臨床犯罪学者・火村英生の推理--密室の研究*有栖川有栖

  • 2013/11/29(金) 17:04:21

臨床犯罪学者・火村英生の推理    密室の研究 (角川ビーンズ文庫)臨床犯罪学者・火村英生の推理 密室の研究 (角川ビーンズ文庫)
(2013/10/31)
有栖川 有栖

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推理作家の有栖川有栖と、クールな天才犯罪学者・火村英生。学生時代からの盟友である彼らには、常に難事件が寄ってくる。たとえば、人を招く魔性の滝で起きた殺人事件。死の滝目指して突き進む足跡に隠された真実とは…(「人喰いの滝」)。ほか今世紀最高に冴えてる名探偵・火村英生が、怖くて華麗、切なくて美しい、ミステリーの華「密室」を解き明かす!著者・有栖川有栖厳選、名作がコラボした、奇跡の密室アンソロジー!!


著者自らが選んだ、密室ばかり集めたアリス&火村作品である。
なかなかわくわくする趣向で愉しめるのだが、イラストのアリスと火村が、どうにも自分の頭の中の彼らと結びつかないのが困る。いささかイケメンすぎやしませんか?と問いたくなるが、仕方がないか。愉しい一冊ではある。

少年少女小説集*小路幸也

  • 2013/11/27(水) 12:30:30

小路幸也 少年少女小説集 (ちくま文庫)小路幸也 少年少女小説集 (ちくま文庫)
(2013/10/09)
小路 幸也

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夢、希望、怖れ、孤独、友情…。人気作家で贈る11の物語。ときに切なく、ときにほのぼのと、子供と大人たちの間に起こる様々なドラマ。『東京バンドワゴン』シリーズで知られる小路幸也ワールドから、単行本未収録を中心に、少年少女を主人公にした作品を選りすぐった傑作短篇集!巻末に作家本人による自作解説を付す。


「リバティ」 「ゆめのなか」 「林檎ジャム」 「トーストや」 「あなたの生まれた季節」 「Fishing with Brother」 「コレッタの夏休み」 「コレッタの冬休み」 「レンズマンの子供」 「コヨーテ、海へ」 「ライオンは草原の夢をみる」 自作解説

子どもが主役で、ちょっぴり不思議な物語の数々である。どの物語も著者のテイスト満載で、やさしくて、ほろっと哀しく愛おしい。誰かを守ったり、守られたくなったりしそうな一冊である。

風の日にララバイ*樋口有介

  • 2013/11/26(火) 18:52:11

風の日にララバイ (ハルキ文庫 ひ 1-3)風の日にララバイ (ハルキ文庫 ひ 1-3)
(2013/09/14)
樋口 有介

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殺された有名宝石店の美人社長は五年前に別れた元妻だった――。佐原旬介は学者くずれのシングルファザー。バナナの自動皮むき機を発明したり金魚の品種改良にとり組んだりと、気楽な人生を送っている。しかしそんな中年ニートでも母を失った愛娘の悲しみは座視できず、にわか探偵としての事件の捜査をはじめる。旬介の前に登場する謎めいた美女や魅力的な女子大生、そして昔の女たち。やがて事態は思わぬ方向へ・・・・・・。中年探偵・柚木草平の前駆けをなす〈幻のシリーズ〉、待望の新装版。


シリーズ化されずに柚木草平に取って代わられてしまったということだろうか。キャラクター設定は確かに似ているので、シリーズを両立させるのはやはり難しかったのだろう。ただ、佐原旬介も何かに倦んで世を拗ねているようでありながら、娘の亜由子も家政婦のお松さんも大事にしているところが好感を持てる。そして、お松さんがなかなか魅力的である。お松さんにジュエリー青山を任せてみたかった。著者らしいテイストの一冊である。

だから荒野*桐野夏生

  • 2013/11/24(日) 16:41:12

だから荒野だから荒野
(2013/10/08)
桐野 夏生

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もう二度と会うことはないでしょう。
46歳の誕生日。身勝手な夫や息子たちと決別し、主婦・朋美は1200キロの旅路へ――
「家族」という荒野を生きる孤独と希望を描き切った桐野文学の最高峰!
大反響の毎日新聞朝刊連載に、大幅な加筆修正を施して書籍化。

傲慢な夫や息子たちに軽んじられながら、家庭をささえてきた主婦・朋美は46歳の誕生日、ついに反旗をひるがえす。衝動にかられ夫自慢の愛車で家出、「初恋の男が長崎にいるらしい」という理由で、長崎に向かって高速道を走り始めるのだった。奪われた愛車と女の連絡先の入ったゴルフバックばかり心配する夫を尻目に、朋美は自由を謳歌するが―― 冒険の果てに、主婦・朋美が下した「決断」とは?


