見えない誰かと*瀬尾まいこ

  • 2007/01/31(水) 17:20:02

☆☆☆・・

見えない誰かと 見えない誰かと
瀬尾 まいこ (2006/12)
祥伝社

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「以前の私は人見知りが激しく、他人と打ち解(と)けるのに とても時間がかかった。社会に出てからも、わざわざ親しくもない人と一緒に何かするくらいなら、一人でいたいというつまらない人間だった。でも、……」
誰かとつながる。それは幸せなことだ……
待望の初エッセイ!
「はじまりやきっかけはめちゃくちゃであっても、いくつかの時間を一緒に過ごすと、何らかの気持ちが芽生(めば)えるんだなあって思う。(中略)気持ちが形を変えていったんだって思う。いつもいい方向に動くとは限らないけど、接した分、やっぱり何かは変わっていく」
「私のそのときの毎日を 楽しくしてくれている人は、確実にいる」


タイトルは『見えない誰かと』だが、著者と実際に関わりをもった「見える」人たちとのことが書かれているエッセイ。
どれほど教師になりたかったか、そして教師になれたいま どれほど愉しんで毎日を送っているか、が滲み出すように伝わってくる。生きた人間と関わるのだから、いいことばかりではなく、うんざりすることもたくさんあるだろうことは、さらりと書かれた文章の端々からもうかがえるのだが、それでもなお 生徒たちとともに毎日を過ごすことを愉しんでいる様子がわかって頼もしくさえ思える。
そして、マイナスで始められることがあっても、必ず最後はプラスで終わっているところに、著者の素晴らしさがうかがえる。
『図書館の神様』の垣内君にはモデルがいて、実物の方がずっと素敵!というのにも唸らされた。お会いしてみたい。

「見える」人たちとの素晴らしい出会いとつながりは、「見えない誰か」とも どこかで何らかの形でつながっていることの素晴らしさを思わせてもくれる。

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東京公園*小路幸也

  • 2007/01/30(火) 18:47:20

☆☆☆☆・

東京公園 東京公園
小路 幸也 (2006/10/28)
新潮社

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「幼い娘と公園に出かける妻を尾行して、写真を撮ってほしい」―くつろぐ親子の写真を撮ることを趣味にしている大学生の圭司は、ある日偶然出会った男から奇妙な頼み事をされる。バイト感覚で引き受けた圭司だが、いつのまにかファインダーを通して、話したこともない美しい被写体に恋をしている自分に気づく…。
すれ違ったり、ぶつかったり、絡まったりしながらも暖かい光を浴びて芽吹く、柔らかな恋の物語。


大学生の圭司はカメラマン(フォトグラファー?)だった母を幼いころに亡くした。知らず知らずのうちに母の撮った写真に影響を受けて、圭司はカメラマンになりたいという想いで 公園で憩う家族の写真を撮りつづけていた。
そんなある日、公園で写真を撮った母娘の夫から 妻のあとをつけて公園でなにをしているのか写真に撮ってほしいと頼まれる。
ファインダーを通してその妻・百合香をみつめつづけた圭司は次第に彼女にほのかな想いを抱きはじめ...。
登場人物は多くないのだが、ひとりひとりがそれぞれ大切な役割を果たすべく丁寧に描かれている。のどかに見える公園の風景のなかでも、人は悩み 渇きを癒してくれるなにかを求めているのかもしれない。
上記紹介文には「恋の物語」とあるが、恋ばかりではなく、人と人とのあたたかな交わりの物語と言えるような気がする。

圭司と一緒に暮らしていて、いろんなことに手を出しているヒロが

「でもどれもまだ途中なんだよな」


と言い、圭司が

その言葉を僕は気に入ってる。
まだ、僕たちは途中にいる。
それは常に歩いていないと、どこかへ向かっていかないと使えない表現だ。


と考える場面が、なにげないのだが印象的だった。
恋も友情も、そして生きることも、いつも途中で、それは 少しでも前へ進もうと常に歩いている証なのだと腑に落ちる思いがした。

あたたかくやさしい気持ちになれる一冊だった。

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決断――警察小説競作

  • 2007/01/29(月) 17:35:33

☆☆☆・・

決断―警察小説競作 決断―警察小説競作
新潮社 (2006/01)
新潮社

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偽ドル札を掴まされた男と強面刑事の騙し合い(「昔なじみ」逢坂剛)。
新任の駐在が嗅ぎつけた危険な匂い(「逸脱」佐々木譲)。
秘密を背負った警官が知る寂しい犯罪者(「大根の花」柴田よしき)。
イカれた奴らとパトカーの追跡劇(「闇を駆け抜けろ」戸梶圭太)。
自白の裏側に迫る孤独な刑事(「ストックホルムの埋み火」貫井徳郎)。
誤認逮捕の悪夢に苛まれるベテラン刑事(「暗箱」横山秀夫)。
組織と個人の間で揺れながら真実を追い続ける警察官の凄みを描く全六篇。


