きんいろのとき<ゆたかな秋のものがたり>

  • 2003/10/31(金) 07:31:39

☆☆☆・・   きんいろのとき―ゆたかな秋のものがたり

アルビン・トレッセルト:文
ロジャー・デュボアザン:絵
えくにかおり:訳
゜゜ ゜゜ ゜゜ ゜゜ ゜゜ ゜゜ ゜゜ ゜゜

絵本です。

きりぎりすがなきはじめると 「霜がおりるまで あと 6週間」
という ふるい いいつたえ から はじまるおはなし。

江國さんの訳 というところに惹かれて手にしてみました。

秋は実りの季節だからなのでしょうか 黄色があちこちに生きています。
でも その中で 私が好きなのは 無彩色の林の向こうに まぁるいおおきなお月さまのいるページ。
お月さまのまんなかだけが ほんのほんのり黄味がかっていて
今日一日を終え ほっとしている農夫の満足を思わせてくれているようなのです。

大人とも絵本は ともだちになってくれます。

朝霧*北村薫

  • 2003/10/29(水) 07:29:54

☆☆☆・・   朝霧

こんなミステリィもあるんだなぁ という感じ。
血生臭い事件とか 荒々しい出来事などは一切なく
卒論も提出し、出版社の編集者として社会に出ようとするひとりの女性の
身のまわりに浮かんでくる謎を解き明かす物語なのだ。
落語家の春桜亭円紫師匠が さしずめホームズの右腕ワトソン君のように
いつも飄々と鮮やかに謎解きを披露してくれる。

読んでいる間中 ミステリィを読んでいるというよりも
なぜか 穏やかな詩の世界にいるように感じられて 心地好かった。

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怪しい人びと*東野圭吾

  • 2003/10/28(火) 19:57:57

☆☆☆・・   怪しい人びと

ちょっと変な物語ばかり集めた短編集。
著者の実体験が基になっている作品もいくつかあるのだとか。

それにしても なんとなくそこにいる普通の人が いちばん怪しいのでは
と 疑いたくなるような話ばかりだ。
そして 怪しくて変な話の中にも ホロリとさせる部分もちゃぁんと織り込まれていて
ただの娯楽本とは 一味違った趣にしている辺りが 東野さんたる所以だろうか。

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こどものころにみた空は*工藤直子

  • 2003/10/27(月) 19:55:46

☆☆☆・・   こどものころにみた空は

工藤直子さんが絵も描かれた 詩画集。

こどものころに 出会ったいろいろなものやできごと。
そのほんの欠片が ちょっとしたきっかけで 鮮やかに甦ることがある。
一部分だけ いつもいつも くっきりと。
そんな「あれは何だったのだろう?」
という思い、子どもの言葉では言い表せなかったもろもろを
大人になって 引き出してみたのが この作品。

どの詩も 大人にとってはなんてことのない 日常のひとコマなのに
子どもにとっては 重大事であり永遠なのだということを 思い出させてくれる。
きゅんと切なく 甘酸っぱく懐かしく、大人であることにあぐらをかいていちゃいけないな
と 思わせてくれる一冊でした。

活動寫真の女*浅田次郎

  • 2003/10/23(木) 19:53:23

☆☆☆・・   活動写真の女

昭和四十四年の京都を舞台にした恋愛小説。
と 言ってしまうには あまりにも 日本映画全盛期の色の濃い作品。
時代は昭和であっても 昭和に生きる登場人物たちは
古き良き日本映画の時代を生きているかのよう。
実際(?)昭和に現われた 薄幸の美人女優 伏見夕霞によって
賑やかな映画時代に連れ戻されたのかもしれない。

それにしても 昭和四十四年 という時代からさえも ずいぶんと遠くに来てしまったものだと 筋違いな感慨を覚えてしまったりもする。

木曜組曲*恩田陸

  • 2003/10/23(木) 19:51:25

☆☆☆☆・   木曜組曲

四年前のある木曜日に毒物死した女流作家重松時子。
その時その場に居合わせた 五人の女性達。
その木曜日を挟む三日間 毎年その場に集う彼女達 それぞれの胸に秘められたものとは_。

結局 時子の死のわけは何だったのか。
ぐるぐる巡る 意識の底の殺意と必然かもしれない偶然の帯は 先へ先へと進むだけだ。

死のわけが解かれなくても
個性の違う五人の女性達の心の動き様が興味深く 引きずりこまれた。
高まる期待を 次々に裏切ってくれるのも 恩田さん流か。

探偵ガリレオ*東野圭吾

  • 2003/10/21(火) 19:49:38

☆☆☆・・   探偵ガリレオ

以前読んだ『予知夢』―記事番号8―は これの第二弾として書かれたものだそう。
差し詰め 湯川・草薙コンビシリーズとでも言うのだろうか。

この作品も 理系の著者ならではの 専門的なトリックの数々なのだが
理科音痴を自認する刑事 草薙氏によって 我々一般人レベルにも理解できる仕組みになっている。
物理学助教授 湯川氏の頭に キラリと しかもひっそりと閃く謎解きと
独自の調査で トリックを解き明かし 証明してみせる手際のよさには惚れ惚れする。
化学大好き人間でなければ思いもよらない現象を 敢えて短編のトリックに使う東野さんは凄い。

