なんくるない*よしもとばなな

  • 2006/05/31(水) 21:24:58

☆☆☆☆・

なんくるない なんくるない
よしもと ばなな (2004/11/25)
新潮社

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舞台は沖縄。
何かに感謝したくなる四つの物語。
どうにかなるさ、大丈夫。

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私はあくまで観光客なので、それ以外の視点で書くことはやめた。これは、観光客が書いた本だ。
沖縄は日本人にとって、あらゆる意味で大切にしなくてはいけない場所だ。
沖縄を愛する全ての人・・・・・深くても軽くてもなんでも、あの土地に魅せられた人全てと、沖縄への感謝の気持ちを共有できたら、それ以上の喜びはないと思う。 (あとがきより)
  ――帯より


表題作のほか、ちんぬくじゅうしい・足てびち・リッスン。
ばななさんの本は、こちらの心のありようによって受け取るものがかなり変わる本だと思う。ときには、まったく何も入ってこなくて 言葉が躰の表面を滑り落ちて流れてしまうように思えることもあり、またときには、ひとことひとことがすべて細胞レベルまで染み込むような気がすることもある。
今回は、後者だった。
特に、あとがきに述べられているように あくまでも外からやってきた者として沖縄をみている その視点が押し付けがましくなくて好ましかったのだと思う。自分に足りない大らかさ 拘らなさを、沖縄の何かが補ってくれるかもしれないという気にさせられて、沖縄の光の具合を想ってみた。

ひなた*吉田修一

  • 2006/05/30(火) 20:43:21

☆☆☆・・

ひなた ひなた
吉田 修一 (2006/01/21)
光文社

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一組のカップル、一組の夫婦、
そして一人の男の物語
さらけださない、人間関係

芥川賞受賞直後、JJという舞台で著者が試みたこと
  ――帯より


この小説は、おずおずと、いつのまにか産まれ、巨大ななにかに成長していた。
別の「物語」が棲息する空間に、出かけたのです。
それは、少なくとも、閉じ込もるよりましなことだ、と作家は考えたのではないでしょうか。
そして、そう考える作家は、いつもたいへん少ないのです。
  高橋源一郎


春・夏・秋・冬 と季節を追って物語りは進んでゆく。それぞれの季節に主な登場人物4人がそれぞれの立場で語る。4人とは、大学4年の大路尚純・その恋人で超有名アパレル企業に就職したばかりの新堂レイ・尚純の兄浩一・その妻で雑誌編集者の桂子である。
大路家は茗荷谷の坂の途中にある築五十年以上の古いが立派ともいえる家で、両親と尚純が暮らしていたが、兄夫婦が同居することになり、しかし、嫁姑の確執もなく 至極円満に暮らしている。

世間も自分たちも何不足なく幸せに暮らしていると思っているであろう毎日でも、日が当たる部分があれば陰になる部分ができてくるものなのだろう。なにがどうと言葉にすることはできなくても、漠然と 意識の下のどこかに それは少しずつ積もっていくのかもしれない。
著者は、一言で表わすことのできない「人」というものの特性を描いて妙である。
そして、読み終えて胸に残ったのは、微かな悲しみと寂しさだった。

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希望*永井するみ

  • 2006/05/30(火) 12:40:35

☆☆☆・・

希望 希望
永井 するみ (2003/12/10)
文藝春秋

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五年前に老人を次々と殺害した少年が、少年院から戻ってきた。
母親や刑事、カウンセラー、被害者の孫たちを巻き込んで、やがて起きる新たな事件――。
著者会心の長篇エンタテインメント

目を覚ませ!!
自分は何をしたのか?

「家内がやつに殺されて、何が一番つらかったか分かりますか。
あのとき、やつが子供だったことです。
孫の健司と同じ中学生だった。
憎んだ、恨んだ、殺してやりたいと思った。
しかしね、子供のやったことなんだ」(本文より)
  ――帯より


1998年。一見なんの繋がりもない老女が立て続けに3人殺されるという事件が起こった。捜査により予想外の手がかりから見つかった犯人は中学生の美少年だった。
五年後。あのときの犯人・熱田友樹が少年院を出る日が迫るにつれて精神状態が不安定になった母親の陽子は、手記を出すときに世話になった雑誌記者の林に大学の同級生だったカウンセラーの成瀬環を紹介されてカウンセリングを受けていた。
友樹は、帰ってくると 情報処理関係の専門学校に通い、口数は少ないながらも穏やかに過ごしているように見えた。が、それを許さない何者かによってインターネット上に顔写真をさらされたり、携帯メールで友樹についての情報を流されたり、専門学校でも陰で噂されたりと 気の休まることはなかった。
そしてそんな折、友樹が さらには陽子が何者かに殴打され怪我を負う。

