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ワーキングガール・ウォーズ*柴田よしき

  • 2006/03/03(金) 17:20:34

☆☆☆☆・



37歳女性、入社15年目、独身バツなし。
ついでに恋人・人望ともにナシ・・・・・。
ですが、それが何か?

働く女の本音と弱音をリアルに描いた、本格「負け犬」小説、誕生!

無能な上司や、口ばっかりの部下への鬱憤を抱え、今日もお疲れモード。陰では「お局」呼ばわりで、都合のいいときだけ「女性係長(ベテラン)」だなんて、やってられるか。どんなに強く見えたとしても、たまには誰かに愚痴りたいし、恋愛だって諦めてないんだからっ。
  ――帯より


墨田翔子は37歳音楽業界では名の知れた一流企業の女性係長。独身で都内にマンションを持っている。傍から見れば羨ましいほどの境遇なのだが、社内の居心地はいいとは言えない。
そんな翔子の会社での日常の中の諦めや開き直り、憤懣と葛藤、そして思いもよらぬミステリーが軽快なテンポで描かれている。幸いというか生憎というかわたしにはお局経験がないし、勤めていた会社にもこういう雰囲気はなかったので、これがリアルなのかデフォルメされているのかは判断できないのだが、実際この通りの毎日をワーキングガールのみなさんが送っているかもしれないと想像することは容易である。
だって、まるでその場で見ているようなのだから。
骨休め旅行に出たケアンズの浜辺でのペリカンを巡る戦いの場面は、可笑しくも切なくて、笑っていいやら泣いていいやら、という感じだった。

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つきのふね*森絵都

  • 2006/03/02(木) 17:26:51

☆☆☆☆・



自分だけがひとりだと思うなよ!
死ぬことと生きることについて考えてた。
どっちがいいか、
どっちがらくか、
どっちが正解か。
今までずっとそういうこと、考えてきた気がする。
  ――帯より


このごろあたしは人間ってものにくたびれてしまって、人間をやってるのにも人間づきあいにも疲れてしまって、なんだかしみじみと、植物がうらやましい。
花もうらやましい。
草も木もうらやましい。


という中学二年のさくらのひとり語りで物語ははじまる。
四十八日前まで親友だった梨利とはある事情で友人でさえなくなり、学校に楽しいことなどひとつもなくなった今日この頃だった。
その梨利とのいきさつに無関係とは言えない事情で知り合った24歳の智さんの部屋にいるときだけが、さくらにとってうとうととまどろむように安心できる時間なのだった。だが彼は、心の病に冒されており、彼ら(・・)からの使命を受けて人類が善人も悪人もみんな乗れる宇宙船を設計しているのだった。

自分だけがひとりぼっちだと思いつめている人、自分のことだけしか考えられない人、逆に人のことばかり考えて自分を追いつめてしまう人。子どもでも大人でも 自分のなかのさまざまな自分にあるときは翻弄され、またあるときはそれらと折り合いをつけて 何とかより良くあろうともがいているのだろう。登場人物のひとりひとりからそんな気配が感じられて、胸が締めつけられることもあったが、ラストの幼い智の手紙には思わず涙があふれた。

ぼくわ小さいけどとうといですか。
ぼくわとうといものですか?

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花まんま*朱川湊人

  • 2006/03/02(木) 13:00:17

☆☆☆・・



第133回直木賞受賞作
大人になったあなたは、何かを忘れてしまっていませんか?
大阪の路地裏を舞台に、新進気鋭の著者が描く六篇の不思議な世界
  ――帯より


トカビの夜
あの日、死んだチェンホが私の部屋に現われた

妖精生物
大人を知らぬ少女を虜にした、その甘美な感触

摩訶不思議
おっちゃんの葬式で霊柩車が動かなくなった理由



花まんま
妹が突然、誰かの生まれ変わりといい始めたら

送りん婆
耳元で囁くと、人を死に至らせる呪文「送り言葉」

凍蝶
墓地で出会った蝶のように美しい女性はいまどこに

いじめとか差別とか人の死とか、気持ちが暗くなるようなことがたくさん書かれているのだが、それぞれの物語の主人公の 歪まず前に進む性格のせいか、暗澹たる心持ちにさせられることはない。
その哀しさに眉を曇らせることはあるが、主人公にとっては悪いことばかりとは言えないようでほっとさせられるからかもしれない。

病む月*唯川恵

  • 2006/03/01(水) 10:32:46

☆☆☆・・



美人で金持ちで傲慢で、あの女は昔からいやな女だった。その女の美しい夫を寝取った「私」は・・・・・(「いやな女」)
年に一度の逢瀬には、必ず新調した着物を着る「私」。その日だけは、特別の存在になるのだから。(「雪おんな」)
月が満ちては欠けるように、女もまた変化する。おもての顔の裏に別の顔を隠しもって。
金沢を舞台に、せつないほどに「女」に満ちた10人10話。
  ――文庫裏表紙より


いやな女・雪おんな・過去が届く午後・聖女になる日・魔女・川面を滑る風。愛される女・玻璃の雨降る・天女・夏の少女 の10篇。

金沢という町が舞台だからこその物語のように思う。
そして、女たちがどの物語でもみな哀しい。哀しさのありようは一様ではないが、漂い出てくる哀しみの匂いはどれも切ないものである。
光だと思っていたものが実は闇だったと気づいたときにはもはや取り返しがつかないような、そんな恐ろしさも底に沈んで澱となっているような気がする。