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がらくた*江國香織

  • 2007/09/19(水) 08:53:58


がらくたがらくた
(2007/05)
江國 香織

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完璧な恋愛小説。
あなたを、あなただけを待っている――

 風が樹の葉を揺らしている。金色の粒子になってそこらじゅうに満ちている光。目を閉じて、耳を澄ませ、私は夫を感じようとしてみる。耳のうしろに、首すじに、左の太腿のあたりに。息をすいこみ、その息を吐きだす。
 大丈夫。夫の言うのが聞こえる気がした。そばにいるから大丈夫――。
                                       柊子  45歳

 今夜キスをしようと決めていた。近づいて、ほんのすこし唇を合わせるだけ。もちろん一瞬で、すぐに離す。ちょっとしたいたずら。えへへ。それから子供ぶってそんな風に笑えばいい。小学生のころ、男の子たちにそんなキスは何度もした。
                                       美海  15歳

二人の女性を主人公に語られる、愛と家族と時間の物語


章ごとに語り手を柊子・美海と換えて語られる。
登場人物の誰もが幸福そうに描かれているのだが、わたしには誰ひとりとして幸福そうに見えない。求める気持ちが強すぎて突き放してしまうような、話したいことがたくさんありすぎて何も言えなくなってしまうような、なにかアンバランスな居心地の悪さがいつもつきまとっているような気がしてしまう。
ただ、物語に終始流れている手触りの冷たさのようなものは嫌いではない。


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粋な提案
じゃじゃままブックレビュー

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がらくた 江國香織

「小説新潮」2005年7月号~2007年2月号掲載。Cover Jacket:(c)Maureen Gallace\"Sandy Road,2003\"(以下略)。装幀は新潮社装幀室のはず。横文字で、Design:Shinchosha Book Design Division(この...

  • From: 粋な提案 |
  • 2007/09/21(金) 10:31:08

がらくた 江國香織著。

作中に、柊子が編集者に、「あなたの訳はいつもそっけない」って言われるシーンがあるんだけど、そうだそうだ、これは江國氏自身のことだな~って。 そっけないというのは、決して否定したセリフではなくて、冷静、無駄がないってことで、江國さんの描く物語には、いつも無...

  • From: じゃじゃままブックレビュー |
  • 2007/10/22(月) 23:27:07

この記事に対するコメント

この言い表しようがない感じ…。
“なにかアンバランスな居心地の悪さ”
わかる気がします。
そこに惹きつけられたせいなのか…、
夢中で読みました(恥)。

  • 投稿者: 藍色
  • 2007/09/21(金) 10:30:50
  • [編集]

江國作品を読むといつも感じるとろりとまとわりつくような感じではなくて
触れるとひんやりするような突き放した冷たさのような肌触りが心地好くもありました。
不思議な心地のする物語でした。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2007/09/21(金) 12:42:20
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今回「がらくた」を読んで思ったのは、江國さんは無駄がない!ってことでした。いろんな意味で。
実はすっごくややこしい人生を生きてる原さんや柊子やミミなのに、文章に無駄がないからこそ幸せそうに見えちゃうんですよね。

この3人、決して友人にはなりたくないけど、学校生活も、仕事も、本当はもっと面倒くさいものなのに、いとも簡単に過ごしてるように感じてしまうのがちょっと憧れちゃう。

  • 投稿者: じゃじゃまま
  • 2007/10/22(月) 23:31:19
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確かにそうですね。
とろりとゆるそうなのに無駄がない。
なかなかできないことかもしれませんね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2007/10/23(火) 06:48:14
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