買わずにいられる?*岸本葉子

  • 2014/02/28(金) 18:45:20

買わずにいられる?買わずにいられる?
(2011/09/21)
岸本 葉子

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「岸本さんって買い物にいろいろと悩んで、念入りに研究して、そんでもって失敗して、ほんと可笑しい!」と大評判だった『買おうかどうか』の第2弾! 今度はネットオークションに初挑戦(そして挫折!?)や宿の予約サイトなど、時流にのってネット関係も豊富。とっても愉快な一冊です。


著者が、お店やカタログや、インターネット上の情報を、微に入り細を穿つように眺め、比べている姿が思い浮かんで、思わず頬が緩んでしまう。だが、こんなにも入念に下調べをしているにもかかわらず、大事な情報を見逃したりしていて、苦笑いも出てしまうのである。そしてやはり、こだわりどころが自分とは違うのが面白くもある。いまも、欲しいものの情報を懸命に見比べているところかもしれないと想像すると、なんとなくしあわせな心地になる。ふふふな一冊である。

Story Seller annex

  • 2014/02/27(木) 16:52:16

Story Seller annex (新潮文庫)Story Seller annex (新潮文庫)
(2014/01/29)
新潮社ストーリーセラー編集部

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大好評アンソロジー「Story Seller」の姉妹編をお届けします。今回も、6名の超人気作家が豪華競演。オール読みきりで、読み応え抜群の作品を詰め込みました。あっと驚かされるミステリ、くすりと笑える話から、思わず涙がこぼれる恋愛小説まで。物語の力にどっぷり惹き込まれる幸せな読書体験をどうぞ。お気に入りが見つかったら次の本を探せる、作家別著作リストも完備しました。


「暗がりの子供」道尾秀介 「トゥラーダ」近藤史恵 「R-18」有川浩 「万灯」米澤穂信 「ジョン・ファウルズを探して」恩田陸 「約束」湊かなえ

今回は、裡に抱え込んだ闇のようなものが描かれたものが多かったように思う。なので面白さも、単純なおもしろさではない。全体的に漂う雰囲気も、いささか重い印象である。意図的にこういう作品を集めたのかもしれないが、個人的には、もう少し違う印象の作品を集めて、違った趣向を愉しみたかった。だが、物語としては、興味が先へ先へと走りもしたので、愉しい読書タイムの一冊だった。

うさぎ幻化行*北森鴻

  • 2014/02/26(水) 17:12:43

うさぎ幻化行 (創元クライム・クラブ)うさぎ幻化行 (創元クライム・クラブ)
(2010/02/24)
北森 鴻

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突然この世を去ってしまった、義兄・最上圭一。優秀な音響技術者だった彼は、「うさぎ」に不思議な“音のメッセージ”を遺していた。圭一から「うさぎ」と呼ばれ、可愛がられたリツ子は、早速メッセージを聞いてみることに。環境庁が選定した、日本の音風景百選を録音したものと思われるが、どこかひっかかる。謎を抱えながら、録音されたと思しき音源を訪ね歩くうちに、「うさぎ」は音風景の奇妙な矛盾に気づく―。音風景を巡る謎を、旅情豊かに描く連作長編著者からの最後の贈りもの。


著者最後の作品である。寂しい限り。飛行機事故で突然この世を去った義兄・圭一と、うさぎと呼ばれた義妹・リツ子。うさぎ宛に残されたファイルにはいくつかの音源が入っていた。リツ子は、その音源を探す旅の途中、自分ではないうさぎの存在に気づく。北斗星やトワイライトエクスプレスといった鉄道の旅の旅情と音風景に仕込まれた謎を愉しめる物語である。ちょっぴりガリレオシリーズを思い出した一冊でもある。

カートに入れる?*岸本葉子

  • 2014/02/24(月) 07:02:51

カートに入れる?カートに入れる?
(2013/11/20)
岸本 葉子

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『買おうかどうか』『買わずにいられる?』に続く、大好評お買い物エッセイシリーズ第3弾!
今回もいいものを見かけて、リサーチして、悩んで買って(失敗して?)、がたーくさん!
ルンバに始まり、高機能扇風機、オイルヒーターと最新家電に凝ってみたり、
加圧トレーニングや美容院選びなど体を張って調査したりと、試してみた結果が満載。
馬油シャンプーなど大当たりの品もちらほら。
さああなたはどれをカートに入れる?