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ハゴロモ*よしもとばなな

  • 2003/10/21(火) 19:46:50

☆☆☆・・   ハゴロモ

人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は、羽衣なのだと私は思った。
いつのまにかふわっと包まれ、今まで自分をしばっていた重く苦しい重力から
ふいに解き放たれ、魂が宙に気持ちよく浮いている。


この物語のかたりべである ほたるの思い。
これが この作品の全てと言っても けっして言い過ぎではないだろう。
そういう感じが 全編に満ち満ちている。

自然の営み、宇宙の営みから 無理なく何かを受け取れるというのは
訓練とか 修行とかで得られるものでは なかなかなく
命の中に 自然に芽生えるものなのだろう。
とても羨ましく 憧れを持って遠くから眺めてしまう。
ばななさんの描く 何かに疲れた女の子は いつもそんな風に自然や宇宙に寄り添うように近く
私を しばらくの間 ほっとさせてくれる。

顔*横山秀夫

  • 2003/10/19(日) 18:22:46

☆☆☆・・   顔 FACE

目撃者の証言を元に 似顔絵を描いて犯人逮捕に結びつける。
そんな役割を負う 似顔絵婦警 平野瑞穂の物語。
プロローグとエピローグに挟まれた 5編のオムニバス。

警察という男社会の中で 男達と肩を並べて悪と闘い
それよりも尚 警察と言う閉ざされた世界の中で 男達と闘う。
【女】を意識するまいと思いながらも 【女】であることが邪魔をし自らを傷つける。
【男同士】ならなんでもないことが【女同士】であるが故に ささくれのように痛みを伴う。
そうまでして 闘わなければならないのか、という思いと
とことん闘って何かを勝ち取って欲しい、という思いがせめぎ合う。
けれどそもそも 勝ち取るものとは何なのだろうか。

瑞穂が似顔絵を描いている時。その時こそが 彼女が自分を生きている時なのだろう。

最後の一文(板垣の胸の内で贈られた言葉なのだが)を私からも贈りたい。

若鮎のような婦警、平野瑞穂の前途に幸多からんことを――。

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蛇行する川のほとり*恩田陸

  • 2003/10/17(金) 17:39:16

☆☆☆☆・   蛇行する川のほとり

     -----------1---------
夏休み中の9日間の出来事。
女子高の美術部の 憧れの的である魅力的な二人の先輩に 三人だけの夏合宿に誘われる。
有頂天になる毬子だったが なにやら不穏な予感も。

1~3まであるこの物語の これは 導入部。

最後にささやかれるひと言に 2への期待が高まり、胸がざわめく。

     -----------2---------
ざわめく心に追い立てられるように ぽつりぽつりと告白を始める。
核心に近づいてはいるのだろうが 近づいたと思うと するりとかわされるようで もどかしい。
まだまだ 白日の下に晒されずにいる部分が――それこそがいちばん肝心な所なのだろう――
ひっそりと気配を窺っているような 背筋の冷たさを感じる。
思ってもみなかった出来事で終わってしまった第二部、一体どうなる?!

第三部は ただ今貸し出し中(@図書館)で 予約の順番がいつ回ってくるかわからない状態。
早く読みた~い。
     
     -----------3---------
期待が大きかった分 肩透かし気分は否めない。
結末は想像の範囲にきちんと収まり とりたてて意外性は見出せない。

ただ 登場人物たちそれぞれが この夏の数日の間に 少女時代を終えたことはだしかだろう。

ゾウの時間ネズミの時間*本川達雄

  • 2003/10/16(木) 17:37:33

☆☆☆・・

サイズによって 動物の生き方がどう違ってくるかを解き明かす。

一生の間に心臓が打つ回数は サイズによらず同じなのだとか。
小さいサイズの動物は 総じて鼓動が速く 大きくなるほど ゆっくりになる。
それは 寿命とも深く関係している。

時間と言うものを 絶対的な尺度と 今までは思い込んでいたが
サイズによって 時間の流れ方も違っているのかもしれない。
動物と接する時には その動物也の時間の流れ方を念頭においているのといないのとでは
自ずと親しみ方も変わってくるのではないだろうか。

たくさん出てきた数式は なるべく見ないようにして読んでしまった(嘆

  ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学

五番目のサリー*ダニエル・キイス

  • 2003/10/13(月) 17:35:48

☆☆☆☆・

ニューヨークでウエイトレスとして働く
見かけは平凡な女性 サリー・ポーターの物語。

見かけは平凡なのだが 彼女は実は多重人格者である。
彼女の中には サリーを含めて 5人の別の人格が棲んでいて
別の人格が表に現れている時には サリーは意識を喪失している。

