ア・ソング・フォー・ユー*柴田よしき

  • 2008/02/27(水) 18:37:17

ア・ソング・フォー・ユーア・ソング・フォー・ユー
(2007/09/19)
柴田よしき

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新宿二丁目の無認可保育園「にこにこ園」を切り盛りする園長で、私立探偵のハナちゃんこと、花咲慎一郎のもとには、いつも一筋縄ではゆかないさまざまな事件が舞い込む。呪いの藁人形をもった高校生、ビルとビルの隙間に捨てられた赤ん坊、逃げたインコを取り戻したいOL、納骨前に消えた骨壷など、謎めいていて、とうてい金になりそうにない厄介な案件が、あれこれと持ち込まれる度、ハナちゃんはひたむきに解決へ向け、走り回る。解きほぐされてくる真実の底に、哀しい人間の生きざまが透けてみえてくるごとに、心優しい探偵は、悩み苦しむ。ときに震え、ときに嗚咽し、ときにむかつくハナちゃんの信念とは…子供の幸せを願ってやまない園長探偵が奮闘する中編4本立て連作ミステリーの傑作。


「ブルー・ライト・ヨコハマ」 「アカシアの雨」 「プレイバックPART3」 「骨まで愛して」

いつも危ない筋の仕事ばかり持ち込まれるハナちゃん/花咲慎一郎だが、今回は少しばかりほのぼの系の その筋と関係のない仕事の話がつづくな・・・、と思っていたら、やはりそのままでは終わらず、いつも以上に危ない状況に追い込まれることになっていた。ハナちゃんの体力がいつまで保つか心底心配になる。にこにこ園の子どもたちや保育士たちにとって、なくてはならないハナちゃんなのだから・・・。
物語の面白さはもちろんだが、今作はオールキャストといった感じで、そちらも愉しめる。

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作家の手紙

  • 2008/02/24(日) 14:03:32

作家の手紙作家の手紙
(2007/03)
有栖川 有栖

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巧みな手紙の書き方は、文章のプロに学ぶ!
催促、苦情、お願い事。とかく手紙は、書きにくい。言いにくいことをうまく伝える方法は? 後腐れないような言い回しはないだろうか? 悩んだときは、文章のプロの見本に学ぶ。文字で思いの丈を伝える一冊!


手紙の著者たちはこんなラインナップである。

有栖川有栖 池上永一 伊藤たかみ 歌野晶午 江上剛 逢坂剛 大島真寿美 奥田英朗 
角田光代 川端裕人 菊池秀行 北方謙三 小池真理子 五條瑛 古処誠二 小林紀晴 近藤史恵
酒井順子 佐藤正午 豊島ミホ 中村うさぎ 中村航 新津きよみ 西田俊也 楡修平 野中柊 
蜂飼耳 日向蓬 姫野カオルコ 星野智幸 
枡野浩一 又吉栄喜 松久淳 素樹文生 森絵都 盛田隆二


手紙が書かれるシチュエーションはさまざまで、実生活に即したものもあれば想像の世界のものもあるのだが、どちらにしてもそれぞれに人間性が現れていて興味深い。

オチケン!*大倉崇裕

  • 2008/02/22(金) 19:40:18

オチケン!―Rakugo Club The Key to Solving Mysteries (ミステリーYA!)オチケン!―Rakugo Club The Key to Solving Mysteries (ミステリーYA!)
(2007/10)
大倉 崇裕

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大学に入学して早々、廃部の危機に瀕した落語研究会に入部するはめになった越智健一。勝手な先輩たちに振り回され、ろくに授業も出られず、そのうえキャンパスで奇妙な事件が起きて…。中篇2篇を収録した連作落語ミステリー。


「幽霊寿限無」 「馬術部の醜聞」の連作。付録エッセイ「落語ってミステリー!?」

学生証をうっかり落として名前を見られたせいで無理やり落語研究会に入部させられてしまった越智健一。落研部員は部長の岸と中村のふたりだけ、新入部員が入らなければ廃部になると言われて、ほんの少し躊躇しているうちにすっかり部員にされていた。落語になどまったく興味のなかった越智だったが、不思議なキャラクターの岸や、なぜだか人を素直に語らせることのできる中村には惹きつけられるものも感じるのだった。なにがなにやら判らないうちに騒ぎに巻き込まれ、解決してしまったりする越智は、名前だけではなく落研部員にふさわしかったのかもしれない。
面白おかしくて、ばかばかしくて、痛快で、感動的でもある一冊である。
しかし越智健一、しょっちゅう寝ている気がするが・・・。