幼少少年時代に連続殺人という罪を犯した友樹の心の闇を探ることに焦点を当てた作品ではない。友樹が犯した罪によって派生する様々なこと、影響される様々な人やものごと、抉り出され曝け出される深奥に蹲る何か、が描かれた作品である。友樹ひとりに焦点を当てるよりもはるかに取りとめがなく 重苦しく 後味が悪い。
友樹の犯したとり返しのつかない犯罪さえもが その後に起こることの端緒でしかなかったように思えて、人間の心に潜む闇の深さに戦かされた。
そして、最後までその端緒となった友樹の心の内を覗き見ることができなかったことがさらに恐ろしくもある。この物語ではなにひとつ解決されていないのだということを改めて思い知らされる。

負け犬の遠吠え*酒井順子

  • 2006/05/28(日) 17:14:33

☆☆☆・・

負け犬の遠吠え 負け犬の遠吠え
酒井 順子 (2003/10)
講談社

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嫁がず 産まず、 この齢に。


どんなに美人で仕事ができても、三〇代以上・未婚・子ナシは「女の負け犬」なのです。――著者
  ――帯より


まず思ったのは、著者は何のためにこの本を書いたのだろう、ということだった。
「《負け》犬」と言っているのは、明らかに《勝ち》を意識しているのだろうが、著者の定義するところの「勝ち犬」――既婚・子あり――が自分たち負け犬に勝っていると思っているようにはどうしても見えないし、かと言って、負け犬である自分たちをどうにかしたいという意識も感じられない。少子化問題を真剣に愁いて負け犬に子を産ませようというわけでもない。ほんとうにただの遠吠えのようである。
言霊というものがあるが、ある事象は言葉を与えたとたんに確固としたものになるということもある。わざわざ名前を与えなくてもよかった現象を具現化してしまっただけのような気もするのだが。
女性が結婚しなくなった理由に関する思いはいろいろとあるのだが、それについて書くとあまりにも長くなりそうなのでやめておく。

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ミスティー・レイン*柴田よしき

  • 2006/05/27(土) 17:17:31

☆☆☆・・

ミスティー・レイン ミスティー・レイン
柴田 よしき (2005/10/25)
角川書店

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好き。誰よりも愛してる。
もう二度と仕事に恋は持ち込まないはずだったのに・・・。
せつなく、ほろ苦い、恋愛ミステリー

故意に破れ仕事も失った茉莉緒(まりお)(26歳)は、若手俳優の雨森海(あまもりかい)と出会い、彼が所属する芸能プロダクションに再就職することになった。
めまぐるしい毎日。
慣れない仕事に困惑と失敗の連続。
けれど次第に茉莉緒は、素質を持てあましている海をマネージメントしてゆくことに生き甲斐を感じ始める。
だがその最中、殺人事件が・・・。
  ――帯より


出入り業者の男性との不倫が発覚し、相手の男には自分の思い込みのように言い訳され、仕事も辞めざるを得なくなって エアコンの修理代にも事欠く茉莉緒はどん底の気分だった。そんなとき、たまたま鴨川のほとりで行われていたロケをみるともなくみながらおにぎりを食べているところに現れ 茉莉緒がおにぎりをひとつあげたのがモデル出身の若手俳優・雨森海だった。
その後、何とか収入を得なくてはならないとアルバイト情報雑誌で見つけたエキストラの現場で海に再会し、何がなんだか判らないうちに海が所属する芸能プロダクションに再就職が決まり、あろうことか海のマネージャーとして働くことになってしまったのだった。
殺人事件も起こり、ミステリであることは間違いないのだろうが、ミステリとしても恋愛小説としてもちょっとどっちつかずな感じはしてしまう。海はあまりにもいい人だし。語り手は茉莉緒なのだが、周りを取り巻く人たちの人生が、芸能関係ということもあってか劇的なことが多いので、スポットライトが散漫になってしまったような気はしてしまう。

あやまち*沢村凛

  • 2006/05/26(金) 17:32:15

☆☆☆☆・

あやまち あやまち
沢村 凛 (2004/04/24)
講談社

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男と女、とり返しのつかない瞬間!
プレ「引きこもり」の女性が恋した男には秘密が。
ファンタジー大賞受賞者初の書下ろし恋愛小説。
  ――帯より


29歳の美園希実(ミソノノゾミ)は「一人でもいい」「二人でいてすれ違う淋しさよりも一人でいる愉しさのほうがいい」と思いながら、地下鉄I線Y駅で電車を下りて職場に通う毎日を送っていた。そんな希実の自分だけの拘り というか決めごとは、地下鉄の出口まで上がるのにエスカレーターを使わず階段を上がることだった。そして通勤時間のその階段は希実の専用のようになっていたのだった。
そんなある日、はじめて後ろから希実を追い抜いて行った人がいた。天津甘栗のような色の頭の男の人だった。
プロローグで、何もはじまっていないのにもうすでに結末が明かされている。
そして、それだからこそこれからはじまる物語のひとコマひとコマが一層大切に思えてくるのである。
希実の取った反応はあやまちだったのかもしれないが、あのときにあれ以外のどんな反応ができるというのだろう。それを思うとあまりにも切な過ぎる。またいつか、しばらく時が経ったあとでどこかでふたりが巡り会えることを祈らずにはいられない。

