FC2ブログ

花の下にて春死なむ*北森鴻

  • 2007/11/25(日) 16:56:01


花の下にて春死なむ花の下にて春死なむ
(1998/11)
北森 鴻

商品詳細を見る

誰にでも秘密はある。
孤独死した俳人の窓辺の桜は、なぜ季節はずれの花をつけたのか。写真展のポスターは、なぜ一夜にしてすべて剥がされたのか。謎が語りかけるさまざまな生、さまざまな死。
ミステリの醍醐味を満喫させる鬼才の連作短編集。


表題作のほか「家族写真」 「終の棲み家」 「殺人者の赤い手」 「七皿は多すぎる」 「魚の交わり」

三軒茶屋の路地の先、袋小路の途中にある小さなビア・バー「香菜里屋」が舞台である。幾人かの常連客によって持ち込まれるさまざまな謎を、マスターの工藤哲也が独特の穏やかな人柄と鋭い推理によって解き明かすという趣向である。常連客たちは、工藤に話しを聞いてほしくてきょうも「香菜里屋」の焼き杉の扉を開けるのである。
そしてまた特筆すべきは工藤の出す料理の美味しそうなことである。ちょっとしたひと手間、ちょっとした工夫でまさにしあわせになれそうな一皿が目の前に出されるのである。アルコールが苦手なわたしも、探し当てて訪れてみたくなる店である。




はじまり

     1
 
 淡い空の青に、ぬっと突き出した煙突の先から白い煙が細く溶けてゆくのが見えた。今日、この斎場を利用しているのは七緒のグループ以外にはないはずであるから、煙は片岡草魚が姿を変えたものにちがいない。そういえば、わずかな春の風にも簡単にたなびく煙の様子が、
 ――いかにもあの人らしい・・・・・。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する