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恍惚の人*有吉佐和子

  • 2007/06/29(金) 09:16:49

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恍惚の人 恍惚の人
有吉 佐和子 (1986/08)
新潮社

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ヒトは20歳から老いはじめる。老いて病み、恍惚として人を識らず。『恍惚の人』が、純文学書下ろし特別作品として刊行されたのは、昭和47年である。発刊と同時に各界から大反響を呼び、本書の出現は、歴史的事件となった。


いまでこそ「認知症」として世間にもずいぶん認知されきており、介護者の言い尽くせぬ苦労に対する理解も進んできてはいるこの病であるが、昭和47年の本作出版当時 世間に与えた衝撃の大きさは想像に難くない。
だが、たとえ扱われ方が多少変わったとしても、根本的なところは何ひとつ解決されたわけではないことが気を重くさせる。人が人生の終幕に向かうとき、自分にとっても周りにとってもこれほど無残な時を通り過ぎなければならないとは一体どういう計らいなのだろう、と鬱々とした心地にもなる。
症状の出方も千差万別という認知症であるが、本作の茂造などはまだ序の口、というような体験談もあちこちで聞く。人生の最期くらい自分も周りも心穏やかに過ごすことができたら、と他人事ではなく切に思う。

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