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夜想*貫井徳郎

  • 2007/08/20(月) 17:41:59

☆☆☆☆・

夜想夜想
(2007/05)
貫井 徳郎

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あたしはずっと、夜の中にいました。

救われる者と 救われない者。

名作『慟哭』から十四年。ふたたび<宗教>をテーマに、魂の絶望と救いを描いた雄渾の巨編。


交通事故で妻と娘を一瞬にして失った雪藤は、何事にも意欲を失い抜け殻のようにただ日々を生きていた。そんなとき、偶然落とした定期入れを拾ってくれた天美遙は、雪藤を「かわいそう」と言って涙を流したのだった。遙は物に触れるとその人のことがわかる不思議な力を持つ女性だった。雪藤は彼女に自分の悲しみを解ってもらえたことで救われたと感じ、彼女の力がもっと多くの人を救うようになれば・・・と願う。それが次第に形になり、<コフリット>という組織になるにつれて、さまざまな問題も起こってくるのだった。
一方で子安嘉子は、愛を注いで育てた娘が自分を裏切って家を出て行ってしまい、東京へ探しに出てくるが、なかなか思うような結果が出せずに占い師にまで頼るようになり、ふと見た雑誌で遙のことを知るが・・・。

帯には宗教がテーマと謳われているが、テーマとなっているのは宗教という概念ではなく、苦しみや悲しみと自分の中でどう向き合うかということではないかと思う。そのきっかけが雪藤であり遙なのではないだろうか。
そしてまたもや貫井流の捻りが見事である。誰の目で見るか、誰の心に寄り添うかによって、物事はこうも別の一面を見せるのである。
ラストの場面のそのあとからこそが、遙にとっても雪藤にとっても救いになりますようにと祈らずにはいられない。

V
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夜想 貫井徳郎

写真は松尾哲。装幀は関口聖司。「別冊文藝春秋」第261号~第269号連載。かなりネタバレあり。 目の前の事故で最愛の妻娘を喪った雪藤直義(ゆきとうただよし)。苦しんでいたある日、定期入れを拾った天美遙(あまみ

  • From: 粋な提案 |
  • 2007/08/25(土) 04:33:09

本「夜想」

夜想貫井徳郎  文藝春秋 2007年5月 愛する妻子を交通事故により自分の目の前で焼死させてしまった雪藤直義は、その苦しみから立ち直れないでいた。定期入れを拾ってくれた女性が、自分にシンクロして泣いてくれたのをきっかけに、その女性、天美遙の不思議な能

  • From: <花>の本と映画の感想 |
  • 2007/08/30(木) 21:08:54

夜想 貫井徳郎著。

交通事故で妻子を失ってしまい生きる力、後を追って死ぬ力さえ奪われた雪籐。そんな雪籐が、ある日不思議な能力を持つ遙と出会い、徐々に生きる目的を見出していく。 遙の能力によって多くの人を救いたい、遙と雪籐の願いは一つだった。しかし遙の力によって救われたい、?...

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2007/11/11(日) 07:18:17

夜想

**************************************************************** 事故で妻と娘をなくした雪藤の運命は、美少女・遙と 出会って大きく動き始める。新興宗教をテーマに魂の 絶望と救いを描く傑作長編。 ************************************************************...

  • From: 気楽に♪気ままに♪のんびりと♪ |
  • 2008/12/01(月) 17:55:09

この記事に対するコメント

抜け出せずにいる悲しみとどう向き合うかを提言していましたね。
貫井さんだったので、もっとひどいことになるかもって心構えもしてました。
これからを感じさせる終わり方がよかったです。

  • 投稿者: 藍色
  • 2007/08/25(土) 04:32:54
  • [編集]

雪藤にも遙にも
悲しみに押しつぶされずに生きていって欲しいですね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2007/08/25(土) 09:16:58
  • [編集]

こんにちは!

救いとか、宗教とか、そういうテーマを描く中で、ラスト近くでは、意外性もあり、さすがにうまいなあと思いました。
雪藤、遙には、悲しみから早く抜け出して欲しいですね。

  • 投稿者: 花
  • 2007/08/30(木) 21:13:03
  • [編集]

貫井さんのこの捻りが堪りません。
身構えて読み始めてもいつもやられてしまいます。
それがうれしくもあるのだけれど・・・。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2007/08/30(木) 21:22:10
  • [編集]

「宗教」がテーマと聞いたので、ちょっと身構えてたんです。でも違いますね、悲しみとどう向き合うか、ってその通りだと思います。
一人の人間を奉ることで起こる出来事がリアルでした。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2007/11/11(日) 07:22:22
  • [編集]

はまり込んで軌道修正ができなくなるさまが、ほんとうにリアルで厭な気分になるほどでした。
怖くもありましたね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2007/11/11(日) 08:31:57
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