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共犯マジック*北森鴻

  • 2008/02/21(木) 17:21:07

共犯マジック共犯マジック
(2001/07)
北森 鴻

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人の凶兆・不幸のみを予言する、謎の占い書「フォーチュンブック」。読者の連鎖的な自殺を誘発し、回収騒ぎにまで発展したこの本を、松本市のとある書店で偶然入手した、七人の男女。彼らは、運命の黒い糸に搦めとられ、それぞれの犯罪に手を染める。そして知らず知らずのうち、昭和という時代の“共犯者”の役割を演じることに…。錯綜する物語は、やがて、驚愕の最終話へ―!!連作ミステリーの到達点を示す、気鋭・北森鴻の傑作最新長篇。


最終話である表題作のほか、「原点」 「それからの貌」 「羽化の季節」 「封印迷宮」 「さよなら神様」 「六人の謡える乙子」という連作。

すべては、第一話に出てくる不幸のみを予言するという謎の占い書「フォーチュンブック」に纏わって始まったのだった。
長野県松本市のある書店に平積みされていた七冊のフォーチュンブックが、それにかかわった人々のその後に暗い影を落とし、しかも、昭和のあの時期日本中を震撼させ、いまもなお古びずに記憶に刻まれている複数の事件をひとつに結びつけてしまうことになったのである。
ただの点だと思っていたものが、次々に結ばれて一本の線になる様は、まさにタイトルどおりの「共犯マジック」である。お見事。

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明日、月の上で*平安寿子

  • 2008/02/20(水) 17:32:05

明日、月の上で明日、月の上で
(2002/11)
平 安寿子

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ブンちゃんはずっと前から、あたしのたった一人の恋人だった。悲しいのは、それがひとり決めだということ。そして、あたしの人生はいつも、そこにはいないブンちゃんに支配されてしまうのだ。初恋がすべてになるなんて、あたしの人生は、そんなはずじゃなかったのに。あーあ、一途で健気で、ほとんど演歌。あたしも古い女です。―子供の頃から「とんがりトビ子」と呼ばれ、26歳になった今も、他人の物言いにいちいち喧嘩腰に反応してしまうとび子。恋するブンちゃんを捜し求めてたどり着いたひなびた温泉で、涼風、旋風、突風、いろんな風を巻き起こす。


何にでも突っかかってとんがるからとんがりトビ子と呼ばれている。若くして結婚し、離婚し、また年下の男と暮らしている姉の令子を「世間様に恥ずかしい」と言い、ああはなって欲しくないとトビ子を常識で縛る両親に反発し、家を飛び出して令子のところに押しかけた。そして、隣の部屋のブンちゃんに惚れこんでしまったのである。
年の離れたブンちゃんは、ひと所にじっとしていたり誰かの元に毎日帰るのが苦手な人で、あるときどこかへいなくなってしまい、トビ子はブンちゃんの姉の住む中国山地の温泉町霧舟にやってきたのだった。

トビ子の若さゆえのとんがりは、いじらしくも痛々しくもあったのだが、霧舟で都会とは違う時間の流れや人の交わりに身を浸し、少しだが歳を重ねていくうちに、そのとんがり方の質が少しずつ変わってきたように思われる。相変わらずあれこれにとんがりながらも場の空気を読んでいるというようなトビ子の姿が愛おしく感じられる。
ブンちゃんとの距離のとり方にも、ブンちゃんとトビ子だけの間合いのようなものがきっとあるのだろう。心の中にいつもブンちゃんが居ることで、トビ子は安定していられるのかもしれない。会いたいときにはいつでも会いにいけると思えば、会えなくて寂しくても包まれているような心持ちにきっとなれるのだろう。だってブンちゃんはトビ子のことを恋人だと言ってくれたのだから。

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オニが来た*大道珠貴

  • 2008/02/19(火) 17:20:46

オニが来たオニが来た
(2007/02)
大道 珠貴

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だんなさんの家族を、私がちゃんと看取らなきゃならない―日々のなかで明るくユーモラスに死を嗅ぎ取るお嫁さんの、泣き笑いの“介護日誌”。


四十歳を過ぎて結婚した福太郎とポンコ――どうやら親しみを籠めた「アンポンタン」からきているらしい――だったが、ある日だんなさんが、「いっとき自由な生活がしたいんだ」と言って、ダイエット村とやらへ出かけていってしまい、ポンコはだんなさんの実家・山倉家で義父母と彼らよりもっと年上の家政婦・黄泉さんと暮らすことになったのだった。
帯には「介護」などと書いてあるが、彼らはそれなりに具合の悪いところはあるものの、まだまだ介護を必要としているわけではない。それでもポンコは、次第に義父母や黄泉さんの介護は自分がするのだと自然に思うようになるのだった。
山倉家の主のように大事にされている黄泉さんも、義父母も、不自由なこともある日々を自分たち流に愉しく生きているのがポンコといっしょにうらやましくもあり、愛おしくもある。
明るくて愉しくて、しんみりと切なく哀しい物語。

