歪んだ匣*永井するみ

  • 2006/06/30(金) 17:17:29

☆☆☆・・

歪んだ匣 歪んだ匣
永井 するみ (2000/07)
祥伝社

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「金だ。早く。あるだけ出せ」土曜の午後、オフィス・ビル一階のカフェ〈ウプスラ〉に強盗が出現。その場に居合わせたのはバイトの青年城野龍だけだった。犯人はレジ内の現金をせしめて遁走。だが、その時確かに店内にいたはずの親子連れの客が姿を消し、龍は店長たちから自作自演の犯行を疑われてしまった。嫌疑を晴らすため、龍は唯一の証言者の消息を追う。やがてたずね当てた親子――ミユキとタクの話から、龍は事件の皮肉な真相を知ることに・・・・・。(第六話 ダブル・オリーブ)
事故、盗難、横領、ケンカ、そして殺人・・・・・都心に聳える二十八階建ての最先端(インテリジェント)ビル内で次々に起こる怪事件。期待の俊才が、日常の職場にひそむ恐怖と危険を描く都会(アーバン)ミステリーの異色連作!
  ――見返しより


神谷町に建つ二十八階建てのビルに入っている会社や店などを一話ずつ舞台にする九つの連作。
 
 第一話 重すぎて 25F スタリオン・コーポレーション
 第二話 D・I・D 15F キリシュ・コンピュータ
 第三話 歪んだ月 BF フィットネスクラブ**
 第四話 ドラッグストア 8F 秋平建設
 第五話 ブラックボックス 11F 片倉食品
 第六話 ダブル・オリーブ 27F エル・デコ社
 第七話 幻の味 13F ディッカーズ社
 第八話 ウーマン 23F バラステア・インク
 第九話 蝶のごとく 1F ホール

面白い試みである。同じビルにある会社で働くと言っても、お互いに関わりなどほとんどないと言っていい。そんななかで次々と事件が起きていく。そして、わずかながらも関わりを持つ人たちが現われてきたりもする。
都会に聳え建つインテリジェントビルで働く、というただひとつの共通点によって繋がる物語たちであり、舞台はほとんどこのビルの中なのだが、なにやら社会全体の縮図にも見えてくるから不思議である。

凸凹デイズ*山本幸久

  • 2006/06/30(金) 07:44:02

☆☆☆・・

凸凹デイズ 凸凹デイズ
山本 幸久 (2005/10/25)
文藝春秋

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恋愛じゃなく、友情じゃなく、仕事仲間。彼らがいつも、そばにいた。弱小デザイン事務所・凹組クロニクル。キュートでコミカル、ちょっと切ない、オシゴト系長編小説。『別冊文芸春秋』連載を単行本化。


「凹組」はデザイン事務所。名前の由来は...。
語り手は、現在の凹組の紅一点――とは言っても他には男ふたりしかいないのだが――浦原凪海。デザインの専門学校を出て、先輩・大滝がいる凹組のアルバイトとして働いているが、言われたことをこなすだけで まだまだ自分を出せていない。
そんなとき、慈極園という遊園地のリニューアル企画に 凪海が幼いころから描いては友だちのように思ってきたデビゾーとオニノスケのイラストがイメージキャラクターとして採用される。そして、一緒に仕事をすることになったQQQの女社長・醐宮は10年程前の凹組の初代メンバーだったのだった。
ゴミヤの思い出としての10年前の凹組の奮闘振りと、現在進行形の凹組の奮闘振りとがリンクするように語られるので、ゴミヤの苦悩もオータキや 凹組のもう一人の男・クロの意気地、そしてナミの立場などが読者にはパノラマのように一望できる。
ラストは落ち着くところに落ち着いた感じではあるが、それ以外にはありえないという気もするのである。これからの凹組はきっと無敵だ!(といいのだが...)

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99才まで生きたあかんぼう*辻仁成

  • 2006/06/29(木) 09:53:31

☆☆☆☆・

99才まで生きたあかんぼう 99才まで生きたあかんぼう
辻 仁成 (2003/06)
ホーム社

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笑顔の両親のもとに、泣いて生まれてきたあかんぼう。
いじめを知り、人を欺くことを覚えてしまったあかんぼう。
泣き、喜び、悩み、ひたむきに生きることを学んだあかんぼう。
幸福に気づき、成功を収め、人生に翻弄され、挫折を知ったあかんぼう。
99才まで生き、笑いながらわたしのところへやってくる
あかんぼうの、人生劇場。
  ――帯より


見開き2ページに1才分が綴られている。生まれた0才から神に召される99才まで。
このあかんぼうの人生を見守りながら語る《わたし》は言うまでもなく神さまなのだが、あかんぼうがどんな困難に見舞われようとも手は出さず助けず、ひたすら自分から気づくのを待つのである。神さまにしかできないことかもしれない。
ひとりの人生を早回しで見ているようなこの作品。もう何度も泣かされた。どんな年齢の人が読んでも、このあかんぼうにそれぞれの人生を見るのではないだろうか。
挿画も著者自身である。

好きよ*柴田よしき

  • 2006/06/28(水) 19:50:46

☆☆☆・・

好きよ 好きよ
柴田 よしき (2002/08)
双葉社

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先家董子の同僚愛果が「好きよ」という一言を遺書に自殺した。その後、董子の身の回りには不可解な出来事が頻発する。死の影に潜む「邪悪な存在」との戦慄の闘いの果てにある真実とは!?


