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彼女のしあわせ*朝比奈あすか

  • 2011/01/30(日) 21:37:52

彼女のしあわせ彼女のしあわせ
(2010/05/20)
朝比奈 あすか

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独身を選んだ長女。育児に追われる次女。不妊に悩む三女。夫の言いなりだった人生に惑う母。女たちはあやふやなものを背負いながら、悩み傷つき生きていく。女の人生に“普通”はない。今を生きる彼女たちの心の叫びを見つめ、哀しみを包み込む女の幸せを細やかな筆致で描く、三姉妹と母親の物語。


 第一章 凪子の空
 第二章 月子の青
 第三章 征子の道
 第四章 佐喜子の家
 第五章 征子の海
 月子ちゃんへ


三姉妹と母という近しい関係として描かれているので、ことさら生き方の違いが目立つように思うが、これは家族の物語であるというよりも女たちの物語なのだろう。家族という血のつながった関係であっても、その価値観はそれぞれで、なにがしあわせかなとどいうことはほかの人にはほんとうのところは解らないのかもしれない。そして、完全に足りることがしあわせであるとは限らないのだ。足りないところを補い合うしあわせというものもあり、足りないところを自分で埋めていくしあわせもあり、足りないということに気づいて受け容れるしあわせもまたあるのである。自分のほんとうに大切なものはなにかということを考えさせられる一冊である。

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ミステリ★オールスターズ*本格ミステリ作家クラブ・編

  • 2011/01/30(日) 11:31:43

ミステリ・オールスターズミステリ・オールスターズ
(2010/09/25)
本格ミステリ作家クラブ

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辻真先、北村薫、芦辺拓、柄刀一ほか23人による書き下ろし短編に加え、有栖川有栖、光原百合、綾辻行人、法月綸太郎、西澤保彦によるリレーミステリを収録!本格ミステリ作家クラブ創立10周年特別企画。


セクションⅠ:オーソドックスな謎解きの中にもひねりを加えたもの
 深水黎一郎/北村薫/早見裕司/汀こるもの/鳥飼否宇/小森健太朗/村瀬継弥/山沢晴雄
セクションⅡ:犯罪心理や事件の奥にひそむ闇に着目したもの
 伊井圭/小島正樹/森谷明子/奥田哲也/松本寛大/飛鳥部勝則
セクションⅢ:本格ミステリのパロディ精神、自己ツッコミに注目
 芦辺拓/藤岡真/辻真先/柄刀一/早見江堂
セクションⅣ:理詰めの果てに見えたカオスを描いたもの
 太田忠司/斎藤肇/門前典之/井上雅彦
リレーミステリ:かえれないふたり
 有栖川有栖→光原百合→綾辻行人→法月綸太郎→西澤保彦

本格ミステリクラブ発足から十年という節目を記念して企画された一冊だそうである。
みるからに贅沢なラインナップではないか。それぞれの作品は掌編と言ってもいいくらいの短さなのだが、著者の方々がこの企画を愉しんでいらっしゃるのがわかるようなものばかりである。締めくくるように配されたリレーミステリも垂涎ものである。バトンを受け取った著者のわくわく感が伝わってくるようだ。とても愉しい一冊だった。

つるかめ助産院*小川糸

  • 2011/01/28(金) 17:05:17

つるかめ助産院つるかめ助産院
(2010/12/03)
小川 糸

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辛い出生の秘密を抱えるまりあは、ある日突然失踪した夫を探して、南の島をおとずれる。島の助産院の先生から予期せぬ妊娠を告げられて―。すべての命に贈る、誕生と再生の物語。「今ここにいる」ことの奇跡を力強く描き出す感動長編。


自分が幸福だと一度も思ったことのない主人公まりあは、突然いなくなった夫を探して――とは言っても自分でも見つかるとは思っていないようなのだが――南の島へやってきた。そこで助産院を開いているつるかめ先生(鶴田亀子)に声をかけられ、成り行きで助産院にお邪魔することになるところからはじまる物語である。
なんとまりあは夫・小野寺君との子どもを宿しており、妊婦として島で暮らすことで、寄りかかっているばかりの自分から誰かのためになにかをする自分へと少しずつ変わっていくのだった。
小野寺君のこととか、島の人たちの抱える事情とか、細かいあれこれで表面的な描写でさらっと流した感じがなくもないが、全体的にみれば生きること、育むことの戦いとも言える壮絶さと、人のなかにいることの安心がよく伝わってくる一冊である。
「都会の人はがんばってリラックスする」という言葉が印象的だった。

