Story Seller

  • 2009/04/30(木) 13:36:14

Story Seller (新潮文庫)Story Seller (新潮文庫)
(2009/01/28)
新潮社ストーリーセラー編集部

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これぞ「物語」のドリームチーム。日本のエンターテインメント界を代表する7人が、読み切り小説で競演!短編並の長さで読み応えは長編並、という作品がズラリと並びました。まさに永久保存版アンソロジー。どこから読んでも、極上の読書体験が待つことをお約束します。お気に入りの作家から読むも良し、新しい出会いを探すも良し。著作リストも完備して、新規開拓の入門書としても最適。


 首折り男の周辺  伊坂幸太郎
 プロトンの中の孤独  近藤史恵
 ストーリー・セラー  有川浩
 玉野五十鈴の誉れ  米澤穂信
 333のテッペン  佐藤友哉
 光の箱  道尾秀介
 ここじゃない場所  本多孝好


甲乙付けがたい面白さである。視点のズレ、時間軸のズレ、着想のズレ、を愉しめる物語でもある。作家の持ち味+αがあるようにも思われる。
米澤作品は、別のアンソロジーで既読だったが、この作品群の中にあって、前回とはまた違った不穏さも感じられた気がする。
まさに、「面白いお話」の詰まった一冊である。

ナイチンゲールの沈黙*海堂尊

  • 2009/04/26(日) 17:18:38

ナイチンゲールの沈黙ナイチンゲールの沈黙
(2006/10/06)
海堂 尊

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東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。


東城医大シリーズというのか、桜宮シリーズというのか、このシリーズをなぜか時間を遡って読むようなめぐりあわせになってしまったが、それはそれであとからいろいろ納得できることもあり興味深い。
本作は、看護師・小夜の、レティノの患者・牧村瑞人の、伝説の歌手・水落冴子の、それぞれの負っている闇が、東城医大病院という場所に集まってしまったために起こった事件の物語であろう。
田口・白鳥コンビの息もぴったり(!?)で、田口先生が田口先生らしくて好感がもてる。
実力派看護師たちの存在感も見応えがある。

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造花の蜜*連城三紀彦

  • 2009/04/23(木) 09:02:10

造花の蜜造花の蜜
(2008/11)
連城 三紀彦

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造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。高橋は開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。


一体何度クライマックスに近づく興奮を味わわせれば気が済むのだろう。登りつめたと思えば、更にその先に登るべき道が続いている。そして、とうとうほんとうに登りきり、頂上に立って再び下りてきたと思えば、気を抜くまもなく、まるでデジャブのように同じ登り道を登っていることに気づかされるのである。
単純な誘拐事件の様相ではじまった物語は、誰もが真実を語っていないような不穏さで満ちみち、最初から最後まで不協和音を奏でながら、しかし終わってみれば見事な協奏曲になっている。
ページを繰る手を止められない一冊だった。

螺鈿迷宮*海堂尊

  • 2009/04/21(火) 10:47:27

螺鈿迷宮螺鈿迷宮
(2006/11/30)
海堂 尊

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この病院は、あまりにも、人が死にすぎる――
日本の医療界を震撼させた「バチスタ・スキャンダル」から一年半。その舞台となった東城大学に医学生として通う天馬は、留年を繰り返し既に医学の道をリタイア寸前だった。ある日、幼なじみの新聞記者・葉子から、碧翠院桜宮病院に潜入できないかと依頼を受ける。東城大学の近隣病院である桜宮病院は、老人介護センター、ホスピス施設と寺院を一体化させた複合型病院であり、終末医療の最先端施設としてメディアの注目を集めていた。しかし、その経営には黒い噂が絶えないという。天馬は葉子の依頼を受け、看護ボランティアとして桜宮病院に通い始める。そのうちに、奇妙な皮膚科医・白鳥と看護師・姫宮と出会うことになり……。


舞台は桜宮市、東城医大と並々ならぬ縁のある桜宮病院である。
蝸牛のような威容(異様?)を誇る桜宮病院にかかわる人々の思いやシステムの光と闇を探り出すべく潜入した落ち零れ医学生・天馬大吉が、自らも翻弄されながら――多分に無自覚のうちに――核心に迫っていくスリルがたまらない。
そして、部外者だった天馬の、この一連の物語との意外なつながりを知るに至って、縁(えにし)の抗いがたい不思議さを思わされるのである。
ラストに不穏さを残した一冊でもある。