シリーズ三作目になるのね、二作目は未読だわ、と思って過去記事を見てみたら、一作目の感想も書いていなかった。たしかに読んだ記憶があるので、ここを始める前だった?…のかなぁ......、ということが最近多くてイヤになる。というのはさておき、一作目も、共感できるものできないものさまざまであったが、今回も然り。わざわざそこにこだわらなくてもいいのでは、というところもあったが、人の価値観の多様さを見せられるようでもあり、それもまた面白かった。そして、著者の事前調査の徹底ぶりが頼もしすぎるくらいなのだが、それでも失敗が多いのが、さらにさらに可笑しみと哀しみを誘うので、愛おしささえ感じる一冊になっている。自分の買い物に役立つかどうかは、人それぞれなので判定不能でもある。

学校のセンセイ*飛鳥井千砂

  • 2014/02/23(日) 08:26:15

学校のセンセイ学校のセンセイ
(2007/06)
飛鳥井 千砂

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センセイって、もっと特別な人がやるものだと思ってたんだ。とくにやりたいことがなく、気がつけば先生になっていた。生徒は可愛げがないし、同僚とのつきあいも面倒だ。それでも、“センセイの日々”は続いて行く…。第18回小説すばる新人賞受賞作家が描く、“フツーの教師”の青春物語。


いまどきの高校で先生になってしまったいまどきの若者・桐原が主人公である。なんとなく教師になってしまったが、熱血先生とは対極にある。一見冷静にそつなくこなしているように見えるのは、ひとえに面倒くさいからという消極的な理由なのである。だが、先輩教師や同僚教師たち、問題生徒との日々のかかわりの中、先生としてのあり方は少しずつ変化を見せる。同時に、かつての同級生・中川や浅見、向いのアパートのツイッギー激似の小枝や彼氏の高校生・亮と知り合ったことで、私生活でも様々な変化がある。やる気のなさそうな桐原に、なんとなく親近感を抱いてしまうのは、そう言いながらも生徒を見離してはいないからかもしれない。先生も生徒も同級生も隣人も、みんなそれぞれ普通の人間で、さまざまな悩みを抱えながらも真摯に生きているのだと思わされる一冊でもある。

ミッドナイト・バス*伊吹有喜

  • 2014/02/21(金) 17:03:10

ミッドナイト・バスミッドナイト・バス
(2014/01/24)
伊吹 有喜

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東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。
ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。

父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。
実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。
そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩む元妻、美雪。

突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、
今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。
全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。

家族の再生と再出発をおだやかな筆致で描く、伊吹有喜の新たな代表作!


故郷の新潟と東京を結ぶ深夜バス。「はくちょうさん」と呼ばれる白鳥(しらとり)交通のバスを運転する利一が主人公である。どういうわけかなにかが上手くいかず、少しずつ歯車が合わなくなってバラバラになっていった家族。バラバラになりそれぞれに懸命に生きてきたが、そこでもまた悩み、傷つき、戻ってくる。言いたいことを言わず、取り繕うように暮らした過去から抜け出し、家族それぞれが傷を癒して再び巣立っていくまでが、静かに描かれた物語である。誰が悪いわけでもないのにすれ違っていく様には切ないものがあるが、家族といえども言葉が大切なのだと思わされもする。利一の選択で傷つく人もいないわけではないが、彼の家が、家族の要になったことは確かだと思える。夜を超えて走るバスが、人生のように思える一冊である。

