蛍*摩耶雄嵩

  • 2009/01/31(土) 21:07:30

螢 (幻冬舎文庫)螢 (幻冬舎文庫)
(2007/10)
麻耶 雄嵩

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オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。


曰くつきの山奥の館に肝試し合宿にやってきた大学生六人。その夜、彼らの先輩でもある館の主が殺された。折りしも嵐のような集中豪雨のさなか、麓との唯一の連絡路である橋は決壊し、館の電話はすべて線が切られていた。密室とも言える舞台の出来上がりである。
思わぬミスリードがあるのだろうと、心して読み進んだが、比較的早い段階でたどり着いた予想がほとんど裏切られないストーリー展開で、かえって拍子抜けしてしまった。
館の元々の持ち主・作曲家の加賀蛍司の奇行や、それを上回るとも言える殺人鬼ジョージの所業には、目を背けたくなる心地だったが、物語自体には、もう一捻りあって欲しかったように思う。

犯罪小説家*雫井脩介

  • 2009/01/25(日) 20:49:19

犯罪小説家犯罪小説家
(2008/10)
雫井 脩介

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新進作家、待居涼司の出世作「凍て鶴」に映画化の話が持ち上がった。監督に抜擢された人気脚本家の小野川充は「凍て鶴」に並々ならぬ興味を示し、この作品のヒロインには、かつて伝説的な自殺系サイト「落花の会」を運営していた木ノ瀬蓮美の影響が見られると、奇抜な持論を展開する。待居の戸惑いをよそに、さらに彼は、そのサイトに残された謎の解明が映画化のために必要だと言い、待居を自分のペースに引き込もうとしていく。そんな小野川に、待居は不気味さを感じ始め――。全篇に充ちた不穏な空気。好奇心と恐怖が交錯する傑作心理サスペンス!


文学賞を取った「凍て鶴」が評判を博し、作家・待居涼司のもとには、映画化の話も数件舞い込んでいた。中でも熱心な人気脚本家・小野川充は、待居の気乗り薄な様子をものともせずに、集団自殺サイト「落花の会」の主催者・木ノ瀬蓮美や会の幹部たちの面影を映画に投影させようとするのだった。かつて自殺本を物した際に、「落花の会」のことを調べたことのあるフリーライターの今泉知里をも巻き込んで、「落花の会」調べが再び始められたのだが・・・・・。
誰を信じればいいのか、この行動は果たしてほんとうに自分の意思なのか、知らず知らずのうちに誰かに誘導されているのではないのか、ネット上のハンドルしか知らない人物は実際は誰なのか、などなど・・・、疑問が次々に沸いて出てくる。ただ、本作でいちばん言いたかったことが何なのかということが、「落花の会」調べに費やしすぎたせいか、いささかぼけてしまったようにも思えるのが少し残念でもある。

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ある日、アヒルバス*山本幸久

  • 2009/01/23(金) 17:03:29

ある日、アヒルバスある日、アヒルバス
(2008/10/17)
山本 幸久

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東京の観光スポットをめぐるバス会社・アヒルバスに入社して五年のバスガイド高松秀子(デコ)は、わがままなツアー客に振り回されながら仕事に励む毎日。ある日突然、新人バスガイド研修の指導員に指名されるが、自信のない態度が災いして、新人教育は遅々として進まない。そんな中、同期の中森亜紀にアヒルバスの「革命」を持ちかけられて……。軽快なテンポとユーモアあふれる筆致が笑いを誘う一方、主人公デコをはじめバスガイドたちが、それぞれに悩みを抱えながらも奮闘する姿は、胸に沁み、生きる元気が湧いてきます。名手がおくるとびきりのお仕事&青春小説です。また、アヒルバスのガイドたちによる東京名所の観光案内も読みどころのひとつ。二重橋、都庁、お台場、東京タワー、浅草、築地本願寺など、よく知っているつもりの観光スポットも、デコたちのガイドにかかれば意外な新発見があるかも。アヒルバスならではのTOKYO観光をお楽しみください。


著者のお仕事小説、バスガイド編である。
元気で愉しく痛快。コメディタッチで、おひさまのような物語なのだが、一歩踏み込めば、プロが働く職場である限り、そこにはいろいろあるのである。バスガイドという職業ならではの、個人的な悩みや、対人(客)的なあれこれ、そして、職場の人間関係まで・・・。それらが面白おかしく、しかも真剣に描かれていて、釣り込まれるように読み進んでしまうのである。
「凹組」が、こんなところで仕事を請け負っているのを発見できたのも懐かしく嬉しいものである。

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モダンタイムス 特別版*伊坂幸太郎

  • 2009/01/22(木) 10:12:50

モダンタイムス 特別版 (Morning NOVELS)モダンタイムス 特別版 (Morning NOVELS)
(2008/10/15)
伊坂 幸太郎

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検索から、監視が始まる。 漫画週刊誌「モーニング」発の初めての小説! 花沢健吾氏による連載時の全イラストも楽しめる特別版。