ドタバタハチャメチャで、あり得ない警察小説もあったが、全般に、ガチガチの警察物ではなく、警察官自身にスポットが当てられた小説が多かった。
横山氏はもちろんさすが横山氏で、警察機構と自分と部下の複雑な悩ましさまできっちり描いているし、貫井氏は、読者の思い込みを巧みに誘っている。柴田氏もシリーズ物の登場人物を上手く生かして巧みである。大事件ではない下町の小さな謎が興味深い。

親切なおばけ*若竹七海・杉田比呂美

  • 2007/01/28(日) 17:37:09

☆☆☆☆・

親切なおばけ 親切なおばけ
若竹 七海 (2006/12/14)
光文社

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近所の人から「おばけやしき」と呼ばれるほど、古いお家に住んでいるノノコちゃん。それが理由で、いつもひとりぼっちです。ノノコちゃんは、大好きだったおじいさんのいうことを聞いて、「親切なおばけ」になれるかな?


若竹七海・作 杉田比呂美・絵
絵本です。
大人にはたぶん理解できず、たちの悪い悪戯にしかみえないあれこれを、ノノコちゃんは精一杯自分の頭で考えてしているのだ。
おじいさんが亡くなる間際にノノコに言った「ひとのためにがんばる、やさしくてとても親切なおばけになってみたらどうだ」というひと言に応えようとして。
子どもはどんなに幼くても、自分にできる精一杯で自分の頭で考えているのだ。自分の頭で考えることをやめてしまった大人はその想いを壊してはいけない、と自戒をこめてそう思った。

求愛*柴田よしき

  • 2007/01/28(日) 16:34:35

☆☆☆・・

求愛 求愛
柴田 よしき (2006/09)
徳間書店

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フリーランスの翻訳者・弘美は、親友の死の真相をつきとめたことをきっかけに、探偵事務所の調査員となる。自殺願望の女子中学生、浮気疑惑のエリート医師夫人、砂場に生ゴミを埋める主婦…、ささやかな毎日を懸命に生きる女たちと関わって、弘美自身が掴んだ人生の真実とは…!?自殺した親友から届いた、一枚の絵葉書。雨で滲んだ文字が語る、予期せぬ悲劇…。異才が贈る、感動のサスペンス・ロマン。


表題作を含む8つの連作短編集。
親友の自殺に違和感を覚え、結果的に殺人事件の真相を暴いてしまったことで、弘美は胸に重いものを抱えることになる。そのわだかまりはどうしたら消すことができるのだろう。思い惑いながらも、親友の死の間接的な引き金になったものをこのまま許してはおけないという気持ちで 探偵事務所の調査員となる。
弘美が、私立探偵の意義について常に釈然としない想いを抱き、それでも 見ず知らずだった人々の私生活に近づき追いかけ、その生活に関わっているのは、親友との否応ない別れを 自分のなかで消化したかったからなのかもしれない。そして、結果としてそのことは、弘美が弘美自身のための明日を生きる希望を取り戻すきっかけにもなったのだろう。

使命と魂のリミット*東野圭吾

  • 2007/01/27(土) 17:29:09

☆☆☆☆・

使命と魂のリミット 使命と魂のリミット
東野 圭吾 (2006/12/06)
新潮社

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心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起きるのか? 心の限界に挑む医学サスペンス。


舞台は病院、主人公は心臓血管外科で研修医を勤める 氷室夕紀。
夕紀は中学生のときに 大動脈瘤の手術で父を亡くした。そのときの執刀医・西園の下で、現在夕紀は研修医として働いている。秘かにある目的を持って...。
そしてその一方、看護師の真瀬望と合コンで知り合ってつき合うようになった直井穣治との様子が描かれる。穣治が病院のことをあれこれ知りたがるのにはなにか理由があるのか。
そんな折、病院の駐車場につながれていた犬の首輪に帝都医大病院への脅迫状がはさまれているのが見つかり、警察が捜査に乗り出す。
脅迫犯の本当の狙いはなんなのか。

いくつもの人生といくつもの疑惑が絡み合い、読み進めるほどに緊張感が高まるのだが、落ち着きどころはいささか安定感がありすぎるようにも思われる。東野作品だから期待度が高すぎるのだろう。
「使命」という言葉の重みを、どんな立場に立つ者も、ひとりひとりが胸に確かに持つことが如何に大切かということがずしんと伝わる一冊ではあった。
現在世の中にはびこる不祥事のほとんどは、「使命」をきちんと認識していれば起こりようがなかったのではないかと思われてならない。