武士道エイティーン*誉田哲也

  • 2014/02/18(火) 17:04:05

武士道エイティーン武士道エイティーン
(2009/07)
誉田 哲也

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高校時代を剣道にかける、またとない好敵手。最後の夏、ふたりの決戦のとき。新進気鋭が放つ痛快・青春エンターテインメント、いよいよ天王山!わたしたちは、もう迷わない。この道をゆくと、決めたのだから。


シリーズ完結編らしい。「武士道シックスティーン」は読んだ気がしていたのだが未読だった?そうだったかなぁ……?読んでいないとしても、キャラクタに親しみを感じるのはなぜだろう。女子高生と武士道という、一見相容れないような両者が見事にマッチして、気持ちの好い青春物語になっている。現代の多くの女子高生とは似ても似つかなそうな彼女たち――ことに磯山香織――だが、進路の悩みや友人との関係の悩みは共通するところもあり、愛おしくもなる。桐谷道場の過去や、福岡南高校剣道部の顧問・吉野先生の過去が挟み込まれているのも興味深く、物語の奥行きを深く濃くしている。まさに痛快青春エンターテインメントといえる一冊である。

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小説あります*門井慶喜

  • 2014/02/15(土) 16:57:46

小説あります小説あります
(2011/07/20)
門井慶喜

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N市立文学館は、昨今の自治体の財政難が影響し、廃館が決定してしまった。文学館に嘱託として勤めていた老松郁太は、館の存続をかけて、文学館の展示の中心的作家・徳丸敬生の晩年の謎を解こうと考える。30年前、作家は置き手紙を残して失踪、そのまま行方不明となったままなのだ……。好評を博した『おさがしの本は』姉妹編、待望の刊行!


突然失踪し、この世から姿を消した小説家・徳丸敬生の暮らした家をそのまま文学館にしたN市は、財政難を理由に、文学館の廃館を決めた。そこの嘱託職員である老松郁太は、偶然にも神田の古本屋で、徳丸敬生直筆のサインの入った遺稿集をみつけ、その謎を解くことで廃館を免れることができるのではないかと考える。徳丸の謎と、郁太の家族との立場をめぐる駆け引きが、絡まり合いながら進んでいく。結局のところ、スッキリしたようなしないような結末に落ち着くのだが、なんとなくほのぼのした気持ちにもなる一冊でもある。

星を賣る店*クラフト・エヴィング商會

  • 2014/02/14(金) 13:02:48

星を賣る店星を賣る店
(2014/01/27)
クラフト・エヴィング商會

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この展覧会はうそかまことか――。クラフト・エヴィング商會の棚おろし的展覧会公式図録。文学、デザイン、アートを軽々と渡り歩く同商會の魅力と新たな世界が満喫できる約3年ぶりの新刊。


本書を読むに先駆けて、世田谷文学館で催されている「棚卸展覧会」を拝見してきたので、なおさら愛着深く読ませていただいた。あるようで存在せず、ないようで実在するあれこれが、入り交じりつつ整然と並べられている様は、二次元でも三次元でも圧巻である。展覧会でも、ひとつひとつ手に取って、裏返したり包み紙を剥いたり、蓋を開けて中を覗いたりしたくなる衝動を抑えるのが大変だったが、本書を開いて、またそのときの気分を思い出してしまった。巻末の「お客さまの声」にひと言を寄せられた著名人のみなさんも、クラフト・エヴィング商會の不思議な力に吸い寄せられているのがありありと感じられて、思わず頬が緩んでしまう。この次はどんな旅をさせてくれるのだろうと期待が膨らむ一冊でもある。

小福歳時記*群ようこ

  • 2014/02/13(木) 17:03:44

小福歳時記 (集英社文庫)小福歳時記 (集英社文庫)
(2013/07/19)
群 ようこ

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身だしなみの手を抜くと、おばさんではなく、なぜかおじさんに近づいてしまう50代。節分の豆を年の数だけ食べるのがきつくなり、体型崩壊により似合う服を探すのに四苦八苦、老後のための貯金はままならず…。思う通りにはならない人生、でもできないことはしょうがない。がんばらない、しがみつかない、無理しない。まずは身辺の小さなことからひとつずつ。さりげない日常を綴る極上エッセイ。