『魔王』その後の物語である。
花沢健吾氏のイラストが挿入されているためもあり、616ページという大作である。読書自体は、はらはらどきどきわくわく愉しめるのだが、本を支えるのに疲れる一冊ではある。

バイオレンス物のような場面があちこちに出てきて、その辺りでは何度も顔を顰めてしまったが、それはもちろん物語の主軸ではなく、著者が言いたいのは、迂遠なシステムによって、悪行を働く者等が歯車のひとつとなり、良心を咎めずに仕事として悪の一端を担わされてしまうことの恐ろしさではないだろうか。そして更には、インターネット上でのあまりの無防備に対する警鐘でもあるのかもしれない。
物語の舞台は近未来。二十一世紀半ばとのことだが、いまの時代でも荒唐無稽と言い切ってしまえない恐ろしさも潜んでいるような気がして背筋が寒くなる。

また、主人公の渡辺拓海の友人として井坂好太郎という作家が出てくる――あとがきに、名前を考えるのが億劫だったので自分の名前を変形させた、とある――が、イラストの井坂好太郎氏が著者そっくりなので、もう伊坂氏ご本人としか思えなくて笑ってしまう。この名前にしたからこそ書けるキャラクターでもあっただろう。

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ホームズのいない町*蒼井上鷹

  • 2009/01/18(日) 19:52:24

ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS) (双葉ノベルス)ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS) (双葉ノベルス)
(2008/03/19)
蒼井 上鷹

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そんじょそこらにホームズのように名推理ができる人はいません。登場人物が不完全な推測をし合い、勝手に誤解をして、いつもおかしな展開に。妻とのロマンスのために庭を掘ってほしくない男と、庭のお金を掘り返したい男の思惑が交錯する「第二の空き地の冒険」など短編七編と、関連する掌編が六編入った、傑作ミステリー集。


「六本のナポレオン」 「被害者は二人」 「あやしい一輪車乗り」 「ペット探偵帰る」 「第二の空き地の冒険」 「赤い○」 「五つも時計を持つ男」 「吐く人」 「四つのサイン入り本」 「銀星ちゃんがいっぱい」 「まだらのひもで三㎏」 「覆面の依頼人」 「もう一本の緋色の糸」

短編掌編合わせて十三の連作集。
物語ごとに事件や主役を換えながら、少しずつリンクして次の作品へとつないでいるが、全体を通してみてみれば、謎解きも見事に一本になっていて、二度も三度も愉しい一冊である。
決まった探偵役がいるわけでもなく、登場人物がそのときどきにあてずっぽうやら推理やらで謎を解くのだが、ときには見当違いだったりもして、シリアスなのかコミカルなのかも判らなくなることがある。幾筋にも分かれた道筋が、ラストに向かってひとつになっていくときに胸が高鳴るのだった。

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夏のくじら*大崎梢

  • 2009/01/16(金) 19:02:05

夏のくじら夏のくじら
(2008/08)
大崎 梢

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都会から高知にやってきた大学生・篤史は、従兄弟から強引に本場・よさこい祭りに誘われる。衣装、振り付け、地方車、鳴子。六年ぶりに復活する町内会チームは、どこよりも熱い。南国高知、真夏の風は、空から海へと吹き抜ける。一途な思いを秘めて、踊る青春群像。


篤史は東京で家族と暮らしていたが、高知大学に入学が決まり、祖父母や従兄弟が住む高知へやってきた。従兄弟の多郎に強引に誘われて、よさこい祭りに参加することにさせられてしまったのだが、みんなの熱意と祭りの熱気の中にいるうちに、次第に自分も燃えてくるのだった。
篤史が高知に来たのには実はある理由があったのだった。四年前、成り行きから参加したよさこいのときに、メダルをくれた年上の女性を探し、自分が取ったメダルをあげること。中学生のころほのかな恋心を抱いたが、それきり会うことが叶わなかった彼女との約束なのだった。
祭りの準備のあれこれ――衣装、音楽、振り付け、地方車の飾りつけ、参加者集め、タイムスケジュール、ほかにも山ほど――の大変さ、祭り本番に向けていやが上にも高まる興奮。期待と不安、自信のなさや自負。そんなよさこい祭り自体の熱気に、ほとんど手がかりがないと言ってもいいような女性探しというミステリの要素が加わって、ただ汗と涙の感動物語というだけではない、ほろ苦くて甘い物語にもなっていて、とてもバランスがよく、じんわりあたたかい一冊だった。

