神様のすること*平安寿子

  • 2010/03/30(火) 16:43:30

神様のすること神様のすること
(2010/01)
平 安寿子

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物語を書くことにしか情熱が持てない安寿子が、40歳間近で願ったことを、神様は100パーセント聞いてくれた。願いが叶うまでの、長い長い物語。


著者の介護体験の実際やときどきの想い、そのときになってみて初めてわかる事々、人それぞれの生き様、死に様。ある程度年齢を重ねている者にとっては、身につまされるようなあれこれが、著者独特の筆致で語られている。ある時は笑い飛ばすように、またある時は自虐的に。変にじめじめと湿っぽくないので、誰にでも受け容れられる一冊だと思うが、詰め込まれている内容は、並大抵ではないのだろうと思わせられもする。

喋々喃々*小川糸

  • 2010/03/28(日) 08:38:30

喋々喃々喋々喃々
(2009/02/03)
小川 糸

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東京・谷中でアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む栞(しおり)。きものを求めるお客ばかりでなく、ご近所さんもふらりと訪れては腰を落ち着ける、小さなこの店に、ある日、父とそっくりの声をした男性客がやってくる。その人は、栞の心のなかで次第に存在感を増していき――人を大切に思う気持ち、日々の細やかな暮らしが、東京・下町の季節の移ろいとともに描き出される、きらめくような物語。
谷中・根津・千駄木近辺に実在するお店や場所も多数登場し、街歩き気分も楽しめる作品。『食堂かたつむり』で鮮烈なデビューを果たした小川糸の第二作。

【喋々喃々(ちょうちょうなんなん)】男女がうちとけて小声で楽しげに語りあう様子。


谷中辺りの歳時記をも思わせる物語である。静かに穏やかに、寺町特有であろう季節の風物と、日々のお菜やときどき食べる贅沢な食べ物、そして、その場所で暮らす人々のあたたかな心持ちが、趣ゆたかに丁寧に描かれていて、読者も豊かな心地になれる。
だが、描かれている恋はいかんせん道ならぬ恋である。その一点が誠に残念である。未来が明るい恋だとしたら、乞ういうしっとりとした風情はだせなかったのかもしれないが、それにしても残念である。栞と春一郎さんが、こんな風に豊かな時を過ごしているときも、妻と10歳の小春ちゃんは家で夫の、父の帰りを待っているのである。知っているのだとしても、知らないのだとしても、その残酷さがどうしても透けて見えてしまうので、二人の過ごす時の波には胸が騒いでしまうのだった。

ビッチマグネット*舞城王太郎

  • 2010/03/26(金) 07:11:16

ビッチマグネットビッチマグネット
(2009/11/27)
舞城王太郎

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なんだか妙に仲のいい、香緒里と友徳姉弟。浮気のあげく家出してしまった父・和志とその愛人・花さん。そして、友徳のガールフレンド=ビッチビッチな三輪あかりちゃん登場。成長小説であり、家族をめぐるストーリーであり、物語をめぐる物語であり…。ネオ青春×家族小説。


たぶん著者初読みである。どうも著者の作品中では、「ぶっ飛び感」がゆるいらしい。それでも、この語り口に慣れるまでには――世代的なこともあるだろうが――いささか時間がかかった。だがそこを乗り越えれば、主人公・香織里の頭の中を透かして見たらこんな風なのだろう、そして、それはおそらく誰にでも多かれ少なかれ当てはまるのだろう、と思えてくる。しかも、香織里がつぶやき、あるいは考えることの中には、真理と呼んでもいいようなことが少なからずあるので、語り口とのギャップにびっくりさせられたりもするのである。ともあれ、青春真っ只中の一冊である。