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死神と雷鳴の暗号*本格ミステリ作家クラブ・編

  • 2007/01/26(金) 12:53:46

☆☆☆・・

死神と雷鳴の暗号―本格短編ベスト・セレクション 死神と雷鳴の暗号―本格短編ベスト・セレクション
本格ミステリ作家クラブ (2006/01)
講談社

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城館で名探偵が競演/落語を巡る怪事件/歌謡曲の見立て/胡乱な句作/残虐シーンに微笑む美女/ピアノ練習の怪/エロチックすぎる怪物/路地の死者の伝言。屹立する謎に、非情の論理が唸りをあげる。


本格短編ベスト・セレクション

序文 
  本格ミステリ作家クラブ会長 北村薫

小説 
  『フレンチ警部と雷鳴の城』 芦辺拓
  『やさしい死神』 大倉崇裕
  『「別れても好きな人」見立て殺人』 鯨統一郎
  『鳥雲に』 倉坂鬼一郎
  『闇ニ笑フ』 倉知淳
  『英雄と皇帝』 菅浩江
  『通りすがりの改造人間』 西澤保彦
  『麺とスープと殺人と』 山田正紀

マンガ
  『消えた裁縫道具(ソーイング)』 河内実加

評論
  『京極作品は暗号である』 波多野健

解説
  新保博久


正直、趣向がもうひとつよく判らなかった。本格の遊び心、と言うのだろうか。
どの作品もミステリ部分は本格と言えるのだろうが、それ以外のところは好みが分かれるところかもしれない。
そんななかにあって、倉知淳さんの『闇ニ笑フ』はとてもよかった。最後の最後の一文で、やっと何もかもが腑に落ちるところなど、やってくれるじゃないの、と思わせてくれる。

ポプラの秋*湯本香樹実

  • 2007/01/24(水) 17:31:42

☆☆☆☆・

ポプラの秋 ポプラの秋
湯本 香樹実 (1997/06)
新潮社

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夫を失ったばかりで虚ろな母と、もうじき7歳の私。二人は夏の昼下がり、ポプラの木に招き寄せられるように、あるアパートに引っ越した。不気味で近寄り難い大家のおばあさんは、ふと私に奇妙な話を持ちかけた―。
18年後の秋、お葬式に向かう私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに甦る。世界で高い評価を得た『夏の庭』の著者が贈る文庫書下ろし。


「生」の象徴のようなポプラの木の元で営まれる、傷ついた心を抱え それでも日常を過ごさなければならない人たちの物語。
死によって、或いは離婚によって、近しい人と別れなければならなかった人たちの それぞれの胸に開いた底なしの穴。しかし、いまここにいる自分は、なんとかその穴を塞いで歩き続けなければならない。生きている限り。穴の塞ぎ方は人の数だけあるのだろうが、誰にも必要なのは人の心の思いやりあるあたたかさなのかもしれない。悪者になったポパイのような風貌のポプラ荘のおばあさんは、気づかないうちに底なし穴にあたたかな気持ちを注いでくれていたのだろう。
失った人を、失った人とまだ失われていない自分とを、どう位置づけるかはとても難しく、それができたときに初めて 人は「生きている自分」として歩き出せるのかもしれない。
涙が流れ止まない一冊だった。

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ペルシャ猫の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/23(火) 17:02:15

☆☆☆☆・

ペルシャ猫の謎 ペルシャ猫の謎
有栖川 有栖 (1999/05)
講談社

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チェシャ猫の笑いも吹きとぶ謎・謎・謎
ミステリ史上屈指の禁じ手!?が炸裂する表題作、「ペルシャ猫の謎」、名バイプレイヤー・森下刑事が主役となって名推理を披露する「赤い帽子」他、傑作ミステリ6編&ボーナス・トラックとして「猫と雨と助教授と」を収録。臨床犯罪学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の名コンビは、さらに華麗に加速する!