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ねこ!ネコ!猫!*山前譲編

  • 2009/01/15(木) 17:14:12

ねこ!ネコ!猫!―NEKOミステリー傑作選 (徳間文庫)ねこ!ネコ!猫!―NEKOミステリー傑作選 (徳間文庫)
(2008/10/03)
山前 譲

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猫こそミステリーの題材にはぴったり。人気作家が繰り広げる華麗なる競演。


  

 保健室の午後  赤川次郎
 共犯関係  小池真理子
 猫の家のアリス  加納朋子
 猫と死の街  倉知淳
 光る爪  柴田よしき
 見えない猫  黒崎緑
 一匹や二匹  仁木悦子


猫に纏わるミステリ選である。もちろんどの物語にも猫が出てくる。しかもかなり重要なポイントとして。
わたし自身は特に猫好きというわけではないが、猫好きには二倍の愉しみ、といったところかもしれない。
それぞれの作家の猫の扱い方も興味深い。

おそろし--三島屋変調百物語事始*宮部みゆき

  • 2009/01/14(水) 13:39:55

おそろし 三島屋変調百物語事始おそろし 三島屋変調百物語事始
(2008/07/30)
宮部 みゆき

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ある事件を境に心を閉ざした17歳のおちかは、神田三島町の叔父夫婦に預けられた。おちかを案じた叔父は、人々から「変わり百物語」を聞くよう言い付ける。不思議な話は心を溶かし、やがて事件も明らかになっていく。


「第一話 曼珠沙華」 「第二話 凶宅」 「第三話 邪恋」 「第四話 魔鏡」 「最終話 家鳴り」

おちかは、とある事情で叔父夫婦の営む江戸の袋物屋・三島屋に預けられることとなった。出歩くのも人と交わるのも気鬱なおちかだったが、あるとき叔父から、お客人の話を伺うように、と言いつかる。これが変調百物語の始まりであった。
客人の話は、おいそれとは他人に言えない胸のうちのわだかまりごとであり、おちかが我がことのように親身になって耳を傾ける内に、語る人の想いと共鳴し、その人の重荷をわずかに軽くするのだった。そしてそれは、おちかにも早く新しい道を歩き出して欲しいという、叔父夫婦の思いやりでもあったのだった。
しかし、どうした按配か事は次々と繋がり、話の中で聞いただけのいまは亡き人々をも巻き込んで、とんでもない様相を見せるのである。
物語のはじまりとおわりのおちかの様子のなんと違って見えることだろう。怯え、俯いてばかりいたおちかが、最後には、凛として明日を見つめる女性になっているように思えるのである。

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辛い飴*田中啓文

  • 2009/01/12(月) 16:53:39

辛い飴―永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)辛い飴―永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)
(2008/08)
田中 啓文

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唐島英治クインテットの面々が遭遇した不思議な出来事や謎。テナーサックス奏者・永見緋太郎の鮮やかな名推理は―。ライヴ感溢れる文体が魅力の“日常の謎”的ジャズミステリシリーズ、第二弾。名古屋のライヴハウスに現れたという伝説のブルースマンにまつわる謎、九州地方の島で唐島と永見が出合った風変わりな音楽とのセッションの顛末、“密室”から忽然と消失したグランドピアノの行方、など七編を収録。田中啓文おすすめのジャズレコード、CD情報付。


永見緋太郎シリーズ第二弾である。
アンソロジーで表題作を読んでから、待ちに待ったという感じ。

表題作のほか、「苦い水」 「酸っぱい酒」 「甘い土」 「塩っぱい球」 「渋い夢」 「淡白な毒」

あとがきによると、タイトルに苦労したそうだが、それぞれ「味」がひとひねりされて活かされた物語になっている。民俗学を思わせる「甘い土」は、ジャズをモチーフにした本シリーズにあって、いささか異色であるが、ラストの永見の推理――というか想像――が見事ジャズど真ん中で、嬉しくもあり感心させられた。
空気を読むのが得意とは思えない永見の、その場にいる誰よりも効果を知り尽くしているような謎解きに胸がすく思いでもある。

夏期限定トロピカルパフェ事件*米澤穂信

  • 2009/01/10(土) 17:56:40

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)
(2006/04/11)
米澤 穂信

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小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?待望のシリーズ第二弾。


『春期限定いちごタルト事件』の続編。
わけあって小市民を目指すべく、恋愛関係にも依存関係にもない、いわゆる互恵関係を続ける小鳩くんと小佐内さんの、前作のほぼ一年後の夏休みの物語である。
物語は初めから、「どうしちゃったの小佐内さん?」という小鳩くんの違和感からはじまり、その勘が間違っていなかったことを悟り、ふたりの関係を見つめなおすという結末までのあいだに、いくつものスイーツを賞味し、小市民たることを放棄しそうになり、危うい体験をし、真相に思い至り・・・、と盛りだくさんである。ラストはいささか切なくほろ苦いが、来月出る続編で、その後のふたりのことも判るのではないかと思う。待ち遠しい。

東京島*桐野夏生

  • 2009/01/09(金) 19:12:57

東京島東京島
(2008/05)
桐野 夏生

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あたしは必ず、脱出してみせる――。ノンストップ最新長篇!

