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蛍坂*北森鴻

  • 2007/11/26(月) 17:18:17


螢坂螢坂
(2004/09/22)
北森 鴻

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カウンターでゆるり、と時が流れる。≪香菜里屋≫に今日もまた、事件がひとつ。
わだかまっていた謎が、旨いビールと粋な肴で柔らかくほぐされる。
それが当店の「陰謀」なんです。
「螢坂」
すべてを捨てて戦場カメラマンをめざした頃のあの坂道は、どこに消えたのだろうか。
「猫に恩返し」
世田谷線の線路に面して建てられた黒猫ゴン太の顕彰碑。その裏側に、女の顔が浮かぶという噂が……。
「雪待人」
3代続いた画材屋が、いよいよ店を畳むという。待ち続けた1枚の絵は、いつ完成するのだろう。
「双貌」
カウンターの向こうから見つめてくる男の姿が、記憶の底を刺激する。
「孤拳」
若くして逝った「脩兄ィ」の最期の願い幻の焼酎・孤拳を探し求めてドアを開けた、香菜里屋で明かされた衝撃の事実。


三軒茶屋の路地裏の知る人ぞ知るビアバー「香菜里屋」が舞台のシリーズ第二弾。
相変わらずに不思議に落ち着く店の雰囲気と、穏やかで客の悩みを自然に引き出してしまうマスターの工藤の人柄、そしてなにより彼の出す歯も舌も躰も心も喜ばす一皿の料理が魅力的である。
安楽椅子探偵ならぬカウンター探偵のような工藤は、きょうも誰かの悩みや心の引っ掛かりを解きほぐすのである。それは推理というよりも工藤の細やかな洞察力のなせる業なのかもしれない。常連客同士の踏み込みすぎず離れすぎない係わり合いもあたたかい。




はじまり

     「蛍坂」
       一

 先ほどまで首筋にまとわりついていた湿気は、いつの間にか霧雨に変わったようだ。見上げると街灯の光の帯で、無数の糸くずが舞い踊っている。手にしたセカンドバッグに折り畳み傘が入っているが、有坂祐二はかまわずに歩き続けた。

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この記事に対するコメント

待っていました北森さんっ
こんな素敵なバーがあれば、是非いってみたいですね。ミステリ部分ももちろんですが、食べ物に関する描写が絶品でした。
このシリーズ、「桜宵」しか知らないのですが、まだあるのでせうか?

  • 投稿者: チョロ
  • 2007/11/27(火) 18:08:31
  • [編集]

シリーズのはじまりは
これの前に読んだ『花の下にて春死なむ』のようです。

ヨークシャーテリアの刺繍のついたワインレッドのエプロンは
なんだか工藤にもお店にも似合わない気がするのだけれど・・・。
お料理はどれもほんとうに美味しそうでした。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2007/11/27(火) 19:05:10
  • [編集]

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