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微笑みがえし*乃南アサ

  • 2006/05/25(木) 19:11:31

☆☆☆・・



元アイドルタレントの阿季子は若手敏腕プロデューサーと結婚、子供にもめぐまれ何不自由ない幸せな生活をおくっていた。
テレビ界へのカムバックも決まった12月、彼女は夫の知人や高校時代の友人を招いてホームパーティーを開いた。ところがその日に送られてきた宅急便の袋の中には顔の部分を無数の針で刺した阿季子のブロマイドが入っていた。そしてもう一個の宅急便にも悪意の品が・・・・・。阿季子の周辺で小さな亀裂がしだいに重なり合っていく。
  ――帯より


元アイドルで復帰を目前に控えている阿季子、故郷に帰って早々と結婚し 子どもにも恵まれ タウン誌の編集長として仕事もしている由記、札幌の放送局でアナウンサーとして活躍しているちなみ、女優の夢が破れた後も劇団に所属し 子どものためのぬいぐるみ劇などをしている玲子。4人は中学からのつき合いであり 高校でも同級生なのだった。
わがままで目立ちたがりで無意識に人を傷つける阿季子を厭えば厭うほど彼女の身に起こることで溜飲を下げたくもなるのだが、ほんとうに恐ろしいのはもっと別のところにある悪意なのである。それぞれが、やさしげな顔をしながら投じた破滅のきっかけは、重なり合うことによって阿季子を滅ぼそうとする。だが、阿季子の何も考えていないがゆえのしたたかさはまだまだ滅びようとはしないのだった。
みんなが微笑みあっているだけに怖い物語である。

八月の降霊会*若竹七海

  • 2006/05/24(水) 18:47:34

☆☆☆・・



震える夜、すべての魂が・・・歪められる。
足を踏み入れたときから、いや、招待状を見たときからか。
この妙な感じは何処から来るのだろう。この家から、それともこのなかの誰かからだろうか・・・。真夏の山荘を舞台に真実と嘘がからみ合う、異色の書き下ろし長編ミステリー。
  ――帯より


富士山の近くの山荘で降霊会をするという水屋征児からの招待状を受け取ったのは、一見するとほとんど あるいは何の接点もないかに見える人々だった。だが受け取ったそれぞれが、何がしかの違和感を抱いて 結局は招きに応じて山荘に集まることになる。
そこで起きるのは、自らの過去の罪の告白であり、殺人であり、昔この山荘で起こったことの謎解きであり、いまとの関連の謎解きでもあるのだった。

舞台装置や設定は、なにやら綾辻行人テイストである。思わせぶりな台詞やあちこちに散らばるヒントなど。物語自体は綾辻作品よりもかえって不条理感が強いかもしれない。なのに雰囲気がおどろおどろしくならないのは作者の違いによるものだろう。
ミステリというよりも、ホラーやファンタジーの気配たっぷりの一冊だった。

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余白の愛*小川洋子

  • 2006/05/22(月) 17:46:05

☆☆☆☆・



主役は《耳》と《指》である。
突発性難聴を克服したばかりの人たちを集めた座談会に出席した主人公の私は 青いボールペンをさらさらと走らせて議事録をとる速記者のYの指になぜか惹きつけられたのだった。
私の耳は一度は治ったのだが、またほどなく再発して入院することになる。音をすべて失うわけではなく、人には聞こえない音を聞いてしまう私は その音を種類分けして名前をつけたくて仕方がなかった。議事録をまとめたものを持ってきてくれたYと何度か会い、自分の言葉をYの指に聞いてもらううちに Yの指は私の耳にとってなくてはならないものになってゆくのである。
耳の底から聞こえてくるヴァイオリンの弦の音のような耳鳴りやYとの出会いの謎が解けるとき、それはYとの別れのときでもあったのだった。
耳と指と、そして記憶の、静かな静かな物語だった。