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散りしかたみに*近藤史恵

  • 2009/04/17(金) 17:28:06

散りしかたみに散りしかたみに
(1998/03)
近藤 史恵

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歌舞伎座での公演の最中、毎日決まった部分で必ず桜の花びらが散る―しかもたったの一枚。誰が、どうやって、何のために花びらを降らせているのか?師匠の命令でこの小さな謎を解くために調査を開始した新米女形・小菊の前に、歌舞伎の世界で三十年にわたって隠されてきた哀しい真実が、姿を現しはじめる…。歌舞伎座を舞台に繰り広げられる、妖艶な書き下ろし本格推理。


小菊・今泉シリーズである。
公演中に、毎日たった一枚だけひらひらと舞う季節はずれの桜の花びら。小菊が師匠・菊花に言いつかって、大学の同級生の探偵・今泉に調査を依頼したのだが、様子を見に歌舞伎座にやってきた今泉は、市川伊織の楽屋からでてきた妖艶な美女を見るや、手を引いた方がいい、と言う。わけのわからない小菊が更に調べを進めるが、花びらの謎は一向に解けない。
気の進まないまま乗り出した今泉が明らかにした真実は、歌舞伎の世界ならではの、まさに凄絶とも言える因果であった。
小菊と今泉のキャラクターや役割分担が、ますますくっきりとし、今泉の助手の美少年・山本くんの存在感も、なかなかである。歌舞伎という特殊とも言える世界での謎を充分堪能できる一冊である。

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ねむりねずみ*近藤史恵

  • 2009/04/16(木) 17:27:10

ねむりねずみ (黄金の13)ねむりねずみ (黄金の13)
(1994/07)
近藤 史恵

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しがない中二階なれど魅入られた世界から足は洗えず、今日も腰元役を務める瀬川小菊は、成行きで劇場の怪事件を調べ始める。二か月前、上演中に花形役者の婚約者が謎の死を遂げた。人目を避けることは至難であったにも拘らず、目撃証言すら満足に得られない。事件の焦点が梨園の住人に絞られるにつれ、歌舞伎界の光と闇を知りながら、客観視できない小菊は激情に身を焼かれる。名探偵今泉文吾が導く真相は?梨園を舞台に展開する三幕の悲劇。歌舞伎ミステリ。


失語症状が現れるようになり、役者生命の危機に瀕する若手歌舞伎役者・中村銀弥と、浮気(?)による後ろめたさを忍びつつ夫を気遣う妻の様子を描いた第一幕。第二幕では、場面がまったく変わり、大阪の劇場内での謎の死の事件が描かれる。
探偵・今泉文吾は、衆人環視下における事件の真相を探って大阪にやってきた。そこで舞台を終えた大部屋役者瀬川小菊と出会い、小菊もともに事件を調べることに・・・・・。
第一幕の銀弥の失語症と第二幕の謎の死の事件とがどうつながるのか、と興味津々で読み進んだ。それは、第三幕のラストで明らかにされるのだが、役者――しかも歌舞伎の女形――でなければこうはならなかっただろう、というようなつながり方で、見事である。
探偵・ブンちゃんのキャラクターもなかなか味があって好感が持てる。

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四畳半神話大系*森見登美彦

  • 2009/04/15(水) 19:19:33

四畳半神話大系四畳半神話大系
(2004/12)
森見 登美彦

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大学三回生の春までの二年間を思い返してみて、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。―『太陽の塔』(第十五回日本ファンタジーノベル大賞受賞作)から一年。無意味で楽しい毎日じゃないですか。何が不満なんです?再びトンチキな大学生の妄想が京都の街を駆け巡る。


「四畳半恋ノ邪魔者」 「四畳半自虐的代理代理戦争」 「四畳半の甘い生活」 「八十日間四畳半一周」

大学三回生の主人公が、入学当時、別の選択をしていたら・・・・・、という夢のような物語である。
その選択肢とは、映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外のビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関<福猫飯店>である。
どの選択をしても、細かいところが微妙に変わるだけで、大筋に大した変化はないのだが、大真面目にやり直している感じがして、可笑しく切ない。