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チョコリエッタ*大島真寿美

  • 2008/02/18(月) 18:48:26

チョコリエッタチョコリエッタ
(2003/03)
大島 真寿美

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誰も呼ばない本当の名前、私はチョコリエッタ。がらんとしたモノクロームの記憶がやわらかに色づき、のびのびと芽吹きだすまで―私が或る一匹の犬だった季節はそうして終わった。珠玉の青春小説。


チョコリエッタ/宮永知世子の物語。
子どものころ、父が運転する車で両親と山へ行く途中で事故に遭い、母を亡くし、父の妹の霧湖ちゃんを母代わりに育って、いまは高校二年生。
姉妹のように一緒に育ってきた犬のジュリエッタもこのあいだ死んでしまった。
進路指導のアンケートには本気で「犬になりたい」と書いた。

自分の境遇を嘆き暮らしているわけでもなく、何かに反抗するわけでもない。どこへいけばいいのか、ここに居ていいのか、何を見ればいいのか、どう見られればいいのか・・・。自分の置き所がつかめずに靄のなかで道に迷うようなひとつの若い季節を見ているような気持ちになる一冊である。
切なくて、哀しくて、愛おしくて、しんしんと泣きたくなる。

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屋上物語*北森鴻

  • 2008/02/18(月) 17:14:41

屋上物語 (ノン・ノベル)屋上物語 (ノン・ノベル)
(1999/04)
北森 鴻

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老若男女が憩う空中の楽園―デパートの屋上では、毎日のように不思議な事件が起こる。自殺、殺人、失踪、そして奇妙な落とし物…。しかしここには、何があっても動じない傑物がいた。うどん店の主、人呼んでさくら婆ァだ。今日もまた右往左往する客や警備員を濁声で一喝するや、彼女は事件の核心へと斬り込んでいく。それにしても何故こんなに怪事件が頻発するのか。さくら婆ァとは何者なのか…。推理界の奇才が“屋上”を舞台に紡ぐ、空前の長編連鎖ミステリーの快作。


「はじまりの物語」 「波紋のあとさき」 「SOS・SOS・PHS」 「挑戦者の憂鬱」 「帰れない場所」 「その一日」 「楽園の終わり」

探偵役はデパートの屋上のスタンドのうどん屋の店主・さくら婆ァであり、事件の中心は屋上を訪れるさまざまな人々である。しかし、それを語るのは人ではない。あるときは稲荷大社の狐様であり、またあるときは年季の入った観覧車だったり、ベンチだったり、屋上自身だったりする。人と言葉を交わすことはできないが、彼らは屋上の出来事をだれよりもよく知っているのだった。
さくら婆ァさんと興行師の杜田との遠慮のない掛け合いが絶妙で、物語にリズム感を与えていて小気味よい。

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しろい虹*石田千

  • 2008/02/17(日) 16:37:12

しろい虹しろい虹
(2008/01/26)
石田 千

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なにげない日々の暮らしの中で、見慣れていたはずの色彩が鮮やかに映える瞬間がある。
言葉を越えた思いが、色と形をともなって心の中で輪舞する......

アカダイダイ、キイロニミドリ、アオアイムラサキ......

虹の七色は、集まるとなぜ白いのか。無色から紡がれる色とりどりの思いが、端正な文体に凝縮する、新感覚エッセイ。


ふと気づくと、著者のエッセイには反省が多い。できなかったあれこれや、見ないことにして放りっぱなしにしたことごと、風邪を理由に何もせずに家にこもっていたことなど・・・。
それなのにどういうわけか、後ろ向きな気持ちは感じられない。反省しつつも日々の細かなことを大切に見つめる目と、よく噛んできちんと自らの中で消化させる姿勢の気持ち好さがそうさせるのかもしれない。

ビター・ブラッド*雫井脩介

  • 2008/02/17(日) 13:51:15

ビター・ブラッドビター・ブラッド
(2007/08)
雫井 脩介

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ベテラン刑事の父親に反発しながらも、同じ道を歩む息子の夏輝。夏輝がはじめて現場を踏んでから一カ月が経った頃、捜査一課の係長が何者かに殺害された。捜査本部が疑う内部犯行説に、曲者揃いの刑事たちは疑心暗鬼に陥るが…。初の現場でコンビを組む事になったのは、少年時代に別離した実の父親だった―。「犯人に告ぐ」、「クローズド・ノート」で各界から大きな注目を集める著者、待望の最新ミステリー。