殺人症候群*貫井徳郎

  • 2010/03/25(木) 13:47:21

殺人症候群 (双葉文庫)殺人症候群 (双葉文庫)
(2005/06)
貫井 徳郎

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警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。そのリーダーである環敬吾は、部下の原田柾一郎、武藤隆、倉持真栄に、一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探るように命じる。「大切な人を殺した相手に復讐するのは悪か?」「この世の正義とは何か?」という大きなテーマと抜群のエンターテインメント性を融合させた怒涛のノンストップ1100枚。


症候群シリーズ、迂闊なことに読んでいなかったが、本作が三部作のラストストーリーのようである。
未成年者による犯罪とその処罰の正当性、被害者の無念とその後の人生のことなどを考えさせられる。正義とはなにか、必要悪はあるのか。被害者家族に代わって反省の様子のない加害者を殺めることを「悪」と思わない響子は、自らもまた未成年の犯罪の被害者だからだった。一方、看護婦の和子は、移植しか助かる手立てのない息子のために、ドナーとなり得る人物を事故に見せかけて殺している。この無関係に見えるふた筋の流れが、じわじわとひとつに撚り合わされ、一本になったとき、特殊チームの面々は、意外な事実を知ることになる。あるところでガラッと様相を変えた物語は、哀しく愚かしく、あまりにも報われない物語である。

ひと粒の宇宙

  • 2010/03/21(日) 16:48:48

ひと粒の宇宙 (角川文庫)ひと粒の宇宙 (角川文庫)
(2009/11/25)
堀江 敏幸嶽本 野ばら

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ページを繰れば、てのひらの上に広がる∞(無限大)―。わずか10数枚の原稿用紙に展開される、ドラマティックな小宇宙。祖父の通夜の席に忽然と現れた猫 (「ミケーネ」)。単身赴任最後の1日(「それでいい」)。すり抜けてゆく固有名詞(「名前漏らし」)…。当代きっての匠の筆30作が競演する、この上なく贅沢なアンソロジー!所要時間各数分、ジャンル横断現代文学・各駅停車の旅。


いしいしんじ 石田衣良 伊集院静 歌野晶午 大岡玲 大崎善生 片岡義男 勝目梓 車谷長吉 玄侑宗久 小池昌代 佐伯一麦 佐野洋 重松清 高橋克彦 高橋源一郎 高橋三千綱 嶽本野ばら 筒井康隆 西村賢太 橋本治 蜂飼耳 平野啓一郎 古川日出男 星野智幸 堀江敏幸 又吉栄喜 三田誠広 矢作俊彦 吉田篤弘


掌編であるということだけが共通点のアンソロジーである。題材も、切り取り方もそれぞれさまざまで、一作一作はあっという間に読めてしまうのだが、まとまると、壮観でさえある。タイトルが秀逸。

岸辺の旅*湯本香樹実

  • 2010/03/20(土) 06:51:20

岸辺の旅岸辺の旅
(2010/02)
湯本 香樹実

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なにものも分かつことのできない愛がある。時も、死さえも。あまりにも美しく、哀しく、つよい至高の傑作長篇小説。


三年前に、何の前触れもなくいなくなった夫・優介が、ある夜、瑞希がごま餡入りの白玉を作っているところへ帰って来た。海の底で蟹に食べ尽くされ、ここに帰って来るのに三年もかかってしまった、という優介と共に、瑞希はその道筋を逆にたどる旅にでる。一緒に暮らしているときには見えなかった、優介の一面を知り、気づかなかった趣向に気づき、いつまた失うかもしれないという不安と心細さに囚われながらも、幸福に満たされた日々を送るのである。
怖れでも後悔でもなく、流れるままに優介について旅をする瑞希の心は、「生きたい」と優介とこのまま一緒にいたい、すなわち「死にたい」のあわいで揺らいでいるようにも見える。だが、旅を終えた瑞希の心は、隙間を優介で満たされ、いない彼を想うのとは別の想いで、新しい道を選び取ったのだと思える。哀しくて、淋しくて、あたたかさに満ちた一冊だった。