東京バンドワゴン*小路幸也

  • 2006/05/22(月) 07:28:45

☆☆☆☆・



下町で代々続く古書店「東京バンドワゴン」が物語の舞台。
現在の当主でどっしりとした体格の堀田勘一を筆頭に、60歳になろうというのに未だロッカーの一人息子・我南人(がなと)、その娘で父親を明かさない子ども(花陽(かよ))を産んだ藍子、息子の(こん)と妻の亜美 その息子の研人、愛人の子である(あお)が主な登場人物である。語り手は勘一の妻・サチ。しかしサチはすでに亡くなっていて幽霊としてあちこちに現れて、そこで見たことを語るのである。
春・夏・秋・冬 と、季節を追って物語りは進んでいくのだが、それぞれの季節にちょっとした謎が生まれ、堀田家の人々によって解かれていくのだが、それがミステリというような大げさなものではなく、すっかり日常のひとコマのように織り込まれているのが またなんとも味わい深い。

最後の

あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。


という一文で気づいたのだが、これは「寺内貫太郎一家」を演出された久世光彦氏へのオマージュなのかもしれない。


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Sweet Blue Age

  • 2006/05/21(日) 09:06:31

☆☆☆・・



青春を描いた短編集。

  角田光代  『あの八月の、』
  有川浩  『クジラの彼』
  日向蓬  『涙の匂い』
  三羽省吾  『ニート・ニート・ニート』
  坂木司  『ホテルジューシー』
  桜庭一樹  『辻斬りのように』
  森見登美彦  『夜は短し歩けよ乙女』


見事に匂いの違う7編の物語。
「青春」なんて言葉にすると照れくさいが、誰もが通り過ぎるひとつの季節のような時期の 目一杯で 熱くて 自信がなくて 奔放な若者たちの風景を見せてくれる。角田さんだけストレートではなく少しばかり趣向が違うが、やはりこれも青春物語である。
有川さんの『クジラの彼』と坂木さんの『ホテルジューシー』が好きだった。
坂木さんの物語にはもっといつまでも浸っていたい心地になった。

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奇跡売ります*宗田理

  • 2006/05/19(金) 18:47:39

☆☆☆・・



いじめ、失恋、リストラを大逆転
ミラクル・ファンタジー

「あなたに奇跡を起こしてさしあげます。
ただし有料」

人間というのは、実に様々な悩みをかかえて生きている。
その中には、自分では深刻と思いながら、なんでもないものもある。
そんな悩みなら、この「ミラクル・リンク」の男が即座に解決してくれる。
そうして人生は一変して明るいものになる。それが奇跡なのだ。――あとがきから
  ――帯より


No.1から No.48までの様々な悩み解決の連作ショートショートと、この「ミラクル・リンク」の男がこの仕事を始めたきっかけが語られるNo.49とから成る一冊である。

「ミラクル・リンク」の男は、不幸な人のところに現れてその悩みを解決してくれる。料金は格安。解決してもらったら 不幸な人をひとり見つけることがただひとつの条件なのだ。
こんな風に解決するならもっと早くに解決しているだろう、と思われるものもあるのだが、意外と当事者にはそんな解決の糸口が見えていないのかもしれない。奇跡とは、もしかするとその糸口を客観的に見えるようにすることなのかもしれない。

透明な旅路と*あさのあつこ

  • 2006/05/19(金) 12:45:01

☆☆☆・・



吉行明敬はたったいまホテルで行きずりの街娼の首を絞めて殺してきたところだ。事故があったらしい新道を避け旧道に入り込んだところでその少年と幼女に出会い 車に乗せて欲しいと頼まれた。
透きとおった印象の少年・白兎は尾谷村の母のところへ帰りたいという 妹ではない幼女・笹山和子を送り届けようとしているのだった。
抗い難い何かに動かされてドアを開けてしまった吉行だったが。

不思議な物語である。
初めのうち 現実離れした雰囲気は殺人を犯したばかりの吉行の昂ぶりのせいかと思っていたのだが、そうではなく、白兎と和子に出会ってからこそいよいよその感じを深めるのである。夢の世界なのだろうか。だったらどこから?最初からだろうか、それとも旧道にハンドルを向けたところからなのだろうか。しかし、すべて夢だったとしたら吉行はなぜここにいるのだろう。説明はつかないのである。
吉行の物語でありながらこれは白兎の物語でもあり、和子の物語でもある。母の元へ帰りたがる和子のところへたまたま使命を帯びた白兎が居合わせ、吉行が呼び寄せられたのだろう。
白兎のことをもっと知りたい。

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不夜城*馳星周

  • 2006/05/18(木) 21:56:23

☆☆☆・・



『このミステリーがすごい!』
週刊文春“傑作ミステリーベストテン”
堂々の第1位!
新宿・アンダーグラウンドを克明に描いた気鋭のデビュー作!
驚異のベストセラー!!