シティ・マラソンズ

  • 2011/01/23(日) 16:59:08

シティ・マラソンズシティ・マラソンズ
(2010/10)
三浦 しをん、近藤 史恵 他

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NY、東京、パリ。アスリートのその後を描く、三つの都市を走る物語。


「純白のライン」三浦しをん 「フィニッシュ・ゲートから」あさのあつこ 「金色の風」近藤史恵

スポーツメーカーのアシックスが、2008~10年にWEBサイト及びモバイルサイトで実施した期間限定キャンペーン「マラソン三都物語~42.195km先の私に会いに行く~」のために書き下ろされたものだそうである。
現役を引退したあとのスポーツ選手が、市民マラソンという場に於いて自分と向き合い、そこから先に向かうための何かを見つける物語である。ニューヨークシティーマラソン、東京マラソン、パリマラソンという三つの市民マラソンを舞台としてそれぞれの著者がそれぞれらしさで描き出しているのがうれしく興味深くもある。どの物語でもほろりとさせられ、じんと胸が熱くなる。うれしい企画の一冊である。

現場に臨め

  • 2011/01/22(土) 21:39:38

最新ベスト・ミステリー 現場に臨め (カッパ・ノベルス)最新ベスト・ミステリー 現場に臨め (カッパ・ノベルス)
(2010/10/20)
日本推理作家協会

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蒼井上鷹「オウンゴール」 安東能明「撃てない警官」 池井戸潤「スジ読み」 逢坂剛「おれたちの街」 大沢在昌「亡霊」 今野敏「冤罪」 佐野洋「爪占い」 柴田哲孝「賢者のもてなし」 曾根圭介「天誅」 長岡弘樹「文字板」 新津きよみ「思い出を盗んだ女」 誉田哲也「シンメトリー」 薬丸岳「償い」 横山秀夫「墓標」 連城三紀彦「小さな異邦人」


目次を眺めただけでも豪華である。そして内容ももちろん粒ぞろいである。短編集の中の一編、というものもあり見知った人物に思わぬ場所で出会えたような感慨も味わえる。事件はさまざまだが、どの事件でも「現場」が教えてくれるものは少なくないのだと思わされる一冊である。

3652 伊坂幸太郎エッセイ集*伊坂幸太郎

  • 2011/01/20(木) 17:12:28

3652―伊坂幸太郎エッセイ集3652―伊坂幸太郎エッセイ集
(2010/12)
伊坂 幸太郎

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「喫茶店」で巻き起こる数々の奇跡、退職を決意したあの日のこと、「青春」の部屋の直筆間取り図、デビュー前のふたりの恩人、偏愛する本や映画に音楽、「干支」に怯える日々、恐るべき料理、封印された「小説」のアイディア―20世紀「最後」の「新人作家」が歩んできた10年。


3652とは、【365×10+2】のことである。すなわち、著者がデビューしてからの十年の日数である。そんな「十年」に関するあれこれが扉を開くと辞書を開いたように並んでいるのも著者らしくて、ふふふ、である。
さまざまな場所に発表してきたエッセイも、こんなふうにまとまると伊坂幸太郎という人をよく知ることのできる一冊になるのだ、と思わされる。そして脚注の解説、さらには本音や告白がたまらない。小説家の書くエッセイは苦手なことが多いのだが、本書は逆である。著者の作品のすばらしさはもちろん、ひとりの人としての伊坂幸太郎が、ますます好きになる一冊でもある。

at Home*本多孝好

  • 2011/01/19(水) 17:25:17

at Homeat Home
(2010/10/27)
本多 孝好

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そこは人がほんとうに帰るべき場所なのだろうか?ふぞろいで歪つな4つの家族とそこに生きる人々。涙と冷酷と波乱を存分にたたえたエンタテインメント小説。


