緑の模様画*高楼方子

  • 2007/09/28(金) 13:01:26


緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)
(2007/07)
高楼 方子

商品詳細を見る

海の見える坂の街。三つ葉のクローバーのように心を結び合う、まゆ子・アミ・テト。彼女たちが出会ういくつもの物語の網目には、小さな危機もひそんでいた…。少女たちがつむいでゆく、きらきらとした日々のタペストリー。


「小公女」の物語を縦糸にして、まゆ子・テト・アミという現在を生きる三人の少女、その母たち、寮の調理人のおばあさんである森さんが少女時代の仲良し三人組、そしてその中のひとりの兄・透さん。さまざまな人たちと、さまざまな時とが横糸になって織り成される一枚のタペストリーのような物語。
少女たちの出会いの不思議から始まり、一緒に過ごす愉しさ、不思議な出来事、ちょっぴりのスリル。
どの時代にもきらきら光る日々を生きている少女たちがいて、毎日が物語だったのだろうことを思い出させてくれるような一冊だった。
森さんにはいまの透さんと会わせてあげたかったような気がするけれど、これからはきっと毬子さんとふたり透さんの思い出を語らうのだろう。
塔の家が生まれ変わるところもいつか見てみたい。

> more >>>

わたしたちの帽子*高楼方子

  • 2005/12/15(木) 17:28:43

☆☆☆☆・



わたし[たち]というところがキーワードだろう。
家を改築する間のひと月だけ母の友人の画廊のある古いビルの部屋を借りて住むことになったサキ。そこは暗闇に廊下が長く伸び、角を曲がると洞窟のような廊下が続いている迷路のような建物だった。
あまりの古さにちょっとがっかりして部屋のタンスを開けると、そこにはいろんな布を縫い合わせて作られた帽子がひとつだけ掛かっていた。まるでサキを待っていたかのように。サキは早速その帽子をかぶって建物の中を歩いてみると、緑色の丸いスカートを履いてサキのと同じ帽子をかぶった女の子と出会う。それが育子だった。そして二人は誰にも内緒であちこちの部屋をのぞき、建物の中を探検しながら遊ぶようになるのだった。
育子のことは誰にも言ってはいけないような、誰にも内緒にしておきたいような心持ちのサキだったのだが、帽子を取ると一緒に遊んだことも育子の存在もなんとなく薄れてゆくのがちょっと気になっていた。

あるきっかけから帽子のことも育子のことも謎が解けパズルのピースが嵌るようにすっきりとする。そこまででもとても心和むあたたかいお話なのだが、この物語にはまだ続きがあるのだ。そこから先こそがこれが子ども向けのお話である所以なのだろう。子どもだからこそ、二人だったからこそのこのラストなのだ。

カバーの絵は作中で画家の栗本みのりさんが描いた絵で、この物語を象徴している。

記憶の小瓶*高楼方子

  • 2005/07/31(日) 17:14:56

☆☆☆☆・



2002年4月から一年間『月間クーヨン』に連載されたエッセイに書き下ろし三作を加えたエッセイ集。

幼いころの記憶の欠片が、色や風景や声や姿などを介して繋ぎ合わされ 言葉にして表わされている。
かなり幼いころの記憶までもが、断片的なあれこれを繋ぎ合わせるうちに 鮮やかな物語となって蘇えるような気がする。

 人の幼少期の話は、
 自分の幼少期の記憶を呼び覚まします。
 この極私的な回顧話に意味があるとすれば、
 その一点に尽きるでしょう。


と、冒頭に書かれているように。
暮らした地域は違うが、同年代の私にも、≪あのころ≫が蘇えってくるのだった。
言えなかったこと、言わなかったこと、自分に禁じていたこと、幼いながらに律していたこと、訝っていたこと...。
幼い記憶が、ただ無邪気に幼いだけではないことをふっと思い出させてくれた。