風花病棟*箒木蓬生

  • 2009/04/13(月) 17:05:01

風花病棟風花病棟
(2009/01)
帚木 蓬生

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乳ガンにかかり“病と生きる不安”を知った、泣き虫女医の覚悟―顔を失った妻を愛する男の、限りない献身―三十年間守り続けた診療所を引退せんとする、町医者の寂寞―現役医師にしか書き得ない悩める人間を照らす、たおやかな希望の光。あなたの魂を揺さぶる、人生の物語。帚木蓬生、十年間の集大成。感動と衝撃の傑作小説集


「メディシン・マン」 「藤籠」 「雨に濡れて」 「百日紅」 「チチジマ」 「顔」 「かがやく」 「ショットグラス」 「震える月」 「終診」

静かに胸を打たれる一冊である。
現役医師でなければ解らない、医療に携わるものの心の機微や、患者と医師のかかわり方、ひとりの人間としての医師の思いなどが、平易で静かな言葉で綴られていて、日常の中に病という非日常が入り込んでいる世界の並々ならなさが伝わってくるようでもあった。

家族の時代*清水義範

  • 2009/04/12(日) 11:26:11

家族の時代家族の時代
(1995/05)
清水 義範

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49年連れ添った両親が離婚を宣言。が、これからも生活は今までどおりだという。息子、娘たちは理由がさっぱりわからず、それぞれの家族を含めて、大騒ぎに。どうやら、長年世話になった家族同然の女性に遺産を分けるためらしいが…。それぞれの思惑と愛情が交錯して、意外な結末にたどり着く。読売新聞夕刊に連載したユーモアあふれ暖かみのある家庭小説。


会社を長男に譲り渡し、子どもたちもみな結婚して独立し、隠居生活をしている両親。それぞれ結婚し、配偶者や子どもたちとの生活に追われ、両親や兄弟たちとも疎遠になっていく子世代。そんなところに、父が母と離婚するという青天の霹靂のような宣言をする。
家族とはなにか、ということを嫌でも考えなければならない自体になって、それぞれがあれこれと思いをめぐらせるのである。そんな場合、両親のことも大事なのはもちろんだが、なにより自分たち家族を中心に物事を考えてしまったりもするのである。突拍子もない宣言にあたふたする家族たちが、人間味あふれていて面白い。

ランナー*あさのあつこ

  • 2009/04/10(金) 17:29:08

ランナーランナー
(2007/06)
あさの あつこ

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『バッテリー』を凌駕する、新たなる代表作!

この文体、この勢い、あさのワールドのまっただ中!
そしていつもの数倍、心に迫ってくる圧倒的なエンディング。
『バッテリー』を軽く超えちゃったね!
ーー金原瑞人氏(翻訳家・法政大学教授)

この作品は、現代の『走れメロス』だ。
かすかにでも、信じられる愛があるならば、碧李よ走れ。「メロス」となれ。
ーー茂木健一郎氏(脳科学者)

〈あらすじ〉
「おれは走れないんじゃない、走らないだけだ、そう信じたくて、逃げちまったんだ」
長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の加納碧李(ルビ:あおい)は、複雑な境遇の妹を案じ、陸上部を退部することを決意した。
だがそれは、たった一度レースに負けただけで走ることが恐怖となってしまった自分への言い訳だった。
走ることから、逃げた。逃げたままでは前に進めない。
碧李は、再びスタートラインを目指そうとする----。

〈著者のコメント〉
 長距離走は、否応なく自分と向き合ってしまうスポーツです。走ること以外には何もいらない、たった一つの肉体としての自分がいる。そんな少年を描いてみたいと思ったんです。そしてその周りにいる様々な人間たちを描いてみたい。子供と大人、男と女、様々な人間が抱えるドラ
マを書きたいと思ったんです。(「パピルス」13号インタビューより)


