思い出をなくした男*鏑木蓮

  • 2014/03/30(日) 13:36:13

思い出をなくした男思い出をなくした男
(2011/02)
鏑木 蓮

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遊園地に残された一枚の写真、撮影現場から姿を消した斬られ役―「思い出探偵社」が、人生の謎を解きほぐす。乱歩賞作家が贈るハートフルストーリー。


表題作のほか、「雨の日の来園者」 「大芝居を打つ男」 「歌声の向こう側に」

今回も、大きな流れに乗ってゆるやかに流れているような連作である。各章のタイトルが、思い出探偵社が受けた依頼に、担当者が真剣に考えてつけたファイル名でもある。この名前を考える時点で、すでに依頼者に寄り添おうとする心意気が見て取れる。今作では、俳優に専念することで探偵社を抜けた本郷雄高の代わりとして、他者とのかかわりを自ら避けようとする医者の卵・平井真がメンバーに加わったことで、依頼者に寄り添うことの意味をより考えさせられる一冊になっている。

首折り男のための協奏曲*伊坂幸太郎

  • 2014/03/28(金) 07:30:02

首折り男のための協奏曲首折り男のための協奏曲
(2014/01/31)
伊坂 幸太郎

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首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。


連作集とは言え、それぞれが緊密に繋がっているわけでもない。ゆる~い流れに乗っているという感じの連作である。首折り男と黒澤と合コンメンバー。一見何のつながりもなさそうでありながら、そして実際的なつながりはないものの、物語としてはゆるく遠く繋がっているのである。今作のキーワードは時空の捻じれと神の気まぐれ、だろうか。そしてなぜだか、懐かしくて哀しくて切ない想いが胸に満ちてくるような気がする一冊でもある。

札幌アンダーソング*小路幸也

  • 2014/03/25(火) 07:20:58

札幌アンダーソング (単行本)札幌アンダーソング (単行本)
(2014/01/28)
小路 幸也

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北海道は札幌。雪の中、全裸で発見された変態的な遺体の謎を解くため、若手刑事の仲野久は、無駄に色男の先輩・根来とともに、「変態の専門家」を訪ねる。はたしてその専門家とは、とんでもない美貌の天才少年・春。なんと彼は、四世代前までの、先祖の記憶を持つという。その膨大な記憶から、あらゆる事実を見逃かすことができるのだ。その頭脳により、春は犯人の遺したメッセージを看破。しかも意外な方法で犯人を挑発し始め…!?変態事件に巻き込まれたフツウの主人公の運命は。そして札幌の歴史に秘められた意外すぎる謎とは…!?


俄かには信じられない設定ではあるのだが、登場人物それぞれのキャラクターが――美しすぎるということをおいたとしても――とてもいい。キュウくんはもちろん、先輩刑事根来さんも、特異な脳を持った春(シュン)くんも、彼の姉たちも、基本的なところでお互いに全力で信じあっている。そんな環境の中だからこそ、春の能力も如何なく発揮されるのだろう。それにしても、北道大の魔窟のよう底知れなさには驚かされるし、北海道という、日本のなかでもある意味特殊な歴史を持つ地域の奥深さにも俄然興味が湧いてくる。ぜひシリーズ化してほしい一冊でもある。

積み木の塔*鮎川哲也

  • 2014/03/23(日) 16:52:07

積木の塔 (青樹社文庫)積木の塔 (青樹社文庫)
(1999/04)
鮎川 哲也

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目黒の喫茶店で中年セールスマンが毒殺された。彼は前の会社が倒産し、ようやく再就職が決まり、勤め始めた矢先の出来事だった。紅茶に毒を仕込んだと思われる人妻風の女は、行方を絶っていたが、数日後、無惨な死体で発見された…。鬼貫警部が難事件に挑む傑作。


初版は1966年の出版だそうである。もちろん携帯電話もスマートフォンもない。それ故に成り立つアリバイトリックもあるが、人間描写や動機、登場人物の心の動きなどは少しも色あせていない。却って、現代にこそ起こりそうにも思える。綻びは、ほんの些細なことからだと実感させられる一冊でもある。