背伸びせず、ありのままのこのごろのことが綴られているようなエッセイである。思い当たること、身につまされることも多々あり、思わず「そうそう」と膝を打つことも度々である。物を減らす努力をしなくては、甘いものを食べすぎないようにしなければ、と自分に言い聞かせた一冊である。

<完本>初ものがたり*宮部みゆき

  • 2014/02/13(木) 16:57:29

<完本>初ものがたり (PHP文芸文庫)<完本>初ものがたり (PHP文芸文庫)
(2013/07/17)
宮部 みゆき

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文庫本未収録の三篇を加え、茂七親分の物語が再び動き始めた!茂七とは、手下の糸吉、権三とともに江戸の下町で起こる難事件に立ち向かう岡っ引き。謎の稲荷寿司屋、超能力をもつ拝み屋の少年など、気になる登場人物も目白押し。鰹、白魚、柿など季節を彩る「初もの」を巧みに織り込んだ物語は、ときに妖しく、哀しく、優しく艶やかに人々の心に忍び寄る。ミヤベ・ワールド全開の人情捕物ばなし。


<愛蔵版>をすでに読んでいるが、そこに未収録の「寿の毒」と「鬼は外」を加えた九編である。
謎の稲荷寿司の屋台の親父の素性は、すっかり判るかと思いきや、そこはまだ定かにはならず、しかしほんの小さな糸口はつかめたような気がするようなしないような……。それはそれとして、この屋台で出される料理が相変わらずにおいしそうなのである。茂七親分に連れて行ってもらいたいくらいである。茂七親分が頭を悩ませているときに、親父が何気なくもらすひと言にも味わいがあり、それが探索のヒントになったりするのも興味深い。やはりこの親父只者ではない。手下の権三や糸吉との掛け合いも、リズミカルで心憎い。稲荷寿司屋台の親父の謎が明かされるのも愉しみなシリーズである。

夜明けのラジオ*石田千

  • 2014/02/10(月) 16:54:10

夜明けのラジオ夜明けのラジオ
(2014/01/24)
石田 千

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日が昇ればひと仕事。日が傾けば飲みに出かける。ひとり分の食事を作り、本を愛し、旅を楽しむ。かざらない暮らしの風景を切り取った最新エッセイ集。


いつもと変わらず、さっぱりとシンプルで自由な日々が好ましい。あり合わせで作るおかずも、たっぷりと作り置きする汁物も、飲みに出かけた先で食べるあれこれも、どれもみな取り立てて贅沢なものではないが美味しそうである。語り口もいつも通りなのだが、いつもよりも視線が前に向いて晴れ晴れした印象が感じられるのはわたしの気のせいだろうか。気力が静かにみなぎっているように思われてうれしい一冊である。

注文の多い注文書*小川洋子 クラフト・エヴィング商會

  • 2014/02/08(土) 16:45:06

注文の多い注文書 (単行本)注文の多い注文書 (単行本)
(2014/01/23)
小川 洋子、クラフトエヴィング商會 他

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「バナナフィッシュの耳石」「貧乏な叔母さん」など5つの小説に登場する品物の探索を、小川洋子がクラフト・エヴィング商會に依頼して…。
とっておきの共作全5編を収録。『webちくま』連載に加筆し書籍化。


まさに「注文の多い注文書」の部分を小川洋子氏が書き、それぞれに物語のある思い入れの深い品物を探し出して「納品書」を書くのがクラフト・エヴィング商會。それに対する「受領書」をまた小川氏が書く、という何とも贅沢なやり取りである。注文される品物じゃどれも一筋縄ではいかないものであるが、注文主にとってはとても大切なものであり、クラフト・エヴィング商會が八方手を尽くして探し出す過程も興味深い。それぞれの世界を損なわず、相乗効果を生み出す、なんてベストマッチングなふた組なのだろうと嬉しくなる一冊である。