各紙誌大絶賛 96年ぶっちぎりのベストワン
  ――帯より


新宿歌舞伎町の中国人裏社会の物語である。
当然登場人物のほとんどが中国人。名前にも中国読みのルビが振られているのだが、これがさっぱり覚えられない。
しかも苦手なハードボイルドなのでなおさら疲れてしまった。
裏社会だからなのか、日本で暮らす中国人だからなのか、中国残留孤児の引き上げ家族だからなのか、それともそのすべてなのか、全編に――光は差さず、夜だったり 怪しげなバーの片隅だったり 光の届かない裏路地の薄暗さの中だったり――どろりとした闇が漂っている。

枯れ蔵*永井するみ

  • 2006/05/17(水) 17:46:48

☆☆☆・・
 


第1回 新潮ミステリー倶楽部賞受賞

食品会社のOLを巻き込んだ「平静の米騒動」とは?
「コメ」が現代を炙りだすバイオテック・ミステリー!


日本ミステリーが初めて本格的に農業の世界に足を踏み入れた。新潮ミステリー倶楽部賞の第一回目の受賞者である永井するみは今、二重の意味でパイオニアになろうとしているのだ。“米作り”という素材は果たしてどんなふうに料理され、ミステリーという器に盛られたのか――その鮮やかなる手さばきをとくとご覧あれ。  香山二三郎氏激賞!!
  ――帯より


農業がどんなふうにミステリになるのだろうか と、興味津々で読み始めたのだが、プロローグのショッキングな場面にいきなり面食らう。しかしこれこそが核心だったのである。
有機無農薬の米作り名人、というその世界では神さまのような人を重要な登場人物として配したのが見事である。米作りとその行いの相矛盾することのもどかしさと憤りが物語にただミステリとしてだけではない奥行きを与えたような気がする。

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まほろ市の殺人 春*倉知淳

  • 2006/05/17(水) 07:46:01

☆☆☆・・



サブタイトルは≪無節操な死人≫

「人を殺したかも知れない・・・」真幌の春の風物詩「浦戸颪(うらどおろし)」が吹き荒れた翌朝、美波はカノコから電話を受けた。七階の部屋を覗いていた男をモップでベランダから突き落としてしまったのだ。ところが地上には何の痕跡もなかった。翌日、警察が鑑識を連れどやどやとやって来た。なんと、カノコが突き落とした男は、それ以前に殺され、真幌川に捨てられていたのだ!  ――裏表紙より


三浦しをんさんの書く「まほろ市」とはまったく別の、こちらは多分正真正銘(?)虚構の街で起こる物語である。
真幌市で一人暮らしをする大学の同級生の美波と新一が事件と係わり合いになったのは、やはり同級生のカノコからの「人を殺したかも知れない」という一本の電話からだった。そして、美波の実家からやって来た弟の渉がいちばん冷静な探偵役となって真相を推理してゆく。
殺人事件を扱ってはいるが おどろおどろしい感じは微塵もなく、死体の処理の仕方など ちょっと無理があるんじゃないだろうかと思われることもあるのだが、ちゃんと辻褄があってしまうのが面白くもある。読後感はさわやかな青春物語といった感じか。

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さいえんす?*東野圭吾

  • 2006/05/15(月) 12:54:34

☆☆☆・・



「こいつ、俺に気があるんじゃないか」――女性が隣に座っただけで、男はなぜこんな誤解をしてしまうのか?
男女の恋愛問題から、ダイエットブームへの提言、野球人気を復活させるための活気的な改革案、さらには図書館利用者へのお願いまで。俗物作家ヒガシノが独自の視点で綴る、最新エッセイ集!
〈文庫オリジナル〉
  ――裏表紙より


理系作家(・・・・)東野さんならではの着眼点と検証を織り交ぜたちょっぴり辛口ともいえるエッセイ集である。
特にほぼ完全図書館利用者であるわたしにとって、最後の『本は誰が作っているのか』は痛いとしか言いようがない。ごもっともなのである。なのであるが、図書館利用者でなくなるわけにはいかないのが辛いところ。貧乏な本好きには図書館は神さまのように神々しい場所なのだから。こうなれば他力本願、懐に余裕のある本好きさんたちの購買力におすがりするしかないのである。
本作りに関することだけではなく、これを読んでいて強く感じたのは≪循環≫ということである。この世の中の――ひいては全宇宙の――あらゆる事象はそれぞれが孤立した点で成り立っているのではなく、すべてがゆるやかに繋がり 互いに影響しあっているのだということである。自分に無関係なことなどなにひとつないのだ、ということを思わされた一冊でもあった。

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猫丸先輩の空論*倉知淳

  • 2006/05/14(日) 17:48:31

☆☆☆・・



年齢・職業ともに不詳の童顔探偵猫丸先輩が、日常を゛本格推理"する!イラストレーターの家のベランダに毎朝決まって置かれるペットボトル、交通事故現場に集結させられた無線タクシー、密室状態のテントの中で割れ、散乱していた7個のスイカ・・・・・などなど不可解で理不尽な謎がすらりと解かれる推理の極み6編。  ――裏表紙より


