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花ひいらぎの街角*吉永南央

  • 2018/03/30(金) 18:28:35

花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ
吉永 南央
文藝春秋
売り上げランキング: 26,095

北関東の小さな町で、珈琲豆と和食器の店「小蔵屋」を
営むおばあさん、お草さん。
彼女の周囲にあたたかく描かれる人間の営み、日常に
ふと顔をのぞかせる闇が読むものをグイグイ引き込む大人気シリーズ第6弾。

秋のある日、草のもとに旧友の初之輔から小包が届く。中身は彼の書いた短い小説に、絵を添えたものだった。
これをきっかけに、初之輔と再会した草は、彼の苦しかった人生を元気づけるために、彼の短編を活版印刷による小本に仕立て贈ることにした。この本を作るために小さな印刷会社と関わり、個人データに遭遇。行き詰まる印刷会社を助けることに。草の働きによって、印刷会社周辺の人々の記憶までもが明るく塗りかえられてゆく。


お草さんの優等生過ぎないキャラクタが相変わらず好ましい。悟りすましておらず、人間臭くて、失敗することも後悔することも日々数えきれないほどあり、それでも周りの人たちや、小蔵屋の客たちに解決のヒントをもらい、助けられて、前向きに気分を立て直して生きている。そんな姿に親近感を覚える。今回も、厄介ごと満載だが、愉しみなことや心躍ることもたくさんあり、お草さんの毎日は忙しい。久美ちゃんのこれからのこともあれこれ気になる。次作ではそのあたりも何か進展があるといいな、とひそかに思う。読むたびに小蔵屋を訪れてみたくなるシリーズである。

キラキラ共和国*小川糸

  • 2018/03/26(月) 16:46:20

キラキラ共和国
キラキラ共和国
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小川 糸
幻冬舎 (2017-10-25)
売り上げランキング: 4,863

ツバキ文具店は、今日も大繁盛です。夫からの詫び状、憧れの文豪からの葉書、大切な人への最後の手紙…。伝えたい思い、聞きたかった言葉、承ります。『ツバキ文具店』待望の続編。


今回は、代書屋さんの物語よりも、鳩子の私生活によりスポットが当てられていたように思う。代書の仕事ももちろんあるのだが、新しく家族になった、ミツローさんやQPちゃんのこと、お隣のバーバラ婦人やご近所さんたちとのあれこれ、そして、鳩子の産みの母のことなどが描かれていて、さらに次につなげるための物語のようでもある。代書の仕事に関しては、一件一件に心が込められていて、軽い気持ちではできないことがうかがい知れる。ただ、我が身に当てはめて考えてみると、なにからなにまでおまかせで、内容さえも知らずに出す手紙には、いささか抵抗がある。ことに、初めてのときにお任せするのは勇気が要りそうである。ツバキ文具店と守景一家がこれからどうなっていくのか愉しみなシリーズではある。

屍人荘の殺人*今村昌弘

  • 2018/03/24(土) 18:34:51

屍人荘の殺人
屍人荘の殺人
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今村 昌弘
東京創元社
売り上げランキング: 970

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!


密室謎解きミステリとしては面白いのだが、ゾンビが出てきた段階で――たとえそれなくしてはトリックが成立しないとしても――、昂揚感がすっと引いてしまった――個人的な好みの問題なのだが――のが、残念でならない。なにかもっと、現実に起こる可能性が高い設定にしてくれたら、もっと愉しめたのだろうと思うと、ゾンビが必要不可欠な要素だからと言っても、がっかり感がぬぐえない。感染症まではいいが、それをゾンビにする以外なんとかしようがなかったものかと思ってしまう。評判が高いだけに、個人的にはいささか腑に落ちない一冊になってしまった。

雪子さんの足音*木村紅美

  • 2018/03/22(木) 18:49:24

雪子さんの足音
雪子さんの足音
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木村 紅美
講談社
売り上げランキング: 6,672

東京に出張した薫は、新聞記事で、大学時代を過ごしたアパートの大家・雪子さんが、熱中症でひとり亡くなったことを知った。
20年ぶりにアパートに向かう道で、彼は、当時の日々を思い出していく。
人間関係の襞を繊細に描く、著者新境地の傑作!
第158回芥川賞候補作。