残月*高田郁

  • 2014/02/08(土) 11:01:23

残月 みおつくし料理帖 (ハルキ文庫)残月 みおつくし料理帖 (ハルキ文庫)
(2013/06/15)
高田 郁

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吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人・又次の死。辛く悲しかった時は過ぎ、澪と「つる家」の面々は新たな日々を迎えていた。そんなある日、吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる家」を訪れた。あさひ太夫と澪の関係、そして又次が今際の際に遺した言葉の真意を知りたいという。澪の幼馴染み、あさひ太夫こと野江のその後とは―――(第一話「残月」)。その他、若旦那・佐平衛との再会は叶うのか? 料理屋「登龍楼」に呼び出された澪の新たなる試練とは・・・・・。雲外蒼天を胸に、料理に生きる澪と「つる家」の新たなる決意。希望溢れるシリーズ第八弾。


前作では辛い目にばかり遭っていたので、どうなることかと気を揉んだが、今作では、胸を温かくする前向きな出来事がいくつもあって、ほっとした。しかも、御寮さん・芳がらみの吉事があり、耐え忍び続けてしぼんだ心が潤うのを、澪やつる家の面々とともに喜んだのだった。御寮さんがあそこに納まれば、澪はもしかするとああなって……、と先走って想像を膨らませ、これでやっといろいろ念願がかなうかもしれないと、一人合点までしてしまった。このまま順調にはいかないのだろうとは思うが、次作が愉しみである。そろそろみんながしあわせになってもいいのではないかと思うシリーズである。

ザ・タイガース 花の首飾り物語*瞳みのる

  • 2014/02/05(水) 17:17:11

ザ・タイガース 花の首飾り物語ザ・タイガース 花の首飾り物語
(2013/11/29)
瞳 みのる

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ザ・タイガースが完全復活!花の首飾り物語

2011年12月、慶應高校教師だった瞳みのるが40年ぶりに復帰し、GS世代から熱い注目を浴びた「ザ・タイガース コンサート」。その時の大反響ぶりから、今年12月には、遂にトッポこと加橋かつみも加えたオリジナルメンバーで全国ツアーが開催されることになった。東京、大阪ではドームで開催するコンサートにもかかわらずチケットは完売状態で、今年はさらに大きなムーブメントになることは必至である。今だから話せるタイガースのデビュー当時の秘話や、これまで参加を渋っていた加橋が辿ってきた道のり、そして今回、加橋の参加でオリジナルバージョンが披露される「花の首飾り」の誕生秘話を紹介する。1968年に発表された「花の首飾り」の歌詞は一般公募されたもので、その後、多くのミュージシャンがカバーした。この曲のルーツを瞳みのるが訪ね、すぎやまこういち氏、橋本淳氏、なかにし礼氏、井上陽水氏などへのインタビューも収録した。


タイガースがデビューしたころ、わたしは小学校高学年で、GSに特別な興味はなかったのだが、タイガースはほかのグループとは少し違った特別な場所に立っているような印象がある。数あるタイガースの歌の中で「花の首飾り」が取り上げられているのは、大ヒットしたということもあり、歌詞が公募によるものだということで、歌の原点探しというミステリ風味が加味されてのことかもしれないとも思う。元の作詞者・菅原房子さんは、冬至19歳の女子学生だったが、その後の消息は不明だったのである。著者は、彼女の故郷を訪ね、さまざまな縁から現在の彼女を探し当て、電話でのインタビューを実現させた。彼女が応募した詞が元になって「花の首飾り」が生まれたことは確かなのだが、補作者のなかにし礼が作ったようなものだという見解を読んだときには、もやもやしたものが胸に広がったが、当のなかにし礼氏のインタビューを読んで、報われた心地になった。ひとつの時代を作ったタイガースの思わぬ舞台裏をのぞいたような一冊だった。