ハング*誉田哲也

  • 2010/03/18(木) 19:18:29

ハングハング
(2009/09/16)
誉田 哲也

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いったんは迷宮入りした宝飾店オーナー殺しに新事実が浮かび上がった。再捜査にあたった警視庁捜査一課特捜一係「堀田班」は一気に犯人にたどり着き、自供も得るが―。初公判で犯人は、堀田班メンバーに自供を強要されたと言い出し、名指されたメンバーは首を吊った。さらに一人、また一人と積み上がる死体とともに、巨大な闇が姿を現す。


前半は、事件は起きているもののまだまだ静かで、登場人物が警察官だというだけの青春恋愛模様かと思わせられるような流れである。それが後半になるや急展開し、著者らしい(?)グロテスクとも言える暴行シーン続出の、どろどろで醜悪な事件へと様相を変える。暴行シーンも目を逸らしたくなるが、筋書きを書いた黒幕の意図が見えてくると、読み進むのが苦しくなる。人の命が、こんなにあっけなくていいのだろうか、と思わずにはいられない。

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ぼくの歌が君に届きますように

  • 2010/03/16(火) 16:52:47

ぼくの歌が君に届きますように―青春音楽小説アンソロジーぼくの歌が君に届きますように―青春音楽小説アンソロジー
(2009/09)
天野 純希大島 真寿美

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大事なのは、どの楽器を演奏するかじゃない。誰と、どんな演奏をするかだ(天野純希『ティーンエイジ・ライオット』)。きのう、ヴィヴァルディ先生が亡くなったと、アンナ・マリーアが泣きながらわたしのところへ来た(大島真寿美『ピエタ』)。授業や部活で毎日のように使っている音楽室なのに、先輩がいるだけで、全然違う場所みたいに見えた(風野潮『晴れた空に、ブラスが響く』)。港の公園での母の歌を、なぜか、ぼくは、母が自分でつくったものなのだと思い込んでいた(川島誠『カモメたちの歌』)。オープンリールのテープが回り出して、お昼の校内放送のエンディングテーマ、ビートルズの“ハロー・グッドバイ”が流れ出す(小路幸也『peacemaker 1974年の赤星祭』)。ジーサン達は鬼気迫る顔つきで、ギターをかき鳴らし、叫び、ドラムをぶっ叩いた(丁田政二郎『ド派手じゃなけりゃロックじゃない!』)。


音楽をキーワードにした、青春物語。ジャンルは違っても、心をこめて奏でる音楽には人に何かを伝える力がある。多勢に、仲間たちに、そしてたったひとりに。痛快なものあり、もの悲しく切ないものあり、テイストもさまざまだが、気持ちのいい一冊だった。

悪党*薬丸岳

  • 2010/03/14(日) 08:38:47

悪党悪党
(2009/07/31)
薬丸 岳

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自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。『天使のナイフ』で江戸川乱歩賞を受賞した著者が、犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を正面から切り込んで描いた、衝撃と感動の傑作社会派ミステリ。


 

  プロローグ
  第一章 悪党
  第二章 復習
  第三章 形見
  第四章 盲目
  第五章 慟哭
  第六章 帰郷
  第七章 今際
  エピローグ 


ある事件を起こして警察を追われ、前科者になった佐伯修一は、探偵事務所所長の木暮に声をかけられて探偵になった。かつての犯罪被害者の遺族の依頼を受けて、加害者のその後を調査する、という仕事をしながら、自らも犯罪被害者の遺族である修一は、無残に姉を殺した犯人のその後を追いかけはじめる。依頼された仕事に関わる心情と、自分が抱える憎しみや復習心との狭間で苦悩しながらもがき続ける修一の姿に胸を締めつけられる。遺族の心の安寧にとって、知ることが善なのか悪なのか・・・。どうすることが正しいのか・・・。画一的に答えを出せるものではないのが歯がゆくもあり、悔しくもある。