水とそとの何か・とむらい自動車・子ねこを救え・な、なつのこ・魚か肉か食い物・夜の猫丸 の6編。
タイトルに゛空論"とあるとおり、猫丸先輩流の謎解きはあるが、果たしてそれが真実かどうかの検証はない。そもそも、それでも関係者一同が納得してしまえるほどの謎である。二つ目の物語ではある意味――違和感を抱きながらも――ちょっと背筋が寒くなったが。
前作では自分の想像とイラストの猫丸先輩とのギャップにいささか隔たりがあったのだが、今回は違和感なくあれこそが猫丸先輩であると認めてしまった。視覚情報侮り難し!
それにしても、イラストレーター編といい 交通事故編といい、著者の悪戯心は少年のようである。

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ガラス張りの誘拐*歌野晶午

  • 2006/05/13(土) 20:17:15

☆☆☆・・



警察をてこずらせている連続少女誘拐殺人事件の犯行声明がK新聞に届いた。「犯人(ホシ)がついに動いた」と色めきたつ佐原刑事ら捜査陣。しかしその犯行声明には新たな少女惨殺の模様が克明に記されていた。またも完全敗北なのか。ところが両親や捜査員らの大混乱をよそに、殺されたはずの少女は無事戻り、犯人とされた男は自殺、事件は一応落着したかに見えたが・・・。
今度は佐原刑事の娘が誘拐され、新たな謎が浮かぶ。いったい犯行の目的は?前の事件とのかかわりは?
奇想天外な着想で人気を呼ぶ推理界の新鋭、最新作ここに登場!
  ――裏表紙より


目次を見ただけですでに何かが起こりそうである。

第二の事件  保健室の名探偵
第三の事件  ガラス張りの誘拐
第一の事件  夢で見た明日
エピローグ


第一章の第二の事件で犯人――どの件の(?)という問題はあるが――と目星をつけた人物は、第二章の第三の事件では犯人像から遠くなり、しかし第三章の夢でみた明日でされる告白によって「やはり」と腑に落ちた。
佐原刑事の目を通して物語は語られていて、第二章では娘を誘拐される父親でもあるのだが、それでもなお主役はガラス張りの誘拐を仕組んだ犯人なのだろう。そして、その人物をそうまでしなければならない気持ちにさせた あまりにも哀しい親子関係なのではないだろうか。

光源*桐野夏生

  • 2006/05/12(金) 17:56:52

☆☆☆・・



あんたら、ふた言目には「いい映画」って言うけどさ。
俺は映画の奴隷じゃねえよ。

『柔らかな頬』から二年。
「狂乱」を求めて、光を発し続ける男女を鮮烈に描く
待望の直木賞受賞後長篇第一作
  ――帯より


出版は平成十二年。
帯に謳われているように、映画の製作現場が舞台である。であるが、映画の話というわけでもない。あくまでも映画製作の場は物語を描くための舞台である。
描かれているのは人間のさがのようなものだろう。登場人物の誰も彼もがことごとく自分本位である。
どうすれば自分の立場を守れるかを第一義として動く者、自分のイメージを守ろうと必死になる者、自由を奪われた躰ゆえに実現できないことを実現しようとする者に嫉妬する者、愛する者を独り占めしようとする者。
どの登場人物にも肩入れする気になれず、見直そうとする端緒を垣間見せてはまた自己愛にどっぷり浸かるのを目の当たりにして幻滅させられる。
だが、それがなんとも人間臭くて 不思議なことに誰をも憎むことができないのだ。
本を閉じたあとも 彼らがきっと自分のことをいちばんに考えてきょうもどこかで誰かと衝突しながら生きているだろうと、おかしな親しみさえ覚えるのである。

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いまひとたびの*志水辰夫

  • 2006/05/11(木) 11:07:57

☆☆☆☆・



泣いた泣けた泣かされた・・・・・
ただ一直線に愛と死を謳いあげる
究極の9短編

向こう岸に歩み去ろうとするあの人。一瞬ふり返って交わす視線と視線。二人で持った心の軌跡が、稲妻のように脳裏を駆ける。もう一度、もう一度だけでも逢うことがかなうなら――。

現代のヒネクレ者・志水辰夫が、一切のケレンを振り払ってド真ん中に全力投球した九つの熱球、九つの感動!
  ――帯より


表題作のほか、赤いバス・七年のち・夏の終わりに・トンネルの向こうで・忘れ水の記・海の沈黙・ゆうあかり・嘘。

人生の終わりがうかがわれるようになり、具体的にもそこが視界に入ってくるようになったとき、人はそれからの時間をどう生きるのだろうか、ということをさまざまな形で見せられた心地がする。
人生を閉じてゆくのは、物語によっては自分であり また親しい人であり、送られる側の覚悟も見送る側の胸の痛みも切ないほど胸に迫ってきて涙がにじむのを止めることはできない。