一読、著者らしい、と思う。人間の毒をこれでもかというほど曝け出し、家族の共依存性の醜さを残酷なまでに描き、そして朋美は46歳の誕生日、自らがセッティングしたディナーの席から出奔する。拍手である。自分にはできないことをやってくれた朋美に着いていき、どんな運命に弄ばれるのか、読者はわくわくハラハラするのである。道中の災難や、思いがけない幸運、そして落ち着いた先での疑念。家を捨ててきた切迫感が幾分薄れた印象の後半は、やはり収束へ向かう布石だったのだろうか。冷静に考えれば何一つ解決してはいない気がするのだが、石を投げ入れ、波紋を起こした影響は、きっとどこかには現れるのだろう。つまらない気分半分、ほっとした気分半分の一冊である。

あなたの人生、片づけます*垣谷美雨

  • 2013/11/23(土) 09:11:06

あなたの人生、片づけますあなたの人生、片づけます
(2013/11/06)
垣谷 美雨

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社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子供に見捨てられた資産家老女、ある一部屋だけを掃除する汚部屋主婦……。
片づけ屋・大庭十萬里は、物を捨てられない、片づけられない住人たちの前に現れる。
この本を読んだら、きっとあなたも部屋を片づけたくなる!


仲間由紀恵主演でドラマ化された「人生がときめく片づけの魔法」の小説版のような物語である。主人公の大庭十萬里は、片づけ屋とは言っても、掃除屋ではないので自ら依頼人の部屋を片づけることはない。現場を検証し、心の裡を慮ってその闇に光を当て、片づけ方のきっかけをアドバイスすることで、依頼人本来の自分を取り戻させ、人生を前向きに歩かせる助けになるべく出動するのである。身につまされるところもあるが、読み終えるとなぜかスッキリする一冊である。

天使の柩*村山由佳

  • 2013/11/22(金) 07:04:41

天使の柩 (天使の卵)天使の柩 (天使の卵)
(2013/11/05)
村山 由佳

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「世の中がどんなにきみを責めても、きみの味方をするよ」14歳の少女・茉莉(まり)が出会った20歳年上の画家――その人の名は、歩太(あゆた)。望まれない子どもとして育ち、家にも学校にも居場所がないまま、自分を愛せずにいる少女・茉莉。かつて最愛の人・春妃(はるひ)を亡くし、心に癒えない傷を抱え続けてきた歩太。公園で襲われていた猫を助けようとして偶然出会った二人は、少しずつ距離を近づけていく。歩太、そして彼の友人の夏姫(なつき)や慎一との出会いに、初めて心安らぐ居場所を手にした茉莉だったが、二人の幸福な時間はある事件によって大きく歪められ――。『天使の卵』から20年、『天使の梯子(はしご)』から10年。いま贈る、終わりにして始まりの物語。


前々作、前作からそんなに時間が経っていたのだと、改めて感慨深く思う。時の隔たりをまったく感じさせない本作である。どれほど時が経とうと、厭されず哀しみを抱えたままの歩太と、生まれてきたという理由で自分のことを愛せない少女・茉莉が、ふとした偶然で出会ってほんとうによかったと思える物語である。世界中にたった一人でも、無条件に自分を全肯定してくれる人がいたなら、人は笑って生きていけるのではないかと思わせてくれる一冊である。

はるひのの、はる*加納朋子

  • 2013/11/21(木) 16:45:31

はるひのの、はるはるひのの、はる
(2013/06/27)
加納 朋子

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遠い遠い未来でいい。
あの人に出会えるなら、
いつまでだって待っていられるーー。
切なくも優しい連作ミステリー。ベストセラー「ささら」シリーズ第三弾!