陸上競技の物語だということは、タイトルから容易に想像することができる。爽やかなスポ根ものなのだろうと思って読み始めたが、軽やかに走るどころではない難題が、主人公の高校生・加納碧李(あおい)にはのしかかっているのだった。
いちばん悪いのは、もちろん浮気をしたあげく出て行った父親・謙吾である。そして、残されたものたちは、それぞれに苦悩を抱えて日々をすごしているのだ。幼い妹・杏樹でさえも。それなのに、後半に出てくる謙吾がいかにも平然としているように見えるのが、いささか気に入らないところである。
碧李の周りの見守る目のあたたかさが、物語を救っている。

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儚い羊たちの祝宴*米澤穂信

  • 2009/04/09(木) 19:45:51

儚い羊たちの祝宴儚い羊たちの祝宴
(2008/11)
米澤 穂信

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ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。


「身内に不幸がありまして」 「北の館の罪人」 「山荘秘聞」 「玉野五十鈴の誉れ」 「儚い羊たちの晩餐」

大学の読書クラブ「バベルの会」がつなぐ連作短編集。
物語の出だしはどれも、なんということもなく穏やかに始まる。だが、次第に不穏な様相を呈してきたと思うと、ラスト間近でとんでもない真相が明らかにされるのである。
ミステリというよりも、ホラー色が強いように思われ、読後感は決してよくない。

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桜姫*近藤史恵

  • 2009/04/08(水) 19:21:49

桜姫 (文芸シリーズ)桜姫 (文芸シリーズ)
(2002/01)
近藤 史恵

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十五年前、大物歌舞伎役者の跡取りとして将来を嘱望されていた少年・市村音也が幼くして死亡した。それ以後、音也の妹・笙子は、自らの手で兄を絞め殺す生々しい夢に苦しめられるようになる。自分が兄を殺してしまったのではないだろうか―。誰にも言えない疑惑を抱えて成長した笙子の前に、かつて音也の親友だったという若手歌舞伎役者・市川銀京が現れた。音也の死の真相を探る銀京に、笙子は激しい恋心を抱くようになるが―。梨園を舞台に繰り広げられる痛切な愛憎劇。ミステリ界の最注目株・近藤史恵が満を持して放つ、書き下ろし歌舞伎ミステリ。


歌舞伎という独特の世界を舞台とし、そこにミステリがしっかりと絡みついた物語である。
というよりも、歌舞伎の世界でなければ起こらなかったであろう事が、鍵になっていて、唸らされる。
大部屋役者の瀬川小菊と、探偵・今泉文吾のコンビ(?)に興味が湧く。シリーズ物と知らずに読み始めたので、ほかの作品も読んでみたい。

やさしいため息*青山七恵

  • 2009/04/07(火) 18:38:30

やさしいため息やさしいため息
(2008/05/16)
青山七恵

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社会人5年目で友人なし。恋人は3ヶ月前に出て行ったばかり。そんな私の前に、行方知れずの弟と緑くんが現れて…。

今日はどんな一日だった? 4年ぶりに再会した弟が綴るのは、嘘と事実が入り交じった私の観察日記。立ちこめる湯気の中、私は冷たい肌が温まっていくのを感じている……。『ひとり日和』で芥川賞を受賞した著者が描く、OLのやさしい孤独。


表題作のほか、「松かさ拾い」

人と深くかかわらず、起伏のない日々を過ごしているOLのまどか。いつものようにまっすぐ部屋に帰って、ひとり素うどんを食べるはずだったが、電車の中で偶然行方知れずの弟・風太に出会い、一緒に部屋に帰ることに・・・・・。
弟の出現で、変わり映えのしない日常に小さな波紋が広がったのだが、彼の存在は、自分の人生の退屈さを思い知らされることでもあったのだった。
堅実に生きているように見えるまどかと、とらえどころのない風来坊の風太、という図式になってはいるが、風太のそれは、多分に計算されたものでもあって、さみしいやさしさを感じさせられもする。ほんとうに泣きたいのは、もしかすると風太なのかもしれない。

