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秋の大三角*吉野万理子

  • 2007/12/14(金) 18:09:42


秋の大三角秋の大三角
(2005/12/15)
吉野 万理子

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根岸線に現れる「キス魔」という痴漢は憧れの先輩の彼氏だった!でもその怪しい男の正体は―。横浜を舞台に女子校生たちの不思議な経験を描いた学園ファンタジー。第1回新潮エンターテインメント新人賞。


横浜・元町にある中高一貫の女子校に通う中学二年の里沙が主人公。殺人的な朝のラッシュの電車内で痴漢にあったところを絶妙に助けられて以来、里沙は高校二年の真央先輩に憧れるようになった。ある日、彼女たちの間で噂になり始めていた「根岸線のキス魔」のことで知っていることがあったら教えて欲しいと真央先輩に頼まれ、里沙と真央の距離は少しだけ近づくのだった。そして近づいてみると、真央先輩にはたくさんの謎があったのだ。
女子校特有の空気感や横浜という街の独特の雰囲気がとてもよく描かれていて、そこで生きている少女たちの姿も現実感を持って伝わってくる。普通に考えればありえなそうな設定も、過去と未来が入り混じる横浜という場所だからか、さほど違和感なくすんなりと受け入れられ、少女たちの切なさばかりが際立って感じられるように思う。なにかを信じられることのあたたかさや安心感に満たされるような一冊である。





はじまり

       序章 夏の大三角

 わし座のアルタイル。
 こと座のベガ。
 はくちょう座のデネブ。

 この三つの星を結んで「夏の大三角」と呼ぶ。テストに出すからな。しっかり覚えろよ。
 そういったのは、小学校のときの先生でした。
 でも私は、図鑑を読んで知っていました。その三角は、勝手な思い込みだということを。だって、アルタイルは地球から十七光年、ベガは二十五光年。一光年って距離にして十兆キロ弱だから、二つの星は、実は想像もつかないほど遠く遠く離れているんです。ましてデネブなんて、二千光年。結びようがない。

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