警視庁S署E分署の刑事課一係に配属されて一ヶ月の佐原夏輝。管轄内で起きた転落事故の現場に駆けつけてみると、そこには、思いのほかの速さで本庁の捜査一課の刑事たちがやってきた。転落死した人物が彼らが追う事件の鍵を握っているらしい。その刑事たちの中には、十三年前に自分たちを捨てて出て行った父親の姿もあったのだった。捜査協力によって、ジェントルと呼ばれる父・島尾と組むことになった夏輝は反感を抱きながらも刑事という仕事のさまざまな面を知っていく。
ひと癖もふた癖もある刑事たちのキャラクターがまず興味深い。「太陽に吠えろ」ばりにニックネームで呼び合いながらも、身内をも信じきっていないシビアな関係が鋭い切れ味のナイフのようでもある。そんな彼らの中にあって、刑事になったばかりの夏輝が手探りながらも事件の真相に迫っていく姿は、新米であるからこその清々しさをも感じさせる。
何が善で何が悪なのか、容易に反転してしまう危うさを含んだ捜査の裏側も興味深い。

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福家警部補の挨拶*大倉崇裕

  • 2008/02/16(土) 08:53:20

福家警部補の挨拶 (創元クライム・クラブ)福家警部補の挨拶 (創元クライム・クラブ)
(2006/06/27)
大倉 崇裕

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現場を検分し鑑識の報告を受けて聞き込みを始める頃には、事件の真相が見えている? おなじみ刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、4編収録のシリーズ第1弾。福家警部補は今日も徹夜で捜査する!


「最後の一冊 「オッカムの剃刀」 「愛情のシナリオ」 「月の雫」

福家警部補、登場の場面から驚かせてくれる。どこへ行っても初対面の人には同様の驚かれ方をするのだが、そんな水戸黄門的なお約束が小気味良くさえ感じられる。福家警部補、決してキャラクターが濃いわけではないのだが、妙な存在感があるのである。そして、さりげなくパワフル。数日の徹夜などものともせず、いつの間にかターゲットの傍らにすっと近づいている。不思議な魅力を持つ警部補なのである。
真犯人に迫る際も、冷静さを少しも失わず、細かい齟齬を確実に捕まえてじりじり迫る様は痛快でもある。

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メビウス・レター*北森鴻

  • 2008/02/14(木) 20:25:16

メビウス・レターメビウス・レター
(1998/01)
北森 鴻

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注目の新人が放つ書き下ろし叙述ミステリ
これこそ《あっ》と言わせるミステリである
連続する放火と殺人の謎!過去からの手紙が高校生殺人事件の封印を解き放った。

前作『狐罠』で真保裕一の“取材力”に挑戦した作者が、今度は折原一の“驚愕”に挑戦してみせた。前作がそうであったように、第一人者の塁を摩す試みは、見事に成功したと言っていい。メビウスの輪の中に仕掛けられた巧妙な罠と大どんでん返し――この打っちゃりに感嘆の声を上げない読者は、まずいないはずだ。これこそ《あっ》と言わせるミステリである。北森鴻の確かな、そして豊かな才能に、最大級の拍手を贈りたい。――文芸評論家 茶木則雄


偶然と必然とが複雑に絡み合い、事実と真実とがそれぞれのなかで異なる感情を形作る。
一体どこが始まりだったのか。まさにメビウスの帯のようにくるりと裏返って別の場所に放り出されるような心地の一冊である。
これでもかというほど騙され、それならこうか、と思えばまた騙される。最初から最後まで騙され通しの読書タイムだった。

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なんにもうまくいかないわ*平安寿子

  • 2008/02/13(水) 17:12:46

なんにもうまくいかないわなんにもうまくいかないわ
(2004/11/19)
平 安寿子

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子なしシングルの負け犬も40過ぎたらオオカミだ−。なんでもかんでも己のことを喋ってしまう「私生活の無い女」志津子を中心に、独特の「饒舌体」で一気に読ませるコメディーなどを収録。


表題作のほか、「マイ・ガール」 「パクられロマンス」 「タイフーン・メーカー」 「恋駅通過」 「亭主、差し上げます」

並河志津子がらみの連作五作と、bonus truck として「亭主、差し上げます」が収録されている。
志津子がらみの連作といっても、それぞれの物語の語り手は主に志津子以外の人物である。幼なじみであったり、秘書役であったり、恋敵であったり、部下であったり。だが、だれが語り手になろうと、志津子の思ったことを垂れ流す「私生活の無さ」は変わりなく、だれもが同じエピソードを知っていたりするのである。志津子のゴーイングマイウェイさ加減には恐れ入るばかりだが、ただそれだけではない魅力も彼女にはあるのである。振り回されるのが判っているのに放っておけない、という感じだろうか。バリバリのキャリアウーマンでもあるのだが、なぜかそのあたりのギャップが鼻につかずにいい味になっている気がする。
「なんにもうまくいかないわ」と辺りかまわず愚痴を言い散らしながら、きょうもあしたも志津子はパワフルに、マイペースに、ちょっぴり切なく、さみしく、そしてしあわせに生きていくのだろう。