このタイトルでホラーだったとは!
終盤、佳境に入るとそれはそれは凄まじくホラーなのだが、しかしただおぞましいだけのホラーではない。ほとんど孤島と化した過疎の島に古くから言い伝えられてきた伝説に迫ったり、恋愛小説の趣もあったり、と盛りだくさんなのである。
ホラー苦手のわたしとしては、ホラー然とした部分は少なからず退いてしまったが、それ以外の部分の雰囲気はむしろ思わせぶりで好きかもしれない。

平成お徒歩日記*宮部みゆき

  • 2006/06/27(火) 19:08:35

☆☆☆・・

平成お徒歩日記 平成お徒歩日記
宮部 みゆき (1998/06)
新潮社

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「お徒歩」の読みは=「おかち」

大江戸の謎と不思議を、アタマではなく足で解き明かす前代未聞の歴史実体験ツアー。宮部みゆきが、市中引廻しのうえ島流しになった毒婦、はたまた赤穂義士やお伊勢参りの町人たちが歩いた道のりを歩く紀行エッセイ。


古地図を携え、いまの地図と比べながら、七つのテーマに沿って徒歩で――とは言い切れないところもあるが――検証する歴史体験ツアーである。そのテーマとは、
 真夏の忠臣蔵
 罪人は季節を選べぬ引廻し
 関所破りで七曲り
 桜田門は遠かった
 流人暮らしでアロハオエ
 七不思議で七転八倒
 神仏混淆で大団円

である。そして、このお徒歩以前に書いたものが二編 最後に加えられている。
テーマに沿って目的をもって歩くことで、普段見過ごしている事々に気づいたり、スポットが当てられたりするのが興味深い。
そして、お徒歩の一行と一緒になって江戸市中やら善光寺やらを歩きまわっている心持ちにさせてくれるのは、一行の味わい深いキャラクターと 仕事(ときどき遊び?)にかける熱意ゆえではないだろうか。

ダ・ヴィンチ・コード*ダン・ブラウン 越前敏弥訳

  • 2006/06/27(火) 09:38:02

☆☆☆☆・

ダ・ヴィンチ・コード(上) ダ・ヴィンチ・コード(上)
ダン・ブラウン (2006/03/10)
角川書店

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ダ・ヴィンチ・コード(中) ダ・ヴィンチ・コード(中)
ダン・ブラウン (2006/03/10)
角川書店

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ダ・ヴィンチ・コード(下) ダ・ヴィンチ・コード(下)
ダン・ブラウン (2006/03/10)
角川書店

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ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描“ウィトルウィウス的人体図”を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く…。


いやでも映像が思い浮かんでしまうような衝撃的な物語のはじまりである。
撃たれて命尽きるまでのほんの15分か20分の間に、これほど重大で的確な暗号を配したソニエールにまず驚嘆する。それがなければそもそもこの物語りは進みようもなく、古から伝え守られてきた聖杯の秘密も(一般には)誰に知られることもなく秘密のままでありつづけることになったのだろうから。

《最後の晩餐》の謎を解き明かす場面では、そのあまりにも明らかなのに思ってもみなかった事実に総毛立ち、何度も巻頭の写真に戻って見入ってしまった。
そして、数々解き明かされるアナグラム。日本語ではこうはいかなかっただろうと思いつつも ラングドンやソフィーと興奮を共にしたのだった。

歴史は勝者によって書き換えられるもの、というのが恐ろしくもあり印象的である。

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王国 その3 ひみつの花園*よしもとばなな

  • 2006/06/25(日) 09:34:00

☆☆☆・・

王国〈その3〉ひみつの花園 王国〈その3〉ひみつの花園
よしもと ばなな (2005/11)
新潮社

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雫石の不倫相手、真一郎の協議離婚が成立した。新しい生活が始まろうとするその矢先、壁が立ち塞がる。それは、真一郎の亡き親友が残した美しい庭と、その庭を守り抜こうとする若く魅力的な義母の出現だった。真一郎の思いを見抜き悩む雫石。落ち込んだ自分を見つめ、自分が何に耐えられないのかを知ろうとする雫石の心の旅。


『王国 その2』では あんなにお互いにかけがえのない風に見えた雫石と真一郎だったのだが、ひとつ壁を乗り越えたところにできたわずかの隙間には 初めから決まっていたかのように入り込んでくる何ものかがあったのだった。いち早くそれに気づいてしまった雫石の悩みを 真一郎ははじめは理解することができないのだが、やはり現実は進むべく方向へと進んでゆくのだ。
そして、傷心の雫石を救ってくれたのは、またもや 自分を偽らない心を持っている人たちの力だった。
今回のキーワードは《台湾》。台湾でのあれこれは、まだまだつづいてゆきそうに思われる。

きみのためにできること*村山由佳

  • 2006/06/23(金) 17:50:24

☆☆☆☆・

きみのためにできること きみのためにできること
村山 由佳 (1996/11)
集英社

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恋人がふたり、僕の心に棲み始めた。
深く眠った魂が呼び覚まされる・・・・・。
  ――帯より