いまどき珍しい、店子と距離を近く取りたがる月光荘の大家の雪子さんを、大学生だった薫は、ある意味いいように利用しながら、次第に鬱陶しく面倒くさく思うようになり、若さゆえもあり、相手の思惑を思いやることもできずに、突き放すようにして引っ越してしまったのだった。社会人になった彼は、新聞の片隅に、雪子さんの死亡記事を見つけ、出張帰りに月光荘の前まで行ってみることにした。そこまでの道筋で思い返したあの日々の物語である。大家の雪子さんと、湯佐薫、そして、もうひとりの住人で薫と同い年の女性・小野田さんとの、ちょっぴり不思議な関係が、ある角度から見ると微笑ましくもあり、別の角度から見ると互いに依存しすぎにも見えて、登場人物それぞれの気持ちが判るだけに、やり切れなくもある。心の窪みを何かで埋めたいという欲求がお互いを縛り合っているようにも見え、三人ともが少しだけ不器用だったのかもしれないとも思う。ほんの少しの違いで、まったく別の関係性が築けたかもしれないと思うと、もったいないような気もする。懐かしいような、切なく哀しいような、さまざま考えさせられる一冊である。

映画化決定*友井羊

  • 2018/03/20(火) 16:37:58

映画化決定
映画化決定
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友井 羊
朝日新聞出版 (2018-01-04)
売り上げランキング: 153,615

放課後の教室でナオトが落とした一冊のノートを拾ったのは、同級生の天才画家監督・ハル。彼女はそこに書かれたマンガのネームを見て、言った。これをわたしに撮らせてほしい。創作者としてぶつかり合いつつ、ナオトは徐々にハルに惹かれていく。しかし―涙とサプライズのせつない青春小説。


そのまま実写化できそうな物語である。全編に映画作りのあれこれがふんだんにあふれているし、ぶつかり合いやのめり込みようも含めて、高校生たちの情熱が漲っている。そして、その裏に流れる切なさが、ただがむしゃらなだけではない悲哀をも表わしていて、涙を誘われること間違いない。ハルとナオト、そして杏奈や乙羽さんたちそれぞれの想い、ナオトが抱える屈託と、ハルの事情。さまざまな要因が絡み合って、象徴的なラストへと向かう。――のだが、それだけで終わらず、その先にひと捻りあるところがミソである。人の心の純粋さや、やさしい嘘の哀しさに想いを致す一冊である。

海馬の尻尾*荻原浩

  • 2018/03/18(日) 19:23:46

海馬の尻尾
海馬の尻尾
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荻原浩
光文社
売り上げランキング: 48,835

二度目の務めを終えた及川頼也は、その酒乱を見るに見かねた若頭に、アルコール依存症を治すよう命じられる。検査の結果、「良心がない」とまで言われた男がどのように変わっていくのか。名著『明日の記憶』の著者が、再び「脳」に挑む。


読み始めて間もなく、荻原作品を読んでいるつもりだったのに、これは誉田作品だったか、と表紙を見直してしまうほど、これまでとはがらっと趣の違う物語である。主人公は反社会的勢力の構成員で、良心をもたず、恐怖の概念が抜け落ちている及川頼也。舞台はとある医療機関。アルコール依存症の治療のために8週間入院するという名目で入ってみれば、そこは隔離病棟なのだった。治験と称する人体実験による人格の変化や、想定外の人間関係による症状の改善など、興味深い要素がたくさんある。患者側はもちろんのこと、医師をはじめとする医療機関側の人間たちの人格にも興味を惹かれる。まさにバイオレンスの日々を生きてきた及川だったが、彼にはここの治療が合ったのか、少しずつ人間的な感情を取り戻し始めると、さまざまなことに気づき、わかってくることがある。その様子も注目に値する。どの登場人物も細部まで丁寧に描かれていて、目の前で動いているような気にさえなってくるのも見事である。ここで起こっていることは、大変なことだが、描かれていない部分にもっと深い根っこがあるのが透かし見られて、空恐ろしくなってくる。ハッピーエンドを想像するのは難しいラストではあるが、及川にはなんとしてでも逃げ切って、梨帆たちと再会してほしいと心から願ってしまう一冊である。