ある日、僕の前に「はるひ」という女の子が現れる。初めて会ったはずなのに、なぜか彼女ば僕の名前を知っていてた。「未来を変えるために、助けてほしい」と頼まれた僕は、それから度々彼女の不思議なお願いをきくことになり……。
時を越えて明かされる、温かな真実。
切なくも優しい連作ミステリー。
ベストセラー「ささら」シリーズ第三弾!


夢のようで、哀しく、あたたかく、とびきり愛おしい物語である。胸の痛む出来事がたくさんでてくるが、人の「想い」によって、誰もがいつしかそれを乗り越え、未来へ向かって歩いているのだと思わせてくれる物語でもある。人と人との縁(えにし)のようなものも感じられ、その時その時を大切にしようと思わせてもくれる。大切な何かに守られているような心地の一冊である。

シュークリーム・パニック 生チョコレート*倉知淳

  • 2013/11/19(火) 16:49:04

シュークリーム・パニック ―生チョコレート― (講談社ノベルス)シュークリーム・パニック ―生チョコレート― (講談社ノベルス)
(2013/10/08)
倉知 淳

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高校2年生の夏休み。受験勉強を前に、羽を伸ばしてすごせる最後の夏、「僕」は仲間たちと映画制作を始めた。監督の「僕」は以前から気になっていた同級生、百合川京子を主役に抜擢し、撮影は快調。しかしその最終日、ラストシーンのロケ場所から、彼女の姿が消えた―!?感動的な結末に心がほっこりする中編「夏の終わりと僕らの影と」はじめ、本格ミステリの名手の技が光る3編を収録。


「現金強奪作戦!(但し現地集合)」 「強運の男」 「夏の終わりと僕らの影と」

タイトルが中身とどうつながるのかがいまひとつよく解らないが、三篇ともそんなに甘いものではない。初めの二編など、明らかに辛い、というか苦い。だから面白くないというわけではないが、タイトルの甘さがどこかで気になって、個人的には集中を削がれた気がしなくもない。テイストの違う物語を愉しめる一冊ではある。

教場*長岡弘樹

  • 2013/11/17(日) 16:46:53

教場教場
(2013/06/19)
長岡 弘樹

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君には、警察学校をやめてもらう。

「こんな爽快な読後の悪さは始めてだ! 警察学校が担う役割とはなんだろうか。篩にかけられた友もまた、警察官を育成するために必要なものだったのだろうか。校庭のすみに育てられている百日草が示すものが、警察組織を守るための絆ではなく、市民を守るための絆であることをただただ願いたい」
――さわや書店フェザン店・田口幹人さん
「復興を続ける警察小説ジャンルから飛び出した、突然変異(ミュータント)。警察学校が舞台の学園小説でもあり、本格ミステリーでもあり、なにより、教師モノ小説の傑作だ。白髪の教師・風間は、さまざまな動機で集まってきた学生それぞれに応じた修羅場を準備し、挫折を演出する。その『教育』に触れた者はみな――覚醒する。もしかしたら。この本を手に取った、あなたも。」
--ライター・吉田大助さん


警察学校が舞台ではあるが、そこでの過酷な訓練の様子や、警察官を目指す若者たちの成長物語とは無縁でもある。「職質」「牢問」「蟻穴」「調達」「異物」「背水」という六話の連作であり、それぞれが学生同士の確執に絡むミステリになっており、教官・風間の鋭い観察力によって決着をつけられる形になっている。だがそれは決して後味のいいものではなく、苦肉の二者択一を迫られるものであったり、自らをなお縛りつけるようなものであったりもする。爽やかな青春物語を期待して読むと重苦しい気分にさせられる一冊でもある。

きつねの遠足*石田千

  • 2013/11/16(土) 16:42:13

きつねの遠足きつねの遠足
(2013/09/25)
石田千

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からりと晴れたら町に出て、風邪をひいたら本を読む。銭湯、寄席、銀座のバアでも商店街でも、いつもなにかに手をひかれ、かならずだれかとめぐりあう…。ありきたりな日々の、ゆたかな時間を綴るエッセイ。