帯の惹句だと 二股をかけている浮気男の話のように思えるが、そうではない。
浮気心がまったくなかったかといえば そうでもない。
主人公の俊太郎は、高校三年のとき 関東学生映画コンクールに音に凝った映画を出品し佳作に選ばれた。そしてそのときに評価してくれた音のプロ キジマ・タカフミに憧れて音声技師の仕事に就くために、恋人のピノコを故郷の勝浦に残して上京した。
女優の鏡耀子とは、仕事を一緒にする機会があって知り合い、度重なる偶然もあって惹かれるようになるが、ピノコへの想いも揺るぎないものなので俊太郎は悩むのだった。

耀子に恋したかもしれないと悩み、ピノコに何もしてやれないと悩む俊太郎の 若さと真っ直ぐさが清々しい。そして、俊太郎のためにならないことはするまいと健気に我慢するピノコの想いもいとおしい。
こんなふたりが幸せにならなくて一体誰が幸せになれるというのか!
これからもいろいろと波はあるかもしれないが、俊太郎とピノコならきっと乗り越えていくだろう。

99%の誘拐*岡嶋二人

  • 2006/06/23(金) 17:17:22

☆☆☆☆・

99%の誘拐 99%の誘拐
岡嶋 二人 (1988/10)
徳間書店

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日本有数のOA機器メーカー、リカード会長の孫が誘拐された。奇想天外な手口で警察を翻弄する見えない犯人と、リカード社員の頭脳戦が開始された。陰には20年前迷宮入りとなった誘拐にからむ陰謀が渦まいて…。舞台は冬の蔵王、鮮やかなラストシーンに向かってつっ走る。現実に使用できるハイテク機器を使い、緻密に練り上げられた渾身の犯罪小説。この興奮はあなたのものです。


発行は1988年である。当時の読者の反応はどんな風だったのだろう、とまず思った。コンピュータを駆使し、先端技術を様々に応用してなされた誘拐事件である。警察も 解説なしには仕組みを理解できずに戸惑っているのが見て取れる。
しかも、よくある誘拐事件ではなく、現在の誘拐事件は過去に起こった誘拐事件をある部分なぞるように進んでいるのである。そして、過去の事件も現在の事件も、人質は無傷で帰ってはきたが犯人は上がっていない。
過去の犯人はともかくとして、現在の誘拐を企てた者を犯人と呼ぶなら、犯人に罪の意識はないように見える。動機には同情すべき点もあるのだが、その点での後味は決していいとは言えない。

しゃぼん玉*乃南アサ

  • 2006/06/22(木) 17:48:11

☆☆☆・・

しゃぼん玉 しゃぼん玉
乃南 アサ (2004/11)
朝日新聞社

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やりたいことをやり尽くして、弾けて消えればいい――
現代の若者の“絶望感”をこまやかな心理描写で描き出す傑作長篇サスペンス

ひったくりを繰返した挙げ句、一人殺して、最後には、ついに一人暮らしの老婆まで殺して金を奪えば、法律のことなど何も分からない翔人だって、死刑以外にないだろうと思う。
客観的に見れば、そんな奴は死刑になって当然だ。
つまり、それが俺か。

親からも見捨てられ、通り魔や強盗傷害を繰り返す無軌道な若者・伊豆見翔人は、逃亡途中で宮崎の山村にたどり着く。
成り行きから助けた老婆スマの家に滞在することになった翔人は、近所の老人シゲ爺の野良仕事を手伝ううちに村の暮らしに馴染んでいくが・・・・・。
  ――帯より


障害に立ち向かうことができず、逃げることしか考えられない若者・翔人が、どこだか場所もわからずにたどり着いたのは、宮崎県椎葉村だった。
ひょんなことで怪我をしているのを助け、やっかいになったスマは、何も詮索せずに翔人を家に置いてくれた。近所の人たちは彼のことをスマの孫だと思い込んでいたが 訂正することもなかった。
初めのうちこそだらだらと無為に時間を過ごしていた翔人だったが、シゲ爺の山仕事を手伝ううちになにやら張り合いめいたものを感じ始め、自分を変えられるかもしれないと思い始めるのだった。

スマと翔人は縁もゆかりもない赤の他人だったが、スマは翔人に不出来な息子の子を見、翔人はろくでもない父の母を想っていたのかもしれない。
村の人たちの詮索しないが遠慮のない接し方も 翔人の胸の中で何かを変えるきっかけになったのだろう。翔人はきっと大切なものを取り戻せるに違いない。

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俯いていたつもりはない*永井するみ

  • 2006/06/22(木) 12:55:10

☆☆☆☆・

俯いていたつもりはない 俯いていたつもりはない
永井 するみ (2004/09/17)
光文社

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あのとき、身を切る思いで彼と別れたのに。16年後、彼女の前に男は現れた-。確かな自分を求めて揺れ動く、現代の女性を描く恋愛ミステリー。『小説宝石』連載「あの日、僕らがいた場所」を改題して単行本化。