カーテンコール!*加納朋子

  • 2018/03/16(金) 10:56:10

カーテンコール!
カーテンコール!
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加納 朋子
新潮社
売り上げランキング: 260,846

幕が下りた。もう詰んだ。と思ったその先に、本当の人生が待っていた。経営難で閉校する萌木女学園。私達はその最後の卒業生、のはずだった――。とにかく全員卒業させようと、限界まで下げられたハードルさえクリアできなかった「ワケあり」の私達。温情で半年の猶予を与えられ、敷地の片隅で補習を受けることに。ただし、外出、ネット、面会、全部禁止! これじゃあ、軟禁生活じゃない!


「砂糖壺は空っぽ」 「萌木の山の眠り姫」 「永遠のピエタ」 「鏡のジェミニ」 「プリマドンナの休日」 「ワンダフル・フラワーズ」

乙女ばかりの寮生活の半年を描いた物語である。と聞くと、さぞや華やかできらびやかな日々が繰り広げられるのだろうと想像したくなるが、舞台は、経営難による平衡が決まった萌木女学園の敷地の一角に建つ合宿棟のような建物。スタッフは、理事長の角田を始め、彼の妻や娘、老教師や校医など、ほぼ身内と言ってもいいような面々。さらには、外部との接触は一切禁止、食事も間食はじめ、生活の一部始終をしっかり管理された、矯正施設のようなものだったのである。生徒たちはと言えば、幾度もの救済措置からも零れ落ちた、折り紙付きの落ちこぼれであり、それぞれが問題を抱えている。覇気のない補講合宿なのだが、理事長の采配によって同室にされた者たちは、少しずつ相手のことを見るようになり、翻って自らにも目を向けるようになっていく。亀の歩みのようなのんびりしたものであっても、確実に進んでいる姿を見ていると、出会いの妙を感じさせられる。誰もが何かしらの屈託を抱えて生きているという、当たり前のようなことを認識するだけで、世界の色が変わって見えてくることもあるのだろう。最後の章では、角田理事長の胸の裡が語られるが、それに耳を傾け、その哀しみを想像できるようになった彼女たちの姿にも感動を覚える。切なくやるせなく、だが、じんわりと胸を温めてくれる一冊だった。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年*村上春樹

  • 2018/03/14(水) 16:39:29

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
村上 春樹
文藝春秋 (2013-04-12)
売り上げランキング: 54,949

良いニュースと悪いニュースがある。多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。あるポイントまでは…。


表面的にはとても恵まれた人生を送っているように見える多崎つくるの内面の物語である。高校時代にほんの偶然によって集められた男女五人のグループが、その時代の彼らにとって何ひとつ欠けることのない円環のように、ある意味閉じた充足の世界を作りだし、ある日突然、なんの思い当たることもないにもかかわらず、その輪からはじき出された結果、これ以上失うものがないかのような精神状態になり、始終死と隣り合わせのような日々を過ごした後、ほんの些細なきっかけで色のついた世界に戻って来た多崎つくるのそれからの事々である。他者から見える自分と、自覚的な自分との乖離は、ある年代に誰もが経験することだと思うが、彼の場合、必要充分な円環の中にいるときでさえ、そのことにコンプレックスを感じており、はじき出されてからというもの、自分というものにとことん実感を持てなくなっているように見受けられる。そんな彼をつなぎとめてくれたのが、二歳年上の沙羅であり、また別の生きる苦悩を与えたのも同じく彼女だった。多崎つくるのこれからの人生がどんな色彩を帯びていくのか、ラストでは曖昧にされたままだが、生を感じられるあしたが来ることを祈らずにいられない。読み手の年代や状況によって、さまざまな印象を残す一冊だとも思える。

宮辻薬東宮

  • 2018/03/12(月) 16:38:41

宮辻薬東宮
宮辻薬東宮
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宮部 みゆき 辻村 深月 薬丸 岳 東山 彰良 宮内 悠介
講談社
売り上げランキング: 201,985