宣告*加賀乙彦

  • 2010/03/12(金) 19:09:34

宣告 (上巻) (新潮文庫)宣告 (上巻) (新潮文庫)
(2003/03)
加賀 乙彦

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「あす、きみとお別れしなければならなくなりました」死刑囚楠本他家雄は、四十歳の誕生日を目前にしたある朝、所長から刑の執行宣告を受ける。最後の夜、彼は祈り、母と恋人へ手紙を書く。死を受容する平安を得て、彼は翌朝、刑場に立つ…。想像を絶する死刑囚の心理と生活を描き、死に直面した人間はいかに生きるか、人間は結局何によって生きるのかを問いかける。


#画像は文庫の上巻ですが、実際に読んだのは、単行本である。

796ページ、二段組、厚さ5cmの超大作である。主役は「ゼロ番囚」と呼ばれる死刑確定者。彼らの獄中での日々と精神状態が描かれ。彼らを診察し治療する若い精神科の医師の目で観察される。この若い医師の目が、すなわち自らも精神科医であった著者の目、ということなのだろう。
囚人たちはそれぞれの理由で殺人を犯し、死刑判決を受けてここにいるわけだが、罪を悔いる思いよりも、被害者や遺族に詫びる思いよりも、最後の最後には自分(の魂)が如何にして救われるかということが意識の大半であるように見受けられる。もちろん、本作に描写されている囚人たちの胸のうちが、彼らの思考のすべてであるわけはないが、それを差し引いたとしても、被害者遺族からみたら歯がゆい思いがするのではないかと思われる。
そう考えると、死刑とはなんだろうという思いに至るのだが、無期懲役とは確実に違うものであり、無期――例えばそれが終身刑であるとしても――と死刑の間の隔たりは絶対的に越えようのないものであるということは実感できるのである。重すぎるテーマであり、人の命とはなにか、死刑とは、罪の償いとは、と考えることは多いのだが、割り切れなさも残る一冊だった。

らいほうさんの場所*東直子

  • 2010/03/05(金) 11:21:54

らいほうさんの場所らいほうさんの場所
(2009/11/11)
東 直子

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寄り添って暮らす三姉弟の秘密とは?家族のほころびと再生を詩情あふれることばでつづる新境地。


さらりとした文体で、終始穏やかに綴られているにもかかわらず、背筋を這い登ってくる恐ろしさにぞくりとさせられる一冊である。
三姉弟が暮らすマンションの専用庭に「らいほうさんの場所」がまずあり、物語はすべてそこからはじまっているのだが、その場所の秘密は最後まですっきりとは明かされない。なにか不穏な空気を漂わせているばかりである。しかし、その場所があるがために、彼女たちの進む道が決められてしまったような、動かしがたい頑なさが感じられ、読者はその場所から目を離すことができない。
「らいほうさんの場所」に縛られる姉・志津。志津の言葉に縛られる俊。姉と弟と家に縛られる真奈美。みなが縛られていると思っているのだが、縛っているのはそれぞれ自分のようにも見える。じわりじわりと家族が壊れていく恐ろしさに、胸が縮む思いがする。健やかな笑いが、彼らの元に訪れる日は来るのだろうか。

宵山万華鏡*森見登美彦

  • 2010/03/04(木) 18:39:20

宵山万華鏡宵山万華鏡
(2009/07/03)
森見 登美彦

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祇園祭前夜。妖しの世界と現実とが入り乱れる京の町で、次々に不思議な出来事が起こる。
登場人物たちが交錯し、全てが繋がっていく連作中篇集。森見流ファンタジーの新境地!
●祭りの雑踏で、幼い妹が姿を消した。妹は神隠しに遭ったのか、それとも…?「宵山姉妹」「宵山万華鏡」
●乙川は≪超金魚≫を育てた男。大学最後の夏、彼と宵山に出かけた俺は、宵山法度違反で屈強な男たちに囚われてしまう。襲いくる異形の者たち。彼らの崇める≪宵山様≫とは一体…?「宵山金魚」
●期間限定でサークル≪祇園祭司令部≫を結成したヘタレ学生たち。彼らは、学生生活最後の大舞台を祭の最中に演じようとしていた。「宵山劇場」
●宵山の日にだけ、叔父さんは姿を消した娘に会える…。「宵山回廊」
●目が覚めると、また同じ宵山の朝。男は、この恐ろしい繰り返しから抜け出すことができるのか…?「宵山迷宮」