白金で幼児教室・ラウンドテイルを営む丸尾志乃・緋沙子親子。
志乃は戸籍上の父親のいない緋沙子を産み育て、ラウンドテイルを守ってきたが、近ごろは緋沙子が主になって運営するようになっていた。
そんな折、通ってくる子どもたちのひとり 希央の母・凛子が行方不明になり、他殺死体で見つかるという事件が起き、それぞれがそれぞれの思惑で疑ったり、疑いを晴らしたかったりして事件の周りを探り始めるのだったが...。

大人たちの愛の世界、大人が子どもに向ける愛と期待、そして子どもたちの純粋で無邪気な世界。
どれが良いとか悪いとかではなく、並べて描かれているが故に 大人が失くしてきたものを思い知らされるような気がしてしまう。そして、純粋で無邪気であるだけでなく、子どもが思いのほか大人を気遣い、深く何かを見つめていることにも気づかされるのである。
緋沙子も凛子も、心に負って癒されることのない傷を 子どもの存在によってどれほど楽にさせられたことだろう。
凛子の死の真相は些か安易過ぎる気もしなくもないが、最後には これからにとっての良し悪しは別として「そうだったのか」と涙ぐみそうになる展開もある。
永井するみさん。この空気感は好きかもしれない。

四十日と四十夜のメルヘン*青木淳悟

  • 2006/06/20(火) 18:59:44

☆☆・・・

四十日と四十夜のメルヘン 四十日と四十夜のメルヘン
青木 淳悟 (2005/02/26)
新潮社

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「わたし」の部屋には、配りきれなかったチラシが溜まっていく。チラシに書かれた文字が勝手に増殖して・・・・・。
「『四十日と四十夜のメルヘン』を読みながら私は現実が異なる空間に変容する体験をした」と保坂和志氏が評した新潮新人賞受賞の表題作。
そして保坂氏のほか、島田雅彦氏や鹿島茂氏の賛辞も集めた第二作『クレーターのほとりで』。
驚異の新人が誕生した。
  ――帯より


正直、何度か途中で本を閉じようと思った。
ところどころに ふっと惹きこまれそうになる個所もあるのだが、そうするとまた違う次元のところへ連れて行かれるようで 惹きこまれきれずに連れ戻されてしまう。
単にわたしの頭の悪さのせいかもしれないが、試みは興味深くはあるものの なにやら観念的な匂いが好みではなかった。

強運の持ち主*瀬尾まいこ

  • 2006/06/19(月) 17:29:08

☆☆☆・・

強運の持ち主 強運の持ち主
瀬尾 まいこ (2006/05)
文芸春秋

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元OLの占い師、ルイーズ吉田は大忙し!
「がんばって。きっといいことがあるわ」

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直感だろうと占い本通りだろうとかまわない。
でも、どんなつまらない相談事でも、
人生にかかわる一大事でも
同じように真剣に占わないといけない。
当たる当たらないは問題じゃなく、
相手が納得する答えを出さないといけない。(本文より)
  ――帯より


OL時代の上司や職場の人間関係に疲れ、ひとりでできる仕事を、と思って占い師になったルイーズ吉田こと 吉田幸子。ジュリエ青柳主催のジュリエ数術研究所の扉を叩くと一日目は研修、二日目は先輩占い師の助手、そしてなんと三日目からは一人前の占い師としてひとりで仕事をすることに。
なんだかいい加減なようだが、ルイーズは営業職のOLとしての経験を生かして それなりに真剣に相談者に向かっているのだった。
相談にきたカップルの男性に類を見ない強運を見出し、あらゆる手を使って自分の方を振り向かせ同棲してしまったりもするのである。そうやって手に入れた通彦がなにやらぼーっとしていて強運を発揮しそうもないところが また和ませてくれる。
通彦はもちろん、師匠のジュリエ青柳や 終わりが見えてしまう武田平介、アシスタントの竹子さん、とルイーズの周りを固める登場人物たちのキャラクターがみんな好ましい。

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クローズド・ノート*雫井脩介

  • 2006/06/19(月) 13:08:16

☆☆☆☆・

クローズド・ノート クローズド・ノート
雫井 脩介 (2006/01/31)
角川書店

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一瞬でも構わない。
これが一瞬でも、私は生きてきてよかったと言える――

『火の粉』『犯人に告ぐ』の俊英が贈る2006年最初にして最高の物語!
  ――帯より


教育大の二年生でマンドリン部の香恵は、ある日友人の葉菜ちゃんと自分のマンションに帰ってきたところで 二階の自分の部屋を見上げている男の人を見かけた。そしてその後、アルバイト先の文房具店の客として彼に再会したのだった。彼の名は石飛隆作。
一方、香恵の部屋のクロゼットには前の住人の小学校の先生らしい伊吹さんの忘れ物らしいノートと 生徒たちからのグリーティングカードが残されており、香恵は伊吹先生にシンパシーを感じ 勝手に彼女の生徒になったつもりで人生の道案内にしたりしていたのである。しかし ノートは、隆という青年との恋が実りそうなところで唐突に終わっていた。