一人 また一人 と 人格が融合され
肉体も魂もすっかり一人の人間となった【五番目のサリー】

本来 意識の統合は 喜ぶべき幸福な事のはずなのに
これから先の未来を 独りで生きていかなければならないサリーに
哀れみと同情の感情が湧くのは何故だろう。
【多重人格】と呼べなくとも 我々の中には 様々な意識が宿っており
その時どきによって 主導権の奪い合いをしながら 際どいところでバランスを保っているのではないだろうか。
【自分】というもの について 改めて考えさせられる一冊だった。
411ページは あっという間だった。

  五番目のサリー

紙婚式*山本文緒

  • 2003/10/11(土) 17:31:19

☆☆☆・・

8つの結婚の形の物語。

普通って何だろう。
理想って?
幸福って?
と いろいろ考えさせられる短篇集だった。

傍目には これ以上ないほど理想的で羨ましく見えるものも
実情を知ったとたんに 崩れ去る虚構、ということも意外に多いのかもしれない。

やわらかいトーンで綴られながら 実は生きていく上で いちばん恐ろしいことが書かれているのかもしれない。

羨むことも羨まれることも 幸福も不幸も 心持ち次第 なのか...なぁ。

  紙婚式

魔女*樋口有介

  • 2003/10/09(木) 17:29:56

☆☆☆・・

タイトルを象徴するかのように 一人の女性が自室で焼死する場面から 物語は始まる。

魔女は一体誰だったのだろう。千秋なのか みかんなのか それとも...
登場する女性全てが魔女に見えるのは 気のせいだろうか。

作品を覆い尽くすのは 緩慢な倦怠感なのに 深い奥底には 表面に現われない情熱が湛えられているようでもある。

姉 水穂の使い走り的役割を担わされている この物語の探偵役 広也。
優柔不断で頼りなさそうに見えて 実は 彼がいちばん強いのかもしれない。

人と言うものが 如何に複雑で多面的なものか 思い知らされる一冊でもある。

  魔女

半落ち*横山秀夫

  • 2003/10/05(日) 17:28:43

☆☆☆☆・

半落ち とは 罪は認めながら 細部を完全に明かさない状態のことなのだとか。

ひとつの事件をめぐり 様々な立場で関わることになる
様々な人々の視点による オムニバス形式の作品。

見所は 随所に見られる。
それぞれの立場から語られる物語は ある意味それぞれで完結している。
だが 始まりが 【半落ち】なので どの物語にも満たされなさ もどかしさが残る。
最後の物語の 最後の最後まで その消化不良感は引きずられることになる。

これから 梶総一郎はどう生きていくつもりなのか あるいはどう死んでいくつもりなのか。
わからないながらも 物語の最後は 涙だった。

横山さん 凄い!

  半落ち

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毒笑小説*東野圭吾

  • 2003/10/03(金) 17:32:31

☆☆☆・・

タイトルから判るとおり ブラックユーモアの短篇集。
山藤章二さんの装画――骸骨が鎌を振り回す図――も凄みがある。

東野テイストは 相変わらずにピリッと効いていて
無気味に笑ってしまいながら チクリと胸を刺されている自分に気づいたりする。
あっという間に読み終わってしまった。

  毒笑小説

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動機*横山秀夫

  • 2003/10/03(金) 17:27:31

☆☆☆・・

表題作を含む 4編の短編集。

どの作品も 唸らせてくれる。
相手の心を探っていたら いつしか思いもよらない場所に行き着いていた。
それが どの作品の主人公にも通ずる気分ではないだろうか。
主人公の思考に従って読者である私も どんどん見たくないものの方へ導かれていくようだ。
そしてまた 読者に結末を想像させる終わり方が なんとも心憎いばかりである。
読み手によって 読後感は違うのかもしれない。
私は 明るい未来が連なることを想像しよう。

  動機

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変身*東野圭吾

  • 2003/10/01(水) 17:26:23

☆☆☆・・

脳死とは...
臓器移植とは...
何をもって人の死とするか に疑問を投げかける一冊。
実際に起こりうるかということは 別にして。

この作品が出た時 評判はあまり芳しいものではなかったようだが
そんなことはないと 私は思う。
そんなことを言いつつ ☆3つなのは 東野作品にしては 先の予測がしやすかったため。

自分の精神活動が 他者に侵されていき、しかもそれを はっきりと認識していると言うのは どれほどのストレスであろうか。
その中にあって 最後の最後まで 崩壊を阻んだのは やはり愛だったというのが 最大の救いだった。

ドナーカードは常に携帯しているが 他人の躰に入ってまで 精神活動を続けたくはないなぁ。

  変身

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