医学のたまご*海堂尊

  • 2009/04/07(火) 13:34:46

医学のたまご (ミステリーYA!)医学のたまご (ミステリーYA!)
(2008/01/17)
海堂 尊

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僕は曽根崎薫、14歳。歴史はオタクの域に達しているけど、英語は苦手。愛読書はコミック『ドンドコ』。ちょっと要領のいい、ごくフツーの中学生だ。そんな僕が、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、東城大学の医学部で研究をすることに。でも、中学にも通わなくちゃいけないなんて、そりゃないよ……。医学生としての生活は、冷や汗と緊張の連続だ。なのに、しょっぱなからなにやらすごい発見をしてしまった(らしい)。教授は大興奮。研究室は大騒ぎ。しかし、それがすべての始まりだった……。ひょうひょうとした中学生医学生の奮闘ぶりを描く、コミカルで爽やかな医学ミステリー。


落ちこぼれの中学生が、ちょっとしたズルのせいで日本一の潜在能力の持ち主ということになってしまい、医学部で研究をすることに・・・・・。
大学の教授の俗物ぶりや、振り回される(カオルも含めた)研究室のメンバーたちの日常も興味深いが、マサチューセッツにいるゲーム理論の研究者である父とのメールでのやりとりが、なんと言っても面白い。遠く離れてはいるが、父の気持ちが、いつもカオルに寄り添っていることがとてもよく伝わってきて心地好いのである。そして、各章のタイトルにもなっている格言のような父の言葉が、真理をついていてひときわ印象深い。
中高生向けに書かれた一冊のようであるが、ぜひ、つづきを読んでみたい。

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TOKYO BLACKOUT*福田和代

  • 2009/04/05(日) 19:29:34

TOKYO BLACKOUTTOKYO BLACKOUT
(2008/10)
福田 和代

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8月24日午後4時、東都電力熊谷支社の鉄塔保守要員一命殺害。午後7時、信濃幹線の鉄塔爆破。午後9時、東北連系線の鉄塔にヘリが衝突、倒壊。さらに鹿島火力発電所・新佐原間の鉄塔倒壊――しかしこれは、真夏の東京が遭遇した悪夢の、まだ序章に過ぎなかった。最後の希望が砕かれたとき、未曾有の大停電が首都を襲う!

目的達成のため暗躍する犯人たち、そして深刻なトラブルに必死に立ち向かう市井の人々の姿を鮮やかに描破した渾身の雄編。大型新人が満を持して放つ超弩級のクライシス・ノヴェル!


電気という、いまやスイッチを入れれば点くのが当たり前というライフラインに照準を当てたのが、まず大成功と言えるだろう。現代人にとって電気はもはやなくてはならないものになっているということを、改めて実感させられる。電気が消えて、ご飯も炊けないと嘆く若い嫁に、ここぞとばかりにはりきって鍋で豆ご飯を炊く姑の姿が印象的である。
犯行声明も要求もなにもないテロである。事件の背景が読めないことが、捜査陣や東都電力の関係者の苛立ちを煽る。しかも、一見無関係の事件が、繋がる様相を見せるに至って、戸惑いは深まるばかりなのである。
犯人の動機をここに明かすわけにはいかないので、詳しくは言えないが、我が身可愛さのための無関心が、回りまわって自分に帰って来た、とも言えるように思う。情けは人のためならず、である。
主犯の思いは理解できなくはないのだが、共犯にされた外国人たちの行動は――その思いはわからなくはないが――あまりにも行き当たりばったりで、捨て駒に使われた感が拭えない。あまりにも哀れな最期である。

掌の中の小鳥*加納朋子

  • 2009/04/04(土) 13:33:32

掌の中の小鳥 (創元推理文庫)掌の中の小鳥 (創元推理文庫)
(2001/02)
加納 朋子

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ここ“エッグ・スタンド”はカクテルリストの充実した小粋な店。謎めいた話を聞かせてくれる若いカップル、すっかりお見通しといった風の紳士、今宵も常連の顔が並んでいます。狂言誘拐を企んだ昔話やマンションの一室が消えてしまう奇談に興味はおありでしょうか?ミステリがお好きなあなたには、満足していただけること請け合い。―お席はこちらです。ごゆっくりどうぞ。