香恵の日常と、ノートに綴られた文章という形での 見知らぬ前住者である伊吹先生の生の心情の吐露とがときにリンクするように進んでいくのが、読者の側には先が読めるだけに もどかしくもあり、香恵ちゃんに親しみを感じさせる効果にもなっている。
いくらも読み進まないところで予想したことが 現実にならなければいいと思いながら読んだが、やはりそれはどうにもならない現実だった。が、そこから明るく開けてくるものがあるようで それが救いである。
途中で何度もページがにじんで見えなくなったが、淡々と書かれた作者のあとがきで さらにあたらしい涙を流すことになった。
とても透きとおった あたたかな一冊だった。

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初ものがたり*宮部みゆき

  • 2006/06/18(日) 17:29:24

☆☆☆☆・

愛蔵版 初ものがたり 愛蔵版 初ものがたり
宮部 みゆき (2001/05/24)
PHP研究所

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本所深川を舞台に繰り広げられる、せつなく、妖しく、心温まる、江戸人情捕物ばなし。「鰹」「白魚」「柿」など、季節を彩る「初もの」に、事件解決の鍵が…。岡っ引き・茂七親分の推理が冴えわたる!単行本・文庫に未収録の一編「糸吉の恋」を掲載。


『初ものがたり』というタイトルのとおり、江戸の季節の食べものを織り込みながらの七つの連作物語である。
お勢殺し・白魚の目・鰹千両・太郎柿次郎柿・凍る月・遺恨の桜・糸吉の恋。
食べものの描写の見事さと江戸の風物、江戸言葉などが相まって 下町の住人になった心地である。
岡っ引の回向院の茂七親分と手下である権三や糸吉との想いのやり取りに心あたたまり、正体不明の稲荷寿司屋台の親父の料理の手つきやピリリと効いたひと言がスパイスになっている。

落花流水*山本文緒

  • 2006/06/17(土) 17:31:10

☆☆☆・・

落花流水 落花流水
山本 文緒 (1999/10)
集英社

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愛に翻弄されて、救済される――
危うい家族関係の中に描く人間の愛憎。
  ――帯より


マリこと手毬は7歳のとき、それまでお姉ちゃんと呼んでいた24歳の人が実は母親で、お父さん・お母さんと呼んでいた人たちがほんとうは祖父母だと知らされる。祖父母を父母と信じて暮らしていたころ、隣家に住んでいた日本人の父とアメリカ人の母を持つ5歳年上の青い目の男の子・マーティルととても仲良しだった。
そんな幸せな思い出に別れを告げて実の母と暮らすようになった手毬は 母を反面教師のようにして成長したはずだったのだが・・・・・。

手毬の母・律子の人生、そしてそれを憎んだ手毬の人生、そして更にその娘たちの人生。
どの人生も愛に恵まれず、しかも愛には抗い難く、なんと哀しい人生なのだろう。どうして繰返されなければならないのだろう。
落花流水。
花ひとつ、流れもひとつならどれほど幸せなことだろうか。

君を送る*赤川次郎

  • 2006/06/16(金) 17:02:47

☆☆☆・・

君を送る 君を送る
赤川 次郎 (1997/05)
新潮社

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石塚深雪、23歳。OL生活も四年目を迎えた彼女の心の支えは、営業部長の矢沢晃二。新人の頃、ミスをした深雪を救ってくれたことがあったのだ。その矢沢がワンマン社長と対立して、突然辞職に追い込まれた。裏には何か事情があるようなのだが・・・・・。自分の立場を気にして動こうとしない男たちに愛想をつかした深雪は、一人で送別会を企画するが、事態は意外な方向へ進展して・・・・・。  ――文庫裏表紙より


ちえこあさんのお薦めを読んで、ほとんど「読んだ」ということしか覚えていなかったので 久々に再読。
赤川作品は、いつ読んでも印象がそれほど変わらない気がする。どんな物語でも。それだけ作品が――筋がということではなく――完結しているということなのかもしれない。
そして、赤川作品のもうひとつの特徴は、どろどろした人間の裏側とかだらしのなさとか汚らしい部分も結構かかれているにもかかわらず、あと味に厭味がないということだろう。悪意を持った登場人物もいないわけではないのだが、読後、やっぱり人間って好いな、と思わせてくれるのである。

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ルート350(サンゴーマル)*古川日出男

  • 2006/06/16(金) 12:31:25

☆☆☆・・

ルート350 ルート350
古川 日出男 (2006/04/18)
講談社

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僕の前に路(ルート)はある!
小説の地平を切り拓く、著者初の衝撃短編集
小説の未来を、世界の未来をここに読め!
江國香織氏、豊由美氏絶賛!
「ほんとうに疾走している。何がかといえば、日本語が。そのおもしろさが、古川日出男の小説にはつねにある。物語というものの本質も。」江國香織氏(小説家)
「いっぱいの現実といっぱいの絵空事。何十、何百もの小説へと続く可能性を秘めた虚実のあわいを走るルート350。ただの短編集だと思ってたら大ケガするぜ。」豊由美氏(書評家)
「これは、僕としては初めてのストレートな短編集だ。」古川日出男