Qros(キュロス)の女*誉田哲也

  • 2014/02/04(火) 17:02:19

Qrosの女Qrosの女
(2013/12/12)
誉田 哲也

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「週刊キンダイ」芸能記者の矢口慶太は、CMで話題沸騰中の美女「Qrosの女」の正体を探るが、核心に迫る情報を得られない。ようやくCMで彼女と共演した俳優・藤井涼介のネタを仕入れたので、先輩記者の栗山にサポートしてもらい、藤井の自宅を張り込む。すると「Qrosの女」とおぼしき人物を発見!それは偶然?それとも仕組まれた罠?芸能記者、ブラック・ジャーナリスト、そしてヤクザも!?ネット情報に踊らされながら、思惑が交錯し、驚愕の真相へ。


ファストファッションの一大ブランド「Qros(キュロス)」のCMに出ている美女は、名前も素性も謎に包まれている。それ故話題が話題を呼び、巷では彼女の噂で持ちきりである。ネットでももちろん、目撃情報や噂がまことしやかに書き込まれているが、次第にエスカレートし、ストーカーまがいの者が出たり、盗撮する者が現れたりし始める。そんな彼女を巡って、業界人たちの思惑も様々で、あちこちで駆け引きや取引が行われもする。本人の戸惑いや困惑と、一般人の無責任な噂話、そして彼女を取り巻く業界の思惑が三つ巴になっていて、興味を惹きつけられる。ラストでは真犯人も暴き出され、思ってもいなかった落としどころにすとんと落ち着くのだが、人間の欲の深さや恐ろしさをも感じさせられる。ネットと人間の怖さを思い知らされる一冊でもある。

夏天の虹*高田郁

  • 2014/02/02(日) 16:47:33

夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))夏天の虹―みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 (時代小説文庫))
(2012/03/15)
高田 郁

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想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か・・・・・・澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しんでいた。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思い浮かべる澪。天空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、決して譲れない辿り着きたい道が、はっきりと見えていた。そして澪は、自身の揺るがない決意を小松原に伝えることに―――(第一話「冬の雲雀」)。その他、表題作「夏天の虹」を含む全四篇。大好評「みをつくし料理貼」シリーズ、〈悲涙〉の第七弾!!


小松原と別々の道を歩くことを決意した澪である。だが、一朝一夕に割り切れるものではない。そのことが引き金となり、澪は味と匂いの感覚を失うことになってしまう。料理人としては痛恨である。つる家の面々はもちろん、又次の助けも借りて、なんとか店を開け、変わらずお客に喜んでもらってはいたが、澪の感覚はなかなか戻らない。そして悪いことは続くものである。又次が帰る日に吉原から火が出たのである。太夫を助けに入った又次は……。どれだけ頑張って、哀しい思いをすれば報われるのだろう。早く澪を安泰にしてやりたい、と思う反面、苦難を乗り越えてこその澪なのだとも思うシリーズである。

心星ひとつ*高田郁

  • 2014/02/01(土) 17:03:04

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)
(2011/08/10)
高田 郁

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酷暑を過ぎた葉月のある午後、翁屋の桜主伝右衛門がつる家を訪れた。伝右衛門の口から語られたのは、手を貸すので吉原にて天満一兆庵を再建しないか、との話だった。 一方登龍楼の采女宗馬からも、神田須田町の登龍楼を、居抜きで売るのでつる家として移って来ないか、との話が届いていた。登龍楼で奉公をしている、ふきの弟健坊もその店に移して構わないとの事に、それぞれが思い揺れていた。つる家の料理人として岐路に立たされた澪は決断を迫られる事に―― 野江との再会、小松原との恋の行方は!?


今回は、澪に決断を迫られる場面のなんと多かったことだろう。しかも重大事項ばかり。周りの人たちはみな、ひとえに澪に良かれと考えてくれるが、そんな気持ちが解る故に、なおさら決断が難しい。それでも最後の最後は自分の心の声に従うのがいちばんだと、そのときどき、人は違うが教えられる。天満一兆庵の再興、あさひ太夫の行く末、そして澪と小松原のこと。切なくもありやるせなくもあるが、澪のしあわせは澪自身が掴みとるものだと思わされもする。ますます目が離せないシリーズである。