国名シリーズ第5弾。
上記に紹介されているほか、「切り裂きジャックを待ちながら」「わらう月」「暗号を撒く男」「悲劇的」

今回の一冊は、いままでになくやさしさの滲み出すようなものが織り込まれていて好感が持てた。アルマーニのスーツで殺人事件の捜査をする甘いマスクの捜査一課一年生刑事・森下が主役になっていたり、火村先生の人となりを表わすようなエピソードが盛り込まれていたり、推理作家・有栖川有栖の大人の愛読者も初めて登場したり。
そして「わらう月」のように、しっかり本格ミステリとしての謎解きもたのしめる。いろんな風味を愉しめる一冊だった。

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英国庭園の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/21(日) 16:51:05

☆☆☆☆・

英国庭園の謎 英国庭園の謎
有栖川 有栖 (1997/06)
講談社

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資産家の人知れぬ”楽しみ”が、取り返しのつかない悲劇へとつながる表題作。
日本中に大パニックを起こそうとする”怪物”「ジャバウォッキー」。
完璧に偽造された遺書の、アッと驚く唯一の瑕疵(かし)を見事に描いた「完璧な遺書」―─。
おなじみ有栖川・火村の絶妙コンビが魅せる全部アタリの絶品ミステリ全6編を収録。


国名シリーズ第4弾。
上記に紹介されているほか、「雨天決行」「竜胆紅一の疑惑」「三つの日付」
どの作品も、火村の謎解きのきっかけになる点が興味深かった。
そして、事件に関わることになるきっかけにもヴァリエーションが出てきて興味を惹かれる。大阪・京都・兵庫の警察からの依頼がもちろん一番多いのだが、旅先で出くわしたり、警察以外の知り合いから頼まれたりすることもあり、有栖が頼まれた事件に火村を呼び出すこともあったりして、今度はどんな風にして二人が借り出されるのだろうか、というのもたのしみになる。
火村が謎に肉薄する際に唇に指をやる癖も、もはやトレードマーク化しているし、あと解き明かしてもらいたいのは、火村自身が犯罪社会学に手を染めるきっかけはなんだったのか、ということである。そのことが火村の口から明らかにされるときはくるのだろうか。

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ブラジル蝶の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/20(土) 08:57:32

☆☆☆・・

ブラジル蝶の謎 ブラジル蝶の謎
有栖川 有栖 (1996/05)
講談社

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美しい異国の蝶々に囲まれて殺害された男の意外な過去が、真犯人解明への重要な鍵を握る表題作『ブラジル蝶の謎』。密室から突如、霧のごとく消え去った若いカップルの謎に迫る『蝶々がはばたく』―。おなじみ有栖川・火村コンビの名推理が冴え渡る傑作ミステリ全6編を収録。読者待望の「国名シリーズ」第3弾。


国名シリーズ第3弾。
表題作のほか、「妄想日記」「彼女か彼か」「鍵」「人食いの滝」「蝶がはばたく」
当然ながら、大阪・京都・兵庫、という関西圏での活躍が多い 火村と有栖だが、旅先やら講演先やらでの事件の捜査にもお呼びがかかる(首を突っ込む?)ことが増えてきて、次第に全国的な知名度になりそうな雰囲気である。嬉しいような寂しいような複雑な気分でもある。有名人にはなってほしくはないような__。
事件の状況や動機はさまざまなのだが、火村がどこに目をつけて謎解きの糸口を見出すのかを探りながら読むのはやはり愉しい。
今回は、珍しく殺人事件ではない謎解き――しかも真相は想像の中にしかない――もあり、ロマンティックとも言える不思議な魅力がある。

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冬至祭*清水義範

  • 2007/01/18(木) 07:36:33

☆☆☆☆・

冬至祭 冬至祭
清水 義範 (2006/11)
筑摩書房

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戸田直人はKSテレビの報道局プロデューサーである。仕事は順調だ。気の休まる暇もないが毎日充実している。家庭は妻今日子に任せてあるので安心だ。ところが、息子拓人が学校へ行くことが出来なくなっていた。不登校、昼夜逆転の生活、リストカット。責任を感じた今日子も様子が変になっていく。家庭が壊れはじめる―。
父と息子、そして家族の再生の物語。


仕事人間の夫は毎日のように深夜に帰宅し、家族と関わることはほとんどない。
有名大学を出て有能な編集者として働いていた妻は、出産によって仕事を辞めざるを得ず、息子に希望を託す。
現代日本には珍しくもなんともない よくある家庭の状態と言えるかもしれない。だが・・・・・。
表面を取り繕ってなんとか保っていた家族という形が、ある日小さな綻びを見せ、堰を切るように崩れ始める。それでも初めは、見なかったことに、気づかなかったことにしようとする。自分に責任があることを認めたくない、これまで自分がしてきたことが間違いだと認めさせられるのが怖い。そんな親の身勝手さがますます子どもを追い詰めていく。

夫であり父である戸田の視点で書かれた物語なので、戸田が格好良すぎる感はあり、妻・今日子の胸の内の叫びがまだまだ充分に表わされてはいないようにも思えるが、それでもなお、子を持つ親として惹きつけられ、重く受け留めざるを得ない物語だった。