表題作のほか、お前のことは忘れていないよバッハ・カノン・ストーリーライター、ストーリーサンダー、ストーリーファイター・飲みものはいるかい・物語卵・一九九一年、埋立地がお台場になる前・メロウ。
たしかに タイトルといい文体といい 新しい何かを求めているのだろうということが窺われるが、正直に言わせてもらえば読みにくかった。
キーワードは虚構あるいはレプリカということなのだろうか。
『ストーリーライター、ストーリーサンダー、ストーリファイター』は虚構あるいはレプリカの捉えられ方に好感が持てた。

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台所のおと*幸田文

  • 2006/06/15(木) 17:35:57

☆☆☆・・

台所のおと 台所のおと
幸田 文 (1992/09)
講談社

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暮らしのなかのなにげない音に絡みあう 男と女の意気地。
生きる哀しみを捉える確かな視線と透徹した感性。
  ――帯より


昭和31年から45年の間にさまざまな文芸誌に掲載された十の短編をまとめた一冊である。
表題作のほか、濃紺・草履・雪もち・食欲・祝辞・呼ばれる・おきみやげ・ひとり暮らし・あとでの話。
日本人の暮らしが欧米化し、近代化する過程でぽろぽろと落としてきてしまった心意気や 忍耐、気配り 思いやり などというものをさりげなく思い出させてくれるような物語たちだった。
一見すると虐げられているかのように見える女性(妻)の、だからこその意気地を垣間見るようで、哀しくやりきれなくもなるが 清々しい思いもするのである。

桜さがし*柴田よしき

  • 2006/06/14(水) 18:26:45

☆☆☆・・

桜さがし 桜さがし
柴田 よしき (2003/03)
集英社

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中学時代から十年来の仲間である歌義・陽介・綾・まり恵の四人は、今は作家として京都郊外の山奥に独居する恩師・浅間寺のログハウスに招待され、その途中の山道で一組の男女と出会う。幸福そうに見えた二人だったが、一ヶ月後に心中死体で発見され・・・・・。
出会いと別れ、つらい恋、そして事件。四人に訪れる人生の岐路。古都の移ろいゆく季節の中、せつない青春群像を描く、傑作ミステリ連作集。
  ――文庫裏表紙より


日常に紛れ込む事件――ほとんどは四人に直接関係はないが――の謎解きがスパイスにはなっているが、ミステリというよりも青春物語といった様相である。
それぞれの恋心、夢、悩みなどが 中学卒業後十年経っても四人を結びつけているのだが、一風変わった恩師である浅間寺の存在と彼を思うあたたかな気持ちが四人の心の要となっているように思う。
どこにどんな風に飛んでいこうと、彼らはきっと浅間寺の住む京都に帰ってくるのだろう。

Y*佐藤正午

  • 2006/06/13(火) 17:29:11

☆☆☆・・

Y Y
佐藤 正午 (1998/10)
角川春樹事務所

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アルファベットのYのように人生は右と左へ分かれていった―。貸金庫に預けられていた、一枚のフロッピー・ディスク。その奇妙な“物語”を読むうちに、私は彼の「人生」に引き込まれていった。これは本当の話なのだろうか?“時間(とき)”を超える究極のラヴ・ストーリー。


“Y”のたとえば左上に現在いる自分。二股に分岐するその時点まで戻ることができれば もしかすると現在とは一筋違った右上の点にいることができるのではないだろうか、というのを具現化した物語である。
時間の経過が幾重にも折り重なっているので、ともすると いま読んでいるここは何回目の誰の時間なのか、と眩暈がする心地にさせられることもある。幾重にも折り重なった時間。そしてそのなかで少しずつ何かがずれて一回目の人生から捻れるように変わってゆく二回目の人生、人と人との関係。
「あのときに戻れたら」「あのとき違う選択をしていれば」というのは何かにつけて人が思うことだが、その時点まで戻ったからといって必ずしも思うような流れに乗れるわけではないことも思い知らされる。
北川健は、これから何度も少しずつ捻れた18年を繰返さなければならないのだろうか。そうだとするとあまりにも苦しい。

HEARTBEAT*小路幸也

  • 2006/06/12(月) 07:01:50

☆☆☆・・

HEARTBEAT HEARTBEAT
小路 幸也 (2005/04/25)
東京創元社

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優等生の委員長と不良少女の淡い恋。できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、すべてはそこから始まった。彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、十年後、あるものを渡そう―そして十年が過ぎ、約束の日がやってきた。しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る人物が現われる。彼女は三年前から行方がわからなくなっていた。居場所を捜し出そうと考えたとき、協力者として僕の脳裏にひとりの同級生が思い浮かぶ。かつて僕に、マッチブックの格好良い火の点け方を教えてくれた男が―約束を果たすため、ニューヨークの「暗闇」から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、そして最高の「相棒」。期待の俊英が放つ、約束と再会の物語。

  ――見返しより

委員長こと原之井修とヤオと巡矢(めぐりや)の物語と、ユーリこと五条辻裕理(ごじょうつじひろまさ)の物語が、はじめは並行して やがてひとつになる気配を見せて そしてついにひとつになって。
委員長とユーリ それぞれを取り囲む 彼らを心から愛する人たちの心の熱によるあたたかさとやるせなさに満ちている。
そしてラストになってやっと明かされるひとつのこと。なんとも切な過ぎる種明かしである。

