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殴られ屋の女神*池永陽

  • 2007/05/16(水) 18:49:53

☆☆☆☆・

殴られ屋の女神 殴られ屋の女神
池永 陽 (2005/03/19)
徳間書店

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一発千円の殴られ屋。奇妙な商売を始めた理由は、ノックアウトされる寸前に見える幻の女性。仕事を失い、妻を失い、家を失い、全てを失って、今夜も男は街に出る。


須崎康平は、幼いころ母親に虐待されていた。殴られたときに一瞬恍惚となり、目の前に現れたのは白い姿の女神だった。リストラされ、愛妻に愛想をつかされて離婚した康平は、あの女神にまた会い それが誰なのかを確かめたくて自ら殴られ屋になり、今夜も恵比寿駅前に立つのだった。
康平が居候しているマンションの持ち主・豊は、自傷癖のある十六歳の美形の男娼で、やはり母親に虐待されており、康平も自分も「死ぬために生まれてきた犬」だと考えている。たくさん生まれた子犬の中には、兄弟たちから阻害され、母親からさえも疎まれ、ほかの兄弟たちが生き延びるために死ぬ運命の子犬がいるのだという。
さまざまな人に殴られながら、康平と豊は ときには自分たちと同じように「死ぬために生まれてきた犬」のような人たちの悩みを聞き、手を貸したりするのだが、相手の事情に踏み込みすぎず真心を注ぐさまが胸をあたたかくする。
お互いに弱い者同士である康平と豊の救い合い補い合うあたたかな関係には何の利害もなく、相手を思いやる心からの気持ちにあふれていて涙が出そうになる。
康平はなかなか女神を見ることができないが、ラストになってようやく願いがかなう。でもそれはなんと切ない出会いなのだろう。それでも康平はしあわせだったのだろうか。

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