テレビマンの戸田が、深夜の渋谷をうろつく中学生の女の子たちの生態の取材に立ち会ったときに胸に抱いた思いが印象的であり 衝撃的だった。

 なぜ家に帰らないのか。それは、帰りたい家ではないからだ。この子たちの親は、この子たちを愛してはいない。親子の間に愛がないという意味で、その家は壊れているのだ。
 あんたなんかもう知らない、というふうにこの子たちは見捨てられているのだ。どうしてそんな親のところへ帰りたいだろう。
だから一晩中渋谷にいなければならないのだとしたら、そんな不憫な話があるだろうか。
 美友が持っている携帯電話が、悲しいものに見えてきた。それを親に持たされているのだ。
 それを持っていれば、どこにいても親とは連絡がつくんだから、という口実のもとに、この子たちは持たされ、そして捨てられている。

それからはスープのことばかり考えて暮らした*吉田篤弘

  • 2007/01/16(火) 17:10:50

☆☆☆☆・

それからはスープのことばかり考えて暮らした それからはスープのことばかり考えて暮らした
吉田 篤弘 (2006/08)
暮しの手帖社

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どんなときでも同じようにおいしかった。だから、何よりレシピに忠実につくることが大切なんです…。ある町に越してきた映画好きのオーリィ君と、彼にかかわる人たちとの日々の暮らしを描く短編集。


短編集 とは言っても、全体でひとつの物語になっている。
大好きな映画館の隣の路面電車の走る町に引っ越してきた 失業中のオーリィくんこと大里青年と、彼を取り巻く人々、屋根裏のマダムこと 大家の大屋さん、サンドイッチ屋さん「3(トロワ)」の主人の安藤(アン・ドゥ)さんと息子のリツ、そして オーリィが映画館で会う緑色の帽子のご婦人との親身で、ほろりと物悲しく さりげなくあたたかな物語。
だれもが何かあるいは誰かを失くし、欠けた場所を埋める何かを探すように日常を暮らしている。だが、失くなったものは 目の前からは消えたが、心の中での大切さは変わることがなく、それぞれがそれぞれのやりかたで守り続けている。それと同時に、これからのために新しいものを生み出すことにも心を砕いている。
疲れきったときに差し出される一杯の温かなスープは、心にも躰にも きっととびきりやさしいだろう。

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乱鴉の島*有栖川有栖

  • 2007/01/16(火) 13:03:40

☆☆☆・・

乱鴉の島 乱鴉の島
有栖川 有栖 (2006/06/21)
新潮社

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友人の作家・有栖川有栖と休養に出かけた臨床犯罪学者の火村英生は、手違いから目的地とは違う島に連れて来られてしまう。通称・烏島と呼ばれるそこは、その名の通り、数多の烏が乱舞する絶海の孤島だった。俗世との接触を絶って隠遁する作家。謎のIT長者をはじめ、次々と集まり来る人々。奇怪な殺人事件。精緻なロジックの導き出す、エレガントかつアクロバティックな結末。ミステリの醍醐味と喜びを詰め込んだ、最新長編。


火村&有栖コンビの最新刊。
「孤島物」と聞いて思い浮かぶような おどろおどろしい物語ではない。大烏が群れ飛んでいるのが不気味さを誘うが、それとても、火村先生の謎解きの助けとなってもくれるのだから まあ仕方がないか。
いまをときめくカリスマIT社長の闖入とか、クローン人間相談会とか、いささか盛り込まれすぎな感じがしなくはなかったが、そういった要素も見事に伏線に仕立て上げてしまうところがさすが著者、とも言える。
有栖との雑談で話題に上った「部外者以外立ち入り禁止」という間抜けな看板が火村の謎解きにきっかけを与えるのも絶妙で嬉しくなる。

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ハヅキさんのこと*川上弘美

  • 2007/01/14(日) 17:08:59

☆☆☆☆・

ハヅキさんのこと ハヅキさんのこと
川上 弘美 (2006/09/30)
講談社

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ささいな男女の機微、虚と実のあわいを描く掌篇小説集。
そこには、ささやかな日常がある。そして、男と女の心のふれあいやすれ違いがある。魅力あふれる、川上ワールドが、ふっと心をかすめる・・・。


エッセイを、という約束で書き始めたのだが、三枚以上のエッセイは苦手で、エッセイのような小説にしてしまえ、と半ばやけくそのように書かれたらしい(あとがきより)。
「やけくそ」部分は措くとして、まさに紹介文のとおり 虚と実のあわいが描かれた小さな物語たちである。
これは川上さんの欠片だ、と思いながら、気がつくといつのまにか自分にすり替わっていたりすることがあり、不思議な心地にさせられる。
実際に経験していないことでも、「あぁそんなことがあったような気がする」という懐かしいような哀しいような、掬った水が指の間からするするとこぼれて逃げてしまうような心もとないような感覚に陥るのである。その感じは、共感するというのとはまた違うのだ。すり替わられた というのか、憑かれた というのか、ふっとそこへ運ばれたような感じなのである。これだから川上読みはやめられない。

