どこから行っても遠い町*川上弘美

  • 2008/12/31(水) 16:21:39

どこから行っても遠い町どこから行っても遠い町
(2008/11)
川上 弘美

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捨てたものではなかったです、あたしの人生――。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房……東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人びとの、その平穏な日々にあるあやうさと幸福。川上文学の真髄を示す待望の連作短篇小説集。


表題作のほか、「小屋のある屋上」 「午前六時のバケツ」 「夕つかたの水」 「蛇は穴に入る」 「長い夜の紅茶」 「四度目の浪花節」 「急降下するエレベーター」 「濡れたおんなの慕情」 「貝殻のある飾り窓」 「ゆるく巻くかたつむりの殻」

知らないのに知っているような心地にさせられる、どこか懐かしい町に暮らす――あるいは通りかかる――人々の、取り立てて言うほどのことはないが、それでいて奥にはひとにぎりの危うさが潜んでいるような日々の物語である。
ものすごく個人的でありながら、どこか普遍的でもあるような、不思議な雰囲気が漂う一冊だった。

恋愛嫌い*平安寿子

  • 2008/12/28(日) 16:27:19

恋愛嫌い恋愛嫌い
(2008/10)
平 安寿子

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女子の痛快な本音炸裂の「アンチ恋愛」小説
「諦めるのは何より上手」「感情が足りないと言われる」「前向きという言葉が嫌い」「いざとなると尻込みする」等、恋が苦手な女性達を描いた、痛いほどリアルでじんわりと勇気をくれる連作短編集。


ランチタイムに相席になったことで知り合った、職場も年齢も違う三人の女性、鈴江、喜世美、翔子の本音の物語である。ただ、恋愛嫌いというよりも、恋愛が苦手という感じではある。
結構共感するところも多く、三人それぞれの自分らしさを損なわずにしあわせになってほしいものだと、思わず願ってしまう。

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ちょいな人々*荻原浩

  • 2008/12/26(金) 17:13:43

ちょいな人々ちょいな人々
(2008/10)
荻原 浩

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隣の庭木を憎む主婦、脱サラした占い師、いじめられっ子と一緒に復讐する相談員など、ちょっと変でちょっと可哀そうな人達のお話


表題作のほか、「ガーデンウォーズ」 「占い師の悪運」 「いじめ電話相談室」 「犬猫語完全翻訳機」 「正直メール」 「くたばれ、タイガース」

ちょい悪、ちょいモテ・・・などなど、ちょっぴりの親しみやら可笑しみやら悲哀やらをこめて呼ばれる、ちょいな人々の物語である。大それたところなど欠片もなく、至って小市民的な彼らの日々は、同様の読者の共感と自嘲と切なさを呼ぶのである。愛すべきちょいな人々満載の一冊である。

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春期限定いちごタルト事件*米澤穂信

  • 2008/12/24(水) 18:35:46

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
(2004/12/18)
米澤 穂信

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小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。


日常の謎系ミステリ。ではあるのだが、学園青春物語的な様相もあり、しかし、主役ふたりの関係が、恋愛でもなく依存でもなく、互恵関係であるという点で普通ではない。恋愛でも依存でもないというだけなら、そう珍しくもないだろうが、互恵というのが興味深い。中学時代の出来事によるようなのだが、それについて多くが語られていないのがなおさら興味をかきたてられる。
物語はまさに、「春期限定いちごタルト」が火付け役になって展開していくのだが、小鳩君、小佐内さんそれぞれが、自己の欲求と心がまえとの間で、自分を押し込めたり解き放ったりしながら日々を過ごしている様子が青春らしくてほほえましくもある。
どの辺りで自分に折り合いをつけていくのだろうか、と今後が楽しみでもある。

さよなら妖精*米澤穂信

  • 2008/12/23(火) 19:47:12

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)
(2004/02)
米澤 穂信

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一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。気鋭の新人が贈る清新な力作。


序章を考えに入れなければ、前半はのどかで爽やかな青春小説といった趣である。しかし、序章があることによって、穏やかならざる何かが胸に植えつけられ、その後に続くのどかな物語に、いつどういう形で影が差すのだろうかという漠然とした不安につきまとわれながら読み進むことになるのである。
それにしても、こういう展開になるとは思わなかった。想像したよりもずっと深く思い物語だった。