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先生と僕*坂木司

  • 2008/02/12(火) 17:14:42

先生と僕先生と僕
(2007/12)
坂木 司

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「先生と僕」―2人が向かった書店でみかけたもの…?「消えた歌声」―推理小説研究会の仲間と行ったカラオケで…?「逃げ水のいるプール」―区民プールで働くクラスメートが…?「額縁の裏」―繁華街で無料の展覧会に誘われたら…?「見えない盗品」―ペット用品をネットで買おうとしたら…?(こわがりな大学生+ミステリ大好き中学生)×謎=名探偵。あなたのまわりのちょっとした事件。先生と僕が解決します。


僕:伊藤二葉、小心者の大学一年生。
先生:瀬川隼人、頭脳明晰・アイドル系の容姿のミステリ好き中学一年生、家庭教師募集中。

ひょんなことから大学の推理研究部に入部することになった二葉――殺人とか怖いことがで大の苦手――が、公園のベンチで江戸川乱歩の文庫本を読んでいたのが縁で、家庭教師を頼まれた。その相手が瀬川隼人だったのだ。条件は、二時間の持ち時間のうち半分は自習、残りは好きな本を読んだりミステリの話をしたりして過ごす、というものなのだった。
隼人は、事件の種をあちこちで見つけ、二葉を巻き込んで解決に乗り出すのである。
隼人の見た目と内実のギャップと 二葉の根っからの人のよさが、実年齢と逆転しているところが面白さを増している。新しいコンビ誕生、という感じ。
つづきはあるのだろうか。

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心臓と左手*石持浅海

  • 2008/02/12(火) 13:34:25

心臓と左手  座間味くんの推理 (カッパ・ノベルス)心臓と左手 座間味くんの推理 (カッパ・ノベルス)
(2007/09/21)
石持 浅海

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11年前に起こったハイジャック事件の人質だった聖子は、小学6年生となり、那覇空港で命の恩人と再会を果たす。そこで明かされる思わぬ事実とは…。「月の扉」事件のその後を描く。座間味くんが活躍する7編を収録。


表題作のほか、「貧者の軍隊」 「罠の名前」 「水際で防ぐ」 「地下のビール工場」 「沖縄心中」 「再会」

十一年前のハイジャック事件(『月の扉』参照)で人質になった子どもを救った英雄・座間味くん――そのとき着ていたTシャツからそう名づけられた――と、その事件に携わった警視・大迫との会食の場面で「再会」以外の物語りは構成されている。大迫が過去のすでに解決した事件の話をして聞かせ、座間味くんがそれについて自分の考えを語るのだが、その答えが思いもよらぬものであり、過去のものとなった事件をまったく別のものに変えてしまうのである。そんな座間味くんの推理に魅せられて大迫はまた事件の話を聞かせてしまうのだった。
最後の「再会」では、ハイジャック事件の人質となり座間味くんに助けられた聖子と座間味くんが再会するのだが、ここで披露される座間味くんの推理は聖子にとっては少しばかり痛いものである。しかし、そこを乗り越えなければおそらく聖子は前へ進めないのだろう。
聖子の行く手には希望が見える気がするのだが、ハイジャック事件の顛末を思うと、少々不安がないわけでもない。聖子と座間味くんのその後が心配でもありたのしみでもある。

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インシテミル*米澤穂信

  • 2008/02/11(月) 13:23:06

インシテミルインシテミル
(2007/08)
米澤 穂信

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車がほしかった結城理久彦。「滞って」いた須和名祥子。オカネが欲しいふたりは、高給の怪しげな実験モニターに応募した。こうして12人が集まり、館の地階に7日間、閉じ込められることに。究極の殺人ゲームが始まる…。


THE INCITE MILL
物語は、あるモニター募集記事に応募する人々の個々の様子から始まる。少しばかり変わった募集記事。
    

年齢性別不問。一週間の短期バイト。ある人文科学的実験の被験者。一日あたりの拘束時間は二十四時間。人権に配慮した上で、二十四時間の観察を行う。機関は七日間。実験の純粋性を保つため、外部からは隔離する。拘束時間にはすべて時給を払う。時給、一一二〇百円。


「暗鬼館」に集められた12人は異常としか思われない状況に置かれることになる。初めのうちこそのんびりと構えていた人々も、ひとり目の死者がでてからは、おちおち眠ることも食べることもできないようになり、四六時中疑心暗鬼に駆られることになる。そんな極限状況下でも派閥を作り損得を考え駆け引きをする人間の性が虚しくも哀しい。そして、人間としての真価が問われるのもこんなときだろう。各人の対応の仕方が興味深くもあったが、間違ってもこんな実験のモニターにはなりたくないものである。