表題作のほか、「桜月夜」 「自転車泥棒」 「できない相談」 「エッグ・スタンド」

それぞれが、のりしろを重ねるように少しずつ重なった連作短編集である。
ある物語では主役にもなっている女バーテンダーの店「エッグ・スタンド」で語られ、解かれる、日常のちょっとした謎の物語である。ブラックと言うほどではないが、ダークな風味の謎が解かれていくのを同じ店の傍らの席で聞いているような心地にもさせられる一冊である。

こうふく あかの*西加奈子

  • 2009/04/02(木) 17:06:12

こうふく あかのこうふく あかの
(2008/03/27)
西 加奈子

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二ヶ月連続作品「こうふく」シリーズ第二作
結婚して十二年、三十九歳の調査会社中間管理職の「俺」の妻が、ある日他の男の子どもを宿す話。
二〇三五年、小さなプロレス団体に所属する無敵の王者、アムンゼン・スコットの闘いの物語。二つの話が響き合う。


一作目の『こうふく みどりの』とのつながりは、「ここからそこへ、そうつなげたか!」という感じである。伏線はしっかり張られていたのだ。
そして、本作では、2007年の物語と2039年の物語が並行して語られ、初めはまったく関係がないように別々に進んでいくのだが、あるところでそのつながりが見えてくると、いままで見てきた景色に突然色がついたような興奮を覚えるのである。
前作からのどの登場人物も無意味ではないのだということを思わされもする。

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こうふく みどりの*西加奈子

  • 2009/04/02(木) 13:36:18

こうふく みどりのこうふく みどりの
(2008/02/28)
西 加奈子

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お前んち、いっつもええ匂いするのう。おばあちゃん、夫(おじいちゃん)失踪中。お母さん、妻子ある男性を愛し、緑を出産。藍ちゃん、バツイチ(予定)、子持ち。好きになったら年齢問わず。桃ちゃん、4歳なのに、まだおっぱい吸いに来る。辰巳緑、14歳、女未満。初恋まであともう少し。


「こうふく」二部作のうちの一冊。
二部作といっても、「道」をキーワードにつながるもので、それぞれに完結した物語であるようだ。
本作は、14歳の辰巳緑の物語である。緑と彼女の――ペットも含めて――女ばかりの家族の。
客観的に見ると、緑の環境はかなり偏っているのだが、そのことをなんとなくわかりながらもはっきりとは自覚せず、当たり前のこととして普通に生活している緑である。14歳という年齢にしては大人びてみえるのも家庭環境と友人の影響かもしれない。
全編関西弁で書かれていて、それがまた、辰巳家の時間の流れ方に現実感を与えているように思われる。
祖母・母・従姉妹、それぞれが抱えているものの重さが、挿入される手紙や独白でわかる仕組みも巧みである。

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幸せになっちゃ、おしまい*平安寿子

  • 2009/04/01(水) 10:32:29

幸せになっちゃ、おしまい幸せになっちゃ、おしまい
(2009/01/22)
平 安寿子

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おとぎ話の決まり文句はみんな嘘っぱち。ほんとうの人生は「めでたしめでたし」では終わらない!みなさん、絵に書いたような幸せを求めてはいませんか? 現実は、おとぎ話のように、「めでたしめでたし」では終わりません。そして、ハッピーな一幕があったとしても、その後の人生はまだまだ続くのです。
本書は、若くて元気な女子たちの後半戦が、やがてどうなっていくのかを教えてくれる一冊であり、何かを失ってこそ手に入れられるものがあることを、先輩女子の著者がナビゲートしてくれます。それを知っているのと知っていないのでは、大違い。この本を読んで、これからの人生への心構えができた人は、きっと快適な生活を手に入れられるはず。今日も頑張るあなたへお薦めのエッセイ集です。


若さだけに価値がある、と思われがちな世の中であり、人々もそう思いがちであるが、歳を重ねてオバサン(敢えて女性限定で言わせていただけば)になるのも乙なものよ、というエッセイである。
著者と同じオバサンであるわたしには、うなずくことも多くある。だが、歳の取り方ほど、個人差があるものもないのではないか、ともまた思うのである。一女性の歳の重ね方として参考にしながら、それぞれが自分なりに描いたオバサン像に近づくべく、若い日々をすごせればいいのだろうな、と思う。

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