卵町*栗田有起

  • 2014/03/21(金) 17:04:16

卵町 (ポプラ文庫)卵町 (ポプラ文庫)
(2014/02/05)
栗田有起

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サナは、亡くなった母の願いを叶えるため、かつて彼女が過ごしたという卵町を訪れる。卵町は、とても静かで、とてもやさしい、特別な場所だった。サナは、そこで彫刻家のエイキ、妻を亡くしたクウさん、元看護師のタマキさん、そして母にとって特別な存在であったシイナと出会う。そして、想像もしなかった、母の秘密を知ることになり――。心温まる感動作が、いきなり文庫で登場です!


母が亡くなったが泣けなかったサナ。母が寄ってくると、その分自分から距離を取るような、そんな関係だった母の最期の願いが、自分がかつて暮らした卵町に行ってシイナに自分の死を伝えてほしいということだった。卵町は、死にゆく人と彼らを見守る人たちの町で、曇り空の下に静かに穏やかに息をしているような町だった。サナは、そこで借りた部屋の大家のスミや、森の彫刻家エイキらと触れ合いながらシイナを探し当て、彼女から母の思い出話を聞くことになる。そこに走らなかった母の若いころがあり、生き生きとした母の姿があって、サナは当惑しながらものめりこんでいく。いつしか卵町を去りがたくなってくるほどだった。いまここに自分があるのは、誰かとつながっていたからなのだと、静かに自然に受け入れられるような穏やかな気持ちにさせてくれる一冊である。

思い出探偵*鏑木蓮

  • 2014/03/20(木) 17:10:12

思い出探偵思い出探偵
(2009/02/14)
鏑木 蓮

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もう一度会いたい人が、あなたにはいますか?小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴……、
そんな小さな手がかりから、依頼主の思い出に寄り添うようにして、
捜しものを見つけ出していく“思い出探偵”。

京都御所を臨む地で「思い出探偵社」を開いた実相浩二郎は、息子を亡くし、妻がアルコールに溺れていくのを見かねて刑事を辞めたという過去を持つ。
思い出探偵社には、その誠実で温かい人柄にひかれるようにして、元看護師の一ノ瀬由美、役者志望のアルバイト本郷雄高、10年前に両親を惨殺された27歳の橘佳奈子が集まった。
粗末なペンダントをわざわざ届けてくれた男性を探す「温かな文字を書く男」、ジャズ喫茶でのわずかな時間の出会いが人生を変えた「折り鶴の女」、車椅子の青年が思い出探偵社を混乱に陥れる「嘘をつく男」、戦後の混乱期に命を救ってくれた男性を探す「少女椿のゆめ」の4編を収録。
乱歩賞作家によるミステリータッチのハートフルストーリー。


連作集なのだが、馴染みのある連作集よりも、物語間の区切りがはっきりしていなくて、流れが滞らずに大きな緩やかさで流れている印象である。探偵社のメンバーも、それぞれ重い荷物を背負っており、依頼者の思い出探しに奔走する姿に、真剣に寄り添う想いが感じられるのが、痛ましくもある。だが、依頼者の思い出を探しながら、わずかずつでも自らの思い出したくないものにも向き合い、いつか乗り越えていけそうな気配が見えるのが嬉しくもある。続編もぜひ読んでみたいシリーズである。

三途の川で落としもの*西條奈加

  • 2014/03/17(月) 19:40:52

三途の川で落しもの三途の川で落しもの
(2013/06/27)
西條 奈加

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死者の未練はミステリー。三途の川で出会った生意気な小学6年生と江戸の侍2人。でこぼこトリオは死者の未練解決に奔走する。