いつもながら、興味の向う先、その切り取り方に著者らしさが現れていて魅力的である。目線の先にあるものへのまなざしのあたたかさ――ときには辛辣さ――が飾らなくてとてもいい。どっぷりと中心に浸るのではなく、やや斜めから、外側から観察するように向けられる視線がたまらない。言い切りがいつもよりもやさしく感じられるのはわたしだけだろうか。寄り添ってともに歩いているような心地の一冊である。

貴族探偵対女探偵*麻耶雄嵩

  • 2013/11/14(木) 16:55:29

貴族探偵対女探偵貴族探偵対女探偵
(2013/10/25)
麻耶 雄嵩

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「貴族探偵」を名乗る謎の男が活躍する、本格ミステリーシリーズ第2弾!
今回は新米女探偵・高徳愛香が、すべてにおいて型破りな「貴族探偵」と対決! 期待を裏切らない傑作トリックの5編収録。


シリーズ化されたのか、と思ったら、今回は女探偵との対決である。高名だった師匠亡き後を引き継いで探偵をしている高徳愛香が主に推理を繰り広げているので、一見彼女が主役のように見えるのだが、最後の最後に(使用人が)見事な推理を披露して逆転するという趣向である。一作目よりも貴族探偵の態度が鼻につく気がするのは、愛香を弄んで愉しんでいるように見えなくもないからだろうか。前作よりもスマートさに欠けるようには思われる。愛香の推理もいいところまで行くのだが、まだまだ詰めが甘く、いいところをことごとく貴族探偵に持って行かれてしまうのが可哀想でもある。彼女が精進して、師匠を超えるのを見たいので、次回作からも出て来てくれると嬉しい。次も愉しみなシリーズである。

アリス殺し*小林泰三

  • 2013/11/11(月) 16:43:44

アリス殺し (創元クライム・クラブ)アリス殺し (創元クライム・クラブ)
(2013/09/20)
小林 泰三

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複数の人間が夢で共有する〈不思議の国〉で次々起きる異様な殺人と、現実世界で起きる不審死。驚愕の真相にあなたも必ず騙される。鬼才が贈る本格ミステリ。


タイトルに惹かれて読んでみた。不思議の国のアリスの世界で起こる殺人事件の物語かと単純に思っていたら、さにあらず。現実世界――それさえ確固としたものとは思えなくなるのだが――と、夢のなか(たぶん)の世界とが複数の人々によって共有され、奇妙にリンクしているのである。夢の世界の物語などと侮っていると、あまりにもグロテスクに過ぎる殺人事件の描写が何度も現れるので、具合が悪くなりそうでもある。覚悟して読んだ方がいい。余談だが、物の解らない人に何かを説明するときのイライラ感も充分すぎるほど味わえる。自業自得とは言え、あまりにも惨い一冊である。

黄昏の旗--箱庭旅団*朱川湊人

  • 2013/11/10(日) 11:30:34

黄昏(たそがれ)の旗黄昏(たそがれ)の旗
(2013/10/12)
朱川 湊人

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「見ている風景は、誰も似たようなものだわ。そこから何を見つけるかは、あなたの心しだい……」
どんな時代にも、どんな場所でも、映画や本のような作られた世界のなかでも、自由自在に行き来できる「旅行者(トラベラー)」である少年が、白馬とともに旅する世界をそれぞれ「箱庭」に見立て、短篇の名手が物語を紡ぐ。
国道四号を悠々と歩きつづけるゾウ(「誰もゾウにはかなわない」)、夕暮れの車窓から見えるオレンジ色の旗(「黄昏の旗」)、ジェフじいさんが壊した機械人形(「ヴォッコ3710」)、幽体離脱して好きな女性の危機を救った男(「人間ボート、あるいは水平移動の夜」)、アンデス山中で見たファニカの正体(「ひとりぼっちのファニカ」)、最果ての岬に響く哀調に満ちたバイオリンの音(「傷心の竜のためのバイオリンソナタ」)、真っ白な水着を着た僕たちの女神(「三十年前の夏休み」)などなど。
笑いあり、涙あり、恐怖あり……直木賞作家が贈る、ちょっと不思議で懐かしい連作短篇集。