意外なことに妻が先立つ物語はひとつもなく、これは思いのほか男性のほうが甘えん坊であることの証明のような気もするし 著者の願いによるものかもしれないとも思わされる。

これから未来をいくらでもその手で変えられる若い人たちには実感としてわからないかもしれないが、折り返し地点を過ぎた者には 決して他人事ではなく胸に迫るものがあるだろう。

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クリスマスローズの殺人*柴田よしき

  • 2006/05/09(火) 18:00:57

☆☆☆・・



私立探偵メグが引き受けたのは、夫の出張中に妻が浮気をしてないか、という調査。
まあ、よくあるタイプの仕事だった。
これで年が越せる。
ターゲットの家の向かいのマンションから監視を続けるメグ。
だがいつまでたっても動きはなかった。
灯りはついているのになぜか人のいる気配がない。おかしい。
不審に思って駆けつけると、家にいたはずの妻はどこにもおらず、かわりに海外へ出張に行ったはずの夫の惨殺死体が・・・・・。
そしてさらに事件はとんでもない方向へと転がってゆく。
軽ハードボイルド+コージー+本格推理!
  ――見返しより


ハードボイルドだのコージーだの本格推理だのと謳われているが、探偵がまずヴァンパイアであり 登場人物の多くもヴァンパイアであるので、トリックとか調査の手法とかがあーんなだったりこーんなだったりするのはありなんだろうか。なにやら騙された心地がするのはわたしだけだろうか。
ともあれ、その辺りを深く考えなければ愉しいひとときを過ごせるだろう。

町長選挙*奥田英朗

  • 2006/05/08(月) 16:45:28

☆☆☆・・



相変わらずな伊良部先生の物語である。マユミちゃんも相変わらずだし。
ただ今回違うのは患者となって伊良部の元を訪れる人々が誰でもわかる時の人をモデル(?)にしている点である。
『オーナー』ではさる野球界の大御所ナベマンであり、
『アンポンマン』ではタイトルのとおりIT長者(初出はオール讀物・平成17年4月号)であり、
『カリスマ稼業』では自然体の若さが売りの女優白木カオルなのである。
表題作は著名人は現われないが、それ自体にモデルがあるようなのである。

初めは不本意ながら診察室を訪れた患者たちが、なにやらわけがわからないうちについ伊良部を頼っているところは前作通りで、結構まともなアドバイスをしていたりもする伊良部の魅力(?)にまたしてもやられるのである。
患者の心を軽くして 思考回路をちょっぴり変えてやる一言がいつもながらに的を射ていて、この瞬間だけは伊良部がただのあほうではないと思わせられる。

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ちゃれんじ?*東野圭吾

  • 2006/05/07(日) 17:05:21

☆☆☆・・



東野圭吾@おっさんスノーボーダーのエッセイ。
『月刊 ジェイ・ノベル』に連載したものに書下ろしを加えたものである。
44歳にしてスノーボードを始め、しかもすっかり嵌っていまや立派なスノーボーダーである東野氏の奮闘・熱中ぶりが伝わってくるようである。
時おり不意に紛れ込む小説がまた茶目っ気があって愉しいのである。さすがミステリ小説家という感じ。

まったく関係がないのだが、この作品の前に読んだ歌野晶午著『女王様と私』の主人公真藤数馬も同じ44歳だったのだと思うと、人生いろいろ(小説の主人公と一緒にしては申し訳ないかもしれないが)と感慨深い思いもするのである。

女王様と私*歌野晶午

  • 2006/05/06(土) 21:39:47

☆☆☆☆・



真藤数馬、44歳、独身、オタクでほぼ引きこもり。
しゃべるのはほとんど妹の絵夢とだけ、しかもその妹は身長30cmのFRP製の人形なのだった。
そんな数馬がある日 日暮里で来未(くるみ)という12歳の美少女に声をかけられた。罵られ嘲られいいように使われながら 数馬は少しずつ世間と繋がる自分を再発見するのだった。

・・・・・と書いてはみたが、この作品は何を書いてもネタバレになりそうで 甚だレビュー向きではない。
信じきって進んでいた道が、あるときふっと持ち上げられたり、気を取り直して別の道を歩き出したのはいいが、しばらく行くと実は書割の中だったりするような気分なのである。拠り所というものがまったくといっていいほど希薄なのだ。とにかく読んでみてください としか言いようのない一冊なのだった。

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冒険の国*桐野夏生

  • 2006/05/05(金) 17:15:56

☆☆☆・・



永井姉妹と森口兄弟は、姉と兄、妹と弟が同級生同士で、常に互いの消息を意識してきた。特に、弟の英二と妹の美浜は、強い絆で結ばれていた。が、ある日、一人が永遠に欠けた。英二が自殺したのだ。美浜は、欠落感を抱えたまま育った街に帰って来る。街はディズニーランドが建設され、急速に発展していた。そこで、美浜は兄の恵一に再会する。バブル前夜の痛々しい青春を描く文庫オリジナル。  ――文庫裏表紙より