装画のとおりの物語である。にぎやかで、とりとめがなく、きらびやかで、得体が知れない。愉しそうでもあり、恐ろしそうでもある。祇園祭前夜、宵山の日の出来事である。大きな三本柱とでも言うべき出来事が同じ日に、別々に起こり、すれ違ったり交錯したり、混沌としている。現実なのか夢のなかなのかも判然としないような、不思議な一冊である。

戦友の恋*大島真寿美

  • 2010/03/03(水) 11:14:22

戦友の恋戦友の恋
(2009/11/27)
大島 真寿美

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佐紀もそろそろ禁煙したら、と玖美子にしては珍しい忠告をした。いつもなら、うるさいなあと思ったはずなのに、神妙に頷き、まあね、あたしもやめようかなあとは思ってんのよね、と殊勝に答えると、そうしな、と玖美子は短く言った。病院へ行った方がいいよ、と今度は私が忠告した。行くよ、と玖美子は答えた。でも、結局行かなかった。行かないで死んでしまった―残された者の悲しみは誰にも癒せない。喪失の痛みを抱えて、ただただ丁寧に毎日を送ることだけ―。注目の作家が描く、喪失と再生の最高傑作。


表題作のほか、「夜中の焼肉」 「かわいい娘」 「レイン」 「すこやかな日々」 「遙か」

連作短編集の形を取っているが、全体を通してひとつの物語である。
同い年で、編集者と漫画家志望者として出会った玖美子と佐紀(あかね)。玖美子は病を得てあっけなく亡くなり、佐紀は玖美子が死につづけている間も独りで生きつづけなければならなくなった。圧倒的な喪失感と、それまでと変わらず押し寄せてくる日々のあれこれにもみくちゃにされながら、佐紀は少しずつ自らの生を生きはじめる。
号泣したり、泣き暮らしたりするのではなく、それまでどおりの日常を過ごしているように見えて、これほど大きな埋めようのない喪失感を描くとは、さすが著者である。深い深い空洞が、じわじわと胸に迫り、ひたひたと侵食されるような心地の一冊である。だが、それでも人は立ちあがれるものなのだということも改めて思わされるのである。

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愛は苦手*山本幸久

  • 2010/03/01(月) 21:21:01

愛は苦手愛は苦手
(2010/01/20)
山本 幸久

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“アラフォー”って自分では笑って言えるけど、他人にそう呼ばれると、なぜか嫌。20代はみんな私に優しくて、30代も大丈夫と思ってて。でも、気がついたら前に進めないよ…。愛についてふと考える彼女たち―連作短篇集。


表題作のほか、「カテイノキキ」 「買い替え妻」 「ズボンプレッサー」 「町子さんの庭」 「たこ焼き、焼けた?」 「象を数える」 「まぼろし」

主人公は40歳前後の女性。立場はさまざまだが、毎日の暮らしには何かが足りない。20代のころには感じなかった棘を、周りの人たちから感じ、30代のころには目を瞑ろうと思えば見ない振りもできた加齢のサインも、認めざるを得なくなり、人間関係にも広がりはない。ひとりで生きていて、これからもひとりで生きていく、と決めつけずにもう少しだけやさしくして欲しい。きっと彼女たちはそう思っているのだろう。一生懸命でちょっと不器用で、愛すべき女性たちなのである。ただ”アラフォー”と括られたくない、彼女たちのやりきれなさが切ない。よりかかれる太い柱があればいいのに。

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