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フォー・ユア・プレジャー*柴田よしき

  • 2008/02/10(日) 16:55:14

フォー・ユア・プレジャーフォー・ユア・プレジャー
(2000/08)
柴田 よしき

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保育園の園長にして私立探偵、子どもという天使とヤクザという悪魔を相手にした、究極の"二足の草鞋"生活を送る、花咲慎一郎シリーズ第2弾。新宿2丁目の無認可保育園「にこにこ園」の園長でありながら、園の赤字を埋めるため、ヤクザがらみの裏の調査業を引き受けざるを得ないヤメ刑事の主人公花咲。今度の依頼は、豊満ボディのOLが一夜を過ごしたお相手を捜し出すというもの。しかし、人捜しをするだけのはずが、愛する恋人が行方不明となり、元同僚が監禁され、あげくの果てには、妻に逃げられた男の世話までが降りかかる。偶然に思えたできごとの裏に潜む罠。花咲は無事脱出できるのか?


一作目以上に危ない目に遭っている花咲慎一郎である。裏社会の仁義なき戦いに翻弄される花咲を見ていると、そこには仁義がないのではなく限りなく歪なだけなのだとも思わされる。
そしてその花咲自身が限りなく歪なのである。歌舞伎町の夜の夢幻を作り出すためのしわ寄せのように無認可保育園「にこにこ園」に預けられた子どもたちのことをいちばんに考えるあまり、裏社会とかかわり命さえもかけなければならない事態に自分を追い込んでいるのだから。

無関係と思われたいくつもの点が、ひとつまたひとつと結ばれて線になり、形あるものになる様が見事である。そしてその点のひとつずつがすべて花咲を巻き込んでいるのが哀しくも切ない。

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狐罠*北森鴻

  • 2008/02/08(金) 17:24:28

狐罠狐罠
(1997/05)
北森 鴻

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店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」宇佐見陶子。彼女が同業の橘董堂から仕入れた唐様切子紺碧碗は、贋作だった。プロを騙す「目利き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、橘董堂の外商・田倉俊子が殺されて、殺人事件に巻き込まれてしまう。古美術ミステリーの傑作長編。


旗師・宇佐見陶子シリーズの一話目。
旗師として独立して四年目の陶子であるが、初々しいというよりも、もはや抜き差しならない骨董の世界に魅入られているといった壮絶な感じである。
そして、大英博物館や国立博物館をも巻き込んだ壮大なはかりごとの一端を それと知らずに担わされることになった陶子は、凄まじいなどという言葉では言い尽くせないほどの経験をした分、古物商としても人間としてもひと回りもふた回りも成長したのではないだろうか。
骨董の世界の奥深さや恐ろしさ、その世界に渦巻くそれぞれの思惑や欲の深さを、これでもかというほど見せつけられるようだった。

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メイン・ディッシュ*北森鴻

  • 2008/02/06(水) 17:33:23

メイン・ディッシュメイン・ディッシュ
(1999/03)
北森 鴻

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女優・紅林ユリエが小杉隆一と作った劇団『紅神楽』は、推理劇を得意としている。座付き作者の小杉は大の推理マニアなのだ。ある雪の日に、ユリエは三津池修と名乗る男(通称ミケさん)と出会い、一緒に暮らし始めた。過去の経歴が全くわからないミケさんは、プロ顔負けの料理の腕を持っていた。ミケさんと小杉は、『紅神楽』が遭遇する事件で名?迷?推理を繰り広げるが、そんな折り、ユリエとミケさんの生活に大きな変化が訪れる―。謎解きの深い味わいが重奏する垂涎のエンタテインメント。おいしくてせつない、シャープでトリッキーな連作ミステリー。


本作も連作短編集としても読めるし、長編としても読める物語である。
目次に並ぶメニューは 「アペリティフ」 「ストレンジ・テイスト」 「アリバイ レシピ」 「キッチン・マジック」 「バッド テイスト トレイン」 「マイ オールド ビターズ」 「バレンタイン チャーハン」 「ボトル "ダミー"」 「サプライジング エッグ」 「メイン ディッシュ」

著者の作品にはお腹のなかからしあわせにしてくれる美味しい料理がたくさん登場するが、本作にも決してよそ行きではないがその場にいる人たちをもれなくあたためてくれるような料理がたくさん出てくる。空腹時に読むと食欲を刺激されずにはいられない。
そして、登場人物がそれぞれいい味を出している。劇団の座付き作家の小杉の自称名探偵の二枚目半振りもなくてはならないし、ミケさんの飄々とした佇まいはその料理の腕と相まってとても魅力的である。
そんな料理や登場人物たちにしあわせを感じながら読み進めると、思ってもいない展開に引きずり込まれるのである。なんとも上手い。劇団「紅神楽」の舞台が人気があるのが納得できてしまう気がする。