1988年に「すばる文学賞」に応募し、最終候補に残りながら「受賞作なし」という結果になった原稿に加筆修正を施して出版されたのがこの作品だそうである。いってみれば幻のデビュー作というところだろうか。
日本がどんどん何かを作リ生み出していったバブルという時代の階段に片足をかけた頃の何か慌ただしく騒々しく浮かれ騒ぐ気分に取り残されたような美浜の一家の居心地の悪さと、美浜自身の人生における居心地の悪さのようなものがリンクしていて切なく哀しい。空に浮かぶ部屋の窓から見えるのがディズニーランドのシンデレラ城だというのが物悲しさをいや増している。

正月十一日、鏡殺し*歌野晶午

  • 2006/05/05(金) 13:39:18

☆☆☆・・



「カチカチ鳥を飛ばせ」という謎の電話を傍受してしまった予備校生は、そこに犯罪の匂いを嗅ぐ(盗聴)。
猫マニアの恋人を持つサラリーマンは、一瞬の狂気に取り付かれる(猫部屋の亡者)。
不仲の祖母と母に挟まれた少女は鏡餅に願いを託す(表題作)。
日常の中に紛れ込んだ謎、そして恐怖。ミステリー傑作集。
  ――裏表紙より


あえて探偵を廃し
あえてトリックを抑え
あえて論理合戦を殺ぎ落とし
絢爛豪華な謎もなく
物語はあくまで日常で
しかし精神は本格
ようこそ、裏本格の世界へ
  ――見返し著者のことば


上記、紹介されているほか、逃亡者 大河内清秀・記憶の囚人・美神崩壊・プラットホームのカオス。
著者のことばにあるとおり、探偵も現われず、真犯人の逮捕劇もない日常が舞台の物語たちである。ちょっとした錯誤や認識の食い違いが恐ろしい結果へと容易に人を導くのだということの恐ろしさがじわじわと背筋を這い上がってくる心地である。

幻想運河*有栖川有栖

  • 2006/05/04(木) 17:08:44

☆☆☆・・



大阪で起こった事件とオランダのアムステルダムで山尾恭司が体験した出来事からなる物語である。そしてさらに、アムステルダムでは未来のシナリオライターであるはずの恭司に突然降ってきた小説のアイデアも挟み込まれている。
そのどれもに当てはまるキーワードは≪バラバラ≫。
アムステルダムでは合法であるドラッグで飛ぶ場面が多く描かれているせいか、友人・水島のバラバラ死体事件もなにか曖昧な靄に包まれているように見えてしまうのは著者の意図するところだろうか。結局は事件は解決を見ないままラストの大阪の場面になるので 水島殺しの犯人も最後まで推測するだけなのだ。そして信じられないラストが待っているのだった。
結局私にはよくわからなかったのだが...。

風に桜の舞う道で*竹内真

  • 2006/05/02(火) 17:20:34

☆☆☆☆・



予備校の特待生寮・桜花寮で1990年4月からの一年間を過ごした10人の一浪生の物語と、10年後の2000年の彼らの生き様の物語。
親の意向で早稲田の文学部を目指してはいるものの 明確な志向性を持てずにいるアキラの目を通して語られる十年前と現在である。
そもそもあれから十年後のいま桜花寮で共に過ごした仲間の消息を尋ねたり連絡をとって会ったりすることになったのは、リュータが死んだという噂が耳に入ったからだった。リュータの消息を追うために、当時の仲間と接触するたびに十年前が鮮やかに浮き上がってくるのである。
あの場所で、あの一年間に、あの仲間たちと過ごしたからこそ いまの自分が在るのだと、30歳を目前にした十年後にそれぞれが思えるなんて、なんてしあわせなことだろう。
個性的なメンバーが揃う中、アキラのポジションは意外と大事だったのではないかと思う。

午後の足音が僕にしたこと*薄井ゆうじ

  • 2006/05/01(月) 09:50:07

☆☆☆・・



この短篇に「あたし」のこと書きました?

こつ。こつ。

いつからか「僕」は、定刻に現れるその音(・・・)に捉えられていた。
・・・・・人知れずざわめき揺れる心を、つかの間のロマンスを、ピュアな感覚で描いた連作短篇二十二話。
  ――帯より


初めの物語が語り手を替えて最後にまた戻ってくる。視点を変えると風景はまったく違うものになる。
それは、とても腑に落ちるもので興味深い趣向だったのだが、間に挟まる物語たちのつながり方はいまひとつな気もしなくもなくて、それが少し残念でもある。