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悪魔の羽根*乃南アサ

  • 2006/06/10(土) 17:25:33

☆☆☆・・

悪魔の羽根 悪魔の羽根
乃南 アサ (1997/01)
幻冬舎

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決して、天使なんかじゃない――。
桜、梅雨、台風、雪・・・・・、
豊かな四季が人の心を追いつめる。
哀しみ、憎しみ、恨み、後悔――
あらがえない自然の力に揺り動かされる、日々の営みの泣き笑いを描いた直木賞作家による最新連作サスペンス。

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フィリピンから日本にやってきて、日本の銀行員に嫁いで十年になるマイラは、新潟へ越して、初めて雪を体験する。灰色の空から来る日も来る日も落ちてくる悪魔の羽根は、快活だったマイラをやがて蝕んで、家族の歯車はゆっくりと狂っていく・・・・・。
表題作「悪魔の羽根」をはじめ、「はなの便り」「はびこる思い出」「ハイビスカスの森」他全七作品を収録。
  ――帯より


表題作はもちろん、どの物語も日常の泣き笑いである故に切なくやるせなくさせられる。
いちばんはじめの物語「はなの便り」が大どんでん返し(!)で愉しんだ。

終末のフール*伊坂幸太郎

  • 2006/06/09(金) 18:43:48

☆☆☆☆・

終末のフール 終末のフール
伊坂 幸太郎 (2006/03)
集英社

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あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。
2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか? 傑作連作短編集。


8年後に地球に小惑星が衝突し、地球は滅びると発表されてから5年経ったいまの8つの物語である。
表題作のほか、太陽のシール・籠城のビール・冬眠のガール・鋼鉄のウール・天体のヨール・演劇のオール・深海のポール。
発表された直後の恐慌状態のなか多くの人々が救いを求めて移動し、自ら死を選び、暴徒に殺された。しかしそれから5年経ち、世の中は 実際の終末を目前にして再び起こるだろうパニックまでの束の間の小康状態にあった。そんな折のヒルズタウンとその周辺の人々の物語なのである。
印象的だったのは、『鋼鉄のウール』のなかの鋼のキックボクサー・苗場が 過去の週刊誌の取材記事の中でいったこんな言葉だった。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」


このあと、ほんとうに小惑星が地球に衝突し、地球が滅びたかどうかはわからない。だが、この物語に出てきた人々はきっとその最後の瞬間まで誰かと一緒に生きていたことだろう。

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ナラタージュ*島本理生

  • 2006/06/08(木) 17:14:12

☆☆☆☆・

ナラタージュ ナラタージュ
島本 理生 (2005/02/28)
角川書店

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壊れるまでに張りつめた気持ち。そらすこともできない二十歳の恋
大学二年の春、片思いし続けていた葉山先生から電話がかかってくる。泉はときめくと同時に、卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密を思い出す。今、最も注目を集めている野間文芸新人賞作家・初の書き下ろし長編。


思わず雰囲気に浸りたくなってしまう一冊である。
細かい情景描写がとても丁寧で、たとえば シャツに寄った皺とか スカートが揺れる感じなどが手を伸ばせば触れられる気がするほど近く思われて、何度も登場人物の隣にふっと惹きこまれそうになる。
とても切なく涙のあたたかさにあふれた物語で読後感はとても好い。
だが、冷静に思えば 葉山先生はいかがなものだろう。彼のとった態度は 大人として 愛し愛される者として越えてはいけない一線を踏み越えてしまったのではないだろうか。彼を恋する泉とは自ずから立場は違うはずである。彼の妻の立場になってみても、これからやり直そうというときに影を落とすことになるのではないだろうか。
泉がかけがえのない幸せを見つけられることを切に願う。

愛がなんだ*角田光代

  • 2006/06/06(火) 07:29:20

☆☆☆・・

愛がなんだ 愛がなんだ
角田 光代 (2006/02)
角川書店

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「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ」――OLのテルコはマモちゃんに出会って恋に落ちた。彼から電話があれば仕事中でも携帯で長話、食事に誘われればさっさと退社。すべてがマモちゃん最優先で、会社もクビになる寸前。だが、彼はテルコのことが好きじゃないのだ。テルコの片思いは更にエスカレートしていき・・・・・。
直木賞作家が濃密な筆致で綴る、<全力疾走>片思い小説!
  ――文庫裏表紙より


テルコのことを「ばかだなぁ」と言ってしまうのは簡単である。実際呆れるほど彼女の優先順位はマモちゃん第一、あとはみんなどうでもいいこと、なのだから。でもそう言い放ってしまえない何かがテルコの恋路を追いかけさせるのである。
恋の本来の形をぎゅぎゅっと濃縮するとテルコになるような気がする。そして片思いがその濃縮度がいちばん濃いのである。愚か者ではないテルコを愚か者にしてしまう恋、しかも相手は客観的に見てたいしたことのない男。それこそが恋なのだ。
テルコ以外の女性たち――葉子やすみれさん――もそれぞれ分類上の典型っぽくて、極端ではあるが絶妙な配役だと思う。

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ガール*奥田英朗

  • 2006/06/05(月) 17:41:36

☆☆☆☆・

ガール ガール
奥田 英朗 (2006/01/21)
講談社

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さ、いっちょ真面目に働きますか。
キュートで強い、肚の据わったキャリアガールたちの働きっぷりをご覧あれ。

30代。OL。文句ある?