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パンドラ’Sボックス*北森鴻

  • 2008/02/05(火) 19:17:42

パンドラ’Sボックスパンドラ’Sボックス
(2000/06)
北森 鴻

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画壇の寵児が突然の自殺を遂げた!その死に秘められた謎とは?(「仮面の遺書」)。警察に届けられた殺人者からの告白文。その衝撃の内容から、日本の古代史の謎にメスが!?(「踊る警官」)。大胆な着想と、鮮やかな謎解き!読者に息つく暇さえ与えぬ、卓抜なストーリー展開!短編の名手が放つ、デビュー作から今日までの珠玉の短編七本を収載!さらに、各々の短編に合わせ、作家の肉声をユーモアと哀感をこめて書き下ろしたエッセイを掲載!フィクションとノン・フィクションが絶妙に融合したクロス・オーバー・ノベルス、ここに誕生。


各短編のあとに、その作品が生み出された裏話やネタばらしを含むエッセイが並べられている。こんなことまで言ってしまっていいの?という内容もたくさんあるのだが、大丈夫なのだろうか。だが、著者のことを知りたい読者にとっては嬉しい限りである。

琉璃の契り*北森鴻

  • 2008/02/04(月) 19:31:24

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (旗師・冬狐堂)瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (旗師・冬狐堂)
(2005/01)
北森 鴻

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私は旗師をやめない。狐は負けない。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生きる“冬狐堂”こと宇佐見陶子を襲う眼病。付け入ろうとわけありの品を持ち込む同業者に立ち向かう。古美術ミステリー。


表題作のほか、「倣雛心中(ならいびなしんじゅう)」 「苦い狐」 「黒髪のクピド」

宇佐見陶子シリーズ四作目。
旗師としての陶子の目に異変が!網膜剥離の危険を含んだ飛蚊症を患う陶子は、視力を失うことはないとは言われるが、病気によって旗師として悪い評判が立つことを怖れるのだった。
表題作では親友の横尾硝子をも巻き込む切り子碗の謎に深くかかわり、『黒髪のクピド』では、元夫のプロフェッサーDをも巻き込んで――というか、D共々巻き込まれて――人形の謎を解くことになる。
旗師としての陶子はシリーズを追うごとにどんどん強くなるような気がする。それも、横尾硝子や雅蘭堂の越名集治らの支えがあってこそだろう。彼らのキャラクターの魅力も見逃すことはできない。
ただ気がかりは、病気のことである。今後どうなっていくのだろうか。

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風に顔をあげて*平安寿子

  • 2008/02/04(月) 13:01:30

風に顔をあげて風に顔をあげて
(2007/12)
平 安寿子

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野球場のビール売り、ファストフードの店員、スタンドの給油係、量販店の販売員、ファミレスやコンビニの店員などなど……。風実(ふみ)は自称「プロのフリーター」の25歳。でも球場のバイトに来た高校生から「私が25になったら、結婚してるか自分の店もって忙しくしてるか、どちらかだな」と言われ大ショック! 25歳で定職がないなんて、いかにもモテない? 能なし?ミジメって感じ? ボーイフレンドの英一はボクサーの卵。せっかく夢を追いかけていたのに、年下に強烈なパンチを食らって自信喪失。もうボクシングはあきらめる、なんて言い出す始末。やりきれない思いを38歳で部長昇進を果たしたサラリーマンの友達・小池さんに愚痴る日々。そんな不安定な風実の元に、18歳の弟の幹(かん)が転がり込んできた。その原因は……「お母さんにゲイだってカミングアウトしたら怒っちゃって」だって?! そして、せっかく昇進した小池さんにも、思ってもみなかった予想外の毎日が……?! ままならない日常を、精一杯全力で駆け抜ける風実の姿を鮮やかに描く、すべての世代が共感せずにはいられない傑作長編!


「三十怖い病」 「向かい風の日」 「おっと、あぶない」 「スタートライン」
連作短編集のようにも読めるし、ひとつの物語としても読める。

立ち止まって自分を見つめることで、人は大人になっていくのだなぁと、風実をみていて思った。若さだけでがむしゃらに愉しくやっていたころには考えもしなかった自分のこと、この先の生き方のこと。それに目を向けるようになった風実の苦悩はそこから始まるのだが、実はその時点ですでにステップの一段目に上っているのではないだろうか。
気楽そうに見えるフリーター暮らしをしながらも、人との関係をないがしろにしていない風実の在りようには好感が持てる。好きな人と、友人と、弟と、職場の人たちと、飲み友達と、母と、父と。たくさんの人とのかかわりが飾らず率直に描かれていて好もしい。
自分が他人になにをしてあげたいか、ということの大切さ。目当てができるということは希望ができるということなのだということもラストを明るくしている。