光*三浦しをん

  • 2008/12/22(月) 10:51:06

光
(2008/11/26)
三浦 しをん

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暴力はやってくるのではない。帰ってくるのだ。

理不尽をかいくぐり生きのびた魂に、安息は訪れるのか。
三浦しをん、渾身の最新長編。

天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。


何故「光」というタイトルをつけたのだろう、と訝しくなるほど、明るさとは無縁の物語である。
島という閉鎖的な場所で生まれ、限られた中ですべてを賄わざるを得ない少年期を過ごし、津波という不可抗力によってそれさえも奪われたわずかな者たちは、開かれた場所に出てもやはり自分という鎧の内側に閉じこもっているのだった。
読書中も、読後も、頭の中にはどうどうと押し寄せてくる津波の轟きが低く唸っているようで、島中を埋め尽くした泥に胸の中まで埋め尽くされたような重苦しさが残るのだった。

少しだけ欠けた月-季節風*秋-*重松清

  • 2008/12/20(土) 13:46:49

少しだけ欠けた月―季節風 秋少しだけ欠けた月―季節風 秋
(2008/09)
重松 清

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静かな、静かな、ひとりぼっちの月。ぼくたちは明日から、もう家族じゃない。澄んだ光に満ちた秋が、かけがえのない時間を連れてくるものがたりの歳時記―「秋」の巻、12編。


表題作のほか、「オニババと三人の盗賊」 「サンマの煙」 「風速四十米」 「ヨコヅナ大ちゃん」 「キンモクセイ」 「よーい、どん!」 ウイニングボール」 「おばあちゃんのギンナン」 「秘密基地に午後七時」 「水飲み鳥、はばたく。」 「田中さんの休日」

秋の高く青い空をみあげたときの、胸の中を何かが突き抜けるような切なさ、物悲しさが、どの物語にも漂っているような気がする。
言いたいこと、言わなくてはならないこと、近いからこそ言えないこと、わかるからこそ言葉にならないこと。そんな、ほんの少しの後悔と心残りが物語り中に沁み渡っているようである。
それでも、物語の最後には、ぽっと明かりが灯ったようなあたたかさがあって、胸をじんわりとさせるのである。

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楽園 上下*宮部みゆき

  • 2008/12/16(火) 17:22:12

楽園〈上〉楽園〈上〉
(2007/08)
宮部 みゆき

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「模倣犯」事件から9年が経った。事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター・前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼だった。少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたという―。



楽園 下楽園 下
(2007/08)
宮部 みゆき

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土井崎夫妻がなぜ、長女・茜を殺さねばならなかったのかを調べていた滋子は、夫妻が娘を殺害後、何者かによって脅迫されていたのではないか?と推理する。さらには茜と当時付き合っていた男の存在が浮かび上がる。新たなる拉致事件も勃発し、様々な事実がやがて一つの大きな奔流となって、物語は驚愕の結末を迎える。


『模倣犯』の前畑滋子の物語である。続編と言ってしまっていいのかどうかは多少迷うところはあるが、『模倣犯』の事件の後遺症を未だ引きずっている前畑滋子が、その事件とどう向き合い、どう決着をつけ、どう乗り越えて新たな一歩を歩き出すか、という物語でもあるのだろう。
上巻は、不思議な能力を持つという少年・等の母親・萩谷敏子からの依頼を受けて、ある事件を調べながら、前畑が自身の気持ちに踏ん切りをつけていく過程でもある。思いがけない要因が、とんでもないところに繋がり、ひとつひとつの点を結び付けていくのがこの上巻でもある。
下巻は、等に問題の絵を描かせるきっかけになった人物を探すうちに行き当たった、あおぞら会という子ども会を調べるところからはじまり、これまた思いもしない繋がりによって核心へと迫っていく過程が、前畑滋子や萩谷敏子、そして殺された土井崎茜の妹・誠子らの揺れ動く心情と共に描かれていて、ページを繰る手を止められなくなる。
あちこちに散らばった点と点が、いささか上手く繋がりすぎる気がしなくもないが、秘められていたことが暴かれるときというのは、こういうものなのかもしれないと思いもする。
茜のことを自業自得と言い切ってしまうにはあまりに切なく、土井崎夫妻の不甲斐なさに憤りを覚えながらも、誠子を想ってがんじがらめになっていく状況には同情を感じなくもない。誰が悪かったのか、どうすればよかったのか、ひとつの答えを出すのは難しすぎる。