宮部みゆきさんの書き下ろし短編を辻村深月さんが読み、短編を書き下ろす。その辻村さんの短編を薬丸岳さんが読み、書き下ろし……今をときめく超人気作家たちが2年の歳月をかけて“つないだ”ミステリーアンソロジー。


「人・で・なし」宮部みゆき  「ママ・はは」辻村深月  「わたし・わたし」薬丸岳  「スマホが・ほ・しい」東山彰良  「夢・を・殺す」宮内悠介

一斉に同じテーマで書くのではなく、できあがった前の作品を読んでから自分の作品を書く、というリレー形式で書かれているので、前作から何かしらの要素を引き継いでいたりするのも興味深い。個人的にホラーは好みではないのだが、この程度なら拒否反応は起こらない。ただ、想像するとますます怖さが増し、目を閉じるとふと情景が浮かんでしまったりして困る。日常に何気なく紛れ込んでいそうな気にさせられるのも背筋が寒くなる。怖がりつつ愉しんだ一冊である。

狐火の家*貴志祐介

  • 2018/03/11(日) 18:30:28

狐火の家
狐火の家
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貴志 祐介
角川書店
売り上げランキング: 186,929

築百年は経つ古い日本家屋で発生した殺人事件。現場は完全な密室状態。防犯コンサルタント・榎本と弁護士・純子のコンビは、この密室トリックを解くことができるか!?


表題作のほか、「黒い牙」 「盤端の迷宮」 「犬のみぞ知る Dog knows」

弁護士・青砥純子と、怪しい防犯コンサルタント・榎本が、すっかり定着してしまった密室案件の謎解きに挑む。純子は、なんだかんだと榎本に頼ってはいるが、心の底では、実は犯罪者側に立つ者なのではないかと疑いの目で見ており、榎本は榎本で、ほのめかすような発言をわざとしている節も見受けられ、微妙な掛け合いがコメディっぽくもあって愉しめる。すっかりいいコンビである。本作では榎本のさらなる趣味の範囲の広さも披露され、それもまた興味深い。行く末を見届けたいシリーズである。

ホワイトラビット*伊坂幸太郎

  • 2018/03/08(木) 16:36:36

ホワイトラビット
ホワイトラビット
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新潮社 (2017-12-22)
売り上げランキング: 1,063

仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎(しろうさぎ)事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。


仙台で起きた立てこもり事件の顛末である。一読、単純な立てこもり事件なのだが、加害者、被害者双方に厄介な事情があり、それらが複雑に絡まり合い、しかも時間を行きつ戻りつしながら描かれるので、認識している出来事の流れを、その都度修正しながら読み進めなければならない。頭が混乱しては来るが、次第に解かれて、本当の筋が見えてくるにつれ、その綱渡り的な鮮やかさに目を瞠る。さらに言えば、登場人物には悪人が多いのだが、それぞれがそのときの自分の立場で懸命に働いている姿が、なぜか憎めず、それぞれが家庭を守っているという背景を思い描けば、愛すべき奴等にも見えてきてしまう。警察も犯人もみんな一生懸命なのが、切なくもあり可笑し味でもある。これこそが、伊坂作品の醍醐味かもしれない。まぎれもない犯罪の一部始終なはずなのに、なぜかいい人たちにたくさん出会った心地にさせられてしまう不思議な一冊でもある。

口笛の上手な白雪姫*小川洋子

  • 2018/03/07(水) 16:39:22

口笛の上手な白雪姫
口笛の上手な白雪姫
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小川 洋子
幻冬舎 (2018-01-25)
売り上げランキング: 10,567

たとえ世界中が敵にまわっても、僕だけは味方だ。


公衆浴場で赤ん坊を預かるのが仕事の小母さん、
死んだ息子と劇場で再会した母親、
敬愛する作家の本を方々に置いて歩く受付嬢、
ひ孫とスパイ大作戦を立てる曽祖父——。
不器用で愛おしい人々の、ひたむきな歩みが深く胸をうつ。

あなただけの〈友〉が必ず見つかる。静謐で美しい傑作短編集!