なんとも不思議な物語の数々である。わたしたちが暮らしている世界と似てはいるのだが、尺度が少しずつずれているような、微妙な違和感を覚えつつ読み進む感じである。白馬を連れた少年が時間旅行している先々で出会った物語なのだと最後で判るが、それぞれの物語中に、ちらっとでも彼が姿を見せてくれたらもっと効果的だったのでは、という気もしなくはない。しばし時間旅行のお供をしている心地の一冊である。

総理の夫*原田マハ

  • 2013/11/08(金) 07:10:22

総理の夫総理の夫
(2013/07/11)
原田 マハ

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20XX年、相馬凛子は42歳にして第111代総理大臣に選出された。
夫である私・日和は鳥類研究家でありながらファースト・レディならぬ
ファースト・ジェントルマンとして、妻を支えようと決意する。
凛子は美貌、誠実で正義感にあふれ、率直な物言いも共感を呼んで支持率ばつぐん。
だが税制、エネルギー、子育てなど、国民目線で女性にやさしい政策には、
政財界の古くさいおじさん連中からやっかみの嵐。
凛子が党首を務める直進党は議席を少数しか有せず、他党と連立を組んでいたのだが、
政界のライバルたちはその隙をつき、思わぬ裏切りを画策し、
こともあろうに日和へもその触手を伸ばしてきた。
大荒れにして権謀術数うずまく国会で、凛子の理想は実現するのか?
山本周五郎賞作家が贈る政界エンターテインメント&夫婦愛の物語。


まず着想が興味深い。依然として男社会である日本の総理に女性がなる。前例もなく、男性が総理であることを前提とされている環境の中で、不便を次々に解決しながら、ある時は突き崩し、ある時は創りだして前へと進む妻・凜子。その姿を一抹の寂しさや戸惑いとともに、全幅の信頼を持って眺める総理の夫・日和の視点で描かれているのが、なお興味深い。凜子あっての日和、日和あっての凜子なのだと胸の中が温かいもので満たされる一冊でもある。
あの久遠久美がまたまた陰で大活躍しているのも嬉しい。

いつか夜の終わりに*高田郁

  • 2013/11/06(水) 16:59:07

いつか夜の終わりに (双葉文庫)いつか夜の終わりに (双葉文庫)
(2013/09/12)
高田 侑

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山中で迷った僕は、山奥の不思議な村に辿り着く。そこで出会った少女と、ある約束を交わすが……。
切なくも希望に満ちたラストが鮮烈な「てのひらたけ」他、3編を収録。


「てのひらたけ」 「あの坂道をのぼれば」 「タンポポの花のように」 「走馬灯」

ホラーとファンタジーの間を漂っているような物語である。冷静に考えればあるはずのないことが、もしかしたらあったかもしれないと思わされるような不思議な力を持っている。とは言え、すべて夢でした、と言われても納得してしまうような心許ない手触りでもあるのである。怖くて懐かしくて愛おしい一冊である。

ローカル線で行こう!*真保裕一

  • 2013/11/05(火) 16:51:47

ローカル線で行こう!ローカル線で行こう!
(2013/02/13)
真保 裕一

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ベストセラー『デパートへ行こう!』に続く、感涙必死の再生物語、第2弾!
県下最大のお荷物といわれる赤字ローカル線、もりはら鉄道は、廃線の瀬戸際に立たされていた。再生を図るため、前社長が白羽の矢を立てたのは……なんと新幹線のカリスマ・アテンダント。篠宮亜佐美。三十一歳、独身。
「この鉄道の経営は、素人以下です」「お金がないなら、智恵を出すのよ!」
県庁から送り込まれた鵜沢哲夫以下、もり鉄社員は戸惑うばかり。しかし、亜佐美は社長に就任するや、規格外のアイデアを連発し、鉄道と沿線の町はにわかに活気づいていく。一方、時を同じくして、列車妨害、駅の放火、台風による崖崩れと、数々の事件が亜佐美たちを襲う。そんな中、社員すべての希望をかけた「もり鉄フェスティバル」の日がやってくるが……。
赤字鉄道の再生は? 寂れた沿線の町おこしは? そして、不穏な事件の真相は? もり鉄に明日はあるのか?
読めば元気の出てくる、痛快鉄道再生ストーリー!!