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21 twenty one *小路幸也

  • 2008/12/13(土) 16:45:47

21 twenty one21 twenty one
(2008/06)
小路 幸也

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中学校入学の日、担任になった先生が僕たちにこう言った。「ここにいる21人が今日から卒業までの仲間です。そして、なんと21世紀に、21歳になる仲間です」なんでもない、他愛もない、ただの偶然。でもその偶然が重なって集まった仲間が21人いる。その事実が僕たちに強烈な連帯感をもたらした。21世紀に、21歳になる21人。僕たちは“21”というもので繋がれた仲間。21・21・21。“twenty one”だ。そして、ずっと変わらない仲間だと、無邪気に信じていた…。なぜ自ら死を選んだ?僕たちに何も告げず。特別な絆で結ばれていると信じていた人を突然喪ったとき、胸に込み上げる思いをどうすればいいんだろう…。大きな注目を集める著者が“生きていく意味”を深く問いかける感動作。


友人の死をきっかけに、かつての仲間が集まって過ごしてきた日々に思いを致す、という状況は、『モーニング』の一世代下バージョンのような物語である。
いまは統合され、なくなってしまった中学校の新入生は21人、1クラスだった。そして、担任の韮山先生が気づいたのだ。21世紀に21歳になる21人だと。21-21-21、twenty oneの仲間なのだった。
先生の気づいたその言葉によってさらに結びつきを強めた21人は、かけがえのない仲間のままで25歳になっていた。そんな夏、仲間のひとり晶が死んだ。自殺だった。知らせを受けた20人は、そのときから、晶と自分たちのことをそれぞれに思い続けるのだった。
なにが晶を死へ駆り立てたのか・・・・・。
知ったからといってなにができるわけでもなく、ただ唇を噛むしかないのだが、だれもがいままでのこと、これからのことを思わずにいられない。
死の理由に、そんなことかと言ってしまうのは容易いが、事柄の重みは人によってすべて違うのだと思い知らされる。そして自分の秤で他人を量ることの無意味さをも実感させられるのである。
死ぬことを選んだ1人と、残されいきつづける20人の、たがいを思いやる心にも胸が熱くなった。

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犬はどこだ*米澤穂信

  • 2008/12/11(木) 17:37:57

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)
(2005/07/21)
米澤 穂信

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何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所“紺屋S&R”が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして―いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。


大学を卒業し銀行に就職するまで、自分の思い描いたとおりのコースを進んできた紺屋(こうや)だったが、ものすごくひどいアトピー性皮膚炎を発症するという思ってもみなかった障害によって仕事を辞め、故郷にもどって調査会社を立ち上げることにしたのだった。社名の「紺屋S&R」はsearch&rescueの略である。そして、紺屋が探したいのは犬だった。しかしながら、友人の大南の紹介でやってきた初めての依頼者は、犬ではなくて人探しの依頼をもってきたのだった。
そして、やはり大南の紹介でやってきた第二の依頼である古文書の由来調べを、押しかけ社員の半田(ハンペー)に任せて、それぞれ調査を続けるうちに、思わぬ現実が明らかになり、調査は熱を帯びてくるのである。
結局犬探しは一度もすることなく物語は終わり、「紺屋S&R」が犬を探す日が来るかどうかは、はなはだ疑問なのである。厄介な依頼ばかりが舞い込みそうな予感が・・・。

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Twelve Y.O.福井晴敏

  • 2008/12/09(火) 17:16:34

Twelve Y.O.Twelve Y.O.
(1998/09)
福井 晴敏

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人生の意義を見失い、日々をただ過ごしていただけの自衛官募集員・平貫太郎は、かつての命の恩人・東馬修一に偶然出会ったことから、想像もつかない日本の地下組織の闇に呑み込まれてゆく。最強のコンピュータ・ウィルス「アポトーシスII」と謎の兵器「ウルマ」を使って、米国防総省を相手にたった1人で脅迫劇を仕掛け続ける電子テロリスト・トゥエルブとは何者か。彼の最終的な目的は何なのか?絶望感と閉塞感が渦巻く現代を吹き抜ける一大スペクタクル・サスペンス!第44回江戸川乱歩賞受賞作。