小学6年生の叶人(かなと)は、学校の近くの大きな青い橋から落ちて、三途の川へ辿り着いた。そこでは輪廻転生からはずれた江戸時代の武士とあらくれ者が、死者を現世から黄泉の国へと送りだす渡し守をしていた。神話では、この三途の川の渡し守を"カローン"と呼ぶ。親殺しという呪われた因果から逃れられず、優しいまなざしの中にいつも悲しみをたたえる十蔵。殺人鬼と恐れられ、動物的勘にすぐれるあらくれ者・虎之助。死者を無事黄泉の国へと渡すには、現代世界へ降り立ちその者が強烈に残した未練の元を解決しなければならない。「事故か、自殺か、他殺か」死因がわからず現実世界へも黄泉の国へも行けない叶人は、いがみ合う2人の江戸者を手伝うカローン隊の一員となる。


輪廻の輪から外れた江戸者の二人・十蔵と虎之助と、生死の境をさまよっている小学生・叶人が、ダ・ツ・エヴァ(奪衣婆)と県営王(懸衣爺)の計らいによって、三途の川の渡し守になり死者を彼岸に渡すことになる。現世に心を残した死者の魂(地蔵玉)は、ふとしたきっかけで三途の川から現世に落ちてしまい、三人は別人の躰を借りてそれを探しに行き、地蔵玉の持ち主の心残りを解決すべく奔走するのである。筋としては、ときどき見かけるものではあるが、舞台設定と三人のキャラクタの取り合わせとが意表をついていて、なかなか面白い。三途の川にやってくる人たちを見ているうちに、叶人の投げやりだった心持ちにも次第に変化が現れ、自身の気持ちとしっかりと向き合うことができるようになっていく様子がとてもいい。それぞれが抱えている心の闇はとても深く、気持ちが沈むが、それを上回る大きなものに守られているような心地になる一冊である。

てらさふ*朝倉かすみ

  • 2014/03/16(日) 11:22:38

てらさふてらさふ
(2014/02/13)
朝倉 かすみ

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自分がまがいものであることは承知の上で、スーパースターになって2010年代を疾走することを夢想する堂上弥子(どうのうえやこ)。耳の中で鳴る音に連れられ、どこかに行きたいというきもちがつねにうねっていた鈴木笑顔瑠(すずきにこる=ニコ)
北海道の小さな町で運命的に出会ったふたりの中学生は、それぞれ「ここではないどこか」に行くため、一緒に「仕事」で有名になることを決める。その方法は弥子が背後に回り、ニコが前面に出るというもの。最初の仕事は読書感想文コンクールでの入選。弥子が書いてニコの名前で応募した感想文は見事文部科学大臣奨励賞を受賞、授賞式にはニコが出席した。
ふたつめの仕事は、史上最年少で芥川賞を受賞すること。ニコの曽祖父の遺品の中にあった小説を弥子がアレンジして応募した小説「あかるいよなか」は、芥川賞の登竜門となる文芸誌の新人賞を受賞する。作品はその後順当に芥川賞にノミネート、そしてついに受賞の時を迎えるが……それは「てらさふ」仕事を続けてきた、ふたりの終わりのはじまりだった――。
てらさふ――とは「自慢する」「みせびらかす」こと。「てらさふ」弥子とニコがたどり着いた場所は? 女の子の夢と自意識を描きつくした、朝倉かすみの野心作。


二人の少女が芥川賞を目指してあれこれ作戦を練る物語、と言ってしまうとただの真っ直ぐな青春物語なのだが、そこは著者、ただ健全に真っ直ぐにとはいかないわけである。現実にはその他大勢という立場に甘んじつつも、いつか自分が行くべき場所へ打って出て、ウィキペディアに名を連ねるような活躍をするイメージを常に膨らませる弥子。同級生たちを心のなかでは斜めから見て、自分は彼らと同じではないと密かに嗤っていたりする心の動きは、多かれ少なかれ、誰にでも思い当たる節があるのではないだろうか。そんな弥子と出会ってしまったニコもまた、別の意味でその他大勢に甘んじられる性質ではなかった。胸の中で鳴り響く音楽に急かされるように、自分がいるべきどこかへと走っていきたい衝動を抱え込んでいる反面、そうやっていなくなってしまった祖母や母を哀れんでもいるのである。卵の白身と黄身のようなニコと弥子が企んだのは、芥川賞の最年少受賞者になること。そこに向かい始めた二人は、何を得、何を失くし、どう成長したのかが、見どころである。弥子の懲りなさが恐ろしくもあり、目が離せなくもあり、ぞくぞくする。実際に堂上弥子の名前が芥川賞候補に挙がったらどうしようと思ってしまう一冊である。