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スウェーデン館の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/13(土) 17:29:05

☆☆☆☆・

スウェーデン館の謎 スウェーデン館の謎
有栖川 有栖 (1995/05)
講談社

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ミステリ作家・有栖川有栖が取材で訪れた雪深い裏磐梯(うらばんだい)には、地元の人々からスウェーデン館と異名をとるログハウスがあった。彼は珍客として歓待されるが、深い悲しみを湛えた殺人事件に遭遇する――。
有栖と犯罪臨床学者・火村英生の絶妙コンビが、足跡のない殺人事件に挑戦! 大好評〈国名シリーズ〉の第2弾!


国名シリーズ第2弾。
有栖は、いままで一度も訪れたことのなかったペンションを取材するために 裏磐梯のペンション・サニーデイをひとり訪れる。ペンションの隣には、近隣ではスウェーデン館と呼ばれている 童話作家・乙川リュウの私邸があり、ペンションの主人の勧めで、有栖も話の種に見せてもらうことになった。しかし、館の住人や滞在中の人々に紹介され、愉しいひと時を過ごした翌朝、離れから滞在者の一人の他殺体が発見される。

事件の謎解きはもちろん興味深いのだが、物語に先駆けて置かれている「フラッシュ・バック」の効果もあってか、ただの謎解きではなく 人間心理ドラマとしても愉しめる。
また、火村を大切に思う有栖の心情や、厄介なことに巻き込まれている友人を思い 何を置いても駆けつける火村の気持ちにも暖かいものを感じさせられ、一見 息が合っていないようにも見えながら強くつながっている様が伺われてなぜか安心する。
大切なものを守るとはどういうことなのかを考えさせられる一冊でもある。

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ロシア紅茶の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/12(金) 07:23:04

☆☆☆・・

ロシア紅茶の謎 ロシア紅茶の謎
有栖川 有栖 (1994/08)
講談社

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エラリー・クイーンの〈国名シリーズ〉のひそみに倣(なら)った会心の第1作品集。
奇怪な暗号、消えた殺人犯人、ダイイングメッセージ。そして極めつきの「読者への挑戦」付き犯人探しなど、本格ミステリの醍醐味が味わえる粒ぞろいの6篇。犯罪臨床学者・火村英生と駆け出しミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビ!


国名シリーズ第1弾。
表題作のほか、「動物園の暗号」「屋根裏の散歩者」「赤い稲妻」「ルーンの導き」「八角形の罠」
まったく趣の違う六つの事件=謎。そして、いつもと変わらぬ火村と有栖の位置関係。そして唯一、火村と有栖を快く思わない 兵庫県警の部長刑事・野上が、回を進めても態度を軟化させないのが失笑を誘う。
個人的には「動物園の暗号」のパズルのような謎解きがいちばん好きだった。解かれたときに鮮やかに浮かび上がるイメージが印象的である。

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翳りゆく時間(とき)*浅田次郎 選

  • 2007/01/10(水) 18:43:58

☆☆☆・・

翳りゆく時間(とき) 翳りゆく時間(とき)
浅田 次郎 (2006/07)
新潮社

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未来のない愛に苦しむ女は夜明けに浄化される。
過去を精算するために、男は異国へ旅立つ。
姉の夫に恋する女はパラダイスを夢見る。
迷いを隠して、青年は旧友との再会に臨む。
伝説のマダムは秘密を抱いて孤独に逝く―。
秘めていた想いが高まって溢れ、やがてほの暗いメランコリーに昇華してゆくまでを、小説の名手七人が鮮やかに描く。甘苦い味わい、大人のための傑作アンソロジー。


「りんご追分」  江國香織
「煙草」  北方謙三
「みんなのグラス」  吉田修一
「スモーカー・エレジー」  阿刀田高
「マダムの喉仏」  浅田次郎
「天国の右の手」  山田詠美
「煙草」  三島由紀夫


目には見えないが確かにあるなにか、言葉にできないとしても確かに感じられた何かを 作風の異なる七人の作家がそれぞれに描いてみせてくれたようなアンソロジーである。
形や言葉にしてしまうと、その刹那まったくの別物になってしまう真実を 損なわずに目の当たりにさせられるような心地である。