タイトルは、マッカーサーの「現代文明をもって測定するなら、我々が45歳だとすると、日本人は、12歳の少年のようなものである。」という言葉に由来する。

ちょっと苦手な分野の読書だった。途中で何度かやめようかと思いながら、何とか読み終えた。日米双方の思惑のために、いとも簡単に命をやりとりする光景には、どうしても馴染むことができない。
日米と周辺諸国の一触即発の危うい均衡と、国益を護る攻防を描きながら、突き詰めるとひとりの父と息子の物語である。そこに国家の機密やら、重大任務やらが絡んでくるのが腑に落ちなくもあるのである。国を巻き込まず、一対一で突き詰めたらいいではないか、と。

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さようなら、コタツ*中島京子

  • 2008/12/05(金) 17:22:13

さようなら、コタツさようなら、コタツ
(2005/05/19)
中島 京子

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ささやかな夢をたくしたこの部屋に思いがけず訪問者はやってくる―。人生はせつなくて。おかしくて。いとしくて。さまざまな手触りの人間模様を描いた7つの物語。1つ1つが味わい深い上質の短編小説集。


表題作のほか、「へやのなか(短いまえがき)」 「ハッピー・アニバーサリー」 「インタビュー」 「陶器の靴の片割れ」 「ダイエットクイーン」 「八十畳」 「私は彼らの優しい声を聞く」

さまざまな部屋の中で営まれるさまざまな人間たちの生きる様の物語である。
部屋も、その主も、訪れる人々も、それぞれにまったく違っており、出会いあり別れあり、思い出あり・・・と状況もさまざまなのだが、どこかしら似た空気が漂う物語たちである。
胸に開いた穴を埋めようとするような、足りない部分を求めるような、さみしさのような切なさのようななにかに覆われているような心地がする一冊なのだった。

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仏果を得ず*三浦しをん

  • 2008/12/05(金) 07:49:19

仏果を得ず仏果を得ず
(2007/11)
三浦 しをん

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“好き”が過ぎるとバカになる。でも、そんなバカならなってみたい。文楽に賭ける若手大夫の熱い青春。直木賞作家が愛をこめて語ります。


仏果:仏道の修行によって得た仏の境地。

     演目
 一、幕開き三番叟
 二、女殺油地獄
 三、日高川入相花王
 四、ひらかな盛衰記
 五、本朝廿四考
 六、心中天の網島
 七、妹背山婦女庭訓
 八、仮名手本忠臣蔵


やんちゃだった高校時代に、文楽に出会って衝撃を受け、それから一途にのめりこんでいる健(たける)の物語である。
どこかスポーツ根性物とも通じるところがあるのは、ひたすら稽古稽古でなにかを悟るという心の持ちようが似ているからかもしれない。
そして、それぞれの演目ごとに健に降りかかる難題に答えを見つけ出す過程は、さながらミステリの謎解きのようである。
田中啓文氏の「笑酔亭梅寿シリーズ」を思い出させる雰囲気もある。

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黄泉路の犬――南方署強行犯係*近藤史恵

  • 2008/12/03(水) 19:20:46

黄泉路の犬―南方署強行犯係 (徳間文庫)黄泉路の犬―南方署強行犯係 (徳間文庫)
(2008/11/07)
近藤 史恵

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圭司が南方署に配属されて三ヶ月。同僚の黒岩からいきなり文庫本を渡されて、ページを開けと言う。83ページ。8+3でインケツ。會川君の負けで、ジュースを買いに行かされる。ヘタレだけでなくパシリにされてしまった。そんなときに事件は起こった。東中島で強盗、姉妹を刃物で脅して2万円奪い、チワワもとられたらしい。


警察官が主人公で、事件を捜査しながら謎を解いていくのだが、警察小説という枠に嵌めてしまうにはいささかためらいもある。コミカルさもあり、それぞれの私生活における葛藤もあり、ロマンスめいた匂いもあり、というエンターテインメントテイストたっぷりの一冊なのである。
主題は、動物を飼うことに関する人間の側の事情と、その命に対する認識という、重くて、なんともやりきれないものなのだが、そこにほかの要素が絡んできて、シリアスになったりコミカルになったりしており、そのバランスが絶妙だと思う。

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