シュークリーム・パニック Wクリーム*倉知淳

  • 2014/03/14(金) 18:39:13

シュークリーム・パニック ―Wクリーム― (講談社ノベルス)シュークリーム・パニック ―Wクリーム― (講談社ノベルス)
(2013/11/07)
倉知 淳

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「絶食って、何も食べちゃいけないんですか」―体質改善セミナーに参加したメタボな男性4人組。インストラクターの無慈悲な指導によって、耐え難い空腹感が行き場のない怒りへと変わっていく中、冷蔵庫のシュークリームが盗まれる事件が発生する。ミステリマニアの受講者、四谷は探偵役に名乗りを上げるが―!?爆笑必至の「限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件」はじめ、ひと味違う本格ミステリ作品を3編収録!


「限定販売特別濃厚プレミアムシュークリーム事件」 「通い猫ぐるぐる」 「名探偵南郷九条の失策--怪盗ジャスティスからの予告状」

コミカルタッチの本格推理小説である。やり過ぎと思えるほど繰り返される説明文といい、お約束のような会話といい、わざとうんざりさせようとしているとしか思えなかったりもするが、それがまたひとつの味になっていて、堅苦しいだけではないミステリになっているように思う。ふざけているようであって、押さえるところはちゃんと押さえられているのが著者流だろうか。愉しめる一冊である。

春、戻る*瀬尾まいこ

  • 2014/03/13(木) 10:37:24

春、戻る春、戻る
(2014/02/05)
瀬尾 まいこ

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結婚を控えたある日、私の前に兄と名乗る青年が現れた。明らかに年下の「お兄さん」は、私の結婚にあれこれ口出しを始めて・・・。
人生で一番大切なことを教えてくれる、ハートフルウェディングコメディ。


一体誰なんだ!?ひとまわりも年下の見知らぬ「おにいちゃん」は。現実にこんなことがあったら、不気味で恐ろしくて警察に駆け込むか、部屋に引き篭もりたくなりそうだが、「おにいちゃん」の人柄故か、なんとなく彼のペースに載せられているうちに、親しみさえ感じるようになってくるのである。結婚相手の山田さんが、不審がらずに「おにいちゃん」の存在を受け入れているのも一見不思議だが、それも山田さんの人柄の魅力になってくる。初めは、天国の父親の想いが形になったのか、などと思いもしたのだが、そんな空想物語ではなく、もっと現実的な存在だったので、「おにいちゃん」の実態が明らかになったときには、なおさら胸が暖かいもので満たされたのだった。著者らしいぽかぽかする一冊である。

ターミナルタウン*三崎亜記

  • 2014/03/11(火) 14:02:11

ターミナルタウンターミナルタウン
(2014/01/15)
三崎 亜記

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「影」を失った男。闇を浴びて育つ「隧道」。見えないけれど「ある」ことにされているタワー。五百人以上を乗せて、姿を消した「下り451列車」。町興しを手掛ける「接続会社」の思惑。様々な問題を抱え込んだまま、静原町に大きなうねりがやってくる。誰よりも緻密に「架空」を描く著者による、待望の長編小説!!


影なき男・響一、寂れた和菓子屋の娘・理沙、不穏な企みを抱えて旧都からホーム伝いにやってきた牧人、関南市に吸収された静原町の元町長、駅に捨てられていた丸川、町長の女婿・修介、静ヶ原駅の駅長、という七人の目線で、静原町が巻き込まれ翻弄され息を吹き返す一部始終が語られた一冊である。どこにでもありそうな出来事に、ほんの少し斜めから光を当て、微妙に捻りを加えて時空を超えた不思議な物語に帰る著者の技が相変わらず光っている。453ページというボリュームを感じさせない一冊である。

舞台*西加奈子

  • 2014/03/08(土) 07:51:35

舞台舞台
(2014/01/10)
西 加奈子

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「生きているだけで恥ずかしい――。」自意識過剰な青年の、馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ!
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文になってしまう。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――?
思い切り笑い、最後にはきっと泣いてしまう。圧倒的な面白さで読ませる、西加奈子の新境地長編小説!


