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冤罪者*折原一

  • 2007/03/17(土) 14:08:08

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冤罪者 冤罪者
折原 一 (1997/11)
文藝春秋

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ある新証言によって、連続暴行殺人犯・河原輝男は控訴審で一転、無罪を勝ち取った。だが、それは新たな惨劇の幕開けだった…。逆転また逆転のストーリー、冤罪事件の闇を描く推理長編。



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俺が殺したとされるのは、中野区のマンションに住む女だった。あの夜、俺はぐでんぐでんに酔って、酒場で女と意気投合し、ラブホテルに入った。俺がやったとされる事件は、その時間に起こっているのだ。俺にはその間の記憶がない。女とセックスした後は眠ったと思うが、いやな夢を見た。マンションの二階に忍び込んで女を襲う夢だ。いやがる女を無理に押さえつけた時、頬を爪で引っかかれた。翌朝、ラブホテルのベッドで目覚めたとき、俺の頬に長さ二センチほどの引っかき傷があり、ひりひりと痛んだ。だが、俺はやっていない。でも、もし夢遊病だったら・・・・・。(本文より)

連続放火事件や 連続婦女暴行事件が起こるさなか、婦女暴行や窃盗の前科を持ち、事件当夜の記憶も定かでない川原は、殺人犯として捕まり 取調べを受け、拷問に耐え切れずに自白してしまう。しかし、人権を守る会や被害者の遺族らといったさまざまな思惑が川原の周りで渦巻き、川原自身もその渦に翻弄されることになる。
結局は無罪を勝ち取り、元の世界に戻った川原だったが、世間の目は彼を放っておいてはくれなかった。
川原自身、取材記者であり恋人を失った被害者でもある五十嵐、娘を失ったほかの遺族たち、そして事件当夜 放火現場を逃げる途中の犯人に目撃された12歳の少年、五十嵐とパソコン通信でやり取りしている小谷ミカという見知らぬ女性など、かかわりのあるさまざまな人々を追いかけつつ物語はとんでもない方向へと進んでいくのである。
いたるところに怪しい要素が転がっており、しかし そのどれもがほんの少しだけずれているように思える。後半、いぶかしみながらも最後の最後でずれのない要素を見せつけられたときには、異様さに背筋をゾクリと寒さが這い上がってくるようだった。

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