ロマンス小説の七日間*三浦しをん

  • 2007/01/10(水) 13:23:37

☆☆☆・・

ロマンス小説の七日間 ロマンス小説の七日間
三浦 しをん (2003/11)
角川書店

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あかりは海外ロマンス小説の翻訳を生業とする、二十八歳の独身女性。ボーイフレンドの神名と半同棲中だ。中世騎士と女領主の恋物語を依頼され、歯も浮きまくる翻訳に奮闘しているところへ、会社を突然辞めた神名が帰宅する。不可解な彼の言動に困惑するあかりは、思わず自分のささくれ立つ気持ちを小説の主人公たちにぶつけてしまう。原作を離れ、どんどん創作されるストーリー。現実は小説に、小説は現実に、二つの物語は互いに影響を及ぼし、やがてとんでもない展開に!注目の作家、三浦しをんが書き下ろす新感覚恋愛小説。


「ひと粒で二度おいしい」感じである。中世ロマンス小説(ずんずん脱線中)と現代恋人模様(なんだかもやもや)を一度に愉しめるのだから。
とはいえ、まったく何のつながりもない別物二つが併記されているわけではない。現実の恋人模様がもやもやとしてくればくるほど、翻訳中であるはずの中世ロマンス小説は 原作の筋から離れ激しさを増してくるのである。その微妙なリンク加減が訳もなくおかしみを誘うのである。
現実でも中世でも、主役人の脇を固めるキャラに味がある。あかりの父親とか、フィリップとか。表紙絵の神名はカッコよすぎる気がするが。
そして、大盤振る舞いのあとがきがまたまた愉しい。

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モロッコ水晶の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/09(火) 12:58:43

☆☆☆☆・

モロッコ水晶の謎 モロッコ水晶の謎
有栖川 有栖 (2005/03/08)
講談社

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推理作家・有栖川有栖の眼前で起きた毒殺事件に、臨床犯罪学者・火村英生が超絶論理で挑む表題作ほか、クリスティの名作「ABC殺人事件」をモチーフに書かれた、連続挑戦予告殺人を追う「ABCキラー」、誘拐殺人の陰に潜む悲劇を描く「助教授の身代金」など、研ぎ澄まされた論理が光る有栖川本格全4編を収録。


国名シリーズ第8弾。
上記紹介作のほか、ほんの4ページあまりの「推理合戦」が収録されている。
どれも捻りの効いた仕掛けが愉しませてくれる。目をつけるべきはそこだったのか、と火村の謎解きを聞いて思わされるのはいつものことであり、その火村の謎解きの役に立っているのか ただの思いつきなのか定かではない有栖の合いの手も健在である。いつもと違うのは、表題作で有栖が殺人現場に居合わせたことである。起こったことの一部始終を目にしていたわけだが、それでもやはり火村に謎を解かれてしまうあたり、有栖の有栖らしいところで有栖ファンにとっては喜ばしい(?)。

スイス時計の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/07(日) 20:20:50

☆☆☆・・

スイス時計の謎 スイス時計の謎
有栖川 有栖 (2003/05)
講談社

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圧巻!!
誠実にして精妙なる「有栖川本格」!!

ダイイング・メッセージ、首なし死体、密室……!!

2年に一度ひらかれていた”同窓会(リユニオン)”当日、メンバーの一人が殺害され、被害者のしていた腕時計が消失!犯人の意図に臨床犯罪学者・火村英生(ひむらひでお)と推理作家・有栖川有栖が迫る表題作のほか、ダイイング・メッセージ、首なし死体、密室と、本格ミステリファンには堪えられない超絶品全 4編。有栖川有栖の真髄がここに!


国名シリーズ第7弾。
表題作のほか「あるYの悲劇」「女彫刻家の首」「シャイロックの密室」
表題作では、最重要容疑者が有栖の高校時代の同級生たちであることで、僅かばかりのノスタルジーといささかの緊張感が感じられもする。有栖が事件を知る直前に見た夢が あたかもそれを予言しているかのようでもある。火村の静かな推理は、黙しているときの脳の回転の速さを想わせ、有栖の思いつきは それをひとつにまとめるのに大いに役立っているのもいつもどおりであり、絶妙のコンビネーションと言ってもいいだろう。
そして、自分の仕事にマンネリを感じていた有栖にとっては、初志を思い出し 明日につなげるきっかけにもなっており、特別な事件になったのではないだろうか。

マレー鉄道の謎*有栖川有栖

  • 2007/01/05(金) 17:47:50

☆☆☆・・

マレー鉄道の謎 マレー鉄道の謎
有栖川 有栖 (2002/05)
講談社

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今だからこそ問う真正面の「本格」!

マレー半島を訪れた推理作家・有栖川有栖と臨床犯罪学者・火村英生を待ち受ける「目張り密室」殺人事件!外部へと通じるあらゆる隙間をテープで封印されたトレーラーハウス内の死体。この「完璧な密室」の謎を火村の推理は見事切り伏せられるのか?真正面から「本格」に挑んだ、これぞ有栖川本格の金字塔!