こんなお心あたりのある方に、よく効きます。
*職場でナメられてる、と感じた *親に結婚を急かされた
*若い後輩の肌つやに見とれた *仕事で思わずたんかをきった
*ひとめぼれをした *子どもの寝顔を見て、頑張ろうと思った

きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。
既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても。
  ――帯より


表題作のほか、ヒロくん・マンション・ワーキング・マザー・ひと回り。

奥田さんは女性なのか?と思わされるくらい女の人たちが女の人たちらしく活き活きとしている。
どの物語のラストにもある種突き抜けた明日への希望の光のようなものがあるのもいい。さまざまな女の人の年齢や立場やその他諸々を丸ごと肯定してもらったような心地になる。

いくつになろうが女性自身がそう思えば女性はガールなのだ。たとえガーリッシュな装いが似合わない歳になろうとも。

ノグチユミコさんの装画の女の人の目線がたまらない。

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カタブツ*沢村凛

  • 2006/06/04(日) 21:25:59

☆☆☆・・

カタブツ カタブツ
沢村 凛 (2004/07)
講談社

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気まじめに生きる男女ゆえの殺人、不倫、自殺…。世界に例のない「地味でまじめな人たち」にスポットライトを当てた短編集。誠実度100%人間たちのミステリー。


バクのみた夢・袋のカンガルー・駅で待つ人・とっさの場合・マリッジブルー・マリングレー・無言電話の向こう側 の6つのカタブツたちの物語。
地味でまじめな人たちの、と謳うのともカタブツの、と謳うのともちょっと違うような気はしなくもないが、まあ 表舞台に立って目立つことのないだろう人たちの物語なのだと思う。
カタブツ、と言い切ってしまうにはどの登場人物もいささか筋金がやわな気がする。・・・が、正真正銘筋金入りのカタブツは物語になどしようがないのだろう。
いちばん好きだったのは『無言電話の向こう側』。
樽見の 自身で考えたことに対するこだわりと、須磨の樽見にたいする熱が心地好かった。

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まほろ市の殺人 冬*有栖川有栖

  • 2006/06/04(日) 13:27:20

☆☆☆・・

まほろ市の殺人 冬―蜃気楼に手を振る まほろ市の殺人 冬―蜃気楼に手を振る
有栖川 有栖 (2002/06)
祥伝社

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蜃気楼に手を振る

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「真幌はどうかしている」冬になると、真幌の海に蜃気楼が現われる。満彦は五歳の頃、美しかった母に連れられて初めて兄弟たちとそれを見た。蜃気楼に手を振ったら幻の町に連れて行かれる。だから手を振ってはいけない、と母に言われた。直後、こっそり手を振った長兄が事故死し、二十五年後のいま、三千万円という金が残された兄弟の運命を翻弄する!
  ――文庫裏表紙より


倉知淳さんの「春」、我孫子武丸さんの「夏」麻耶雄嵩さんの「秋」に続く「冬」である。
やはり真幌市はどうかしているのだ。有栖川有栖氏は作中で満彦にそう言わせているのである。
クリスマスの頃決まって現われる――しかも理由は判らないが見せる景色がいつも違う――蜃気楼と、「蜃気楼に向かって手を振ると取り込まれる」というなにやら秘密めいた昔からの言い伝えとが絡み合い不思議な雰囲気を作り上げている。起こる事件が至って現実的であるのが対照的なのだが、解決編はまた蜃気楼のようだともいえるだろう。

「幻想都市の四季」という企画に沿って4人の作家によって書き下ろされた物語たちだったのだが、真幌市や近隣市の地名などは誰が考えたのだろう。

まほろ市の殺人 秋*麻耶雄嵩

  • 2006/06/04(日) 09:00:17

☆☆☆・・

まほろ市の殺人 秋―闇雲A子と憂鬱刑事 まほろ市の殺人 秋―闇雲A子と憂鬱刑事
麻耶 雄嵩 (2002/06)
祥伝社

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闇雲(やみくも)A子と憂鬱(ゆううつ)刑事

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「早く乗せて!」非番の刑事天城憂の車に、女性が乗り込んできた。真幌市在住の有名なミステリー作家闇雲A子だった。この春から十一件も連続して殺人事件が発生している。その「真幌キラー」をA子は追っていたのだ。死体の耳が焼かれ、傍には必ず何かが置かれている。犬のぬいぐるみ、闘牛の置物、角材・・・・・。真幌市を恐怖のどん底に陥れる殺人鬼の正体とは?
  ――文庫裏表紙より


倉知淳さんの「春」、我孫子武丸さんの「夏」に続く「秋」である。
「夏」の項で、真幌市の規模が意外と大きいのでこれだけの事件が起きても不思議はないか、というようなことを書いたが、やはり事件は起こりすぎである。今回の連続殺人――しかも被害者は十人を超えている――の合い間(?)に春や夏にも殺人事件が起こっているのである。

しかも今回の犯人は!!

真幌市恐るべし!

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