃいられねえってことだ」<本文より>


温泉が出るわけでも古代遺跡があるわけでもなく、スキー場やゴルフ場や大きなテーマパークがあるわけでもない過疎の町・駒木野の青年クラブ――といってもメンバーはもはやみな中年である――の面々と、ふらりとやってきた(元?)コピーライターの町おこし奮戦記である。
大カラオケ大会で優勝し、廃屋同然の一軒家を賞品としてもらった、東京から来たコピーライター・鏑木は、大方の予想に反してそこに住み着いてしまった。そして、村おこしに知恵を絞る青年クラブの会合になんとなく首を突っ込み、口を出したりするようになる。お調子者だが、着眼もセンスもなかなかのもので、行動力もあり、青年クラブの面々も引っ張られるように動き始めるのだが・・・・・。

ひとつのことにのめりこんだときの人間の心の動きが手に取るようにわかって、陥りがちなループに嵌っていくのを見ると切なささえ覚える。口コミやマスコミの諸刃の剣のような危うさにも歯軋りしたくなるようなもどかしさを感じた。それを乗り越え、突き抜けたとき目の前に現れたのは・・・・・。
思わず笑ってしまうような町おこし騒動なのだが、ただ無邪気に笑うだけではいられないさまざまな問題を内包してもいて、胸の奥がずきんとするような切なさも感じさせられる一冊だった。

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砂漠の船*篠田節子

  • 2005/09/21(水) 17:08:24

☆☆☆・・



 静かに崩壊していくものへのレクイエム
 「あの頃にかえりたい」と思うすべての人に。

 勝手なことをしあって、家族も地域も解体していく。
 砂粒のような個人が、それぞれの苦しみや悲しみを抱えて、
 死に向かって歩いていく。(本文より)
           (帯より)


東京郊外の公団団地に暮らす、妻と娘を持つ男・幹朗(みきお)
昇進よりも、地域に根ざし 地域と共に生きることを選び、家族揃って夕食をとり、家事も手伝い 地域の行事にも参加してきた。
それは、とりもなおさず父も母も出稼ぎに出、祖母を母代わりとして育った幼い頃の田舎暮らしによって培われた想いゆえだった。
父母がいなくても近所の誰彼が世話を焼いてくれることの心強さと、父母のそばで暮らせない物足りなさとが、地域に溶け込みながら家族で暮らすことを理想とさせたのだった。
しかし、幹朗の理想の暮らしは妻や娘にとっての理想ではなかったのだ。
ひとつ食い違った歯車は、不本意な想いを抱えたまま食い違いつづける。
なにが、どこがいけなかったのか、あるいはこれが当然のことなのかは物語が終わってもわたしには判らない。ただ、虚しいやりきれなさが胸にもやもやと消え残る。

レクイエム*篠田節子

  • 2004/10/09(土) 20:06:33

☆☆☆・・


 もう、どのくらい経つのだろう ここへ迷いこんでから

 篠田節子が魅せる都市の夢幻、「あちら側」の世界への六つの扉

                           (帯より)


何の特別なこともない日々の生活。疑いもなく当たり前に一日一日を過ごしている人々。しかし、薄い膜一枚隔てた向こう側には 別の世界があるのかもしれない。この物語の登場人物たちは 何気ない日々のどこかで待ち受けていたそんな世界の入り口を 知らずにくぐってしまったのかもしれない。
それとも、《この世界》と思っているこここそが あちら側なのかもしれない。

逃避行*篠田節子

  • 2004/02/06(金) 12:46:08

☆☆☆・・


恐怖のあまり 衝動的に人の命を奪ってしまった 老いたゴールデンレトリバーと
家族の誰とも繋がっていない寂しさに悩む その犬の飼い主の50歳の女性
との 数ヶ月の逃避行の物語。

生き物を飼う上での覚悟とは?
報道のあり方とは?
家族のつながりとは?
善悪の基準とは?
本当のやさしさとは?
しあわせとは?

様々なことを問い掛けられる一冊だった。

時に 主人公に共鳴し、また時には 批判し 揺れながら読み終え
それでも どうすることがよかったのか という答えには辿り着けない。