32 人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!


読み始める前は、もっと象徴的な物語かと思っていたのだが、まさに無人島サバイバル物語であった。
ただ、たったひとりの女を含む男たちの、ある意味閉ざされた場所での落胆と焦燥と本能の欲求とで始まった日々の生き様は、それまで生きていた場所の縮図とも言えるようで興味深い。名前を与えることで、何もなかった物事に意味づけをする様子は、現代人の心許なさを見るようでもある。しかも、皆が心の拠り所とするいわば中心的な場所につけられた名前が、「ナガタチョウ」でも「カスミガセキ」ではなく「コウキョ」であるというのもとても日本人的であり、皮肉でもあるように思われる。
後日談には、拍子抜けの感もあるが、納得もできる。脱出した者と残った者、どちらがほんとうに幸福だろうか。

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カラスの親指*道尾秀介

  • 2009/01/07(水) 21:47:09

カラスの親指 by rule of CROW’s thumbカラスの親指 by rule of CROW’s thumb
(2008/07/23)
道尾 秀介

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“詐欺”を生業としている、したたかな中年二人組。ある日突然、彼らの生活に一人の少女が舞い込んだ。戸惑う二人。やがて同居人はさらに増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは。


物語は最初からテンポよく展開し、わくわくドキドキ、そしてひやひやしつつ、どんな結末に落ち着くことになるのだろうかと想像をめぐらせながら読んだのだが、ラストのあとの後日談のような章にこんな打ち明け話が待っていようとは・・・・・。
見事にしてやられたが、充実度は倍増である。映画で観てみたい気もする。

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火村英生に捧げる犯罪*有栖川有栖

  • 2009/01/05(月) 17:29:30

火村英生に捧げる犯罪火村英生に捧げる犯罪
(2008/09/25)
有栖川 有栖

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「とっておきの探偵にきわめつけの謎を」。臨床犯罪学者・火村への挑戦状が予告する犯罪とは―。洒脱。諧謔。情熱。驚き。本格推理の旗手の技に酔う。

京都で、30歳のエステティシャンが扼殺された。ほどなくして、大阪府警に「これは火村英生に捧げる犯罪だ」という文面の挑戦状が届く。一方、作家の有栖川有栖のもとには「先生に盗作されたと言っている人物がいる」との怪電話が……。気鋭の犯罪社会学者・火村英生と、ワトソン役の作家・有栖川有栖が登場する人気シリーズ。表題作含む短篇4本、そして携帯サイトに掲載された掌篇4本の計8本、本格ミステリーの旗手の精緻かつ洒脱な作品世界にどっぷりお浸かり下さい。


表題作のほか、「長い影」 「鸚鵡返し」 「あるいは四風荘殺人事件」 「殺意と善意の顛末」 「偽りのペア」 「殺風景な部屋」 「雷雨の庭で」
携帯サイト向けの作品もあるせいか、短編から掌編まで、長さはまちまちである。しかし、火村英生准教授(教育法の改正により、助教授から准教授という呼称に統一されている)と有栖川有栖シリーズの旨味はそのままであり、京都・大阪両府警の個性的で味のある刑事たちから、火村先生の下宿のおばちゃんまで総登場で、嬉しい限りである。
相変わらずの火村先生の冷静で細かい観察眼と、アリスの引き立て役振りが好ましい。

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壁抜け男の謎*有栖川有栖

  • 2009/01/03(土) 16:35:52

壁抜け男の謎壁抜け男の謎
(2008/05/01)
有栖川 有栖

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犯人当て小説から近未来小説、敬愛する作家へのオマージュから本格パズラー、そして官能的な物語まで。目眩くアリス・ワールドのカオス!有栖川有栖の魅力を余すところなく満載した最新傑作作品集。


表題作のほか、「ガラスの檻の殺人」 「下り「あさかぜ」」 「キンダイチ先生の推理」 「彼方にて」 「ミタテサツジン」 「天国と地獄」 「ざっくらばん」 「屈辱のかたち」 「猛虎館の惨劇」 「Cの妄想」 「迷宮書房」 「怪物画趣味」 「ジージーとの日々」 「震度四の秘密」 「恋人」

短編あり、掌編あり、読者への挑戦もあり、オマージュありと、長さも趣向もさまざまな一冊である。
有栖ワールドのいろいろをこの一冊で味わうことができる、とも言えるが、反面、もっとじっくり仕掛けや謎解きを愉しみたかったという物足りなさをも感じてしまうのである。贅沢かもしれないが。