折々に挟みこまれる太ゴシックが、さながらニューヨークの観光案内のようである。そこをまさにいま歩いている葉太は29歳。作家であった亡父の遺産で、一週間の予定でアパートメントに宿泊している、極度に自意識過剰の青年である。どこを歩いても、いかにもその場所らしくて恥ずかしくてたまらなくなり、そんな自分にさらに羞恥心を募らせるのである。セントラルパークで好きな作家の「舞台」という新刊を読もうとするが、そこでほぼすべてが入ったバッグを持ち去られるというトラブルに見舞われる。それからの葉太の恥ずかしくも逞しい一週間の物語である。舞台を読もうとする葉太自身が、人生という大きな舞台で果たす役割と、ほんとうの自分自身に出会う顛末に滑稽ながら親しみを覚える。誰もが、どんなキャラクターだとしても自分の人生という舞台の主役を張っているのだと思える一冊である。

たそがれ清兵衛*藤沢周平

  • 2014/03/07(金) 17:18:11

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)たそがれ清兵衛 (新潮文庫)
(2006/07/15)
藤沢 周平

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下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮らしてはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣が黙っちゃいない。表題作のほか、「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「日和見与次郎」等、その風体性格ゆえに、ふだんは侮られがちな侍たちの意外な活躍を描く、痛快で情味あふれる異色連作全八編。


上記のほか、「うらなり与右衛門」 「かが泣き半平」 「祝い人助八」

普通から少し外れて我が道を行く生き方をしている男たちの短編集である。蔑まれたり軽んじられたりしながらも、確かな腕を買われて事を成すギャップが堪らない。ある意味理想かもしれない。格好良く爽快な一冊である。

灰色の動機*鮎川哲也

  • 2014/03/02(日) 16:52:48

灰色の動機: ベストミステリー短編集 (光文社文庫)灰色の動機: ベストミステリー短編集 (光文社文庫)
(2012/04/12)
鮎川 哲也

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森三郎という男性が陸橋の下で死体で発見された。しの子は、警察に過失死とされた恋人の死を不審に思い、事件として調べ始めた。しかし、容疑者は―(「灰色の動機」)。表題作をはじめ、珠玉のミステリーはもちろん、最初の小説である「ポロさん」、唯一のSFで文庫初収録の「結婚」など鮎川作品の中で異色テイストの作品を満載した贅沢な一冊。オリジナル短編集第三弾。


「人買い伊平治」 「死に急ぐもの」 「蝶を盗んだ女」 「結婚」 「灰色の動機」 「ポロさん」

鮎川作品をたくさん読んでいるわけではないので、異色かどうかはよく判らないが、本作に収録されている六篇はそれぞれテイストが違っていて、読者を飽きさせない。いずれも1900年代半ばに著されたもののようだが、道具立てや背景は別としても、現代でも通じる要素がたくさんあるのに驚かされる。贅沢な一冊である。

空き家再生ツアー*岸本葉子

  • 2014/03/01(土) 16:53:36

空き家再生ツアー空き家再生ツアー
(2010/11/02)
岸本 葉子

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人気エッセイストの初の連作小説集。 50歳、独身、ひとり暮らし。人生の曲がり角を迎えた女性たちが人生を見つめ直し模索する、それぞれのこれから。人気エッセイスト初めて挑戦した連作小説集。


初の小説とのこと。初めは、短編集かと思ったのだが、連作になっていて、より愉しめた。職場やプライベートでの、50代の独身女性の微妙な立場や、他人に向ける視線の複雑さが絶妙に描かれていると思う。新しいことを始めるには勇気がいるくらいには歳を重ねてきているし、さりとてこのままで人生終わらせるのももったいない。生きること死ぬことを考える微妙な年代が50代ということだろう。気の合う同世代がいたとしても、突き詰めれば人間独りなのだよなぁと思わされもする一冊である。