表題作のほか、「先回りローバ」 「亡き王女のための刺繍」 「かわいそうなこと」 「一つの歌を分け合う」 「乳歯」 「仮名の作家」 「盲腸線の秘密」

どの物語も、世界の端っこの隅っこに、ともすれば打ち捨てられ、人々から忘れ去られてしまいそうな事々を、興味津々に見つめる目線が見えてくるような印象である。ほんの狭い一画を切り取っていながら、想像の世界は果てしなく広がり、どこへでも行ける気分にさせられる。そして必ず、胸のどこかをチクリと刺され、ハッとするのである。しあわせに暮らしましたとさ、の先の白雪姫のことなど、想ってもみなかったが、胸にすとんと落ちてくる。いままで見えていなかったことが、ほんの少し哀しくなるような一冊でもある。

はんざい漫才*愛川晶

  • 2018/03/05(月) 13:57:21

はんざい漫才 (文春文庫)
愛川 晶
文藝春秋 (2016-04-08)
売り上げランキング: 531,218

編集者・武上希美子、三十一歳。老舗の寄席・神楽坂倶楽部への出向期間も過ぎ、将来を思い悩んでいるところに、また大事件が発生するが、ショー・マスト・ゴー・オン!シリーズ第三弾の今回は、人気漫才コンビ・ロケット団の三浦昌朗さん作、漫才風解説付。そして、最大のサプライズは「あとがき」のラスト一行にあり!


神楽坂倶楽部シリーズの第三弾は、落語ではなく、漫才と音曲にスポットが当てられている。さらには、協会の会長職をめぐる経緯や、過去の因縁、そして希美子のこれからのことなどが絡み合い、もつれ合って厄介の度合いが増しているのである。だが最後は、義蔵さんの機転もあって、万事うまく事が運んだが、問題がすべて片付いたわけではない。希美子と健太郎のことを始め、数々の疑問は次の作品で解決されるのだろうか。ますます愉しみなシリーズである。

ヲトメノイノリ*石田千

  • 2018/03/03(土) 18:35:29

ヲトメノイノリ (単行本)
石田 千
筑摩書房
売り上げランキング: 206,690

果たして、イノリは通じるのか。七十六歳にしてピアノを習い始める佃煮屋の女将、彼女の願いと挑戦を軽妙に語る表題作ほか、幼児から老女まで、様々な年代の女性の日常と「イノリ」を描いた傑作連作短篇集。


表題作のほか、「{ぶらんこ」 「うぐいす」 「青嵐」 「梅雨明け」 「風鈴」 「素麺」 「球根」 「木枯らし一号」 「去年今年」

それぞれ別のお話しなのだが、どこかで淡く繋がっている気がする。それぞれが、各々の場所で、各自の人生を生きているということが、別の場所の別の人の人生と、知らず知らずのうちに淡くかかわりを持ってくるような。ほんのりとあたたかな気持ちになる。そして表題作は熱い思いが並々と溢れている。そしてそれも人との関わりなのだなぁと思わされる。人はいろんなことを考え、いろんな気持ちを胸に仕舞って生きている。それをお互いに少しずつ見せ合うと、僅かずつでも繋がっていくのかもしれないと思えてくる。まず何かに気づくことが始まりなのかもしれないと気づかせてくれる一冊でもある。

三題噺示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帖*愛川晶

  • 2018/03/01(木) 20:30:34

三題噺 示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,052,659

怪しい手品師、狙われる老落語家、師匠いわくの山間の宿…。謎に合点し落語で披露、笑いあり涙ありの人気シリーズ第4弾。


前作では、福の助の奇策により、馬春師匠を紅梅亭で独演会を開くという段取りになったので、どんな具合に話が進むのかと愉しみに読んだ。だがそう簡単に馬春師匠の高座の様子が描かれるわけはなく、そこへ行きつくまでには、いくつもの厄介事の謎解きをしなければならないのが本シリーズの常である。もちろんそれも愉しみつつ、気持ちはどんどん高まるのである。しかし、なんということだろう。思ってもいない展開になり、目を瞠るしかない。ここまで来て、「え、そんなぁ……」、という感じである。そして更なるサプライズ。もう振り回されっぱなしである。どこまで愉しませてくれれば気が済むのだ、と言いたくなるシリーズである。