初めは、どこかで聞いたようなお話し?という印象もあったが、不穏な事件も絡め、ミステリ風味もつけて、さらに地下で秘密裏に行われているよからぬ画策をも絡めて、ただのローカル線再生物語とはひと味違ったものに仕立てられている。ほんとうにそんなことが起こり得るかとか、個人でそこまでやれるものかとか、都合のいい部分はなくはないが、それでもやはり町ぐるみでこうして元気になっていく姿を見るのはうれしいものである。これからいよいよもり鉄の真価が問われることになるのだろう。応援したくなる一冊である。

エール!3

  • 2013/11/03(日) 16:41:27

エール! (3) (実業之日本社文庫)エール! (3) (実業之日本社文庫)
(2013/10/04)
伊坂 幸太郎、原田 マハ 他

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小学生の娘と暮らしながら、新幹線清掃の仕事をするシングルマザーが出合う奇跡とは!?(伊坂幸太郎「彗星さんたち」)ほか全六編。運送会社の美術輸送班、東京消防庁災害救急情報センター、ベビーシッター、農業、イベント企画会社など、多彩な職場で働くヒロインたちの奮闘を描くお仕事小説アンソロジー第三弾。それぞれの仕事の裏側や豆知識も満載。オール書き下ろし!


「ヴィーナスの誕生」原田マハ 「心晴日和」日明恩 「『ラブ・ミー・テンダー』」森谷明子 「クール」山本幸久 「シンプル・マインド」吉永南央 「彗星さんたち」伊坂幸太郎

どれもこれもがとても好きだった。普段身近に接することのない職業ばかりで、その一端に触れることができて興味深かった。じんわりと胸の中が温かくなるような物語ばかりで、とても好きな一冊である。伊坂さんの遊び心も嬉しい。

はじめからその話をすればよかった*宮下奈都

  • 2013/11/02(土) 20:27:12

はじめからその話をすればよかったはじめからその話をすればよかった
(2013/10/10)
宮下 奈都

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単独の著書として10冊目にあたり、『終わらない歌』以来1年ぶりとなる本書は、著者初のエッセイ集。
小説を書く理由、自著の創作秘話、三人の子供たちを愛おしむ日々、大好きな本や音楽と共にある暮らし……。
2004年の作家デビュー以来9年間で紡がれたエッセイ81編と、
単行本初収録となる掌編小説4編を収める、宮下ファン必携、極上の一冊の誕生だ!


何度も書いている通り、小説家の書くエッセイにはあまり好きなものがない。だがこれは、確かにエッセイなのだが、エッセイにありがちなわざとらしさや気負いのような気配が少しも感じられないのである。素の宮下奈都を隣で見ているような親しささえ感じられ、著者のことがますます好きになり、その作品にますます愛着を感じるようになるのである。宮下奈都さん素敵、と言って歩きたくなる一冊である。

ささみみささめ*長野まゆみ

  • 2013/11/01(金) 16:56:35

ささみみささめ (単行本)ささみみささめ (単行本)
(2013/10/10)
長野 まゆみ

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よく耳にするありきたりなひと言。しかしその言葉の裏にはじつに奇妙な物語が潜んでいるものだ。白昼夢のような短篇25篇が色とりどりにきらめき連なる小説集。


表題作のほか、「ああ、どうしよう」 「ちらかしてるけど」 「あしたは晴れる」 「行ってらっしゃい」 「おかけになった番号は…」 「ママには、ないしょにしておくね!」 「きみは、もう若くない」 「あなたにあげる」 「ウチに来る?」 「名刺をください」 「一生のお願い」 「ヒントはもう云ったわ」 「ありそうで、なさそうな」 「もう、うんざりだ」 「わたしに触らないで」 「ウチ、うるさくないですか?」 「ドシラソファミレド」 「すべって転んで」 「ここだけの話」 「スモモモモモモ」 「春をいただきます!」 「最後尾はコチラです」 「悪いけど、それやめてくれない?」 「こんどいつ来る?」

こうしてタイトルを並べただけでも、これからどんなお話が始まるのかとわくわくする。どれもこれも、どこででも聞こえてくるようなごくごくフツーのひと言である。それが著者の手にかかれば、意味深長なひと言に姿を変えるのである。タイトルも装丁も、なにやらやさしげであるが、粗挽きの胡椒がピリリと舌を刺すような、思わぬ落ちが待っている。贅沢な一冊である。