表題作のほか、「日曜日のヤドカリ」 「リバイバル」 「共犯者たち」

四つの家族の物語である。が、これらの家族は、人のお手本になることは金輪際ないだろうというような、まったくなんて家族なんだ、というようなだめだめな家族なのである。その設定からして陳腐なホームドラマではない。トラブルのデパートのような問題を含みすぎな家族なのだが、世間の常識を取っ払ってみると、家族間の関係性がかえって濃くて、――表現の仕方には驚かされることもあるが――じんと目頭が熱くなることが何度もあった。家族が最小社会であるということを考えさせられる一冊でもある。

きみが見つける物語 オトナの話編

  • 2011/01/18(火) 17:12:35

きみが見つける物語  十代のための新名作 オトナの話編 (角川文庫)きみが見つける物語 十代のための新名作 オトナの話編 (角川文庫)
(2010/03/25)
角川文庫編集部

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笑って、泣いて、怒って、泣いて。恋をして、失恋をして。本を読んだり、たいせつな存在と出会ったり。さまざまな経験が、きみをやがて大人にするのです。大人になったきみの姿がきっとみつかる、がんばる大人の物語。いま読みたい名作を厳選、超豪華ラインアップでおくる、短編小説集。


十代のための新名作、となっているが、大人だって面白い。

 ケンジントンに捧げる花束 大崎善生
 話を聞かせて 山本文緒
 守護神 森絵都
 アシスタントというお仕事 原田宗典
 ワーキング・マザー 奥田英朗


各著者の物語のエッセンスのようなものと言えばいいのだろうか。大人だってもちろん面白いが、十代で読んだらきっとまったく別の印象であり別の想像をめぐらすのだろう。そしてそれは前向きのもので、自分たちの未来にある困難を想った上でなおそこに光を見るようなものなのだろう、と大人であるわたしは思うのである。派手さはないが、胸に種を蒔くような一冊である。

白いしるし*西加奈子

  • 2011/01/16(日) 16:47:31

白いしるし白いしるし
(2010/12)
西 加奈子

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失恋ばかりの、私の体。私は彼のことが、本当に、好きだった。32歳。気づいたら、恋に落ちていた。軽い気持ちだった、知らなかった、奪えると思った。なのに、彼と関係を持ってから、私は笑えなくなった。恋は終わる。でも、想いは輝く。極上の失恋小説。


そうか、失恋小説だったのか、と上記内容紹介を読んで改めて思った。そういえば、主人公の夏目だけでなく、友人の瀬田も彼の周りの女たちも失恋していた。だが、失恋するにはまず恋をしなければならない。これは抗いようもなく恋に落ちる物語でもあるのだ。近づいてはいけないいけないと身の内から発せられる警告に慄きながらも、互いに持ち合った磁石のように吸い寄せられていってしまう。そんな瞬間の強烈なパワーも感じられるのである。それが幸福なことかどうかは別にして。間島の白く発光するような絵に一瞬にして魅せられた夏目香織のそれからの時間は、彼女にとってなくてはならない時間だったのだように思える。不器用でまっすぐな心の一冊である。

名探偵に訊け

  • 2011/01/15(土) 21:39:09

名探偵に訊け (カッパ・ノベルス)名探偵に訊け (カッパ・ノベルス)
(2010/09/17)
日本推理作家協会

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日本推理作家協会理事長・東野圭吾氏推薦。三年に一度、堂々の三カ月連続刊行第一弾!! バラエティに富んだ名探偵たちの活躍を、存分にお楽しみください! 収録作家:有栖川有栖/泡坂妻夫/石持浅海/乾くるみ/門井慶喜/北森 鴻/北山猛邦/柄刀 一/初野 晴/東川篤哉/三津田信三/山田正紀/若竹七海


火村先生、工藤マスターから葉村晶まで、多様なテイストの名探偵が勢ぞろいしていてわくわくする。ひと口に探偵と言っても、からだを張って事件に飛び込んで行く者あり、自分は動かず人の話を訊いて絶妙な推理を披露してくれる者ありとそのありようもさまざまなので、次はどんな名探偵が登場するだろうかと愉しみながら読めるのもいい。旧知の探偵も、初めて知った探偵と一緒に並べられているとまた違った趣に見えたりもするのが不思議である。とても贅沢な一冊。