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テーブルの上のファーブル*クラフト・エヴィング商會

  • 2008/02/02(土) 17:08:21

テーブルの上のファーブルテーブルの上のファーブル
(2004/05/26)
クラフト・エヴィング商會、坂本 真典 他

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すべては机上の空論から、すなわちテーブルの上から始まってゆきます。空に昼月、机上に昼酒。酔いがまわったら、昼寝もまたよし。雑誌のようで、絵本のようで、雑誌でも絵本でもない。あたらしい本のスタイル。


とても愉しい趣向の一冊である。いままさにこの本が作られている現場に立ち会っているかのようで、さりげないながら一気に惹きこまれてしまう。すべてはテーブルからはじまるのではないかと本気で思い込んでしまいそうである。
「こだわり」と「適当」の匙加減も絶妙で風味高い逸品である。
フジモトマサル氏のイラストと、坂本真典氏の写真がさらにすばらしさを増している。

 #ファーブルは「fable(寓話)」のこと。

アナ・トレントの鞄*クラフト・エヴィング商會

  • 2008/02/02(土) 16:58:03

アナ・トレントの鞄アナ・トレントの鞄
(2005/07/22)
クラフト・エヴィング商會

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遠くから見つめていたものが、いまなら手に入るかもしれない。かくして時空を超えた仕入れの旅が始まる-。旅先から届いた品々は全34品。探し求めたすべて一点かぎりの商品を洒落た写真と文で紹介する架空カタログ。


架空カタログと承知していて、架空カタログにしか見えないのだが、それでもどこかの誰かが手にしていてひっそりと愛しげに眺めているような気がしてしまうのは、言葉に添えられている坂本真典氏の写真のすばらしさによるところも大きいだろう。
カタログに載せられているものの選ばれ方、扱われ方はまさにクラフト・エヴィング商會であり、小さくて大きい、遠くて近い、不思議な感覚に包まれるのである。

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緋友禅*北森鴻

  • 2008/02/02(土) 08:54:26

緋友禅―旗師・冬狐堂緋友禅―旗師・冬狐堂
(2003/01)
北森 鴻

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わたしは宇佐見陶子と申します。骨董業―といっても旗師といいまして、店舗を持たずに競り市から競り市へ、骨董店から骨董店を渡り歩いて品物を仕入れ、流通させるバイヤーのような存在なのです。骨董の世界は、魑魅魍魎の住処と言われます。時に悲劇が、時に喜劇が、ない交ぜに流れて人々を押し流してゆく。そうした光景が日常的に観察される世界です。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生き抜く美貌の一匹狼。古美術ミステリー。

陶子は、無名の作者のタペストリーに惚れこみ、全作品を買い上げることを即決。しかし作品は届かず、作者のアパートを訪れた陶子は彼の死体を発見する。半年後、陶子は意外な場所でタペストリーを再び目にする……。


旗師・冬狐堂、宇佐見陶子シリーズの三作目。
表題作のほか、「陶鬼」 「「永久笑み」の少女」 「奇縁円空」

ミステリというひとつの括りだけには収まりきらない作品である。歴史、民俗学、人間ドラマ、などなどさまざまな要素を含み、店舗を持たずに骨董を商う旗師としての、またひとりの女性としての陶子の生き様の魅力と相まって物語に奥深さを加えているように思われる。
どの世界もプロとして生き抜こうとすれば壮絶な闘いになるのだろうが、魑魅魍魎が跋扈するといわれる骨董の世界の、表の優雅さからは想像もつかない裏の駆け引きの凄まじさが、それだけでも興味をそそられる。
これからも冬狐堂ここにあり、という活躍を見せて欲しい。

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孔雀狂想曲*北森鴻

  • 2008/02/01(金) 07:10:09

孔雀狂想曲孔雀狂想曲
(2001/10)
北森 鴻

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骨董店・雅蘭堂には、様々なものが、人々のいろいろな思いをいっぱいにつめて集まってくる。店主・越名集治が、価値ある「モノ」を通じ、人間の欲望や闇を描き出す8つの短編ミステリー。


表題作のほか、「ベトナム ジッポー・1967」 「ジャンクカメラ・キッズ」 「古九谷焼幻化」 「キリコ・キリコ」 「幻・風景」 「根付け供養」 「人形転生」

冬狐堂シリーズの『狐闇』にも重要な役どころで登場した雅蘭堂の越名集治が主役の物語である。舞台はやはり骨董の世界。細い目でいつも眠っているようだといわれる越名の真実を感じ取る直感とでもいうような才が燻銀のように味わい深い物語たちでもある。
押しかけアルバイターの女子高生・長坂安積――冒頭の物語で危うく万引き反になるところだったのだ――と越名の無意味なようで結構的を射た掛け合いもたのしい。

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