> more >>>

十一月の扉*高楼方子

  • 2005/06/30(木) 13:09:45

☆☆☆☆・




児童書です。

ある日、爽子(そうこ)が弟と一緒にのぞいていた双眼鏡に 不意に現われ束の間で消えた家。
 すっと伸びた深緑色の、モミの木のような数本の木立の
 あいだからのぞく、 赤茶色の屋根の白い家。

見た途端に惹きつけられて翌日探し当てたのが≪十一月荘≫だった。
ある事情と、爽子の強い願いでそこで暮らすことになった二ヶ月間の爽子の物語と、爽子が創った物語。

中学二年の爽子の 冒険とも言えるひとり暮らしの二ヶ月間に起こったこと、想ったことは爽子にとってかけがえのないことばかりだった。

クラスメートに物足りなさを感じ、家族 特に母に少しばかりの疎ましさを感じ、そんな自分を恥ずかしく思う少女の季節。
そんな季節に出会った≪十一月荘≫やそこに集う人々との交わりは、爽子にいままでとは違った世界をみせてくれたのだった。

≪十一月荘≫で暮らす現実のなかに、爽子が創る『ドードー森の物語』が織り込まれ、しかも 物語と現実が微妙にシンクロしていたりして、なにやら爽子の想像の世界に迷いこんだような心地になる一冊。
もしかしたら、双眼鏡でこの家を見たときからが夢だったのかしら…なんて。

> more >>>

ルチアさん*高楼方子

  • 2005/06/02(木) 21:38:40

☆☆☆・・


 もうずいぶん昔のことです。あるところに〈たそがれ屋敷〉と
 よばれている一軒の家があり、奥さまと、ふたりの娘と、
 ふたりのお手伝いさんが暮らしていました。

 謎が時間を超えて継がれていく風変わりなものがたり。

 なぜ、ルチアさんって光っているの?
 ふたりの少女の家にやってきた、あたらしいお手伝いのルチアさん。
 ふたりの目にだけ、その姿がぼうっと光かがやいてうつるそのわけは

                     (帯より)


キラキラ輝くどこかのことを強く想うと、人はここ と どこか の両方に生きられるかもしれない、とルチアさんの特別をわかった人たちは思う。
スゥとルゥルゥの父やピピン叔父さんや そしてルチアさんも、ここに生きているのと同じように、水色のきれいな実のなる木があるキラキラ輝く場所にも生きているのだろう。
いつも弾むように活き活きと働き、愚痴や不平や人の悪口を言わずに、好き嫌いもなく光っている。

ここではないどこかを強く想う心は人に何をするのだろう。
人はその想いでそこへ行くことができるのだろうか。
40年ほど後のスゥとルゥルゥの姿がその答えのようにも思える。

時計坂の家*高楼方子

  • 2005/04/17(日) 20:21:39

☆☆☆☆・
時計坂の家

 千葉史子 絵
 
 何度体験しても、慣れるということのないできごとが
 あるとしたら、これもそのひとつだった。
 言いようのない不可思議さに、初めてのときと同じ眩暈を覚えるのだ。
 そしてやがて、目の前に、ぼんやり、ぼんやり、
 緑色の景色があらわれる。
 牡丹色の霞の中から、ふうわり、ふうわり、立ちあらわれてくるのだ。

                      (見返しより)


12歳の夏休み、母方の祖父の住む汀館でフー子に起こった不思議なできごとのお話。

押し寄せ流されてゆく現実の中に、ぽっかりと口を開けた魅惑的な異世界。
今はなき祖母の謎と、時計細工の技師であり魔術師でありPOM(ロォム)と呼ばれた謎のロシア人チェルヌイシェフに迫るほどに、解き明かされ また一層謎に包まれる裏庭のその場所。
生まれながらにして見られる者と、それをじぃっと見つめる者。
魅惑的な園の主としてふさわしいのは・・・。真実に気づくのは、フー子が汀館を離れたあとだったのだが、そのことはきっとたしかに彼女を強くしたことだろう。
千葉史子さんの挿絵が物語の世界へするりと自然に誘ってくれる。

> more >>>