KAGEROU*齋藤智裕

  • 2011/01/13(木) 07:18:49

KAGEROUKAGEROU
(2010/12/15)
齋藤 智裕

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第5回ポプラ社小説大賞受賞作。『KAGEROU』―儚く不確かなもの。廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。命の十字路で二人は、ある契約を交わす。肉体と魂を分かつものとは何か?人を人たらしめているものは何か?深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。そこで、彼は一つの儚き「命」と出逢い、かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。水嶋ヒロの処女作、哀切かつ峻烈な「命」の物語。


あまりにも巷で酷評されているのでどんなものかと思ったが、物語自体は個人的には嫌いではない。ことに導入部はこれからなにが起こるのだろうかと興味を引かれる。ただ、フェンスを乗り越えるところまで死を決意したヤスオのキョウヤと出会ってからのありように深みが感じられなかったのが残念。物事の表面を浅く切り取った感じは否めない。本の作りにちょっとした仕掛けがあるのだが、これは必要だろうか。注意を引かれたことは確かだが。着眼はよかったと思うし、まあ面白かったと思うが、著者にとっては一作目から大賞を受賞しない方がよかったのかもしれないなぁ、とも思った一冊である。

地のはてから 上*乃南アサ

  • 2011/01/12(水) 18:36:41

地のはてから(上) (100周年書き下ろし)地のはてから(上) (100周年書き下ろし)
(2010/11/16)
乃南 アサ

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物心ついたとき、少女はここで暮らしていた。アイヌ語で、「地のはて」を意味するというこの土地で。おがちゃの背中と、あんにゃの手に、必死にしがみつくようにして。北海道知床で生きた女性の生涯を、丹念に描き、深い感動を呼び起こす。構想十年―書き下ろし長編小説。


大正時代末期、新しいものに飛びつき目先のことしか考えずに行動する父が、東京で株に失敗して大金を失い、夜逃げ同然に北海道開拓団に加わって地のはてにやってきたと一家。そのときわずか二歳だったとわは、物心ついたときにはすでに並々ならぬ苦労の日々であった。まさに文字通りの地のはてで、命の危機と隣り合わせの容易ならざる状況を強いられた開拓移民たちの状況には胸が痛んだ。そして、ほかの暮らしを知らないので惨めとも思わず自分にできることで母を助けて日々を過ごすとわの姿は、健気で愛おしく胸を熱くさせるのだった。
その後境遇が変わり小樽に子守奉公に出されたとわだったが、大正から昭和へと時代が変わり、世間がきな臭くなってきたところで上巻は終わっている。とわにはなんとしてもしあわせになって欲しいと切実に願うが、下巻ではなにが待ち受けているのだろう。早く読みたい。

かのこちゃんとマドレーヌ夫人*万城目学

  • 2011/01/11(火) 13:46:57

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)
(2010/01/27)
万城目 学

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かのこちゃんは小学一年生の元気な女の子。マドレーヌ夫人は外国語を話す優雅な猫。その毎日は、思いがけない出来事の連続で、不思議や驚きに充ち満ちている。


アカトラ猫のマドレーヌ夫人は外国語――猫にとっての外国語は犬語――を理解する。そして、小学校一年生のかのこちゃんの家の老犬・玄三郎の妻でもある。マドレーヌ夫人の目線で、近所の猫たちとのやり取りなどが描かれ、かのこちゃんの目線で家族や友人のことなどが描かれる。それが互いに補完し合いながらかのこちゃんが家族や玄三郎やマドレーヌ夫人たちと暮らす日々を活き活きと伝えているのである。人には人の世界、猫には猫の世界、犬には犬の世界、だがその世界は大きなひとつの世界でもあるのだという当たり前のことを改めて思わせてくれる一冊でもある。やさしくて切なくてじんとあたたかい一冊である。

マボロシの鳥*太田光

  • 2011/01/10(月) 16:59:32

マボロシの鳥マボロシの鳥
(2010/10/29)
太田 光

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舞台芸人の一瞬の輝きを一羽の鳥に託した表題作ほか、
父との不和に悩む娘やイジメにあう男子高校生の葛藤から、
人類の行く末、そして神の意志までを、
持てる芸のすべてを注いで描き尽くした《希望の書》。