国名シリーズ第6弾である。
なぜだか国名シリーズにいままで手をつけていなかったのに、いきなり6冊目からである。(それ以前の作品は 近くの図書館になかったのだ。)
火村先生と有栖は、大学時代の友人大龍の招きもあって、彼が経営するゲストハウスに宿泊するためにマレーシアを訪れる。
マレー鉄道では、踏切内で故障したトラックに客車が衝突して脱線し、後から来た貨車が更に追突して多数の死傷者を出すという事故が起こったばかりだったが、火村と有栖の予定には何の影響もなく 無事に大龍の待つキャメロン・ハイランドに着くことができた。が、旧友と昔話に花を咲かせる間もなく 物騒な事件が起こったのだった。

マレーシアを発つのを遅らせることが叶わない事情が火村にあるため、巻き込まれた事件を解決するために自ずとタイムリミットができてしまったために、事件調べの様子が一層スリリングに感じられる。マレーシア英語と日本語との使い分けもまた妙である。「そうきたか」と手を打ちたくもある。
そして、謎がすべて解かれたあとも、真の意味での犯人はいったい誰なのだろう と、割り切れなさや虚しさや悔しさや安堵感というさまざまな感情が胸の仲で渦巻くのである。

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欲しい*永井するみ

  • 2007/01/03(水) 20:44:40

☆☆☆☆・

欲しい 欲しい
永井 するみ (2006/12)
集英社

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他人の不幸でかなえられる、私の願い。
人材派遣会社を経営する由希子。42歳、独身、愛人がありながらホストで寂しさを紛らわす日々。愛人の不慮の死に疑念を持ち、真相を探ろうとするが…。女性心理を鋭く描き出すミステリータッチの長編。


由希子の経営する人材派遣会社に登録している槙ありさは、由希子の愛人・久原が取締役をしているMIKASA商事で派遣社員として働いている。その職場へ、ありさの別れた夫が金の無心にやってきてトラブルになり、ありさは迷惑をかけることを良しとせず辞めると言い出すが、由希子は何とか続けるように説得し、久原にも相談する。
物静かで控えめで仕事も真面目にするありさは、どこか人を放っておけない気持ちにさせるものを持っている。そのせいか、彼女と関わった人たちはなんとかしてやりたいとあれこれ心を砕くのだったが、ありさ自身はどこか煮え切らないのだ。

由希子と久原、そして由希子と派遣ホストのテル、また ありさと別れた夫とのトラブル、という三本のラインが絡みあう物語として読み進んでいたのだが、あるところから何かもっと深い事情の匂いが漂いだす。そうなると物語は一度に混沌とし始め、何が真実か、誰が信じられるのかが途端に判らなくなる。いちばん冷たい心を笑顔の裏側に隠しているのは誰なのか。最後の最後まで心を許せないのである。

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モノレールねこ*加納朋子

  • 2007/01/02(火) 16:41:57

☆☆☆☆・

モノレールねこ モノレールねこ
加納 朋子 (2006/11)
文藝春秋

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時をこえて届くあの頃からの贈りもの。儚いけれど、揺るぎない―「家族」という絆。デブねこの赤い首輪にはさんだ手紙がつなぐ、ぼくとタカキの友情(「モノレールねこ」)。
夫を待つ時間に取り組んだ白いパズルの中に、犬の気配が(「パズルの中の犬」)。
家族をいっぺんに失った中学生の私と、ダメ叔父さんの二人暮らし(「マイ・フーリッシュ・アンクル」)。
私と偽装結婚したミノさんは、死んだ婚約者がそばにいると信じていた(「シンデレラのお城」)。
ロクデナシのクソオヤジに苦しめられてきた俺に、新しい家族ができた(「ポトスの樹」)。
会社で、学校で、悩みを抱えた家族の姿を見守るザリガニの俺(「バルタン最期の日」)。


上記に紹介されているほかに、「セイムタイム・ネクストイヤー」「ちょうちょう」

どれも、家族や近しい誰か(あるいは何か)を失う物語なのだが、失うところがおしまいではなく、そこからなにかがはじまる物語になっているので、悲しみよりも希望が、暗さよりも明るさが感じられる。
また、「ロクデナシ」が多く登場するが、どのロクデナシもいい味を出している。近くにいる者にとってはとんでもなく迷惑で、一刻も早く関わりを絶ちたく思うのだが、ロクデナシでなければ成せない役回りというのもあるのかもしれない と、こんな世知辛い世の中だからこそ思わされもする。
読後、しみじみと思うことの多い物語たちである。

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