表題作のほか、「荊の姫」 「タイムカプセル」 「人類諸君!」「ネズミ」 「魔女」 「冬の人形」 「奇跡の雪」 「地球発・・・・・」

テレビで見せる大田光の姿から想像する物語とは明らかに別物である。一作ごとに文体や趣向を変え、さまざまな物語を味わえる。だが根底にあるものは、「人がいつでも心の底から求め大切に思うなにか」への想いだろう。それが表題作ではマボロシの鳥として描かれている。ほろりと泣かせるものあり、考えさせられるものあり、著者のセンスを楽しめる一冊である。

密室に向かって撃て!*東川篤哉

  • 2011/01/09(日) 16:44:50

密室に向かって撃て! (カッパ・ノベルス)密室に向かって撃て! (カッパ・ノベルス)
(2002/10)
東川 篤哉

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烏賊川市の外れ、鳥ノ岬にある十条寺食品社長宅に銃声が轟いた。撃たれたのは、偶然居合わせた「名探偵」鵜飼杜夫。失われた銃声の謎と「衆人環視の密室」に、鵜飼とその弟子が挑む。書下ろし長編推理小説。


烏賊川市シリーズ第二弾である。砂川警部と志木刑事、そして探偵・鵜飼杜夫と弟子になってしまった戸川流平が、烏賊川市の名士・十条寺家で起こった殺人事件に挑む。コミカルな筆致ながら、伏線は冒頭からすべて綿密に張り巡らされており、頼りないことこの上ないイメージの鵜飼探偵の推理力も意外や意外なかなかのものなので、はっとさせられること度々である。キャラクターのコミカルさとミステリの内容の充実度とのギャップがいい感じの一冊である。

ご近所探偵TOMOE 1*戸梶圭太

  • 2011/01/07(金) 17:17:06

ご近所探偵TOMOE 1ご近所探偵TOMOE 1
(2007/06/25)
戸梶 圭太

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ひよどりが丘町にすむ石丸ともえと勝雄はトンでるラブラブ夫婦。場所もわきまえずHする仲で。そこに、ともえの父、比呂丸が乱入。見栄のために友人から借りたアウディS8が盗まれたという。ケータイlivedoor小説から飛び出した激情的探偵ドラマ。ちょっとエッチで、かなり笑える、ストレス発散ミステリー。


シリーズ中これだけが別の出版社から出されていて、体裁もまったく違うのは何か事情があるのだろうか。ともかく中身はこれまでの三冊と同様である。ともかく読み終えた。ふぅ、という一冊。

ご近所探偵TOMOE episode3*戸梶圭太

  • 2011/01/07(金) 17:10:25

ご近所探偵TOMOE〈episode3〉 (幻冬舎文庫)ご近所探偵TOMOE〈episode3〉 (幻冬舎文庫)
(2002/06)
戸梶 圭太

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ひよどりが丘の一軒家に住むラブラブの新婚カップルともえと勝雄のもとに、老女が転がり込んできた。ふたりはエッチに刺激が出る、と喜ぶが、実はこの老女、レッドフォックスという名前を持つ女スパイ。彼女と過去に因縁のあるブルートータスという老スパイもやってきて、ともえと勝雄はとんでもないピンチを迎える!爆笑ドタバタミステリ。


もうなんでもやってください、という感じである。いちゃいちゃもさることながら、今回はギャング映画さながらのドタバタ満載というとんでもない状態である。シリーズ通して借りてしまったので、さっさと読み終えてしまおう、という一冊。

ご近所探偵TOMOE episode2*戸梶圭太

  • 2011/01/07(金) 07:11:27

ご近所探偵TOMOE〈episode2〉 (幻冬舎文庫)ご近所探偵TOMOE〈episode2〉 (幻冬舎文庫)
(2002/02)
戸梶 圭太

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ひよどりが丘の一軒家に住むともえと勝雄はラブラブの新婚。ある日、二人の「セックス写真」が近所の豪邸・阿久仏家の庭に迷いこんでしまった。さっそく潜入を謀るが、「パズラー」と称する阿久仏氏の様子がどうもおかしい。ともえの愛犬が庭を掘ると、クロスワードパズルが書かれた棺桶が出てきた…?!過激で脳天気な人々のドタバタミステリ。


またまた事件に巻き込まれるきっかけがこれ(上記内容紹介参照)である。人目も憚らずいちゃいちゃし続ける新婚夫婦は見ていて疲れるが、一冊目よりは読む側に耐性ができたので疲労度は軽いか。それでも相変わらず、ともえを探偵と言ってしまっていいものかは悩むところである。なにやら怪しいと思いはするのだが、その先が偶然任せなのである。それが持ち味と言えば言えなくもないが。ともかくともえにも本来の(?)女優としての仕事がありそうなのがよかった一冊である。

ご近所探偵TOMOE*戸梶圭太

  • 2011/01/06(木) 16:41:24

ご近所探偵TOMOE (幻冬舎文庫)ご近所探偵TOMOE (幻冬舎文庫)
(2001/12)
戸梶 圭太

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売れない女優のともえと売れないイラストレーターの勝雄はラブラブの新婚カップル。埼玉のニュータウン・ひよどりが丘の一軒家に住んでいる。小柄で気弱な勝雄と対照的にセクシーで大胆なともえは、ある日、持ち前の好奇心から、近所のスーパーを舞台にした麻薬取り引きに巻き込まれてしまう…。ちょっとエッチでコメディな脳天気ミステリ。


う~ん。ちょっとこれは、慣れるまで疲れます。新婚四ヶ月なので仕方がないと言えば仕方がないのだが、最初から最後までともえと勝雄のいちゃいちゃぶりを見せつけられているだけのような気がしなくもないような…。結果的に麻薬取り引きを暴いてしまうのだが、飽くまでも結果オーライな気がしなくもないような…。カバーのイラストから想像するとおりのハチャメチャな一冊である。

綺想宮殺人事件*芦辺拓

  • 2011/01/05(水) 17:17:44

綺想宮殺人事件綺想宮殺人事件
(2010/04/28)
芦辺 拓

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琵琶湖畔にそびえる壮麗な怪建築群―“綺想宮”を訪れた名探偵・森江春策を待ち受けていたのは、美しき案内人・二十重亜綺楽と七人の奇怪な滞在客だった。この不可思議な宮殿に森江が到着した晩、自動的に詩をつむぐ機械「大発見」が火精、水精、風精、土精の呪文を歌い上げた。翌日から、天地創造の七日間を表わす曲が奏でられる中、滞在客は次々謎の死をとげてゆく。暗室で発見された五芒星の上の焼死体、毒草園に描かれた九芒星と地中に埋められた死体…それぞれの死体に過剰なまでに凝らされた「見立て」は何を意味するものか?本格ミステリを愛し、その神髄を知り抜いた著者が「探偵小説の最期」に捧ぐ訣別の書。


むむむ、と唸りたくなる一冊である。本編の出だしの数ページは、ルビの文字数のほうが本文の文字数よりも多いのではないかというくらいルビが振られており、最後まで読みとおせるかと先が思いやられる心地だったが、不可思議な館・綺想宮で次々に起こるこれまた不可思議な殺人事件に呑み込まれるように読み進むことができた。というよりも、綺想宮の摩訶不思議さとそこに招かれた客人たちの風変わりさ、そして探偵役の刑事弁護士・森江春策のそれぞれの事件にかかわるもっともらしい薀蓄に取り込まれた、と言ってもいいかもしれない。まるで異世界に紛れ込んでしまったようなある意味めくるめく一冊である。

ベッドの下のNADA*井上荒野

  • 2011/01/02(日) 17:02:31

ベッドの下のNADAベッドの下のNADA
(2010/12)
井上 荒野

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あなたは、夫(あるいは妻)の子供時代をしっていますか?夜の沈黙、昼の饒舌―追憶と現在。愛情と嘘。今日も“coffee NADA”には常連客が集まってくる。


「だんまり虫」 「ばかぼん」 「おもいあい」 「交換日記」 「おしっこ団」 「タナベ空」

coffee shop NADAのオーナー夫妻(とNADAに集まる常連客)の物語である。夫妻の住まいは店の上にある。家ではほとんど話すことはないが、店では仲睦まじそうにやっている。妻と夫それぞれの子ども時代のエピソードを交えながら、物語は読者に現在を見せている。表面的な平穏さとは裏腹に、どこを切り取っても不穏さが滲んでいる。だがそれぞれが何某かの不穏を隠し持っているがゆえに平穏に日々を送れているようにも思われる。不穏なのになぜか安心できるような不思議な心地の一冊である。